原油価格下落を受けたMLPの2015年の投資環境

<マーケット・レター>
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2014年12月17日
レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社
原油価格下落を受けたMLPの2015年の投資環境

原油価格の先行きには慎重な見方が必要。ただし、低水準の原油価格でも米国の原油は増産継続が予想される。

中流MLPは石油型と天然ガス型に二分され、中でもMLPの石油パイプライン事業は原油価格変動への耐性を備える。

シェール・オイル由来の石油製品の約9割は米国内での安定した消費が下支え。今後は原油輸出解禁に注目集まる。

2015年のMLP市場は選別投資が重要に。中流MLPは安定した配当成長が期待され、再評価を受ける可能性。
① 2015年の原油価格と米原油生産の見通し
図1:WTI原油価格と世界の石油需給の見通し
原油価格は1バレル=55米ドル台まで下落
11月27日の石油輸出国機構(OPEC)総会での原油減
産見送り以降、原油価格の下落傾向が続いています。
WTI原油先物価格(期近物)は12月16日には1バレル=
55米ドル台まで下落しました。
(米ドル/バレル)
110
EIA予想
100
90
WTI原油価格(スポット価格)
2 015年平均価格予想
1 9 .3%下方修正
80
原油価格の先行きにはなお慎重な見方が必要
米エネルギー情報局(EIA)は12月9日公表の「短期エネ
ルギー見通し」の中で、2015年平均のWTI原油価格の予
想を1バレル=62.75米ドルへ大きく下方修正しました。
EIAによれば、2015年上半期にかけて世界的な石油の供
給過剰の継続が予想されており、当面の原油価格の行方
には慎重な見方が必要と考えられます。
一方、EIA報告書では、2015年下半期には、世界経済
の回復などを背景に、世界の石油需給バランスは緩やか
に安定化へ向かうとの見通しが示されています。原油先
物相場への投機的な売り圧力が一巡しはじめれば、2015
年末に向けて原油価格が上昇に転じる可能性もあります。
原油価格低迷でもシェール・オイルは増産継続へ
70
2014年11月時点
60
2014年12月時点
50
13年1月
13年7月
良質な油田では1バレル=30~50米ドル台でも収益を生
みながらの原油生産が可能との試算があります。
大手MLPのエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ
(EPD)によれば、WTI原油価格が仮に1バレル=65米ドル
で推移した場合でも、2014年から2020年までの米国の
原油生産量は年平均3.5~5.4%のペースでの中長期の
増産が予想されています。
15年1月
15年7月
(100万バレル/日量)
94
EIA予想
1.5
93
供給超過
1.0
92
0.5
91
0.0
90
-0.5
-1.0
-1.5
13年1月
需給バランス(供給-消費、左軸)
89
世界の石油供給量(右軸)
88
世界の石油消費量(右軸)
需要超過
13年7月
14年1月
14年7月
15年1月
87
15年7月
(出所)米エネルギー情報局(EIA) (期間)2013年1月~2015年12月
図2:米国の原油生産量
(100万バレル/日量)
2 015年予想
9 32万バレル
10
均的なシェール油田の採算原油価格は油田によって異
なるものの、1バレル=40~80米ドルとみられていますが、
14年7月
2.0
また、EIAは2015年の米国の原油生産量は、日量932
万バレルと前年比8.4%増加する見通しを示しました。平
14年1月
(100万バレル/日量)
米国原油生産量
9
2 014年推定
8 59万バレル
年平均値
前年比
+ 8 .4%
8
7
6
EIA予想
5
10
11
12
13
14
15
(年)
(出所)米エネルギー情報局(EIA) (期間)2010年1月~2015年12月
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で
配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
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② 原油価格下落によるMLPの中流エネルギー事業への影響
図3:MLPのセクター別時価総額
MLPの時価総額の約85%は中流セクター
2014年11月末現在、米国のMLP(マスター・リミテッド・
セクター分類
パートナーシップ)は122銘柄が上場しており、総時価総額
は5,323億米ドル(約63兆円*)の規模があります。全MLP
銘柄数
中流
時価総額
(10億米ドル)
構成比
65
4 5 0 .4
8 4 .6 %
のうち、原油価格変動の直接的な影響を受けやすい上流
石油輸送( パイプライン)
28
1 3 4 .7
2 5 .3 %
関連セクター(探査・生産型MLP等)は18銘柄(時価総額
天然ガス輸送(パイプライン)
10
169.7
31.9%
239億米ドル)に留まり、MLPの総時価総額の約85%は中
天然ガス集積・処理
21
