新興国通貨の連鎖安の影響とブラジル・レアル相場の見通し

<マーケット・レター>
2014年1月27日
新興国通貨の連鎖安の影響とブラジル・レアル相場の見通し
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中国景気の減速への懸念を背景に、世界的にリスク回避的な動きが拡大。アルゼンチンなど新興国で通貨安が拡大。
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ブラジル・レアル相場は当初、下落圧力が高まるも、1月24日のルセフ大統領の決意表明を契機に安定化の兆し。
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アルゼンチン情勢には注意が必要なものの、2001年と比較してブラジルは隣国の経済危機への耐性を増している。
図1:各国通貨の対米ドルでの年初来騰落率
中国景気の減速懸念からリスク回避行動広がる
HSBC/マークイット社が公表した1月の中国製造業購買
日本円
担当者景気指数(PMI)の悪化をきっかけに、1月23-24
日の金融市場ではリスク回避的な動きが台頭し、世界的
人民元
-0.1
NZドル
-0.1
メキシコ・ペソ
-2.7
豪ドル
-2.7
ただし、新興国通貨の中でも、対米ドルでの年初来下落
-4.0
カナダ・ドル
率が大きい通貨は、国内の政治情勢や経済ファンダメン
タルズが悪化している国が中心と言えます。一方、足元で
ロシア・ルーブル
政治・経済情勢が安定しているブラジル、インドネシアやイ
南アフリカ・ランド
-4.9
-5.1
-8.6
トルコ・リラ
アルゼンチン・ペソ
-18.5
(%) -20
-10
図2:ブラジル・レアルの対米ドル、対円相場
念の高まりを受けて、1米ドル=2.40レアルへレアル安・米
(レアル)
(円)
52.5
1.8
は、取引序盤はレアル安でスタートしたものの、スイスのダ
ボス会議での演説において、ジルマ・ルセフ大統領がイン
対円相場(左軸)
50.0
1.9
対米ドル相場(右軸)
フレ抑制と財政均衡化に向けた決意を表明したことを契
機に持ち直しに転じ、終値ベースでは前日比で小幅反発
となりました。
レアルの対米ドル相場は、2013年8月21日に1米ドル=
47.5
2.0
45.0
2.1
レアル高
2.45レアルの安値を付けた翌日にブラジル中銀が為替介 42.5
入の強化を表明して以降は、レアル安圧力が高まる度に
2.2
レアル安
ブラジル中銀が為替介入によって為替市場の安定を図り、 40.0
1米ドル=2.4レアルを大きく割り込まず推移しています。
また、レアルの対円相場も、足元では円安・米ドル高の
37.5
2.3
2013年8月22日夕方
ブラジル中銀が
新為替介入プログラム公表
影響もあって、1月24日には1レアル=42.7円へ下落した 35.0
13年1月
ものの、2013年10月以降のレアル・円相場のレンジ内
(42.5~45.0円)に依然として留まっています。
10
0
(出所)ブルームバーグ (期間)2013年末~2014年1月24日
1月23日のブラジル・レアル相場は、中国景気の減速懸
ドル高が進みました。一方、これに続く24日のレアル相場
-1.5
ブラジル・レアル
リカ・ランドも年初からの下落が加速しました。
ルセフ大統領の表明受けレアル相場は下げ止まり
-1.4
インド・ルピー
入停止の方針を受けて急落したほか、トルコ・リラや南アフ
対米ドル
で上昇
-0.6
ユーロ
新興国の為替市場では、アルゼンチン・ペソが中銀の介
相場の調整は限定的に留まっています(図1)。
0.1
インドネシア・ルピア
に株安、円高、新興国通貨安などが広がりました。
ンドなどでは、新興国通貨安への懸念が増す中でも為替
2.6
対米ドル
で下落
13年4月
13年7月
2.4
2013/8/21
2.45レア ル
13年10月
14年1月
2.5
(出所)ブルームバーグ (期間)2013年1月1日~2014年1月24日
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<マーケット・レター>
アルゼンチンの経済不安のブラジルへの影響
また、1月23日のブラジルの為替市場では、隣国アルゼ
図3:ブラジルとアルゼンチンの名目GDP(米ドル換算)
(10億米ドル)
2,500
ンチンでのペソ急落も心理的な面からレアル安要因となっ
たものと考えられます。アルゼンチンは、2001年にデフォ
2 001年12月
アルゼンチン国債
債務不履行(デフォルト)
2,000
ルト(債務不履行)を宣言して以降、債務再編問題がなお
決着しておらず、インフレ加速や外貨準備の不足の問題
1,500
の不安定化によるブラジル経済・金融市場への影響は限
2012年
4.7倍
2000年
2.3倍
などから、今後の経済情勢には注意が必要です。
ただし、以下で指摘する3つの点から、アルゼンチン経済
1,000
80年代前半
ほぼ同規模
500
4,752億米ドル
定的に留まると考えられます。
隣国の経済危機への耐性を増したブラジル
第一に、アルゼンチンがデフォルトした2001年当時と比
アルゼンチン
0
80
第二に、アルゼンチンはブラジルの隣国であるものの、ブ
りません。ブラジルの2013年のアルゼンチン向け輸出金
300
額は中国や米国向けよりも小さく、その規模もブラジルの
250
GDPに対して1%未満に留まっています。
200
第三に、2013年12月時点で、ブラジルは3,758億米ド
150
ルという豊富な外貨準備を抱えており、必要であれば米ド
100
ル売り介入を強化するなどの為替政策の余力を残してい
50
ブラジルへの資金流入は直接投資中心に継続
また、1月24日に公表されたブラジルの国際収支統計
05
10
(2013年12月時点)
3,758億
米ドル
ブラジル
アルゼンチン
306億
米ドル
96
98
00
02
04
06
08
10
12
(出所)ブラジル中央銀行、アルゼンチン中央銀行
(期間)1996年1月~2013年12月
図5:金融取引によるブラジルへの資金フロー
(100万米ドル)
20,000
ネット資金流入
によれば、2013年12月には直接投資を中心にブラジル
15,000
への安定的な資金フローの流入が増加傾向にあることも
10,000
確認されています(図5)。
00
0
日のスイス・ダボス会議の場において、アルゼンチンの通
ル当局には十分な用意がある考えを明らかにしています。
95
(10億米ドル)
400
350
貨不安をきっかけとした為替市場の変動に対して、ブラジ
90
図4:ブラジルとアルゼンチンの外貨準備残高
ラジルのアルゼンチンへの経済依存度は必ずしも高くはあ
ます(図4)。実際、ブラジルのマンテガ財務相は、1月24
85
(出所)国際通貨基金(IMF)
(期間)1980年~2012年
較べ、ブラジル経済は飛躍的発展を遂げており、ブラジル
はアルゼンチンの約5倍の経済規模を誇ります。(図3)。
2兆2531億
米ドル
ブラジル
金融収支
(直接投資+証券投資+その他投資)
証券投資
直接投資
5,757
5,000
6,654
ブラジルへの証券投資は3ヵ月連続で小幅の流出となっ
たものの、海外企業によるブラジルへの直接投資の流入
継続や、海外との預金や融資取引などを示す「その他投
資」の資金流出に歯止めがかかったことなどが、資金流入
の増加に寄与しました。
0
-797
-106
-5,000
その他投資
ネット資金流出
-10,000
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2013年
(出所)ブラジル中央銀行
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