修 士 論 文 の 和 文 要 旨

修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院
電気通信学
氏
論
名
文
題
目
研究科
岡本
博士前期課程
大
量子・物質工学
学籍番号
専攻
0433015
半整数スピン核に対するオーバートーンNMRの実現可能性
半整数スピンをもつ四極子核は、セラミック物質、粘土鉱物、機能的ゼオライト
など、多くの重要なエンジニアリング材料に含まれている。これらの物質の多く
は、固体状態で有用な機能を示す。それゆえ、その機能性の原因を解明するため
に、半整数スピン四極子核の固体状態、高分解能NMRスペクトルを得ることは、
有益である。
四極子核を測定するためのNMRの手法として、現在主に用いられているのは、試
料二重回転(DOR)法、dynamic angle試料回転(DAS)法、多量子遷移試料回
転(MQ-MAS)法である。本研究では、オーバートーン法がこれらのalternative
となるのか、否かを検討した。
本研究において、固体状態中の半整数スピン四極子核のオーバートーンNMRに対
する理論的記述を導き出した。それにより、オーバートーンNMRは、マジック角
試料回転(MAS)条件下において、四極子核に対する固体状態、高分解能NMR
スペクトルを測定できる性能を有することが明らかになった。具体的には、中心
遷移MAS NMRスペクトルに比べて、オーバートーンNMRの分解能は、18倍向上
することがわかった。
さらに、オーバートーン磁化の完全な動
きを表現するために、計算機シミュレー
ションを行った。それにより、7.05Tの
静磁場において、固体 23 Na 2 MoO 4 試料
( 23 Na:スピン I
3 2 )をオーバートー
ンNMRを用いて測定すると、単一オー
バートーンパルスの後にFIDを直接的
に検出できることが明らかになった。
また、オーバートーンNMRの感度は、
NMRで一般的に測定されていて、且つ
感度の悪い核、 13 C NMRの感度に比べ
て、約12%であった。これにより、 13 C
と同程度の大きさのFIDを得るために
は、 13 Cの72倍積算すればよいことがわ
かった。
また、 27 Al核(スピン I
5 2 )を含む
27 Al 2 O 3 に対するオーバートーンNMRに
ついても、 23 Naと同様に理論的記述を
導き出した。実験を行うために、固体
試料 27 Al 2 O 3 の 27 Alオーバートーン共鳴
周波数を導き出した。
図1 多結晶固体試料のスピン-3/2核に
対するMAS NMRスペクトル。(a)中
心遷移に対するMAS NMRスペクトル。
(b)単一オーバートーンパルス後に観
測される、オーバートーンMAS NMR
スペクトル。