129.9 59.1%
24.4%
流セクターに集中していることが分かります(図3)。
LNG・ガス圧縮設備
5
14.8
2.8%
その他
1
1.2
0.2%
18
2 3 .9
4 .5 %
15
21.2
4.0%
3
2.7
0.5%
(*)換算為替レート:1米ドル=118円。
MLPの中流インフラ事業は石油とガスに分散化
上流関連
上流(探査・生産)
さらに、中流セクターのMLPが保有・運営する資産は、石
油田サービス
油関連と天然ガス関連のインフラに大きく二分されます。
下流( 卸・ 小売事業)
14
2 6 .1
4 .9 %
MLP全体の時価総額に対する構成比では、石油関連イン
その他(海上輸送、石炭など)
25
31.9
6.0%
フラ型MLPの比率は25.3%であるのに対して、天然ガス関
MLP全体
122
5 3 2 .3
1 0 0 .0 %
連インフラ型のMLPは59.1%を占めています。
(出所)ファクトセット、NAPTP、アレリアン
(注)2014年11月末時点。
MLPの中流事業が石油や天然ガス関連のインフラに多
図4:2006~2011年の原油先物価格と
MLPの石油パイプライン輸送量の推移
様化していることは、特定の資源価格変動による収益悪
化リスクを分散化する要因となると言えます。
パイプライン輸送量は原油価格下落期でも安定
また、MLPの石油パイプライン事業は、以下二つの点か
ら原油価格変動への耐性を備えていると考えられます。
第一に、石油パイプラインの輸送量は長期輸送契約に
基づくため、過去の原油価格の変動期でも安定する傾向
がみられます。金融危機(リーマン・ショック)の発生により
(米ドル/バレル)
110
WTI原油先物価格(年平均値)
99.75
100
前年比
-37.8%
90
80
70
95.11
72.36
79.61
66.26
60
62.09
50
原油価格が急落した2009年の局面でも、大手MLP2社の
原油パイプライン輸送量の落ち込みは軽微でした(図4)。
(2006年=100)
115
石油パイプライン輸送料はインフレ連動で上昇
110
第二に、石油パイプラインの輸送料(単価)は、米連邦エ
105
原油パイプライン輸送量(数量)
プレーンズ・オール・
アメリカン・パイプライン
(PAA)
前年比-2.7%
ネルギー規制委員会(FERC)によってインフレ連動での引
き上げが認められています。現在、毎年のパイプライン輸
送料は「生産者物価指数(PPI)上昇率+2.65%」で決めら
れており、2014年7月の価格改定では3.9%の引き上げが
実施されました。足元での物価動向を考慮すると、2015
100
前年比-2.3%
95
エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(EPD)
(陸上パイプライン輸送量)
90
2006
2007
2008
2009
2010
2011 (年)
年7月には5%前後の輸送料の引き上げが見込まれます。 (出所)ブルームバーグ、各社公表資料
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で
配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
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③ シェール・オイル由来の石油製品の約9割は米国内の安定消費が下支え
米国内での石油製品の最終需要は安定
原油輸出が原則として禁止されている米国では、ほとん
どのシェール・オイルは米国内の製油所で石油製品に精
製されています。現在、米国内で生産される石油製品の
図5:米国における石油製品需給の推移
(100万バレル/日)
EIA予測
石油製品
国内消費量
20.0
17.5
製油所の
原油受入量
(≒①+②)
15.0
約9割は米国内で消費され、約1割が輸出されています。
原油価格の急落により、上流(探査・生産)セクターでは
原油生産への影響が懸念されているものの、下流セク
12.5
7.5
る米国景気が下支えしていると言えます(図5)。
5.0
国の製油所の稼働率は90%前後まで上昇しており、米石
油精製各社は精製能力の増強を計画しています。また、
中長期的には、シェール・オイルの販売先の多様化の点
で、原油輸出の解禁が大きな焦点となりそうです。
①原油
国内生産量
10.0
ターでの石油製品の最終需要は、底堅い回復が期待され
一方、シェールオイルの増産拡大によって、足元では米
石油製品原料の
国産化シフト
②原油
純輸入量
2.5
石油製品
純輸出量
0.0
-2.5
10
11
12
13
14
15
(年)
(出所)EIA (期間)2010年1月~2015年12月
④ 2015年のMLP市場の注目点=セクターや銘柄による選別がより重要に
図6:原油価格とMLPの推移
原油価格急落を受けてMLPも調整圧力に直面
足元での原油価格の急落を受けて、世界的にエネル
ギー関連株の下落基調が強まり、MLPも調整圧力に直面
(1995年末=100)
180
アレリアンMLP指数
(左軸)
しています。主要MLP50銘柄で構成されるアレリアンMLP
指数(価格指数)は、2014年12月15日には2013年1月
