東北大学 新田研究室へようこそ!

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高校生向け研究紹介
東北大学工学部・工学研究科
知能デバイス材料学専攻 量子材料学分野
物質の成り立ち
表面を拡大すると...
フライパン
鉄 Fe
Fe
この世にある物質はすべて
原子でできています
Fe Fe Fe Fe Fe Fe
Fe Fe Fe Fe Fe Fe
原子の構造
水素原子をモデルに考えてみよう!
H
原子核
電気が流れるのも,原子の種
類が変わるのも全部電子の
働きなんです!
電子
さらに原子を拡大すると,原子核の周りを
電子が回っていることがわかります
電子のスピンって!?
それと同じように電子も原子核の周りを回っていて,
地球は太陽の周りを公転しています.
さらに自分自身も回転していると考えられます.
そして,地球自身は自転しています.
電子のスピンって!?
この電子の自転こそ,われわれが着目しているスピンです!
電荷を持った電子の自転は
円電流とみなすことができ,
その回転軸に沿った磁力が
発生します!
スピンによって生じる磁力
電子の自転
近代のエレクトロニクスは電子の電荷を制御することで発展してきました.
しかし電子の有するスピンはまだ利用されていないのが現状です.
電子スピンを利用し次世代デバイスを生み出す分野
エレクトロニクスからスピントロニクスへ
では,従来のエレクトロニクスとスピントロニクスではどのような
違いが生まれてくるのでしょうか…?
スピントロニクス
エレクトロニクス
エレクトロニクスでは電流が流れ
ている状態と流れていない状態を
「ON」と「OFF」,すなわち「1」と
「0」に対応させることで複雑な計
算が可能な回路をつくっています.
電子の流れ
電流が
流れている状態 → 1
流れていない状態 → 0
一方,スピントロニクスでは電子
の有する「スピン」も情報としてみ
なすことができるため,ただの「1」
と「0」だけではない,膨大な情報
を輸送することができるのです.
モールス信号
音声通信に例えると,エレクトロニ
クスは音の長短で情報を伝える
モールス信号であるのに対し,ス
ピントロニクスは私たちが今使っ
ている電話・ラジオに相当するで
しょう.両者の送信できる情報の
量や質はまったく異なりますよね.
トン トン トン
トン ツー ツー トン
トン トン
ツー トン
S
P
I
N
電子の流れ
電子スピンの向きをそのま
ま情報として扱う.
スピンの向きだけ情報の
数がある.
電話・ラジオ
!
N
I
P
S
エレクトロニクスからスピントロニクスへ
ほかにもスピントロニクス分野ではこれまでにない画期的な
デバイス・応用が提案されています!!
●GMR・TMRデバイス
強磁性体
非磁性体
二つの強磁性体間に非磁性体を挟
んだとき,ここを垂直に流れる電流は
磁性体中の磁力の向きが平行な場
合に大きく,反平行な場合に小さく
なる特性が得られます.これを利用
した磁気センサーやメモリが開発さ
れており,すでにコンピュータの部
品のひとつであるハードディスク等
に応用されています.
GMR : 巨大磁気抵抗の略
TMR:巨大トンネル抵抗の略
●電界効果スピントランジスタ
+端子と-端子の間を流れる電流量を
ゲート電極という第三端子で制御するデ
バイスをトランジスタといい,今日ではほ
ぼ全ての電化製品に使用されている,な
くてはならない電子部品です.電界効果
スピントランジスタでは,電流の流れを電
子スピンの向きによって制御することで,
既存のトランジスタより高速かつ省電力
な動作が可能となります.
(a) ゲート電圧開放時(OFF)
強磁性体電極
ゲート電極
電子スピン 二次元電子ガス
(b) ゲート電圧印加時(ON)
●量子コンピュータ
長さ数十ナノメートル(1ナノメートルは
10-9メートル)くらいの大きさのデバイス
では,量子力学的な効果が顕著となり,
アップスピンとダウンスピンが共存した
「量子もつれあい状態」が実現します.こ
の現象を利用することができれば,画期
的な計算能力をもった次世代コンピュー
タができることがわかっています.
アップ
スピン
ダウン
スピン
「1」
「0」
or
量子ドット
新田研究室で取り組んでいる研究課題
電子スピンにだけ働く,不思議な磁力を操作する!!
さて,では新田研究室でどのようなことを研究しているかをお話したいと思います.これまで見てきた
ように様々なスピントロニクスデバイスを実現するためには,「電子スピン」を効率よく操作する技術
が大変重要です.「電子スピン」とはそもそも磁力の一種なので,これを制御するためには磁力が必
要ですが,デバイスの外側から磁石で磁力を印加するわけにはいきません.
電界の方向
高速で運動する
電子スピン
電子の運動方向
有効磁場の方向
1900年代の初め,相対論的量子力学の登場によって電界中を高速で運動する電子には,それら二
つのベクトルと直行する方向に有効磁場が働くことが示唆されました.ただ,この有効磁場は当初,
極めて微弱なものであり,到底電子スピンを制御できるとは考えられていませんでした.
新田研究室で取り組んでいる研究課題
電子スピンにだけ働く,不思議な磁力を操作する!!
ところが,1997年に特殊な半導体構造中を運動する電子には極めて強力な有効磁場が働き,しかも
外部からの電界操作によって有効磁場の強さを自在に制御することができるということが実証されま
した※ .これはすなわち,様々なスピントロニクスデバイスにおいて必要不可欠だった「電子スピン操
作」という技術が現実に近づいた瞬間でした.
そこで我々は様々な種類,構造の半導体デバイスを作製し,「電子スピンに対する有効磁場の影響
がどのように変化するか」,「有効磁場によって電子スピンを効率制御することは可能か」など究極の
電子スピン制御技術の確立を目指して研究を行っています.
2m
1 m
5m
およそ100本の並列量子細線構造中を
運動する電子スピンが有効磁場によって
どのように制御されるかを確かめる実験.
細線の細さは髪の毛のおよそ100分の1
5 m
約1000個の超微小半導体リング構造を用
いて,電子スピンの干渉効果を測定する
実験.(素子のサイズが数百ナノメートル
に達すると電子の波動性が顕著になる)
※ J. Nitta, T. Akazaki, H. Takayanagi, and T. Enoki, Phys. Rev. Lett. 78, 1335 (1997).