Discovery NM/CT 670 Q.Suite Proの

Discovery NM/CT 670 Q.Suite Proの
頭部領域における定量化の検討
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
脳病態統合イメージングセンター
松田 博史
ウンド比が7.95:1というのが真値であった。
はじめに
FBP 法において、LEHRとELEGPとMEGPとファンビームコリメータ
本稿は第55回日本核医学会学術総会 / 第 35回日本核医学技術学
を使って、7.95に一番近いのが ELEGPであった。ファンビームも非常
会総会学術大会における共催ランチョンセミナーにて行った講演を
に良い結果であったが、散乱補正無し、減弱補正で再構成を行わない
ベースに、
当院に2015年6月に導入された16チャンネルCTを搭載した
と、バラつきが多い一方ELEGPはかなり安定した値を示した
(図2)。
Discovery NM/CT 670 Q.Suite Proにおいてファントム実験により
OSEM 法でも同じような結果となった。当施設ではCT 減弱補正、
得られた SPECT-CT を用いたダットスキャンの最 適 条件の評価と
散乱補正無しを使用しているが、その条件においてELEGP は最も良
ワークステーションの解析ソフトウェアであるDaTQUANT、Q.Metrix
好な結果を示した(図3)。
の使用経験を報告する。
LEHR は、529keV による散乱線によってバックグラウンドが高く
なり、真値に比べ低値となったと考えられる。
ファントム実験によるダットスキャンの最適条件
の検討
散乱補正に関して、補正をかけると計数値が高いところは高値と
なり、低いところは低値になる。つまり線条体とバックグラウンドの
ファントム実験での検討において、コリメータの違いによる定量値
定量値の差が大きくなりSBR(Specific Binding Ratio)としては高
の変化、散乱補正の有無による定量値の変化、OSEMではIteration
値になる傾向だったため、当院では現在散乱補正無しを選択してい
とSubset の検討を行った。コリメータはLEHRとELEGPとMEGPと
る(図4、5)。
ファンビームを使用し、ファントムは線条体ファントム(図1)、解析に
次にIterationとSubsetの検討において理想値7.95:1に一番近い
は日本メジフィジックス社製のDaTViewを用いた。
値を出したのが Iteration4 の Subset15という結果を踏まえ、この
このファントム実験では封入体の実測値は、線条体とバックグラ
再構成条件を選択した(図6)。
11
LEHR
10.5
11
ELEGP
LEHR
10.5
MEGP
10
FAN
ELEGP
MEGP
10
9.5
9.5
9
9
FAN
8.5
8.5
8
8
7.95
7.5
7.95
7.5
7
7
6.5
6
6.5
changAC-SC
CTAC-SC
noAC-SC
changAC-noSC
CTAC-noSC
noAC-noSC
6
changAC-SC
changAC-noSC
noAC-SC
noAC-noSC
図1. 各コリメータによる定量値の変化と散乱補正の有無の検討 図2. 各コリメータ、
補正法におけるSBRの変化
(FBP法) 図 3. 各コリメータ、補正法におけるSBR の変化(OSEM 法)
10
10
9.5
9.5
9
9
8.5
8.5
C
oS
C
C
-S
oS
no
AC
-n
AC
OS
EM
-n
no
CT
AC
EM
EM
OS
OS
C
C
-S
oS
EM
an
gA
C
-n
CT
AC
CgA
an
ch
EM
EM
ch
OS
OS
C
SC
SC
oS
C-
-n
oA
Pn
Pn
oA
C
OS
C
-n
gA
C
an
an
gA
C
ch
FB
P
ch
-n
AC
no
EM
OS
oS
-S
C
-S
oS
no
AC
AC
-
no
CT
EM
OS
EM
OS
C
SC
C
-S
oS
-n
CT
AC
EM
an
gA
C
EM
ch
OS
OS
C
oS
C-
-n
gA
an
oA
C
ch
EM
OS
C
SC
oA
CPn
Pn
FB
FB
-S
oS
-n
AC
ha
ng
an
gA
C
Pc
ch
FB
FB
P
FB
6
FB
6.5
6
7.95
C
6.5
C
7
SC
7.5
7
C
7.5
図 4. 散乱補正の有無によるSBR の変化(LEHR)
1
8
7.95
FB
P
8
20
iteration subset 平均SBR iteration subset 平均SBR iteration subset 平均SBR
ELEGP
LEHR
図 5. 散乱補正の有無によるSBR の変化(ELEGP)
6
3
6.71
3
7.28
6
7.32
6
7.39
6
7.77
10
7.46
10
7.87
10
8.04
15
7.81
15
7.92
15
7.96
18
7.72
18
7.83
18
7.85
20
7.83
20
7.85
3
7.71
20
7.72
3
7.62
2
8
6
7.79
6
7.81
10
8.06
10
8.06
15
7.98
15
7.98
18
7.86
18
7.86
20
7.86
20
図 6. IterationとSubset の検討
4
3
7.33
7.86
※封入RI比
(実測値)
→線条体:BG=7.95:1
Molecular Imaging
DaTQUANTによる評価
論文が出ており、それも考慮する必要があるということである。
尾状核のSBR は10 年間で 4%位低下し、被殻の前方は7%、後方は
