[主題]小児の難治性中耳疾患(真珠腫症を含む) - J-Stage

魯 目 ◎(恥 會 ◎
小 児 の難 治 性 中耳 疾 患(真 珠 腫 症 を含 む)
第40回 日本小児耳鼻咽喉科研究会
会長
第40回 日本 小児耳 鼻咽喉 科研究 会が 平成11年7月3日(土),ホ
山
下
敏
夫
テル京 阪 京橋(大 阪)
にお いて開催 され ま した。
今 回の主題 は 「小 児 の難 治性 中耳疾 患(真 珠 腫症 を含む)」 で した 。小 児 の難 治性 の
中耳疾患 には奇 形や 真珠腫 な どに加 え,と くに最 近 は中耳 炎 の難 治例 も増加 傾 向に あ り
ます。 これ らの疾患 に対 し,耳 鼻 咽喉 科医 が小児科 医 を交 え て,十 分検 討 し,診 療法 を
確立 してい く必 要が あ る と考 え,今 回の主題 を選 ばせ て いただ きま した 。 また主 題 に関
連 した特別 講 演 な どを3題,さ
らに一 般講 演15題 と盛 りだ くさん な 内容 で午 後1時 か
ら6時 まで盛 会裏 に開催 され ま した。
特 別講演1は 佐 野光仁 先生(大 阪府 立母 子保健 総 合医療 セ ンター耳鼻 科)に よる 「
難
聴 と合併症 」 と題 す る豊富 な臨床 例 に基づ いた お話 しで,小 児 の 中耳奇形 には全 身 の奇
形 な ど合併症 が 多い ことか ら,難 聴 児に対す る全身 の検 査 の必要 性 を述 べ られ ま した。
特 別講 演2は 安井 耕 三 先生(信 州 大学 小 児 科)に よる 「喘 息 診療 にお け る テ オ フ ィ
リソの妥 当性一炎 症学 の立場 か ら一 」 と題す る耳鼻 咽喉 科 医に とって も有意義 な喘息 の
治療 に関す るお話 で した。 テオ フ ィ リソが炎症 を抑 え る作用 も持 つ とい う知見 か ら,喘
息治療 へ の同剤使 用 の妥当性 につ い て述 べ られ ま した。
特 別講 演3は
「
急 性 中 耳炎一 重 症 化 ・反 復 化 とそ の対 策 に つ い て一 」 と題 し,末 武
光子先 生(東 北労 災病 院耳鼻 科)が 最近 の トピ ックスにつ いて述 べ られ ま した.抗 生物
質 の耐 性化 に伴 い中耳 炎が重症 ・反 復化 す る こ と,ま た集 団保育 が大 きな外 因で あ るな
ど興味 深 いお話 で した 。
主題 に関す る一 般演題 で は小児 の真珠 腫症,と くに治 療 に関 した演 題 が多 く,そ の問
題 点 な どが検 討 され ま した。 と くに手術 法 におい ては各 施設 で異 な り,統 一的 な最 良 の
診 療法 の確立 が望 まれ ま した 。そ の他滲 出性 中耳炎 な どにつ い ての演 題 もあ り,い ずれ
も力 の入 った こ演題 で した。
今 回の講演 会 では充 実 した講 演 内容 と活発 な質疑 応答,さ らには私 共 の予想 を上 回 る
140名 の参加者 を得,大 変 実 り多 い会 であ り,小 児耳 鼻咽 喉科 学 の発 展 に寄 与 で きた も
の と思 い ます 。会長 として,ご 講演 下 さ った先 生方,ま た ご参 加頂 いた先 生方 に深 く感
謝 申 し上げ ます。
小 児 耳V◎L20,No.2,1999
∈
調 ①回 回串 ⑪ 偲 図 鼻
主題 小
児
の
日時
㊨
(13:00∼13:30>座
長
難
治
性
中
平 成11年7月3日(土)12:55∼17:50
山根 英 雄(大 阪市立大学耳鼻咽喉科)
1.合 併 症 に よ り衛 後 の 観 察 処 置 の 難 しか った 小 児 真 珠 腫 症 例
