基礎電磁気学演習

開講学期:
科目名:
教室:
2014年 前期
基礎電磁気学演習
A―109
担当教員:後藤太一, [email protected]
基礎電磁気学演習
学籍番号:_________
氏名:___________
第08回 誘電体と電束密度,電流密度ベクトル
8.1 図のように半球状に異なる誘電率  1 ,  2 の誘電体をつめた球形コン
デンサの静電容量を次の手順で求めよ.
(1)原点 O から r 離れた場所での電場の大きさ E r  を求めよ.
(2)原点 O から r 離れた場所での静電ポテンシャル  r  を求めよ.ただし,
内側の導体球の電位を 0 とする.
(3)電極間の電位差を V 求めよ.
(4)このコンデンサの静電容量 C を求めよ.
8.2 面積 S (1辺の長さ a ),電極間距離 d の平行板コンデンサに一定電
圧 V が与えられている.極板と同じ面積の厚さ t ,誘電率  の誘電体板を図のように極板間に並行に入
れておく.ただし,誘電体の質量を m とし,図のように座標軸をとる.
(1)このコンデンサの静電容量 C はいくらか.
(2)極板間の電場の大きさ E  y  を求めよ.
(3)誘電体表面に生じる分極電荷密度を求めよ.
(4)このコンデンサに蓄えられている静電エネルギーを求めよ.
(5)コンデンサに充電した後で,電池を取り外した誘電体を x 方向に動かすときに誘電体板に働く力を求
めよ.
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8.1
8.1 図のように半球状に異なる誘電率  1 ,  2 の誘電体をつめた球形
コンデンサの静電容量を次の手順で求めよ.
(1)原点 O から r 離れた場所での電場の大きさ E r  を求めよ.
(2)原点 O から r 離れた場所での静電ポテンシャル  r  を求めよ.ただ
し,内側の導体球の電位を 0 とする.
(3)電極間の電位差を V 求めよ.
(4)このコンデンサの静電容量 C を求めよ.
【解答】
(2) E(r ) は e r 方向成分しかないので,
(1) 系は球対称であるから,電場 E(r ) ,電束
E(r)  E(r)  er  0  e  0  e
密度 D(r ) ,静電ポテンシャル  (r ) は球対称の
関数となり,その大きさは r のみの関数である.
内側の球に+Q の電荷,外側の球に-Q の電荷
が帯電していると仮定する.
 した
 
1 
1 
 er (r)  e
(r)  e
(r) 
r 
r sin 

 r

  (r)  er
r
したがって,これを積分すればよく,
次に,ガウスの法則

S
(r)   E(r)dr  
D(r )  n(r )dS  S内の全真電荷

を球面 S について適用する.球面 S 上では球面
の外向き単位法線ベクトル n (r ) と電束密度
D(r ) が同方向であり,
Q
dr
2r 1   2 
2
Q
k
2 1  2 r
となる.ただし,k は積分定数.
D(r)  n(r)  D(r)  D(r ) である.ただし,誘電
(3)電極間の電位の差を求めれば良いのだから,
体の詰まり方から,球面 S 上で D(r ) は一定に

 

Q
Q
V   (a )   (b)  
 k 
 k   

  2  1   2 b
 2  1   2 a
Q
1 1

  
2  1   2   a b 
はならない.そこで,積分を, 1 ,  2 で分ける.
 D(r)  n(r)dS  
S
1 側の半球

D(r )  n(r )dS  
 2 側の半球
 Ε(r )  n(r )dS  
 1側の半球 1
 1E (r )  dS
 1側の半球
 2 側の半球
  2 E (r )  dS
 2r 1   2 E ( r )
2
D(r )  n(r )dS
 1側の半球
 2Ε(r )  n(r )dS
(4) C 
Q
の関係から,
V
となる.したがって,
2r 2  1   2 E (r )  Q
E (r ) 
Q
2r 2  1   2 
Q
Q
1 1

 2  1   2   
V  (a)   (b)
a b
ab
 2  1   2 
ba
C
を得る.
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8.28.2
面積 S (1辺の長さ a ),電極間距離 d の平行板コンデンサに一定電圧 V が与えられてい
る.極板と同じ面積の厚さ t ,誘電率  の誘電体板を図のように極板間に並行に入れておく.ただし,誘電
体の質量を m とし,図のように座標軸をとる.
(1)このコンデンサの静電容量 C はいくらか.
(2)極板間の電場の大きさ E  y  を求めよ.
(3)誘電体表面に生じる分極電荷密度を求めよ.
(4)このコンデンサに蓄えられている静電エネルギーを求めよ.
(5)コンデンサに充電した後で,電池を取り外した誘電体を x 方向に動かすときに誘電体板に働く力を求
めよ.
【解答】
(1)このコンデンサは,図のように 3 つのコンデン
サが直列に接続されていると考えることができる.
それぞれの電極の面積は S であり,電極間距離
がそれぞれ左上図のようになっているので静電容
量は,
C1   0
S
S
S
, C 2   , C 3   0
d  (t  y 0 )
t
y0
である.
 , C n を直列接続したときの合
コンデンサ C1 , C 2 , 成容量を C t とすると,
1
1
1 
Ct   
 
