週刊原油

週刊原油
世界の原油情報がここに凝縮されています。
毎週木曜日午後発行
原油価格底値に近い
発行日
:
2015/8/13
12日のNY原油9月限は+0.22ドル高の43.30ドル。売られ過ぎ感からの修正の動きも、米原油在庫は予想された
ほど減少せず、供給過剰の長期化懸念に引き続き圧迫されることとなり、期近は立会い開始後はレンジ内で戻りが押さ
えられた。9月限は、夜間取引では4%超も急落した前日の流れに対する修正となり、終盤には43.87ドルまで回復。
対ユーロでドルが1カ月ぶりの水準へ急落したことなども下支え要因となるものの、立会い開始後は積極的な買いが続
かず。米東部夏時間午前10時30分に発表された米エネルギー情報局(EIA)統計で原油在庫は3週連続して減少する
も、減少幅は事前予想を下回り、受渡場所となるオクラホマ州クッシング原油在庫は微減と、市場は強く反応するまで
には至らなかった。引き続き中国経済の先行き懸念の強まりや、OPEC(石油輸出国機構)の高水準な供給が続いてい
ることなどファンダメンタルズの弱さが重しとなり、中盤には夜間取引の安値(42.80ドル)に接近。ただし、同水
準割れを試すほどのムードは強まらず、引けにかけては持ち直した者の、戻りは限られた。
石油製品は、ヒーティングオイルは反発、改質ガソリンは期近が急反発。ヒーティングオイル9月限は、留出油在
庫の予想以上の在庫増加が嫌気されるも、他市場の反発に追随しした。改質ガソリン9月限は、ニュージャージー州や
インディナア州の製油所の予想外の閉鎖や、EIA統計でのガソリン在庫の減少などを好感し、期近ベースで7月31日以
来の水準へと急上昇した。
ブレント原油期近9月限は反発。EIA統計発表後に米市場同様に戻り売りなどに押されるも、終盤には改質ガソリン高
などから持ち直し、一時、50.01ドルまで切り上がった。
国際エネルギー機関(IEA)は12日発表した8月の石油市場報告で、需要増加にもかかわらず、2016年末まで供
給だぶつきが続くとの見通しを示した。IEAは、2015年は消費が5年ぶりの高い伸びとなり、2016年の非OPEC加
盟国の供給が2008年以降初めて縮小するものの、過去最高の在庫は一段と増加すると予想。イラン原油の制裁が解除
されれば、2016年第4四半期かそれ以降まで在庫が減少する見込みはないだろうとし、今年下期の世界原油供給過剰
は日量平均140万バレルで、2016年は約85万バレルへと縮小するとの見方を明らかにした。
リポートでは、7月のOPECの原油生産は日量3179万バレルと約3年ぶりの高水準を維持し、過去最高となったイ
ラクの増産がサウジアラビアの減産と相殺。来年のOPEC産原油需要は前年比日量140万バレル増加する見込み。ま
た、イランは制裁解除後に、原油生産を最大で日量73万バレル拡大する可能性があるとのこと。7月のイランの原油
生産は287万バレル。来年の非OPEC加盟国の供給は日量5790万バレルと前年比日量20万バレル下回る見通し。
一方、価格下落が米国の消費を刺激し、世界景気が回復したたため、2015年の世界原油需要は前年の2倍の伸びと
なり、前年比日量160万バレル上回る9420万バレルと予想。2016年見通しは前年比140万バレル増の9560万バ
EIAが12日発表した8月7日現在の週間石油統計に対する事前予想は、原油在庫は前週比200万バレル減少、ガソ
リン在庫は67万5000バレル減少、留出油在庫は105万バレルの増加だった。
前週比原油 4億5359万3000バレル 168万2000バレル減少ガソリン 2億1548万2000バレル 125万1000
バレル減少留出油 1億4780万6000バレル 299万4000バレル増加 ニューヨーク・マーカンタイル取引所
(NYMEX)の原油受け渡し場所となるオクラホマ州クッシング原油在庫は5711万3000バレルと、前週比5万
1000バレル減少した。
今日の材料
・IEA、2016年末まで供給だぶつきが続く見通し
・API、原油在庫は前週比84万7000バレル減少
ガソリン在庫は前週比11万7000バレル増加 留出油在庫は前週比216万バレル増加・EIA、原油生産は日量939万
5000バレル、前週比0.7%減
原油輸入は日量757万3000バレル、前週比5.5%増 石油精製は日量1702万9000バレル、前週比0.3%減 製油
所稼働率は96.1%、前週比変わらず 製油所稼働率は引き続き2005年以来で最高 ガソリン需要は日量968万6000
バレル、前週比ほぼ変わらず 留出油需要は日量354万5000バレル、前週比6.2%減 (日本先物情報ネットワー
ク)
米国エネルギー情報局による短期エネルギー予測
Highlight
価格予測
★ 7月の北海ブレント原油価格は平均57ドルで、6月から5ドル下落した。8月初めにも更に下落して8月7日、