佐藤 伸 也,佐 野光仁
(大阪府立 母子 保健総 合 医療 セ ソター)
2.鼓 膜 所 見 に 比 し 中 耳 障 害 が 高 度 で あ った 真 珠 腫 例
斎藤 啓,磯 野 道夫,宮 下 仁 良,木 村 忠司,村 田清 高
(近畿 大学 医学部 耳鼻 咽喉科)
3.還 納 に 中 頭 蓋 窩 法 を 要 した 乳 突 腔 ヘ ル ニ ア
立本 圭吾,鈴 木 敏弘,山 本 聡,村 上
(京都 府立 医科大 学 耳鼻咽喉 科)
特 別 講 演1(13:30∼14110)司
㊨
会
難 聴 と合 併 症 に つ い て
泰
大 迫 茂 人(多 根総合病院耳鼻咽喉科)
佐 野光 仁(大 阪府立 母子 保健総 合医療 セ ンタ ー耳鼻 咽喉科)
(14:10∼14:40)座
長
村 田清 高(近 畿大学耳鼻咽喉科)
4.当 科 に お け る小 児 真 珠 腫 症 例 の検 討
土 井 直,栗 山博 道,山 下敏 夫
(関西 医科大 学耳 鼻咽喉 科)
5.小 児 の 鼓 膜 正 常 伝 音 性 難 聴
池 田 稔,生 井 明浩,山 内 由紀,野 口雄五,吉 川琢磨
(日本 大学 医学部 耳鼻咽 喉科)
6.ダ
㊨
ウ ン症 児 の真 珠 腫 性 中 耳 炎10症 例 に 対 す る鼓 室 形 成 術
今 村祐 佳子,飯 野 ゆ き子,鈴 木淳 一
(帝京大 学耳 鼻咽喉 科)
(14:40∼15:10)座
7.軟
長
小 林 俊 光(長 崎 大 学 耳 鼻 咽喉 科)
口蓋 ミ オ ク ロ ー ヌ ス に よ る 他 覚 的 耳 鳴 の1例
藏 野 晃 治1),上 田 隆 志2),成 尾 一 彦3),細 井 裕 司3)
1)大 淀 病 院 耳 鼻 咽 喉 科
,2)星 ケ丘 厚 生 年 金 病 院 耳 鼻 咽 喉 科,3)奈
喉 科)
8.小
児鼓膜 癒 着症 の手術 療法
馬場
保,中
尾 善 亮,小
林 俊光
(長 崎 大 学 耳 鼻 咽 喉 科)
-4一
良医大 耳鼻 咽
小 児 耳V◎L20,No.2,1999
咀 咀 尉 冊 寵 臼 ヲ 回 釧9ム
耳
場所
疾
患(真
・
珠 腫 症 を 含 む)
ホ テ ル京 阪京 橋7F会
長
山
下
敏
夫
9.難 聴 が 診 断 の 契 機 と な った 小 児 中 耳 真 珠 腫 の検 討
工藤 典代,小 林 由実
(千葉 県 こど も病院 耳鼻咽 喉科)
特 別 講 演 皿(15:25∼16:05)司
函
会
鈴 木 淳 一(帝 京大学耳鼻咽喉科)
喘 息 治 療 に お け る テ オ フ ィ リ ソの 妥 当 性 一 炎 症 学 の 視 点 か ら一
安 井 耕 三(信 州大学 医学 部小 児科)
(16:05∼16:25>座
長
鈴 鹿 有 子(金 沢医科大学耳鼻咽喉科)
10.言 語 外 来 か らみ た 中 耳 疾 患 の 検 討
早 川 忍,鈴 鹿有 子,友 田幸 一
(金沢医 科大学 耳鼻 咽喉 科)
11.小 児 に お け る歪 成 分 耳 音 響 放 射(DPOAE)と
聴 性脳 幹反応
安 原昭博1),越 智文子2),小 林 陽之助2)
1)関西 医科 大学 附属香 里病 院小 児科 ,2)関 西医科 大学 小児 科)
12。 分 子 生 物 学 的 手 法 を 用 い た 急 性 中 耳 炎 起 炎 菌 の検 索
島 田 純,保 富 宗城,荒 井 潤,鈴 本 正樹,山 中
(和歌 山県立 医科 大学 耳鼻咽 喉科)
⊂ 藝
蓬
⊃(16:35-17;・5)座
購
13.鼓 膜 換 気 チ ュー ブ留 置 後5年
野ゆき子(帝一
昇
一)
経過 時 の現況一 治癒遷 延例 の臨 床的検討一
小林 由実,工 藤 典代
(千葉 県 こ ども病 院耳 鼻咽喉 科)
