青水増事業報告 第1 3 号 (1 984 ) 日本海域における餌 海藻類増殖試験 Ⅰ ツル ア ラ メ増殖 試験 能登谷正浩 ・小田切明久 本県 におけるツルア ラメ丘l oni aSi ol oni fe r aOkamuraの分布 は 日本海沿岸 か ら津軽 海峡 の大 間崎 に至る沿岸 に知 られる ( 第 1図)が、よ く発達 した群落形成 が見 られるのは田野沢以南 の岩礁地 帯 である。 この試験 は本県の 日本海沿岸 に棲息するサザェ ・ア ワビ ・ウニ等 の、いわゆる磯根資源 の 育成場を対象 と して、飼料 と してのツルアラメ増殖 による漁場開発 を目ざす ものである。 ' s e ni abi c yc l i s( Kj e l l man)Se t c he l l や カ ジ メ&k l o暖 海性 コン プ 目植 物 の うち 、 ア ラメEl ni ac auaKj e l l man については、近年の浅海域漁場開発 に伴 って比較的多 くの研究報告 が見 られ て 1939 ) は遊走子 の発 いるが、 日本海沿岸 のみ に分布するツルアラメにつ いては報告 が少な く、神 田 ( 生 につ いて、能登谷 ・足助 ( 1 9 83 ) は発生のおよぼす水温の影響 につ いて、また、養殖試験 に関 して は北野他 (1 9 80) が見 られる以外生態学的な報告 につ いては見 あたらない.そ こ で田野沢の水深 5m と2 0 mにおけるよ く発達 した群落 における葉体の季節変化 を比較 し、水深 による特徴 を把握 す る とと もに、周年の形態的サイクルおよび生殖 について観察を行 った。 材 料 と方 法 材料のツルアラメは西津軽郡深浦町田野沢 ( 第 1図)地先で、水深 57 nおよび2 0 7 花のよ く発達 した群 n i の枠を用 いて枠内に入る全ての藻体 を仮根 も含 めて坪刈 した。得 られた藻体 は葉体 の 落において、 1 00 葉体 を選 び、葉長 、葉幅 、茎長 ( 第 2図) についてそれぞれ 本数 、湿重量を測定 した後 、無作為 に1 測定を行 った。また同時に再生葉 ( 突 き出 し)、子嚢斑 の有無 、仮根 の発生状況 について も観察 した。 9 82 年 5月27日、 7月30日、1 0月 2日、11月29日、1 983月 2月 17日、 3月 16日の 調査および採集は1 9 82 年 2月22日から19 83年 2月 17日ま 計 6回行 ったが、ここでは周年 の季節変化 を知 るため前年度 の1 での結果 に基づ いて報告する。 結 果 と考 察 葉長 、葉幅 、茎長の季節変化 0 個体 を選 び、平均値 で季節 変化 を示 各 々の測定 によって得 られた値 の うち、最 も大 きいものか ら1 葉長の変化) 、第 4図 ( 葉幅 の変化) 、第 5図 ( 茎長の変化) である。 白丸 、黒 したのが、第 3図 ( nと2 0 7 T L の体 である。 葉長 は水深 57 T L の体 では1 9 82 年 2月 に50 数c mを示 し、それ 丸はそれぞれ水深 57 以降 5月 、 7月 と次第 に短 か くな り、11 月 には20数川まで減少するが、1 9 83 年 2月 には回復 する。 こ 0 7 nに生育する体 では 5月 に最 も大 きな体 とな り、1 0月、11月 には減 少 して短 か くな れに対 し、水深2 nにおける体 ほどではな く、両水深での葉長 を比較すると 2月. を除 くと一般 に水深 るものの、水深 57 2 0 7 nでの葉体の方が1 0 c m前後大 きな体 であることが判る 。 -258- コンプ規 に見 られる末枯れ現象 がツルアラメにお いて も見 られたが、水深 5mでは 2月 、2 0 7 nでは 5月 に葉長が最 も大 き くなることは、日本海の水温変化 ( 第 6図) を考え合せると最 も水温 の低 い時 5 ℃ を越えると既 に末枯れ現象が起 るものと考 えられる。 期であ り、1 0 7 nで大 きな差異 は認められなかったが、周年 を通 して2 0 mにおける体 のが 葉幅は水深 5mおよび2 方やや幅広 の傾向が見 られた。また、葉幅 の変化 の両水深 ともに春 から夏にかけて大 き くなる傾 向が 見 られた。 この他 、葉体 の両側 に副葉が形成 され るが、これ については具体的 に測定 を行 わなか った nにおける体 よ り2 0 mでの菓体の方が大 き くなる傾向 も認められた ( 第 7図). が、 57 0 7 花に於 ける体 の方が長 いO茎長 の変化 は 5月 に最 茎長 について も水深 によ って差異が認められ、2 も短 か く 2月に最大 となった。 従 って 2月から 5月の間で高年級群葉体 の脱落が起 る ものと推察 され た。 