アイスプラントの生育期における耐塩性について 生物生産科 1 2年 選定理由 日々、過去の出来事のようにされている東日本大震災。その とき被災地の畑に津波によって塩水が染み込み、畑での栽培 は難しかった状況での打開策として導入されたアイスプラ ント。アイスプラントは、塩分を吸収する珍しい働きがあり ました。 そのアイスプラントの性質を深く調査してみたいと思った からです。 2 到達目標 1つ目は、アイスプラントの性質を理解すること。2つ目は、塩水(えんすい)に含まれる 塩分濃度の違いによる成長の変化を理解すること。です。私たちは「塩分を吸収する性質 があるのであれば、塩分濃度は高ければ高いほど生育が良いのではないか?」という仮説 をたてました。 3 実施概要 ①栽培概要 場所は、本校の野菜管理室隣、期間は 9 月下旬∼11 月上旬ま でです。 播種は9月末に行いました。アイスプラントの種子は非常に小 さく、コーティングされていますが、直径1mmに満たない大き さです。今回は発芽率が大変低く、15%に届きませんでした。原因については検証を行 いたいと思います。 ②アイスプラントの特徴 土壌中の塩分を根から吸収し、葉に展開するため、葉の 表面に塩のキラキラとした水晶のような粒が付着してい ます。この粒が形成されたアイスプラントは、プチプチ した触感と、ほんのりとした塩味をもつようになります。 ③作業内容は、次の通りです。 (1) アイスプラントを3つずつ、5個のプランター の中に植える。 (2) 500mlのペットボトルを5本用意し、4本にそれぞれ1%、2%、4%、 0%の食塩水を入れる。残った1本にはただの水を入れました。 (3) 朝に農経野菜班が食塩水の濃度ごとにアイスプラントに水を与える。 1日1株に与える量はおよそ10ミリリットルです。 円を描くように少しずつ垂らして与えました。 (4) 生育調査をし、成長を確かめました。 ④調査項目 アイスプラントの株張り、すなわち葉の縦横(じゅうおう)の長さ、葉の枚数を測定しまし た。 葉の長さは、1mのものさしを使って測りました。 アイスプラントは、一対の葉が、交互に生育しています。 今回は、子葉に対して水平方向を縦、鉛直(えんちょく)方向を横とみなしました。 4 調査の結果 です。 生育調査は、10月7日から計三回行いま した。 まず、株張り(かぶはり)の調査のグラフで す。 グラフを見ると、株張りは2%区が一番大 きくなり、次いで1%、0%、4%、そして 10%区となりました。4%以上の塩水は、アイ スプラントの生育期において成長を阻害する効 果があるとわかりました。 実際の植物体の様子をみても、明らかな違いが ありました。とくに、4%、10%の高塩分区で は、アイスプラントの葉の基部が赤色に、また下 の葉が茶色に変色を始めました。塩分が多すぎる場合は、赤や茶色に変色するとわかり ました。 葉の数を調べたところ、10%区では、 葉が増加していないことがわかりました。 なお、そのほかの区では、葉は増加して いると思われたのですが、激しい食害によ り、一部の葉が欠損(けっそん)し、正確な データを取れませんでした。インターネッ トで調べたところ、アイスプラントの生育 期は、食害を受けやすいということでした。 今回食害を行ったのは、コオロギ、もしくはヨトウムシだと思われます。また、10% の塩分を与えた区であっても、食害を受けた形跡(けいせき)がありました。 なお、アイスプラントは多湿状態に弱いといわれていま すが、記録的な豪雨のあった10月を過ごしましたが、と くに生育に影響はなかったようです。 5 まとめと考察 今回、播種から生育調査までをしてみて今まで何も分からなかったアイスプラントにつ いて、たくさんのことを知ることができたのでよかった。また、アイスプラントは、塩分 を葉の裏につけることができる植物だと聞いていたので、食塩水を与える量は多いほうが いいと思っていたのですが、データで、読み取れるように大量の食塩水では、あまり成長 しないことがわかりました。だからといって、少量でも成長せず、2から4%ぐらいがち ょうどいいことが分かりました。また、10%の塩水を与え続けた場合、大きくなりにく く、葉の色も変化するということがわかりました。 次に分かったことは、アイスプラントは、もともと乾燥地帯で育つ植物なので、たくさ んの雨が頻繁に降る地方ではあまり大きく育たないことが分かりました。今回、10月は 暴風雨に見舞われたので、生育もいまひとつだったのではないかと考えました。 また、アイスプラントは、食用としても優秀で、葉は肉厚で柔らかく、塩味もあるので、 生で食べてもおいしく、サラダに最適だろうと思いました。アイスプラントはただ育てて 食べるのもいいですが、アイスプラントには、地中の塩分を根から吸い上げ、土の中を綺 麗にする働きがあります。このように、アイスプラントは、今のような点から考えると除 塩用としても、食用としてもとても優秀な植物である、と考えました。 今後の課題 今後については、 アイスプラントの吸塩割合(きゅうえんわりあい)や、雨水による土壌塩分の流出割合につ いて測定を行い、アイスプラントの生育期における除塩効果を明らかにすること。 食塩水 と海水がアイスプラントに与えるストレスに差異(さい)があるか検証すること。 土壌中に 過剰な塩分が存在している場合と、生育中に塩水を与える場合の生育の特徴を明らかにす ること。 食味試験を行うこと。などのテーマを持って、研究に取り組みたいと思います。
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