14.ム
コ多 糖 症 の 一 例
高橋佳 文ユ),三代康 雄1),久 保 武1),澤 田亜也 子2),守 田雅 弘3)
1)大阪大学 耳鼻 咽喉 科 ,2)西 宮市 立中央 病院,3)箕 面 市立病 院
15.滲
出 性 中 耳 炎 に お け る乳 突 蜂 巣 硬 化 像 と軟 部 陰 影
長 谷部 誠 司,高 橋晴雄,船 曳和 雄,永 田洋美
(京都 大学 耳鼻 咽喉科)
特 別 講 演 皿(17:05∼17145)司
会
鈴 木 淳 一(帝 京大学耳鼻咽喉科)
急 性 中耳 炎 一 重 症 化,反 復 化 とそ の 対 策 一
末 武 光 子(東 北 労災病 院 耳鼻咽 喉科)
-5一
小 児 耳V◎1.20,No、2,1999
笛o①回 回串⑪聰目虜圃咀劉団駆會
第一群 の まとめ
座長
山
根
この群 は小 児の真 珠腫性 中耳炎 の手衛 症例 に
雄(大 阪市立大学耳鼻咽喉科)
遅 滞 を 伴 う と,診
る。 今 回,我
関 す る 演 題 で あ る。
小 児 手 術 例 の 術 前,術
英
中,術
後 に 関 して は 成
療 が 非 常 に 難 しい も の と な
々は そ の よ うな 問 題 を 伴 った 中 耳
人 の 場 合 と違 って そ れ ぞ れ 問 題 が あ る こ とは 耳
真 珠 腫 症 例 を 数 例 経 験 した の で報 告 す る。
一例 眉 は 両 側 性 の 外 骨 腫 に 外 耳 中 耳 真 珠 腫 を
鼻 咽 喉 科 の 手 術 に 限 っ た こ とで は な い 。 術 前 診
伴 った 症 例 で,当
断 と術 中 所 見 の 相 違,大
dermalnevussyndromeと
抵 の報 告 は,鼓 膜 所 見
セ ソ タ ー 発 達 小 児 科 でEpi呼 ばれ る神経 系 の異
の 乏 し さ とは 違 っ た 中 耳 腔 の病 巣 の 悪 さ を 述 べ
常 疾 患 と診 断 さ れ て い る 。 二 例 目は 両 側 中 耳 真
て い る 。 学 会 で 何 度 と な く発 表 さ れ る演 題 で あ
珠 腫 症 例 で,7q一 症 候 群,WPW症
る 。 これ は,自 分 も含 め て,手
他 小 奇 形 を 伴 って い た 。 三 例 目は 左 中 耳 真 珠 腫
術 を 担 当 した 者
候 群,そ
が 実 感 す る 事 実 で あ り,術 前 の 認 識 の 甘 さ を身
症 例 で,左
に しみ て 感 じ させ る 演 題 で あ る。 また,慢
い,癩 痴 発 作 を 繰 り返 して い た。
症 の 手 術 治 療 が 激 減 した 現 在,よ
しん ぽ,手 術
を しな け れ ば な ら な い 耳 で あ る な らば,何
して 術 後 はcarefreeに
性炎
とか
しなけ れ ば い け ない と
多 くの 耳 鼻咽 喉 科 医 は 考 え て い る。 特 に,発 育
過 程 の学 童 に 関 して は,可
能 な 限 り,日 常 生 活
の
半 身 肥 大 を 伴 う神 経 系 の 異 常 を 伴
以 上 の 症 例 は い ず れ も顕 微 鏡 の 使 用 が 不 可 能
で,手
持 ち式 耳 鏡 を 使 用 し,多 人 数 で 押 さえ つ
け な が ら耳 の 処 置,観
質 疑:小
林 俊 光(長
察 を行 っ た 。
崎 大)
① 各症 例 の現在 の状 態 は
か ら耳 症 状 の た め の 耳 鼻 咽 喉 科 通 い を 開 放 して
② 外 耳 道 入 孔 部 の軟 骨 切 除 に よ る拡 大 を す べ
あ げ た い 。 こ の群 の 演 題 は 新 しい もの で は な い