群落内の葉体組成 と再生葉出現時期 水深 57 nおよび2 0 7 T Lにおける群落から無作為 に1 0 0 個体 を取 り出 し、葉長 、葉幅お よび再生葉 の有 無 について各調査時期 ごとに示 したのが第 8図である。この図から知れるよ うに、同年 にわた って極 く小 さな葉体 から数c mの大 きな葉体 に至るまで、ほぼ一様 に見 られ、群集を構成する年級群 が単一 の モー ドを示すことが判 った。 このことは仮根 から発生する幼葉 、即 ち栄養繁殖 による葉体 は季節 に左 右 されることな く、発生、生長することと推測 される。従 って、一度群落が形成 され るとその維持能 力は高 いものと考えられる 。 再生葉 、即 ち突 き出 し現象 はマ コンブ等 と同様 にみ られ、 57 托および2 0 mの両群落 ともに11月 にそ 0 7 nにおける体 の方が 57 nに比べ、やや遅れて突 き出 しが起 るこ の個体数 の ピークが認められたが、2 mの体 にも認められた。 とが判 った。また、突 き出 し現象 は極 く小 さな葉長 4- 5c 子嚢斑形成 子嚢斑 の形成時期 は今回の調査 では1 1 月 に認められ 、測定個数の5 0 -7 0 0 / Oが成熟体 と認 め られ た。 また、葉体 の大 きさと子嚢斑形成個体 の関係 について第 9図 に示 したが、水深 によ って形成個体 の大 nではほぼ葉長 1 0 c m、葉幅 5c m以上 、2 0 7 nでは葉長2 0 C 臥 葉幅 6c m以上 の体 で見 ら きさが異な り、 57 れてお り、ツルアラメ葉体 が一年間に生長する大 きさを考え合せると、一年 目の葉体 は全 て子嚢斑 を 形成 し、有性生殖 による繁殖 に関与するものと考 えられる。 仮根の生長 1 月から 2月に認められた。仮根の発生は栄養繁殖 では、そ 旺盛 に仮根 の発生が認められる時期 は1 れまでの仮根 のす ぐ上 から始 ま り、また一度 に数本 (3- 5本) の発生が認められ 、 しか も旧仮板 の 間から発生する。この様 な発生の方法はアラメ、カジメで報告 されているものと似 た傾向にある。従 っ て仮根の発生段数 によ って年令が推察できる可能性 もうかがえた。 現 存 量 nと2 0 7 nにおけるツルアラメ生育量の季節変化 を第 1 0図に示 した。即 ち、周年 を通 して 57 n 水深 57 における生育量は2 0 7 nのそれに比べ、約 2倍 の生育量 となっている。また季節的な変化 は葉長 の変化 とほぼ一致 した。生育量 の最大値 は両水深 ともに冬∼春 にみ られ 57 T L、2 0 7 nそれぞれ約 2k g/7 7 i、 3. 6k g/n iで あ った 。 両水深 における生育個体 の葉長 、葉幅 ( 第 3、第 4図) を見 ると、一般 に2 0 7 nにおける体 の方 が大 -259 - きいが、現存量では反卸 こ少量 となっている。このことは両水深 における生育個体数 ( 密度) が異な り、 5n において高い生育密度 を示 していることが判 った. 引 用 文 献 神田千代- ( 1 9 39 ) 暖海性昆布科植物の遊走子培養 につ いて、服部報公会研報 8 ;31 7-343. 北野雅彦 ・森義信 ・小場正一 ・田島連生 ( 1 9 80 ) 2年生ツルアラメの養殖試験、石川県増殖試験場 事業報告書 8 5-88. 能登谷正浩 ・足助光久 ( 1 9 80 ) ツルアラメの発生におよぼす温度の影響、藻類 、31;2 8-33. 第 1図 `B l a d eyi 第2 d t h ツルアラメの分布 と調 査地点 l■ 25 20 tJ ) ー5 一 ︼n ≡ V 10 H ︼ 3 ( 0 J 一 F iE } A } L は J A S 0 ∼ D J 水深 57 E Hi ] n (白丸) と2 07 花(h ▲ ■J F 第 4図 J F 第 6図 F } 1 98 2 A 第 5図 おける葉幅 の季節変化 } J J A S 0 ∼ } A 嶋 J J A S 0 ∼ 黒丸) に D J F 水深 5n (白丸) と20m ( 1983 における茎長の季節変化 黒丸) - 鯵 ヶ沢 における周年 の水温変化 D 5m (Eu) q I auaI aPeJ 由 1 0 982 F l b . 22 1 Na y27 J u l . 3 01 0 Qc t . 1 0 8l ade wi dt h (cm )2 第 8図 水深 5 No y. 291 0 1 98 3F l b. 1 7 1 0 1 98 2No y.29 9 8 2 1 983 第1 0図 水深 5m ( 白丸) と20m ( 81 a de 1 0wi dt h (cm ) 第 9図 水深 57 nと2 07 nにおける葉体 1 0 の263 大 きさと子嚢形成個体 ( 黒丸) - 1N J J A S 0ND J F
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