20141205週次レポート

Precious Metals Weekly Update
4th December 2014
Platinum prices $/oz
last week:
WEEK IN REVIEW:
プラチナ
先週 は 米 国が 感 謝祭 の 休 日で 取 引期 間 が 短 い中 、 プ ラチ ナ は 目 ぼし い 動 きな く、
$1,200/oz 上で 30 ドルの狭いレンジ内で推移した。Johnson Matthey は最新のマーケット
レポートにて 2014 年の需要予測を下方修正し、触媒のリサイクル量を上方修正した。全
体的に堅調なファンダメンタル見通しの中で、上述の 2 つのデータはプラチナにとって弱
材料となるものであった。注目すべきは現在非常にタイトなプラチナスポンジ市場である。
ストライキによって少なくとも約 40.4t のプラチナスポンジの生産量が減ったと JM は見積
もっており、その結果市場と生産者在庫が切り崩された。テクニカル面では、上値は
$1,236/oz (2014 年 10 月の高値と 11 月の安値を結んだ 50%フィボナッチリトレースメン
ト、そして 11 月前半の支持線)で抑えられ、下値は直近の安値である$1,178/oz となると
見ている。経済指標次第でドル高が更に進行すれば、プラチナ価格は下落していくだろ
う。
24-Nov
28-Nov
Change: -1.3%
Major support: $1,092
Minor support: $1,178
Major resistance: $1,330
Minor resistance: $1,236
Palladium prices $/oz
last week:
パラジウム
先週パラジウムは堅調に推移し、金曜日にはスポット取引において 9 週間振りの高値で
ある$810/oz まで上昇した。パラジウム価格は対プラチナ価格で 12 年振りの最高値まで
上昇しており、プラチナ・パラジウムレシオは 1.5 を割り込み、ドル高で他の貴金属が軟調
に推移する中においてもパラジウムは堅調に推移した。12 月 1 日から LME が新たに
PGM 指標価格の取り決めを運営する(データは LBMA が所有する)LBMA Platinum
Price と LBMA Palladium Price が夫々開始され、LME はより透明性の高い値決めプロ
セスを提供することを目指している。
ゴールド
‘Save Our Swiss Gold’と銘打ったスイスでの国民投票が週末にかけて行われたが、賛成
票は全体の 23%までにしか至らず法案は否決された。法案が可決されていれば、スイス
中銀は外貨準備に占める金保有高を 5 年間で 20%まで増加させることになり、約 1,500t
のゴールドが購入される予定であった。スイスの国民投票が否決されることがゴールド価
格に織り込まれていなかったことから、翌月曜日の取引開始から一気に 4 週間振りの安
値である$1,143/oz まで売り込まれたが、その後値を戻した。先週後半にインド中央銀行
は、輸入量の 20%を再輸出することを金輸入者に義務付ける 80:20 規制を撤廃すること
を発表した。金取引における主要規制が撤廃されたことは短期的には金需要の強材料と
なるだろう。しかし、代わりに輸入割当量が制限された場合、長期的には弱材料となる。イ
ンドの現在の経常赤字は金輸入量の増加によるところが大きく(11 月の金輸入量は今年
3 回目の約 100t になると予測されている)、直近では原油価格が下落していることから(2
ページご参照)赤字の状況はいくらか改善されているものの、インド政府はドルの国外流
出を防ぐことに注力している。米国経済指標や雇用統計の結果が強ければ、ゴールドは
今週再び守勢に立たされるだろう。
シルバー
先週後半に原油価格が下落しディスインフレーション懸念の高まりによって下方圧力に晒
されるまで、シルバーは控えめに上昇した。スイスの国民投票の結果を受けゴールドが売
られたことに連れ、シルバーは一時的に$14.42/oz(4 年振りの最安値)で取引された後、安
値拾いの買いが入り$15.00/oz まで値を戻した。現在の安値水準が現物市場に影響を与
えるかどうかは、かつて世界最大のシルバー市場であったインド次第である。元々ゴール
ドを購入していたインドの需要家の中には、直近 18 か月間に輸入規制によってゴールド
のプレミアムが上昇したことでシルバー(貧乏人にとってのゴールド)を購入するようになっ
た需要家も存在する。80:20 規制が撤廃されゴールドが手に入り易くなったことは、シルバ
ー需要に対し短期的には弱材料となるだろう。
24-Nov
28-Nov
Change: 2.4%
Major support: $730
Minor support: $747
Major resistance: $842
Minor resistance: $821
Gold prices $/oz
last week:
24-Nov
28-Nov
Change: -1.7%
Major support: $1,045
Minor support: $1,130
Major resistance: $1,252
Minor resistance: $1,200
Silver prices $/oz
last week:
24-Nov
28-Nov
Change: -4.5%
Major support: $14.66
Minor support: $15.06
Major resistance: $18.22
Minor resistance: $16.44
This is the last week of voting for Energy Risk Magazine’s annual Commodity Rankings Survey. If you value our precious
metals research, please consider voting for Mitsubishi in the ‘Research in precious metals’ category. To take the survey,
please see http://www.surveygizmo.co.uk/s3/1813360/ER-commodity2015. Thank you for your support!