き症 例 と 思 うが 如 何 。
が,多
くの 教 訓 的 な こ と を 述 べ て い る 。
応 答:佐
藤 伸 也(府
立 母 子 セ ン タ ー)
① 一3症 例 の現 在 の 状 態
現 在3症
(1)合 併 症 に よ り術 後 の 観 察 処
例 と も 耳 内 は 乾 燥 し,真
再 発 を 認 め て い な い が,何
珠腫 の
回 も再 発 を く り返
置 の難 しか った小 児 真 珠 腫
して い る の で 厳 重 な 管 理 を 要 す 。
症例
② 一 外 耳 道 後 壁 の 処 理 に つ い て一
こ の よ うな 症 例 で は 外 耳 道 後 壁 を お と し外
○佐藤伸也,佐 野光仁
(大阪府立母子保健総合医療セソター)
耳 道 入 口部 を 広 く し て い る 。 症 例3は
道 保 存,再
建 を 可 能 な らば 行 うと い う考 え 方
で あ った の で,最
中 耳 真 珠 腫 の 手 術 に お い て,術
期 的 観 察 は,他
後 の処置 や定
の 手 術 同 様 に 重 要 で あ る。 しか
し,幼 児 期 に 中 耳 手 術 が 行 わ れ た 場 合,解 剖 学
的 問 題,精
置,観
神 発 達 上 の 問 題 な ど に よ り術 後 の 処
察 が 困 難 な こ とが あ り,さ ら に 精 神 発 達
一6一
外耳
(再 建 す る)術
初 の2回
式 を と った 。
は外 耳 道 を 残 す
小 児 耳V◎L20,No.2,1999
め,中
(2)鼓
膜 所 見 に 比 し中 耳 障 害 が
高 度 で あ った 真 珠 腫 例
○斎藤 啓,磯 野道夫,宮 下仁 良,
木村忠司,村 田清高
(近畿大学医学部耳鼻咽喉科)
耳 障 害 が 進 行 した と考 え る 。 鼓 膜 所 見 が
軽 微 で も伝 音 難 聴 が 続 く と き は,側
け 早 期 に 試 験 開 放 を 行 うの が よい と考 え る。
質 疑:立
本 圭 吾(京
都 府 立 医 大 耳 鼻 科)
耳 小 骨 離 断 が 疑 わ れ た 例 で は,CTの
スラ
イ ス方 向 を 特 好珂に ア レ ソ ジ され な い か 。
応 答:斎
小児 の真珠腫 は症状 が乏 しい ため,学 校検 診
頭 骨CTも
参 考 に して 耳 小 骨 離 断 が 疑 わ れ た ら,出 来 る だ
藤
啓(近
大 耳 鼻 科)
2例 と も近 医 耳 鼻 科 で フ ォ ロ ー ・ア ッ プ さ
な どで偶 然発見 され る こ とが ある。 また鼓膜 の
れ て い た 頃 は,聴
異常所見 が軽微 な もので は,聴 力検査 の信頼 性
断 型 とい う判 断 が 難 か しか った 。 当 科 紹 介 の
の問題 な どか ら,長 い間外来 通院 に て経 過観 察
頃 は,年
齢 的 に 成 長 し,聴 力 像 も安 定 して お
され る こと もあ る。 今回我 々は,鼓 膜 の異常 所
り,CTと
合 わ せ て も判 断 は 明 ら か で あ っ
見 が 乏 しか った ため,耳 小骨 奇 形 が 疑 わ れ た
り,滲 出 性 中 耳炎 と して治 療 され て い た2症
例 を経験 した。 これ ら真珠腫 症 例の診 断の ポイ
ソ トや治療 方法 につ いて述べ る。
(症例1)8歳
女 児。 純 音 聴 力 検 査 で 左 離 断
力 像 に ば らつ きが あ り,離
た 。 手 術 治 療 は 診 断 が つ い た 後,直
ちに行 な
った。
質 疑:古
川 昌 幸(関
西 医 大 耳 鼻 科)
当科 におけ る小児 真珠腫 症例 に対 す る鼓室