線 条 体 解 析ソフトとして DaTQUANT を使 用しており 、実 際 に
10%低下する。正常でもこの程度低下する。
DaTViewとの相関をとるため、61名にて比較検討した。
実際に正常例を集めて解析すると10年間で6%位、
値が低下していた。
両者で出てくる値は違うものの、相関は非常に良い(図7)。相関が
DaTQUANTにて30 代から90 代の正常例に対し、線条体の区域ご
上手くない外れ値がありその例を見るとDaTViewでは値が低めに
とに分けて見ると尾状核、被殻の前方・後方それぞれ 3%、6%、10%
出る傾向だが、臨床画像を見た所シルビウス裂辺りのカウントがな
位低下していた。要するに正常例においてSBR は年齢と明らかに相
いことがわかった。
関があり、しかも部位によって違うため、その部位ごとに正常値を
これは台形 ROI 中に脳脊髄液( CSF )値が入り、線条体のトータル
求めていかなければいけないということになる。
カウントをバックグラウンドで引きすぎるのが原因なのではないか
さらに被殻と尾状核の比を取ると、非常にきれいに年齢と相関が
と考えられた(図 8)。
強く、高齢ほど線条体の前方が高く見える。そうすると正常なのか
一方、DaTQUANTに関しては、同じ症例においても良好な結果を
後方から低下するパーキンソン病なのかの鑑別か難しくなる。これ
出しており、DaTQUANTの値がより正確だと考えられる。
に関して、定量的な値というのは非常に重要であり、しかも部位ご
またレビー小体型認知症(DLB)、本態性振戦(ET)、Scan Without
との正常値が非常に重要となってくる。
Evidence of Dopaminergic Deficit(SWEDD)、アルツハイマー型
つまりDaTView を使用したうえで、DaTQUANTで領 域・年 齢 毎
認知症(AD)、健常者、パーキンソン病(PD)、進行性核上性麻痺(PSP)
の正常値と比較し診断するのはこれから非常に重要となってくる。
を対象とし、DaTViewとDaTQUANTにおいて解析したところ、相関
はあった。ただ DaTView の場合、値は SBR が 3.5-3.9 となり、一方
Q.Metrixへの期待
DaTQUANTでは1-1.5となった。これはDaTView が部分容積効果を
定量解析ソフトウェア Q.Metrix に関して実際に脳で絶対値の定
考慮しているからだと考えられる(図9)。
量というのが一体どれだけ有用か検討していく予定である。
DaTQUANTの場合には画質が劣化するほどSBRは低値となるため、
Q.MetrixはSPECTとCTのセグメンテーションツールを利用して放射
DaTViewとDaTQUANTの両方組み合わせて行くのが良いと考える。
性医薬品の摂取量をMBq/mlで表し、
身長、
体重、
投与量を入力すると
DaTQUANTのように線条体を分けると、
例えば線条体を前と後ろに
現在PETなどの検査で使われているようなボリュームも算出できる。
分けた場合、
PSPとパーキンソン病との鑑別は難しいと言われているが
このような解析ツールを使用し、
期待される事としては、
目的とする
前部の線条体がPSPの割には集積が低下する傾向があり、
かつ後部は
領域の放射性医薬品の取り込み量の算出、
SPECTのSUV値を利用して
あまり低下しない場合、その比を取ることによってパーキンソン病と
複数の集積部の比較や検査ごとの統計的比較、フォローアップの評
PSPの鑑別ができる可能性がある。PSPは前方も含めて全体的に集積
価、それから特に期待するのは装置間の差異をかなり少なくすること
が低下するが、
パーキンソン病の場合には後部から低下するので、
前方
ができる可能性があるということである。DaTQUANTでも同様だが、
と後方での比を用いることによって鑑別が可能になるかもしれない、
参照領域を脳に置くが、もし参照領域で非常に大脳皮質の萎縮が進
つまり線条体の区域を分けるということは非常に意味がある。
んでいる場合や、何か梗塞が起きたりなどの時にはバックグラウンド
線条体を区域分けするもう一つ大事な事は正常例における線条
もかなり変わってくるためフォローアップが難しくなる。
体集積は加齢により変化し、また線条体の後方より低下するという
このような場合、Q.Metrix だと再現性良く、また正確にフォロー
アップできると考える。
使用経験としては、ダットスキャンにおける線条体にてVOIを設定
し、簡便にセグメンテーション可能である(図10 )。またその領域の
絶対量も自動で算出できる。
今後、Q.Metrix に関しては、更に症例を重ね絶対値や SUV がどれ
だけ今までの指数と相関があるか検討したい。
図7. DaTQUANTとDaTViewとの 図8. シルビウス裂拡大症例でのDaTViewのROI
相関
(N=61,122hemispheres)
設定画像とMRIイメージ
Tossici-Bolt
DaTQUANT
Striatum R
3.56±1.66
1.14±0.56
Striatum L
3.90±1.48
1.15±0.52
Caudate R
1.51±0.67
Caudate L
1.55±0.65
Anterior
Putamen R
Anterior
Putamen L
Posterior
Putamen R
Posterior
Putamen L
1.04±0.57
1.06±0.54
0.56±0.36
0.59±0.34
図 9. DatViewとDaTQUANT におけるSBR の比較(N=61)
図10. Q.Metrixにおける線条体 VOI 設定画像
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