再循環率に基づいたダブルアクシャル型及び

●第 51 回日本人工臓器学会大会 コメディカル賞:腎臓 受賞レポート
再循環率に基づいたダブルアクシャル型及びコアクシャル型 DLC の性能評価
桐蔭横浜大学医用工学部臨床工学科
大城 寿乃,高橋 絢香,山内 忍,本橋 由香,佐藤 敏夫 †,阿岸 鉄三
Hisano OSHIRO, Ayaka TAKAHASHI, Shinobu YAMAUCHI, Yuka MOTOHASHI, Toshio SATO, Tetsuzo AGISHI
1.
動・静脈側サンプルポートから VB2 水溶液をサンプリング
目 的
し,分光光度計を使って測定した吸光度から各サンプル
ダブルルーメンカテーテル(DLC)留置後のトラブルと
して,最も問題となるのは脱血不良による血液浄化療法の
中断であり,脱血不良のために DLC の交換や留置位置の変
更を余儀なくされることがある。DLC の交換や留置位置
ポートにおける VB2 水溶液濃度を求め,それらの値から再
循環率を計算した。
3.
結 果
の変更は患者への侵襲がともなうため,やむを得ず DLC の
順接続時には脱血流量に拘わらず,再循環率は 0.6 から
接続を逆にしたいわゆる“逆接続”で治療を継続すること
3.1%と低値であった。一方,逆接続時には脱血流量の増加
がある。逆接続することで“へばりつき”などによる脱血
に伴って再循環率も 29.6%から 46.6%と上昇した。この結
不良は解消されるが,その一方で再循環が発生し,透析効
果をこれまでに得られた SH-DLC と EH-DLC に対する結果
率が大きく低下する。再循環に影響する因子として,脱血
と比較すると,それぞれ脱血流量の増加に伴って再循環率
孔と返血孔の位置と距離,返血孔からの偏った流れ,DLC
が上昇する傾向は同じであるが,SH-DLC と EH-DLC の再
を留置する静脈を流れる血流量と脱血流量の関係など幾つ
循環率が 25%から 40%へ上昇するのに対し,CO-DLC の方
か挙げられている。我々はこれまでにサイドホール型
がより高い再循環率を示した。
DLC(SH-DLC)及びエンドホール型 DLC(EH-DLC)につい
て,脱血 – 返血孔間距離,順・逆接続方法,静脈流量や脱血
4.
流量が再循環に与える影響について,理論的及び実験的に
まとめ
これまでに検討してきた SH-DLC や EH-DLC と同様に,
調 べ て き た。 今 回 の 報 告 で は,コ ア ク シ ャ ル 型 DLC
CO-DLC は,順接続時には静脈流量が 400 ml/min と低値で
(CO-DLC)について各種パラメータが再循環率に及ぼす影
も再循環率は最大でも 3%以下と問題にはならない。しか
響を同様に調べた。
2.
し,へばりつきなどが原因となる脱血不良が発生し,留置
位置の変更などの対応によっても改善せず,逆接続で治療
方 法
を継続する場合には,CO-DLC は他の 2 つのタイプと比較
実験では,シングルパス方式による模擬透析システムを
使用した。DLC を留置する擬似血管としては,上大静脈を
模擬した内径 12 mm の塩化ビニール製チューブを使用し
た。この擬似血管内に,擬似血液として 0.005 wt%のビタ
して,7%程度再循環率が大きくなることに留意する必要
があった。
5.
独創性
ミン B(
水溶液を静脈流量 400 ml/min で流した。留
2 VB2)
我々は,DLC の各種設計パラメータがへばりつきの発生
置した DLC と接続した血液回路内には,擬似血管から
や再循環率に及ぼす影響を,多くの操作条件下で網羅的に
DLC で 脱 血 し た VB2 水 溶 液 を 脱 血 流 量 100,150,200,
明らかにしようとしている。そして最終的には,SH-DLC,
250,300 ml/min で循環させた。模擬透析開始から 1 分後,
EH-DLC,CO-DLC の各タイプの利点を取り込んだ DLC の
最適形状を提案することを目標としている。
■著者連絡先
† 桐蔭横浜大学医用工学部臨床工学科
(〒 225-8503 神奈川県横浜市青葉区鉄町 1614)
E-mail. [email protected]
本稿のすべての著者には規定された COI はない。
人工臓器 43 巻 1 号 2014 年
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