形 成 術 の 術 後 成 績 で は2年
迄 は 比 較 的 良好
型 伝音難聴 を認 めた。 鼓膜所 見が 全 く正 常 で,
で2年
画 像検査 か らも耳小骨 奇形 が疑 われ,手 術治療
られ るが,キ
ヌ タ骨 を ト リ ミ ン グ して 再 建 し
を施行 した。 キ ヌタ骨 に接す る小 さな真 珠腫 と
た 症 例 の2年
以上の術後聴力については ど
キ ヌタ骨長 脚 の消失 を認め た。左鼓 室形 成衛IE
型変 法に て再 建 し,良 好 な術後 聴力 を得 た。
鼓膜 所見 が正常 で真珠 腫 との連続 性が な い こ
とか ら,本 例は先 天性真 珠腫 と考 え られ る。 問
題 は術 前 にCT所
見に て も真珠 腫 と診断 で きな
を 超 え る と中に 悪 化 す る症 例 が 認 め
うか?
応 答:斎
藤
啓(近
大 耳 鼻 科)
術 後 の聴 力 に 関 して は,定
期 的 に 検 査 して
い る。
今 回 の 症 例 は,1例
は2年,も
う1例 は1
か った こ とであ る。耳 小骨奇形 の診 断 の まま経
年 半 経 過 して い るが,今
過観 察 され ていれ ば,真 珠腫 に よる破 壊 が進 行
は な い 。 今 後 も 注 意 深 く観 察 した い 。
し十分 な聴 力改善 は得 られ なか ったか も しれ な
い。
(症例2)12歳
質 疑:小
林 俊 光(長
症 例1の
女 子 。 右伝 音 難 聴 が改 善 しな
い ま ま,滲 出性 中耳炎 と して長 期 間通院 治療 が
お こなわれ てい た。 耳鏡 所見 は右鼓 膜緊 張部 後
部 に軽 度陥 凹を認 め,画 像検査 か らも緊 張部 の
の ところ聴 力に変 化
崎 大 耳 鼻 科)
真 珠 腫 がCTで
理 由 は 何 か 。Window幅
把 え られ な か っ た
を 広 くす れ ば 写 っ た
ので は ない か。
応 答:斎
藤
啓(近
大 耳 鼻 科)
現 時 点 でCTに
よ る軟 部 組 織 の 質 的 診 断 を
真珠腫 に よる右耳 小骨離 断が疑 われ,手 術治i療
論 議 す る こ とは 有 意 義 な こ と と は 思 え な い 。
を 施行 した 。 陥 凹部 分 に一 致 して上 皮 の癒 着
当 院 で は 軸 位CTに
て,ほ
と,キ ヌタ骨 長脚 及び ア ブ ミ骨 上部構 造 の消失
連 続 性 に 関 して,診
断可 能 であ る、
を認 めた。右 鼓室形 成術1>型 変 法 にて再建 し,
聴 力 の改善 を得た。
今回 の報告例 は鼓 膜 の異常所 見が軽 微 であ り
高度 な中耳障 害を予 想 で きず長期 間経過 したた
ぼ100%耳
小骨 の
小 児 耳Vo1.20,No.2,1999
術 後 性 嚢 胞 を 疑 った が,嚢
(3)還
透 見 され,ま
納 に 中 頭 蓋 窩 法 を 要 した
胞 壁 を 通 して 血 管 が
た 嚢 胞 が 白色 内 容 を 有 し中 頭 蓋 と
の連 続 性 を 確 認 した こ と よ り,硬 膜 な ら び に ク
乳 突 腔 ヘ ル ニ ア
モ膜 に 覆 わ れ た 脳 ヘ ル ニ ア と診 断 した 。 髄 液 漏
は 認 め な か った 。 直 ち に 脳 圧 を 減 じつ つ 還 納 し
○立本圭吾,鈴 木敏弘,山 本 聡,
村上 泰
(京都府立医科大学耳鼻咽喉科)
た 。 真 珠 腫 の 再 発 は認 め られ な か った た め,硬
膜 欠 損 部 を 側 頭 筋 膜 で=被覆 した 後,側
頭骨 膜筋
弁 に て 削 開 腔 を 充 填 した 。
