義肢・装具・座位保持装置の製作にかかる費用 - 国立障害者

義肢・装具・座位保持装置製作をめぐる
費用のはなし
■なぜ義肢、装具、座位保持装置の製作費用が問題なのでしょう?
義肢、装具、座位保持装置(以下、義肢等)は、制度によってどの部分にどうい
う種類のものを使用するかによって細かく価格が定められています。制度発足
時に義肢等をつくるのにどのくらいの費用がかかるのか実態調査がなされまし
た。しかし、現在この調査実施から年数がたっており(義肢・装具で約30年、座
位保持装置で約20年)がたっており、その間若干の価格調整はされてきましたも
のの実態調査に基づく製作費用想定の見直しは十分にはなされてきませんでし
た。
実態調査に基づく製作費用想定が十分に行われなければ、制度での想定費用と実際にかかる費
用との間に大きな隔たりができてしまうおそれがあります。近年、義肢等製作事業者の採算が厳しく
なっている、という指摘もきかれます。義肢等利用者にとっても、製作事業者が持続的に供給をおこ
なうことができるようその採算を確保することは、安心して義肢等を使い続けていくために大切なこと
です。そこで本研究では義肢等製作事業者を対象に製作費用についての調査をはじめました。
■完成用部品
完成用部品の供給
事業者を対象に調査
をおこなった結果、部
品登録申請時の申請
価格よりも高い価格
で販売されている
ケースがあることが示
されました。完成用部
品ごとに義肢等価格
に加算できる金額(申
請価格を元に算出)
が定められている の
ですが、申請価格より
高く完成用部品が義
肢等製作事業者に販
売さ れること によ り、
義肢等製作事業者の
採算を圧迫していたこ
とが考えられます。
この状況の背景とし
て完成用部品供給事
業者の採算面が厳し
くなっている可能性が
示されました。
■義肢等は製作に要する素材費(材料費)、人件費、そ
の他の費用にどのくらいの金額がかかるかの想定にも
とづいて、価格が決められています。
■これに使用した完成用部品(厚生労働省の認可を受
けたモジュール化された部品)の価格が加算されたもの
が、義肢等の値段となります。
●その他の費用
(管理費用、事務経費、光熱費、
減価償却費など)
●素材費
●人件費
(ここでの人
件費は、製
造・営業に
要するもの
を考えてい
ます。)
●完成用部品費
※円グラフの比率はイメージであって、費用の正確な比率を表したものでは
ありません。また義肢等の種別により費用比率の構成は大きく異なります。
■人件費の単価(時給)
義肢等製作事業者を対象に行っ
た調査をもとに、賞与、法定福利費
等を含めた1時間あたり人件費(人
件費単価)の推定をおこないました。
その結果、人件費単価は事業所平
均 は 、 1,873 円 / 時 で し た 。 こ れ は
2008 年 度 の 制 度 で の 想 定 ( 平 均
1,738円/時)とくらべ+7.8%高い値
である一方で、同年度の製造業の
賞与込み 時間あ た り賃 金 の平均
(2,316円/時)や同厚労省調査対象
産業全体平均(2,224円/時)よりも
低い値となっています。他の業種に
比べ人件費単価が高くはないにも
かかわらず、当該年度の制度価格
下では採算が厳しくなる要因のひと
つであったことがうかがえます。
■素材費の動向
素材費(完成用部品
以外の材料費)につ
い ては 、過 去数 年に
わたる原油価格上昇
(2008年秋から2009
年初頭にかけて一度
暴落したものの、その
後再び上昇しつつあ
ります)などの影響を
受けて、各種材料が
値上がりし 所用費用
が増加しているので
はないか、という見方
があります。
現在、状況を確認す
るために義肢等にし
める費用構成調査や
各種素材単価の調査
から実 際 にか かって
いる素材費の大きさ、
費用増加率を推定す
る研究を進めていると
ころです。
■移動時間、営業待機時間
作業時間に占める、移動時間、営
業時間が過去に比べ長くなってき
ていることが聞き取り調査から示さ
れました。アンケート調査の結果に
よれば、営業担当者の労働時間の
移動時間、病院等での待機時間が
平均47%を占めているとの結果が得
られました。
※本研究は平成20-21年度厚生労働科学研究費を受けておこなっております。
研究担当者
国立障害者リハビリテーションセンター研究所
障害福祉研究部 我澤賢之
[email protected]