(米ドル/バレル)
600
500
150
400
120
300
90
200
60
以来の水準まで下落が進行しました。
長期的にはMLPと原油価格の連動性は高くない
ただし、MLPと原油価格の長期的な推移を見ると、必ず
しも両者の連動性は高くありません(図6)。
2008年の米金融危機前後の局面や、足元のように原
油価格が急変動する局面では、投資家センチメントの悪
化等により原油価格とMLPの連動性が一時的に高まるこ 100
とはあるものの、平常時においてMLPの基本的な評価は
MLPのエネルギー事業に関する収益環境や配当などの
ファンダメンタルズに基づいてなされていると考えられます。
0
WTI原油先物価格
(右軸)
30
0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年)
(出所)ブルームバーグ (注)リターンは価格指数ベース。
(期間)2000年1月1日~2014年12月16日。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
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2015年は個別銘柄毎にMLPの優劣が明らかに
一方、原油価格の急落は、中小規模の石油探査・生産
企業の事業環境を不安定化させ、シェール業界の再編を
活発化させる可能性があります。MLPに関しても、個別銘
柄レベルでは事業内容などに応じて、原油価格下落の影
図7:MLPの一株当たり配当伸び率
(前年比、%)
14
12
8.9
7.1
8
響は一様ではないと考えられます。2015年のMLP市場で
6
は、親会社(スポンサー)との資本関係や、MLPの収益お
4
よび配当の安定性、財務基盤(資金調達能力)などによっ
2
て、個別銘柄ごとの優劣がより明らになるとみられます。
0
2015年のMLP全体の一株当たり配当伸び率は前年比
上流MLP
10
11
(倍)
11
流MLPでは2015年が8.6%、2016年が10.2%と堅調な
9
配当成長の継続が予想されるなど、業種によってMLPの
8
配当成長見通しが二極化する傾向がみられます(図7)。
7
には割安感が生まれつつあると考えられます。
MLP全体
0.9
14
0.0
15
16
予想
(年)
図8:MLPと米国株のバリュエーション比較
(株価EBITDA倍率)
株価EBITDA倍率=株価÷過去12ヵ月の一株当たりEBITDA
MLP
6
S&P500指数
5
4
3
03
MLPのバリュエーション評価の際には、配当の原資となる
キャッシュフロー(EBITDAなど)と株価の関係を比較するこ
9.3
8.2
(出所)ファクトセット
(注)予想は2014年12月15日時点。MLP全体の母集団は2014年11
月末時点の122銘柄。配当伸び率は母集団の銘柄の中央値。
10
バリュエーションの観点からは、足元の調整によってMLP
13
実績
は今後、配当成長の急速な鈍化が予想される一方、中
米国株との比較でもMLPに過熱感はみられない
12
8.6
2.6
3.2
8.2%と安定した配当成長が見込まれています。
ただし、原油価格変動の影響を受けやすい上流MLPで
6.9
6.2
中流MLPと上流MLPで配当成長見通しが二極化
ファクトセットによる予想コンセンサスの集計によれば、
10.2
中流MLP
10
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14 (年)
(出所)ブルームバーグ (期間)2003年1月末~2014年11月末(月次)
とが一般的とされています。MLPと米国株(S&P500)の株 図9:MLP・REIT・米国株の予想配当利回りと長期金利
価EBITDA倍率は足元でほぼ同水準にあり、米国株対比
でMLPに過熱感はみられません(図8)。
安定増配が予想されるMLPへの再評価に期待
また、MLPの予想配当利回りは12月16日には6.43%ま
で上昇しており、米国REIT(3.51%)や米国株(2.02%)、
7%
MLP予想配当利回り
6%
5%
米10年国債利回り
4%
米国REIT予想配当利回り
3.51%
米10年国債利回り(2.06%)に対して利回り水準の面で相 3%
対的な投資妙味が増しています(図9)。
今後、原油価格急落による投資センチメントの悪化が一
巡し始めれば、各MLPの事業環境に応じて銘柄選別がな
される中で、安定増配が予想されるMLPは市場からの再
評価を受けやすくなるものと期待されます。
6.43%
2.06%
2%
米国株(S&P500)予想配当利回り
1%
13年1月
13年7月
14年1月
2.02%
14年7月
(出所)ブルームバーグ (期間)2013年1月1日~2014年12月16日
(注)MLPはアレリアンMLP指数。米国REITはFTSE/NAREITオール・
エクイティREIT指数
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作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
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