乳 突腔 ヘル ニアは側 頭骨手 術 にお け る稀 な合
脳 ヘ ル ニ ア の 成 立 機 序 に つ い て は,乳
突削 開
併 症 の一 つで あ る。今 回われ われ は,段 階 的鼓
時 に 生 じたtegmenの
室 形成 術二 次手 術 時に乳 突腔 側 よ り一 旦 は還 納
に 伴 う乳 突 腔 の 陰 圧 が 加 わ わ っ た め と 推 察 し
整 復 を施 した もの の,2年
た 。 そ の 後 の 経 過 は順 調 で あ った 。
後 に頭部 外傷 を契 機
に再脱 出を生 じ,中 頭蓋 窩法 を用 い て整復術 を
再 脱 出:平
欠 損 部 に鼓 室 峡 部 の 閉 塞
成9年12月
学 校 で の 遊 技 中 に1
施 行 せ ざるを得 なか った症例 を経 験 した ので報
mの
告 す る。
側 頭 部 を 打i撲 し乳 突 腔 ヘ ル ニ ア の 再 発 を 招 い
【治 療 経 過 】 平 成5年(6歳
時)に 他 院 に て左
中耳 真 珠 腫 に対 し鼓室 形 成 を受 けた が,平 成
6年 真 珠腫 再発 にて当科 紹介 受診 した。
初 回手 術:open/closed法
を用 いた 。 真珠 腫
高 さ か ら 転 落 し コ ソ ク リー トの 床 に 患 側
た 。 平 成9年12月15日,中
頭 蓋 窩 ア プ ローチ
に よ る 脳 ヘ ル ニ ア 整 復 術 を 施 行 した 。periarachnoidに
中 頭 蓋 底 をpetrousportionよ
し,嵌 入 部 を 切 離 した 後,大
り剥 離
腿筋 膜 にて硬膜 欠
は乳 突 洞,上 鼓 室 お よび錐 体 部 を 占拠 してい
損 な らび に クモ 膜 欠 損 部 を 被 覆 し さ らに 皮 質 骨
た.中 頭蓋 底 の硬膜 が一 部露 出 したが,止 血 は
に て 頭 蓋 底 部 を 補 強 した 。 乳 突 腔 に 充 填 した 骨
容 易 であ った。 側壁 を皮 質骨 に て再建 し,シ リ
コン板 を鼓 室か ら乳 突腔 に留 置 した。
膜 筋 膜 弁 は 萎 縮 して い た が 含 気 化 は 得 られ て い
二 次 手 術:6ヵ
月後 に二 次手術 を施行 した。
乳 突腔 を露 出す る と,直 ち に乳突 腔粘膜 で覆わ
れ た嚢 胞状 腫瘤 が確 認 され た。乳 突腔 に生 じた
一8一
た た め,鼓
室 峡 部 を 拡 大 し鼓 室 と連 続 す る 含 気
腔 と し術 を 終 え た 。
術 後 経 過 は 順 調 で,現
め てい ない。
在 の と こ ろ再 脱 出 は 認
小 児 耳V◎1.20,N◎.2,1999
億o①回 回串 ⑪駈ヨ図㊧ 圃咀尉 団駆會
第二群 の まとめ
座長
村
この群 で は指定 演題 の うち,小 児真 珠腫 お よ
田
清
高(近 畿大学耳鼻咽喉科)
こと,診 断 には ア ブ ミ骨筋 反射 が 有用 で あ った
び先 天異 常 を主 とす る伝 音 難聴 例に つい て発表
こ と,奇 形 に は3DCTが
が あ った。
術 後成 績 が よか った こ と,等 を述 べた。 耳 小骨
小 児真珠 腫 は進展 が早 く,自 然 治癒 も稀 で,
有 用 で あ った こ と,
連 鎖離 断例 で ア ブ ミ骨 固着 の有 無 を術前 に ど う
術 後再 発 も多 い。言 語発 達 その他 の発 育途 中 で
診 断す るかが難 しい問題 であ る。
あ り術 後聴 力 には成 人 と違 った配 慮が 必要 で あ
る。聴 力 では,社 会 適応 レベル の聴 力保 存 あ る
今村 らは ダ ウ ソ症児 の真 珠腫 の 手術例 を詳 細