48ドルとなっている。この背景には、新興市場における低い経済成長とイランからの原油輸出量の増加予測、及び世
界の石油在庫の増加傾向が続いていることがある。
★ EIAは2015年のブレント原油価格の予想を54ドル、2016年は59ドルと前月の予測よりそれぞれ▲6ドル、
▲8ドル下方修正された。15/16年のWTI原油価格はブレント原油価格より平均5ドル以下安いと思われる。2015
年11月限の先物オプション価格によれば、WTI原油価格は2015年11月34ドル~64ドルの間に収まる確率が
95%である。
イランの原油生産増と米国の原油生産
★ 7月14日国連安全保障理事会理事国とドイツの6か国とイランは、イランの核開発問題に関わる欧米によるイ
ランに対する経済封鎖を解除する旨を公表した。過去数年世界の原油在庫は大きく増加しているが、経済封鎖の解除
によりイランは現状の生産量に加えて更に原油生産を増やすものと思われる。恐らく2016年にはイランの原油生産
量は日量+30万バレル増加すると思われるがほとんどは2016年後半になるだろう。
★ 7月の米国の原油生産量は6月に
比べて日量▲10万バレル減少した。
今後2016年半ばまで減少傾向が続くと
思われ、2016年後半から増加するだろう。
2015年の米国の原油生産量は日量平均
940万バレルで、2016年は900万バレル
と予想され、それぞれ▲10万バレル、
▲40万バレル下方修正された。
天然ガス在庫量と米国のCooling Degree Days
★ 7月31日時点の天然ガスの稼働在庫は、2兆9,120億立方フィートで、前年同月比+23%増、過去5年
(2010年~14年)平均より2%多い水準である。EIAは在庫は10月末まで増加シーズンとなり、3兆8,670億立
方フィートになると予測される。これは10月末の在庫水準としては過去2番目に多いものとなる。
★ 7月末の米国の人口比例のCooling Degree Daysは昨年同期より14%多かった。(※Cooling Degree Days
は、1日の平均気温が65°F=約18℃ からどれだけかけ離れているかを示している。平均気温が65°Fより低け
ればHeating Degree Daysと呼ばれる。それぞれ、クーラーを必要とする日数、ヒーターを必要とする日数を表
す)
より暑い天候により、EIAは6月~8月の典型的な家庭用電力消費量は3,134キロワット使い、昨年より+14%多
いと試算している。
世界の石油その他の液体燃料
世界の石油需給
世界の石油生産量は、消費量を引き続き上回っている。そのため、予測期間を通じて世
界の在庫は大きく増加を続けるだろう。2015年第2四半期の世界の石油在庫量は前年同
期比平均+270万バレル、第1四半期に比べて+80万バレル増加した。今年の下半期の
在庫増加ペースはおよそ+180万バレル増と緩やかになると予測されている。更に2016
年は+90万バレル増となる見込み。
世界の石油消費
世界の石油消費量は、2014年に+110万バレル増加し、平均日量9240万バレルと
なった。EIAは2015年の世界の石油消費量は+130万バレル増加、2016年は+150万
バレル増加すると見込んでいる。それぞれ前月と比べて変わらず、+10万バレルであっ
た、実質GDPに占める平均石油消費量の割合は2014年が前年比+2.8%増、15年が+
2.5%増、2016年は+3.1%増となる。
OECD以外の
国の石油消費
石油その他の液体燃料の、OECD諸国以外の国の消費量は2014年日量+140万バレル
増加したが、2015年は+80万バレル増、2016年は+120万バレル増と見込まれる。イ
ランは、7月唖14日にイランと6か国との間で交わされた共同総合計画に基づいて、今後
経済活動が高まり、石油消費量が増加すると見込まれている。
2014年後半と2015年に続く経済成長の鈍化にもかかわらず、中国は非OECD諸国に
おける石油消費の中心にある。中国の石油消費量は2015年/16年に平均日量+30万バ
レルであるが、2014年の+40万バレルよりは減少する。
OECD諸国の
石油消費
OPEC諸国以外の
石油生産
OECD諸国の石油消費量は2014年▲40万バレル減少し、2015年は+50万バレル増
加、そして2016年は+30万バレル増加して日量4,650万バレルになると予測している。
これは2010年以来最大の水準となる。米国が増加の大半を占めるが、経済成長の鈍化と
天候が生産を減少させる要因となる。米国の石油消費量は、2015年平均+日量40万バ
レル、2016年は+20万バレル増加。その他のいくつかのOECD諸国では、経済が回
復し、不況から脱出している。ことに欧州とアジアの一定地域である。2015年の欧州全
体に例年よりも寒い天候により、2015年の欧州の石油消費量は予想よりも10万バレル
増加している。
OPEC諸国(石油輸出国機構)以外の石油生産量は、2014年は日量+230万バレル増