4th December, 2014
三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部
転用・転送 堅くお断りいたします
1
連動して推移したが、現在正の相関が崩れ始めてい
FOCUS: 原油と金:原油の安値更新がディスインフレーションを示唆
るようだ(グラフ 1・2 ご参照)。
原油生産量の維持を OPEC が決定した後、WTI 原
油価格は先週 4 年振りに安値を更新、$70/バレルを
割り込んだ。これを受け、原油需要は増加したが、米
国のシェール産業と他の高コストがかかる生産者に
圧力がかかった。
原油と貴金属は一般的に正の相関にあると考えられ
ているが、多くの相関と同様に 2 つは常に相関して
いるというわけではなく、場合によって正や負の相関
となる。グラフ 1 は原油・金価格と 100 日間相関を示
している。原油が最近 4 年振りの高値まで上昇した
ときに正の相関は崩れている。ゴールドやその他の
貴金属の統計は以下の通り。
グラフ 1: ゴールドと原油:価格と相関:
加えて、原油産出国のドル収入が減少することで、
各国の中央銀行が金を購入して外貨準備を多様化
させる必要性が減退するかもしれない。例外も中に
はあり、特にロシアは制裁の影響にある中、原油価
格下落に伴う減収から、自国通貨を守るために今年
既に購入した 134t に加えて更に金を購入するだろう。
一方、原油価格の下落はゴールドに以下のようなポ
ジティブな影響を与えると考えられる。
 原油輸入国の負担軽減:原油価格の下落により、
インドのような原油輸入大国は現在の経常赤字
をいくらか改善させることができ、ゴールドの輸入
規制を行う必要が無くなった (最近 80:20 規制が
撤廃された)。加えて、原油輸入大国のドル準備
高も増加したことで、資産ポートフォリオ多様化の
ためにゴールドを買う公的部門も中には存在す
るだろう。
 実質賃金の上昇:消費者の購買力が上昇し、宝
飾品と投資商品の売上が伸び、金需要が消費者
に大きく依存しているアジアにおいては特にゴー
ルド需要が刺激されるだろう。
グラフ 2: シルバー/原油、プラチナ/原油、パラジウム/原油
30 日間相関:
シルバーは産業資産と硬貨の 2 つの性質をもつこと
から、原油価格が下落することで消費者の購買力が
上昇し、ある程度恩恵を受けるものの、今後ディスイ
ンフレーションが深刻化すれば、シルバーは同時に
下方圧力に晒されることになるだろう。
PGM 需要は概して原油価格下落の恩恵を受けるだ
ろう。米国ではガソリン価格の下落に伴い、触媒を多
く積んでいる高燃費車の売上が伸びている。PGM
は石油精製や石油化学触媒として広く利用されてお
り、大量のプラチナを使用するプロパン脱水素プラン
トのような操業設備において、現在の安価な材料を
利用するべく、設備の増設を行っているところもある。
長期的には、過剰設備になると石油精製・石油化学
プラントが不要になり、結果的にメタルが市場へ戻っ
てくる可能性もある。
Source: Mitsubishi from Bloomberg
原油が産業用のコモディティであるのに対し、ゴール
ドは伝統的な安全資産である。ドル建のこれら 2 商
品は弱い負の相関または強い正の相関で推移する
が、最終的にそれはドルの強さに大きく左右される。
米国の量的緩和が終了した 2014 年 10 月後半以来、
ドルは他の主要通貨に対し上昇しゴールドと原油は
4th December, 2014
原油価格下落はゴールドに弱材料となりうる。原油
価格の下落はディスインフレーションに繋がり、ゴー
ルドのインフレヘッジとしての必要性が減退してしま
う。一方で、中央銀行がディスインフレーション対策と
して長期間低金利政策をとれば、ゴールドはいくらか
サポートされるだろう。
原油価格は来年も引き続き下落する見通しである。
北米のシェールガス生産者はマーケットシェアの維
持、及び燃料自給率を高める為、生産を削減しそう
にない。2015 年 6 月に予定されている OPEC の次
回会合まで供給過多の状況は続く見通しであり、そ
の結果ディスインフレーション圧力は強まり、ゴール
ドやその他の貴金属価格の重石となるだろう。
三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部
転用・転送 堅くお断りいたします
2
MACRO OUTLOOK: Economic calendar from Bloomberg
Dec-1
China: 11 月製造業 PMI
前 50.8 予 50.5
11 月 HSBC 製造業 PMI
前 50.0 予 50.0
UK:
11 月マークイット製造業 PMI 前
53.2 予 53.0
住宅ローン申請件数
前 6.13 万件 予 5.93 万件
EU:
11 月マークイット製造業 PMI 前
50.4 予 50.4
US: 11 月マークイット製造業 PMI
前 54.7 予 55.0
11 月 ISM 製造業景況指数
前 59.0 予 57.8
Dec-2
US:
10 月建設支出
(前月比)
前 0.4%
予 0.6%
年間自動車販売
台数
前 1,635 万台
予 1,650 万台
Dec-3
Japan: マークイット
/JMMA 製造業 PMI
前 49.5
EU: 10 月小売売上高
(前月比)
前-1.3% 予 0.5%
US:
11 月 ADP 雇用統計
前 23.0 万人 予 22.2 万人
MBA 住宅ローン申請件
数 前-4.3%
マークイットサービス業
PMI 前 56.1
11 月 ISM 日製造業景況
指数
前 57.1 予 57.5
Dec-4
UK: 英中銀政策金利発
表 前 0.5% 予 0.5%
EU:
ECB 政策金利発表 前
0.05% 予 0.05%
ECB 預金ファシリティ金利
前-0.2% 予-0.2%
ECB ドラギ総裁記者会見
US:
新規失業保険申請件数
前 31.3 万件
Dec-5
EU: GDP (前年比)
前 0.8% 予 0.8%
(前期比)
前 0.2% 予 0.2%
Germany:
10 月製造業受注
(前年比)
前 0.8% 予 0.5%
US: 11 月非農業部門雇
用者数
前 21.4 万人
予 22.5 万人
11 月失業率
前 5.8% 予 5.8%
10 月貿易収支
前-430 億ドル
予-410 億ドル