に報 告 した。本 症 と真 珠腫 に は関 連性 が ある の
いは 回復が 必須 で あ る。対 側 が正常 聴 力 の場 合
か ど うか,術 後 外 耳道 の狭 窄例 が 多 くこれ に ど
両 耳 聴 が 可 能 か ど うか も検 討 す べ き事 項 で あ
う対 処 す るか,等 が検討 すべ き点 であ る。
る。反 対側 の術 前聴 力に応 じた術式 の選 択 が必
以 上 の3題 は い ず れ も小 児 特 有 の 配 慮 を 要
須 とい え る。 成 因 では先天 性 か後天 性 か,手 術
す る疾 患 で ある。 治療 の結 果 は患者 の生 涯 にわ
術式 で は乳突 削 開後 の充填 の適 否,段 階 手術 の
た り影 響 を与 え る。成 人 にな って疾 患 の影 を引
選択 の適 否,な どが 検討 され て いる。聴 力以 外
き摺 らな い よ うな治療 法 を確立 す るこ とが望 ま
で は真珠 腫 摘出 のた め の手 術術 式つ ま り外耳道
れ る。
後壁 の処 置,真 珠腫 の 占拠 部位 と手 術方 針,段
階手 術 の適否 が問 題 であ る。そ の他 に感 染 の有
無
年 齢 な どが考慮 すべ き もの であ る。
(4)当 科 に お け る小 児 真 珠 腫 症
先天 性 の耳 小骨 異常,ア ブ ミ骨 固 着 な どは炎
例 の検 討
症 もな く術 後 聴 力 は 一般 的 に は よい もの で あ
○土井 直,栗 山博道,山 下敏夫
(関西医科大学耳鼻咽喉科)
る。 しか し,衛 前診 断 が不十 分 な面 もあ る。特
に,耳 小骨 連鎖 離 断例 で ア ブ ミ骨 の可 動性 につ
い て しらべ る検査 が 少 ない。
遺 伝子 異 常 と種 々の先 天異常 には関 連が み ら
平 成7年
よ り当 科 に お い て 鼓 室 形 成 術 を 行
れ るが,真 珠腫 の発 生 との関連 は未だ 明か では
っ た19例 の 小 児 真 珠 腫 症 例 の 検 討 を 行 っ た 。
な い。地 道 な症例 の検 討 が望 まれ る。
統 計 を 見 る と,全 体 の 耳 手 術 症 例 の 中 で の 小 児
土 井 らは 小児 真珠腫 の 自験例 に 関 して統計 を
の 症 例 は,鼓
膜 形 成 術,鼓
室 形 成 術0型
が約
行 い,段 階手 術 が多 い,術 後成 績 は小 児以外 の
20%で
例 よ りよい ことな どを のべた。 小 児例 で充填 し
あ った。 真珠 腫 に おい て は段階 的鼓 室形 成術 の
て大丈 夫 か,両 耳聴 を期待 で きるのは どれ くら
比 率 が 小 児 で 高 か った 。 疾 患 別 で は 先 天 性 真 珠
い の比率 か,鼓 膜 正常 例 で先天 性真 珠腫 を早 期
腫 が11例
に発 見す るには ど うす るか等が 今後 の課題 であ
真 珠 腫 が5例,上
る。
科 で は 真 珠 腫 に 対 し て はCanaldo㎜tヲm-
池 田 らは小 児 では先 天性 の耳 小骨奇 形 が多 い
一9一
鼓 室 形 成 術 皿型,1>型
変 法 が 約10%で
と も っ と も 多 く,i癒 着 型,緊
鼓 室 型 が3例
張部型
で あ っ た.当
panoPlastywithcanalreconstructionand
小児耳VoL20,No.2,1999
mastoidobliterationを
基 本 術 式 と して お り,
骨 奇 形26例(重
複5例)の35症
例(年
齢
小 児 に お い て も 同様 で あ る。 術 後 成 績 は 段 階 手
