2016年1月13日 投資情報室 新興国レポート インド金融市場の動向と今後の見通し インド株式・債券・為替市場の動向 中東情勢の緊迫化や北朝鮮の「核実験」、中国の元切り下げといった外部環境の悪化等を背景に、主要国同 様、インドの金融市場も波乱の幕開けとなっています。 リスク回避の動きから株式が売られ、資金の逃避先として債券が買われています(金利は低下)。また、相対 的に安全な通貨とされる円が買われ、円高・インドルピー安の展開となっています【図表1、2】。 図表2:インドルピー(対円)相場推移 図表1:インド株式(SENSEX指数)とインド10年国債金利推移 (2015年7月1日~2016年1月8日 日次) 29,000 株式(SENSEX)(左軸) 10年国債金利(右軸) 28,000 (%) (円) 8.2 1.90 26,000 8.0 1.85 25,000 7.8 1.80 24,000 7.6 1.75 23,000 7.4 1.70 15/8 15/9 15/10 15/11 15/12 インドルピー(対円) 8.4 1.95 27,000 15/7 (2015年7月1日~2016年1月8日 日次) 8.6 2.00 16/1 (年/月) 円高 インドルピー安 15/7 15/8 15/9 15/10 15/11 15/12 16/1 (年/月) 出所:図表1~2はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 今後の見通し インドルピーは対米ドルベースで、インド以外のBRICs諸国や他の新興国の通貨に比べ、相対的に底堅く推移 しています。例えば、ブラジルレアルは昨年1月2日から今月8日までの間に対米ドルで約30%下落しています が、インドルピーの下落率は約5%程度に留まっています【図表3】。 その要因としては、モディ首相の下でインドのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が改善されつつあること 等が考えられます。国際通貨基金(IMF)や世界銀行は、インドのGDP(国内総生産)成長率は中国を抜き、 その差は拡大すると予想しています【図表4】。 消費者物価(前年同月比)も一時期に比べると上昇してはいますが、相対的に低い水準に留まっています。イ ンド準備銀行(RBI)は昨年4回の利下げを実施しました。現在はその効果の浸透度を確認している状況にあ ると考えます。しかし、仮に景気鈍化の兆しが出始めた場合等には、インフレの落ち着きや経常赤字が改善傾 向にあること等を背景に、追加利下げを行うことも考えられます。消費者物価が上昇しているブラジル等と比 べると、政策対応の余地は大きいものと思われます【図表5】。 モディ首相は「メーク・イン・インディア」(インドを製造業の拠点に)を目標に、積極的な外交を展開し、海外から の資金を呼び込もうと努力しています。その目的のひとつに交通網等のインフラの整備が挙げられます。昨年 12月にはインド高速鉄道建設に関して日本の新幹線の採用を決めました。海外からの直接投資額は増加傾 向を続けています【図表8】。 米国等の仲介で中東情勢が改善する、株価対策により中国株が落ち着きを取り戻す等、外部環境が好転す れば、インド経済のファンダメンタルズ改善や労働力人口の増加といった潜在力の高さ等に着目した買いが入 り、金利が低位安定する中、インドの株式市場や為替市場は回復に向かうものとみています。 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 01/02 (審査確認番号H27-TB165) 図表3:主要新興国通貨の推移(対米ドルベース) 図表4:IMFと世界銀行のGDP成長率予想 (2015年1月2日~2016年1月8日 週次) 130 (IMFは2015年10月、世界銀行は2016年1月時点 前年比) インドルピー 中国元 ロシアルーブル ブラジルレアル メキシコペソ トルコリラ 120 110 単位:% インド 中国 ロシア ブラジル I M F 100 単位:% 90 世 界 銀 行 80 米ドル高 各通貨安 70 インド 中国 ロシア ブラジル 2015年 2016年 7.3 7.5 6.8 6.3 -3.8 -0.6 -3.0 -1.0 2015年 2016年 2017年 7.3 7.8 7.9 6.9 6.7 6.5 -3.8 -0.7 1.3 -3.7 -2.5 1.4 (※)2015年1月2日を100として指数化 60 15/1 15/4 両機関とも、インドのGDP成長率は相対的に高 くなると予想しています。世界銀行の2017年の 経済成長率予想では中国が減速する一方、イン ドは更に高まるとみています。 15/10 (年/月) 16/1 15/7 インドルピーは、他の新興国通貨に比べると底堅く 推移しています。 図表6:経常赤字と財政赤字(対GDP比)推移 図表5:消費者物価(対前年同月比)推移 20 (2013年1月~2015年11月 月次) (%) インド 中国 ロシア ブラジル 16 12 -7 (2012年1-3月期~2015年7-9月期 四半期) (%) 経常赤字(対GDP比) 財政赤字(対GDP比) -6 -5 -4 -3 8 改善 -2 4 -1 (※)逆目盛 0 0 13/1 13/7 14/1 14/7 12/3 15/7 (年/月) 15/1 13/9 14/6 15/3 (年/月) 双子の赤字の改善傾向が続いています。 インドの消費者物価は比較的落ち着いています。 図表7:外貨準備高増減率(米ドルベース) 図表8:海外からインドへの直接投資額推移(米ドルベース) (2015年11月時点 2014年12月比) 15 12/12 (%) (2010年1月~2015年10月 累積 月次) 2,000 (億米ドル) 10 直接投資額(累積) 1,600 5 1,200 0 -5 800 -10 (※)中国は2015年6月比 400 -15 インド 中国 ロシア ブラジル メキシコ トルコ インドネシア 外貨準備高(各国の通貨当局が外国為替市場へ介 入するために保有している資産の額)は、インドのみ 増加しています。 0 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1(年/月) 海外からの直接投資が続いています。 出所:図表4はIMFと世界銀行データ、他はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 02/02
© Copyright 2024 ExpyDoc