加したが、主に米国によるものであった。2015年は+140万バレル増、2016年はほぼ
横ばいである。多くの生産設備で低価格により投資が抑制され、生産量は減少すると思わ
れる。更に、ブラジルでは、国有石油会社PETBRASの汚職問題が拡がり、ブラジルの生
産量の拡大に問題が出ると思われる。2015年は+20万バレル増産するが、2016年は
10万バレル以下だろう。最近の比較的好調だった海上油田の生産や保管積出等は遅れて
おり、2015年の生産に影響し、Lura油田では追加の設備投資は2016年にずれ込むだろ
う。
カナダの生産
カナダにおけるオイルサンドからの石油生産量は2015年+15万バレル増加し、2016
年は+40万バレル増加すると見込まれる。いくつかの新たなオイルサンドプロジェクトは
拡張を続けるが、生産を止める油田も出ている。Imperial OiやCenovusオイルサンドなど
多くのプロジェクトは計画通り立ち上がっており、2016年末までには生産が軌道に乗る
だろう。
予期せぬ支障
7月の非OPEC所国における予期せぬ生産の支障は日量70万バレルで、前月予測からは
▲10万バレル減少している。カナダ西部の山火事によるオイルサンドの生産支障は復旧し
ており、通常生産に戻っている。メキシコのAbkatun Pol Chucシステムは、海上油田で
引き続き開発が行われている。
OPECの原油供給
2014年のOPEC諸国の原油生産量は日量3,010万バレルと昨年の予想と変わっていな
い。リビア、アンゴラ、アルジェリア、クウェートの生産量が落ち込み、イラク、イラン
の増産により代替されている。2015年のOPECの生産量は+80万バレル増加、
2016年は横ばいと予想する。2015年の増産に最大に貢献するのはイラクである。
2016年に増加があるとすれば、イランの増産がある。7月14日核開発を巡るイランと安
全保障理事国とドイツの6か国協議によりイランに対する経済封鎖は解除された。これに
より世界の在庫は多いにもかかわらず、イランは原油供給を増加するだろう。
イランが増産を開始しても、サウジアラビアや他のOPEC諸国は減産を行わないだろう。
ただし、いくつかの国は生産が減少する可能性がある。例えbサウジ唖旅あの生産量は季
節的に発電量が増える発電用に最低限の原油を生産すると思われる。しかし、イラクの生
産が高止まりして輸出が多い水準を保つかどうかは、南部の石油ターミナルのインフラの
状況によっては不透明な部分がある。
OPECの原油供給
OPECの予期せぬ
石油生産の支障
OPEC諸国による非原油からの原油生産量は、2014年日量630万バレルであったが、
2015年+20万バレル増、2016年+30万バレル増となるだろう。
7月のOPEC諸国による予期せぬ石油生産の支障は、日量260万バレルとほぼ横ばいで
ある。クウェイトとサウジアラビアは両国の間の中立地帯にあるWafraとKhafji油田で日
量50万バレルの生産支障がある。
OECDの石油在
庫
OPECの
余剰生産能力
2014年末のOECD諸国の民間石油在庫は26億9,000万バレルで、石油消費量の59日
分と見込んでいる。2015年末にはこれが29億9,000万バレル、2016年末には30億
8,000万バレルになると見込んでいる。
OPEC諸国の原油余剰生産能力は、サウジアラビアに集中しているが、2015年日量
160万バレルに減少する見込み。しかし、2016年には+210万バレル増加する。余剰
生産能力は市場の状況の典型的な指針となっているが、250万バレル以下だと比較的タイ
トな市場状況だと言える。しかし、世界の石油在庫が積み上げられ、今後も増加するとい
う見込みであるため、2015年の少ない余剰生産能力でもそれほど問題となるわけではな
い。
EIAはイランの余剰生産能力は実際に能力が有効となったとしても、イランは経済封鎖
が解除されれば、2016年末にかけて原油を最大限に生産すると想定されるため、予測期
間には余剰生産能力としては期待していない。
今後の予想
8月11日に公表された米国EIAによる短期需給予測によれば、世界の供給過剰は依然として続いており、米国の生
産増は2016年には横ばいとなるが、需要の伸びが減退するためこの状況は当分変わらない見込みである。イランは
経済封鎖が解かれ今後増産する見込みであり、OPEC諸国に減産に兆しはない。原油価格の基調は当分弱含みであろ
うが、最近の40ドル近くの価格は下がり過ぎとの見方もあるだろう。60ドル程度には一時的に戻る可能性がある。
価格が下落すればショート筋の買戻しで反発し、価格が上昇すれば、ロング筋の売り戻しや新たな空売りにより頭が
抑えられるという状況であろう。原油価格は40ドルから60ドルの間で動くのではなかろうか。
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