2015 年 12 月 24 日 西武鉄道株式会社 野方駅整備株式会社 野方駅総合改善事業の事後評価について 西武鉄道株式会社の子会社である野方駅整備株式会社では、野方駅の鉄道駅総合改善 事業について、事業完了5年後の事後評価を行い、第三者の意見を求める諮問機関「野 方駅総合改善事業 事業評価監視委員会」で審議し、事後評価及び対応方針をまとめま した。 事後評価の結果及び事業評価監視委員会の議事要旨については、別紙のとおりです。 事後評価総括表 【鉄道駅総合改善事業】 事業者名 [野方駅整備株式会社] ○事業概要 事業名 野方駅総合改善事業 整備区間 西武鉄道新宿線 事業期間 平成 19~平成 22 年度 総事業費 17.1 億円 野方駅 ○事業の目的(ミッション) ≪当該事業の背景、必要性≫ 野方駅は、片側改札(南側)となっているため、駅北側の住民は、駅を利用するために駅直近の 「開かずの踏切」を渡る必要がある。また、駅は、バリアフリー化されておらず、駅周辺部におい ても、道路が狭隘で、駅前広場も整備されていない。このため、鉄道利用者及び地域住民から駅の 早急な改善が求められている。 目 ※開かずの踏切:ピーク時 1 時間あたりの遮断時間が 40 分以上の踏切 的 ≪事業目的≫ ≪関連する政策目標≫ 本事業は、駅前広場整備や自由通路、周辺道路の整備と一体的 中野区都市計画マスタープラ ン(平成 12 年策定) に、橋上駅舎化等を実施することにより、バリアフリー化、円滑 (1)鉄道交通の利便性の向上と な歩行者動線の確保、鉄道利用者と地域住民の利便性の向上を図 快適な駅周辺の空間づくり ①駅舎の充実 るものである。 ○事業を取り巻く社会経済情勢の変化 平成 23 年 3 月の東日本大震災による計画停電の影響で乗降人員の減少もあったが、野方駅周辺部に おける人口動向は増加の傾向が見られる。 ○事業による効果・影響等の算定基礎となった諸要因の変化 要因 想定値(新規採択時) 実績値 変化の要因 事業費 15.0 億円 17.1 億円 計画の変更、事業費 精査のため 工期 2年 2年 変化なし 輸送 人員 21,885 人/日(開業時) 21,900 人/日(開業時)平成 22 年度 21,885 人/日(開業 5 年目) 22,929 人/日(開業 5 年目)平成 26 年度 変化なし ○事業の効果の発現状況 評価項目 評価結果 ■利用者への効果・影響 ■社会全体へ の効果影響 住民生活 地域経済 地域社会 環 境 安 全 ■費用便益 費 分析 [平成 27 年 便 度価格] 計算期間: 30 年(50 年) 指 用 益 標 ・駅北口の新設により、駅北側からのアクセス向上 ・南北自由通路整備により、近隣住民の南北往来の利便性向上 ・駅内外のバリアフリー化、エスカレーター等の整備による移動抵抗低減 ・駅前広場の整備により、快適な歩行者空間と円滑な歩行者動線を確保 ・踏切混雑緩和による安全性向上 ・街のイメージアップ等の快適性の向上 23.31 億円 (23.31 億円) 100.78 億円 (122.98 億円) 費用便益 比 B/C 貨幣換算した主要な費用:建設費、設備更新費 貨幣換算した主要な便益:移動時間・移動抵抗低減便益、 踏切通行解消による移動時間短縮便益、非市場財的便益 4.32 純現在価 (5.28) 値 NPV 経済的内部 77.47 億円 収益率 (99.67 億円) EIRR 上記分析の基礎とした需要予測 平成 26 年度実績に基づき、平成 27 年度(事後評価時点)以降推移すると予測 26.80% (26.82%) ○事業実施による地球的環境、局地的環境の変化 事業実施による地球的環境、局所的環境の変化に目立ったものは見られない。 ○改善措置の必要性 鉄道利用者及び地域住民の利便性の向上という目標は達成されていることから、改善措置は不要と考え る。 ○今後の事後評価の必要性 費用便益分析の結果から、事業効果が十分発揮されていると判断されること、社会情勢や周辺環境の急 激な変化も予想されないこと、さらに改善措置も不要であることから、今後の事後評価の必要性はない と考える。 ○同種事業の計画・調査のあり方、事業評価手法の見直しの必要性 費用便益分析においては、エレベーターの整備は、設置及び更新にかかる費用や維持管理費が、負の要 素としてしか働かないので、利用者の便益について定量的に評価する手法の確立が必要と思われる。 ○概要図(位置図) 【整備前】 【整備後】 ○備考 ※評価実施時期:平成 27 年度 ※評価の過程で使用したデータ、文献等:「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル 2012 改訂版」 「大 都市交通センサス H22」 「毎月勤労統計調査地方調査 H26」 「西武鉄道輸送統計」 「踏切実態調査 H26」 表中の()内は 50 年の計算期間を前提とした場合の数値を示す。 野方駅総合改善事業 事業評価監視委員会 議事要旨 日 時 2015 年 10 月 9 日(金)9:15~10:00 場 所 中野区役所 7F 第 6 会議室 出席委員 金子委員長、本田委員、松本委員、尾崎委員、安孫子委員 議 事 1.資料の説明 「野方駅総合改善事業の事後評価及び対応方針(案) 」について、事務局より説明。 2.委員からの意見・質問 ○ 事業効果として、実態調査から 1 日あたり踏切歩行者数が 6,344 人減少(2004 年と 2014 年比較)し踏切混雑の解消がされたが、ピーク時間あたりでは歩行者はどれくら い減少したのか。 →踏切道実態調査によると 2004 年の7〜9 時では1時間あたり 1,000〜1,200 人、2014 年の7〜9時では 100〜200 人と 1/10 程度に減少している。 ○ 費用便益分析の指標として、費用便益比、純現在価値、経済的内部収益率の 3 つが使 われているが、費用便益比だけでも十分ではないかと思うが、敢えて他の 2 つの指標 を使っているのはどうしてか。ルールとして決められているのか。 →国の方針として、3指標について評価するように決められている。費用便益比は事 業の効率性、純現在価値は事業の効果の大きさ、経済的内部収益率は当該事業がど こまでの割引率まで耐えられるかを評価するものである。費用便益比が 1 以上であ れば、純現在価値も 0 以上となり、経済的内部収益率も社会的割引率(4%)以上と なる。ご指摘の通り、費用便益比で見ることが一般的である。ただし,事業の効果 の大きさを見る時は、純現在価値も確認している。 ○ バリアフリー施設整備の効果について、具体的にどのように便益に算定しているのか。 →エスカレーターについては、移動時間・移動抵抗低減便益の中で、通常の階段を登 るよりエスカレーターを利用することで、移動抵抗が低減されるということを算定 の過程で係数をかけることで事業の効果としてみている。エレベーターについては、 対応方針に記した通り便益に定量的な効果として反映できていない。 →マニュアル 2012(国交省鉄道局監修)では、エレベーター整備による移動抵抗低 減による効果を算定する手法が示されておらず、課題として認識している。 3.委員長総括 ○ 今回の野方駅総合改善事業の事後評価については、国土交通省鉄道局の「鉄道プロ ジェクトの評価手法マニュアル 2012」に基づき、しっかり分析がなされている。分析 の結果として、費用便益比(B/C)が 1 を大きく上回っており、社会的に意義のある 事業であることが確認された。特に野方駅の場合は、北口の開設により利便性が向上 したことが、便益の増大に寄与していると言える。 ○ 一方で、鉄道駅の改善事業は、これらの利用者の利便性向上以外にも、安全性や快適 性の向上など多様な効果が発現する点にも着目すべきである。実際に野方駅の場合も、 駅構内が明るくなったことによる安全性や快適性の向上、駅が新しくなったことによ る街のイメージアップなどの多様な効果が発現していることが、既往の調査研究によ って確認されている。なお,今回の事後評価では、これらのいわゆる非市場財的便益 についても、仮想的市場評価法(CVM)で計測した結果を移動抵抗低減便益との重複 を避けながら計上するという、新しい取り組みを行っている。 ○ 最後に、事後評価については、制度的には 5 年経過した時点で実施することになって いる。今回の評価のような多大な作業を伴う評価(特に B/C を算出するなど)は必要 ないと思われるが、問題がないかを常に確認し、必要に応じて改善していくという PDCA サイクルを回すことが重要である。関係各位には、引き続きの取り組みをお願 いしたいと考えている。 4.委員会としての結論 事後評価及び対応方針(案)について、原案どおり了承する。事後評価総括表と本委 員会の議事要旨を、年内を目途に公表する。 以上
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