 C1 C2 C3 
1
1
1
1


 S  
S
S

        0  
   0
 t
 d  (t  y0 ) 
 y0  
 0S

 ( d  t )   0t
1
1


  S  t  d  t  


 0  



となる.
(2)まず誘電体のない場所
(0  y  y 0 , y 0  t  y  d ) での電場を求める.
電極上に一様に電荷が分布している場合,電場
は(誘電率が変わらない限り)電極からの距離に
よらず一定だから,電極表面での電場が求まれば
よい.
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電極表面での電場の大きさを E0 と電極の電荷
密度は, E 0 

の関係があるので,が求ま
0
ればよい.電極に蓄えられる電荷は,
1
 t d t 
 Vで
Q  CV 
V  S  
 ( d  t )   0t
 0 

あるから,電極の電荷密度は,
 0S
ただし, D0   0 E 0 , D   0 E  P
P   ' であるから,
 '   0 ( E0  E )   0 (   0 )
V
 ( d  t )   0t
     t d  t  1 
    0  
 V
   0   
 0  


1
 t d t 
Q
 0
 V
 
V   
S  ( d  t )   0t


0 

となる.
したがって,
E0 
 1
 0

V 
V

 0  0  ( d  t )   0t
 ( d  t )   0t
 1  t d  t  1 
  
 V
  0  
 0  


(4)静電エネルギー
U
 0S
CV 2 1

V2
2
2  (d  t )   0
 SV 2  t d  t  1 

 
 

2  
 0  


である.
次に誘電体内部 ( y 0  y  y 0 t ) の電場を求め
る.誘電体内部の電場の大きさを E として電束密
度 D の法線成分の連続性の法則を使って求める.
誘電体表面には真電荷は存在しないこと,電束密
度と誘電体表面波垂直であることを考えると,
D0  D ,または,  0 E  E が成立するから,
E
0

0

E0  0
V
V

  (d  t )   0 t
 (d  t )   0 t
よって,
 1  t d  t  1 
 V  となる.
E0 
V  
 (d  t )   0t    
 0  


0
(3)誘電体表面の分極電荷密度を   ' として,誘
電体表面を跨る筒状閉曲面 S についてガウスの
法則を適用する.
真電荷は存在しないから, SD  SD0  0
(5)誘電体を x だけ引き出した場合を考える.これ
は図のように静電容量 C1 と C2 のコンデンサを並
列に接続していると考えることができる.
C1 の部分の電極面積は,
C2 の部分の電極面積は
S
x
a
S
(a  x) であるから,
a
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 F ( x)x  U ( x) である.したがって
a 
 x
1S
S 
x,  0
C1   0 
d
d a
S
 S  t d  t 
(a  x)   b  
C2 
 ( d  t )   0t a
 0 
 a  
 0
F ( x)  
U ( x) U ( x)

となる.よって,
x
x
F ( x)  

U
   
 
  
0
x
x  x    x   2
1
となり,全静電容量は,
 0
1 S
S
(a  x)
C  C1  C 2   0
x
 (d  t )   0 t a
d a
 0
S ( 0   )tx  da
d d  (d  t )   0 t 
Sb  Sb  t d  t 

 0
   
ad  a  
 0 
したがって,誘電体を引き戻そうとする力が働く.
(別解)
1
となる.このコンデンサに電荷 Q が蓄えられてい
るので,静電エネルギーU は,
Q 2 Q 2 a d  ( d  t )   0 t 


U

2C
2  0 S ( 0   )tx  da x  
となる.
  2 0 S ( 0   )t  0, 
ただし,   2 0 Sda  0,
Q は(2)で

2
  Q ad  (d  t )   0t   0
与えられる一定値である.
誘電体に加わる力 F に逆らって外力-F を加え,
さらに x だけ引き出した時の仕事は  F ( x)x で
1
Q 2 Q 2  Sb Sb  t d  t  
 
 
 0
U1 


a  
2C
2  ad
 0  


1
Q2
Q2   t d  t  
 
S  
U0 

2C0
2   
 0  


1
1
U  U 0  U
エネルギー保存則より, U   F  b
したがって,
1
1 1

  t d  t 1  
1 Q 2  Sb Sb  t d  t  
 
    S  
  

F 
 0
b 2  ad a  
 0  
 0   
  


 

与えられる.エネルギー保存則より,この仕事は
静電エネルギー変化 U (x ) に等しいので,
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