FUTURES MARKET: Source – Commitments of Traders, Commodity Futures Trading Commission
NYMEX プラチナ ネット・ロングポジション
11 月 18 日時点: 1.18 Moz (7% w/w)
COMEX ゴールド ネット・ロングポジション
11 月 18 日時点: 5.00 Moz (-9.6% w/w)
4th December, 2014
NYMEX パラジウム ネット・ロングポジション
11 月 18 日時点: 2.25 Moz (-1.4% w/w)
COMEX シルバー ネット・ロングポジション
11 月 18 日時点: 88 Moz (43% w/w)
三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部
転用・転送 堅くお断りいたします
3
SHANGHAI GOLD EXCHANGE: Source – Shanghai Gold Exchange
SGE ゴールド売買高 11 月 28 日時点
st
Implied premium: 0.8% (0.1% discount to 21 Nov)
SGE プラチナ売買高 11 月 28 日時点
th
Implied premium 5.0% (5.5% to 21 Nov)
EXCHANGED TRADED FUNDS: Source – various ETF providers
プラチナETF残高(Moz)vs.価格($/oz)
th
Total holdings 28 November: 2.72 Moz (-1.0% w/w)
ゴールドETF残高(Moz)vs.価格($/oz)
th
Total holdings 28 November: 45.9 Moz (-0.2% w/w)
パラジウムETF残高(Moz)vs.価格($/oz)
th
Total holdings 28 November: 2.96 Moz (0.2% w/w)
シルバーETF残高(Moz)vs.価格($/oz)
h
Total holdings 28 November: 534 Moz (-0.3% w/w)
4th December, 2014
三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部
転用・転送 堅くお断りいたします
4
Spot
Gold
Forwards
Silver
Platinum
Leases
Palladium
Futures
Rhodium
Options
Ruthenium
Swaps
Iridium
This document is not and should not be construed as an offer to sell or the solicitation of an offer to purchase or subscribe for any
investment. Mitsubishi Corporation has based this document on information obtained from sources it believes to be
reliable but which it has not independently verified; Mitsubishi Corporation makes no guarantee, representation or
warranty and accepts no responsibility or liability as to its accuracy or completeness. Expressions of opinion are those
of Mitsubishi Corporation only and are subject to change without notice.
Mitsubishi Corporation assume no warranty, liability or guarantee for the current relevance, correctness or
completeness of any information provided within this Report and will not be held liable for the consequence of
reliance upon any opinion or statement contained herein or any omission. Furthermore, we assume no liability for any
direct or indirect loss or damage or, in particular, for lost profit which you may incur as a result of the use and
existence of the information provided within this Report.
The content of this Report is the property of Mitsubishi Corporation and is protected by copyright and other
intellectual property laws. You agree not to reproduce, re-transmit or distribute the content of this Report to anyone
without the prior written consent of Mitsubishi Corporation.
© Mitsubishi Corporation RtM Japan Ltd., 2014
他社への転送・転用 堅くお断りいたします。
当資料は、信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料はお客様の
お取引判断の参考となる情報提供を目的としており、弊社は、この情報の使用結果について一切責任を負いません。
4th December, 2014
三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部
転用・転送 堅くお断りいたします
5