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Doctoral Dissertation / 博士論文
Pregnancy outcomes of gestational
diabetes mellitus according to pregestational BMI in a retrospective multiinstitutionalstudy in Japan
長尾, 賢治
三重大学, 2014.
内容の要旨・審査結果の要旨 / 三重大学大学院医学研究科(博士課程) 外科系 産科婦人科学専攻
http://hdl.handle.net/10076/14243
学位論文の要旨
4
所属
乙
三重大学大学院医学研究科(博七課程)
外科系 産 科 婦 人 科 学 専 攻
重大学
氏名│長尾賢治
主論文の題名
Pregnancyoutcomeso
fgestationaldiabetesmellitusaccordingt
opre-gestational
BMIi
naretrospectivemultiー institutionalstudyinJapan
主論文の要旨
背景;海外では、 GDMの 肥 満 度 に よ り 妊 娠 合 併 症 が 異 な る こ と な ど の 報 告 が な さ れ て い
るが、わが国における大規模検討はない。 GDMで は 肥 満 度 が 強 い ほ ど 、 周 産 期 合 併 症 が
高率になるが、適切な医療介入により、母体・新生児合併痕のリスクが改善されることが
予 測 さ れ る と の 仮 説 の も と 、 糖 代 謝 異 常 妊 娠 全 国 多 施 設 調 査 (JDPS) を用いて、
わ が 国 の GDMに お け る 妊 娠 前 BMI別 の 妊 娠 合 併 症 の 後 方 視 的 検 討 を 、 単 変 量 解 析
および多変量解析を用いて行った。
目 的 , わ が 国 に お け る GDMの 妊 娠 予 後 を 肥 満 の 程 度 別 に 比 較 検 討 す る た め に JDPS
のデータベースを用いて、 PIH発症率,帝王切開率,出生体重, heavy-fordate(HFD),
巨大児,肩甲難産,先天奇形,新生児呼吸障害,新生児低血糖,新生児黄痘等に関して、
後方視的に比較検討した。
方 法 ; 倫 理 委 員 会 承 認 の ド 、 2003年 か ら 2009年 ま で の 7年 間 に 全 国 40施 設 よ り 登
758例について、 body mass index(BMI))
j
j
lに 、 非 肥 満 群 (NO) 960
録 さ れ た GDM 1,
例 . 妊 娠 前 BMI<25、 軽 度 肥 満 群 (OW)426例 : 25~ BMI<30、 よ り 程 度 の 強 い 肥 満 群
(OB)372例 : 30~ BMIの 3群 に 分 類 し 、 各 群 の 妊 娠 予 後 に 関 す る 比 較 検 討 を 行 っ た 。
GDM の 診 断 基 準 は 旧 診 断 基 準 に 基 づ き 、 管 理 方 法 は 食 事 療 法 お よ び 血 糖 自 己 測 定 を
行い、目標血糖を達成できない場合は、インスリン療法を行った。
結果;臨床背景では、 OBの母体イi齢 が 有 意 に 若 く 、 妊 娠 中 の 体 重 増 加 量 は OB,O W NO
ヲ
の順に少なかった (
2
_
8土 6
.
3kg,5
.
6土 5
.
4kg,7
.
9土 4
.
3kg)。また GDMの 診 断 は OB,O W
,
NOの 順 に 早 か っ た 。 母 体 合 併 症 で は 、 妊 娠 高 血 圧 症 候 群 (PIH)の 発 症 率 は 肥 満 群 に お
いて有意に高かった。初同帝王切開率は、 OB,O W
,NOの 順 に 高 か っ た (
2
9,
3%,21
.8%,
9.9%)0 PIH発 症 に 関 す る 多 変 量 解 析 の 結 果 、 妊 娠 前 BMIと 妊 娠 中 の 体 重 増 加 量 、 初
妊が関連することが判明した。新生児合併症については、各群聞の出生体司王に差を認
めなかったが、 HFDの 頻 度 は OBにおいて有意に低かった。
考察;本研究は、 GDMの 妊 娠 予 後 を 肥 満 の 程 度 別 に 検 討 し た 本 邦 初 の 大 規 模 臨 床 研
究 で あ る 。 今 回 の 検 討 に よ り 、 今 後 の 将 来 的 な 妊 娠 前 BMI別の GDMの管理指針の礎に
なり得る。
GDMの 診 断 時 期 は OB,O W,N Oの1
)
頃に早かったが、これは肥満度
が強いほど耐糖能スクリーニングが早期に施行されたことを反映したものと考
えられた。一方で、肥満の程度が強いほど体重増加量は少なかったが、これは、食事療
法による介入効果に起肉するものと推察された。今回の食事療法の基準は、本邦の日本産
科婦人科学会のガイドラインに準じた治療がなされた。 A
ustralian Carbohydrate
I
n
t
o
l
e
r
a
n
c
eStudyi
nPregnantWomen(ACHOIS)での介入試験では、 GDMに対する医
療介入により重篤な周産期合併症の発症を改善できると報告している。今回の検討では、
慢性高血圧, PIHは肥満群で発症頻度が高くなり、初回帝切率は肥満度が強くなるほど高
くなることが明らかとなった。また、 PIH 発 症 の リ ス ク 因 子 は 、 多 変 量 解 析 よ り 妊 娠 前
BMI,妊娠中の体重増加,慢性高血圧,初妊であることが判明した。同様に、初回 f
f
f王切
開 の リ ス ク 因 子 の 多 変 量 解 析 に よ り 、 年 齢 , 妊 娠 前 BMI,妊娠中の体重増加, PIH が相J
J
n
l
帝王切開に関与することが判明した。これらの結果より、母体合併症は、血糖よりも妊
娠前 BMIが 大 き く 関 与 す る も の と 考 察 さ れ る 。 新 生 児 合 併 症 の 頻 度 は 各 群 間 で ほ と ん ど
差を認めなかったが、 HFDは BMI 30以上群で最も低いことは特記すべき結果である。
本結果と l
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f
o
r
d
a
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e(LFD)の 頻 度 は 各 群 で 差 が な か っ た 結 果 を 考 え 合 わ せ る と 、 児 発
育 の 視 点 か ら は 肥 満 合 併 GDMへの介入効果が適切であったと考えられる。 GDMでは、
児の発育は血糖の影響を受けやすいことはよく知られているが、母体の肥満の影響も独立
して影響を受けることも報告されている。すなわち今回の検討は、わが悶の GDMにおい
ても児の発育は糖質代謝のみならず脂質代謝の影響も受けることを示唆するものである。
結 論 ; わ が 国 の GDMに お け る 母 体 合 併 症 は 肥 満 群 に お い て よ り 高 頻 度 で あ る こ と が
明 ら か と な っ た 。 妊 娠 中 の 厳 格 な 管 理 は 、 HFDを 含 め た 新 生 児 合 併 症 の 頻 度 を 下 げ る
ことは可能であるが、母体合併症は妊娠前の体格が強く関与する可能性が示唆された。