2∼50歳)を
術 時 に11例 中3例
で あ った 。1)真 珠 腫 例 に お け る耳 小 骨 奇 形 の 合
に遺 残 性 の再 発 を 認 め た の
検 討 した 。15歳 以 下 の症 例 は18例
み で,最 終 的 な 経 過 観 察 期 間 中 に は 真 珠 腫 の 再
併 率 は36%,そ
発,耳
腫 例 は11例79%が20歳
漏,耳
小 骨 の排 出 を 認 め な か っ た 。 骨 性
の 逆 は19%で
ま で に 受 診 して い た 。
外 耳 道 を 一 旦 削 開 し病 巣 を 清 掃 し鼓 膜 及 び 耳 小
他 の3例
骨 の再 建 を 行 っ た 後 に,外
た 。 ∼ 方 耳 小 骨 奇 形 は4歳
耳 道 を 再 建 す る術 式
の 為 か 術 後 の 外 耳 道 の 陥 凹 を19例 中8例
め,本
に認
術 式 の 問 題 点 の 一 つ で あ る と思 わ れ た 。
聴 力 再 建 に つ い て 術 式 を み る と,16例
変 法 は3例
の み で,13例
中 皿型
がIV型 変 法 を 行 っ て
あ っ た 。2)真 珠
は30代 以 降 の 錐 体 部 真 珠 腫 例 で あ っ
か ら40歳 代 ま で 広
い 年 代 で 受 診 し て い た 。3)紹 介 受 診 は22例
63%で
あ り,真 珠 腫 例 は12例86%,奇
15例58%で
形例は
あ った 。15歳 以 下 で は15例83%で
16歳 以 上 の7例41%よ
り有 意(P<0.03)に
高
い た 。6ヵ 月 以 上 経 過 を 観 察 す る こ とが 出 来 た
率 で あ った 。4)真 珠 腫 例 で 鼓 膜 か ら病 変 が 透 見
12例,平
さ れ て い た の は9例64%で
均 観 察 期 間25.5ヵ 月 の 術 後 の 聴 力 成 績
を 見 る と,日 本 耳 科 学 会 の判 定 期 準 で,気
力40dB以
上 が75.0%,気
が66.7%,気
骨 導 差20dB以
導 聴 力 改 善15dB以
総 合 で83.3%の
導聴
内
上 が66.7%,
室 型 で はopen型
の2例
あ っ た 。11例 の 鼓
を 除 い た9例
で透 見 さ
れ て い た 。5)真 珠 腫 で は11例79%が
複 数 回手
術 とな り,そ の うち10例 が 段 階 手 術 で あ った 。
成 功 率 で あ っ た 。 今 回 の検 討 で
後 壁 処 埋 は8例57%がopen&reconstruction,
は 先 天 性 真 珠 腫 が 多 か った 為 か 比 較 的 良好 な 聴
4例29%がclosed法,open法
は 錐 体 部 型2例
力 成 績 と な った 。 術 後 の 聴 力経 過 に お い て 術 後
で 行 わ れ た 。 高 度 内 耳 障 害 の 無 い10例 で 伝 音
2年 を 経 過 した 頃 よ り一 度 回 復 した 聴 力 の 再 悪
再 建(3亜
化 す る症 例 が 見 られ,小
術 後 聴 力 は7例70%がABgap20dB以
児 におけ る鼓室形 成衛
型4例,4亜
型6例)が
行わ れ た。
内 で,
の 本 術 式 の 問 題 点 とな るの で は な い か と考 え ら
か つ5例50%が10dB以
れ た が,症
6)耳 小 骨 奇 形 で 連 鎖 が 残 存 して い た の は3例,
例 が 少 な く今 後 の長 期 経 過 観 察 が 必
内 と良 好 であ った 。
要 で あ る と思 わ れ た 。
連 鎖 離 断 が12例 で あ った 。15歳 以 下 で 連 鎖 離
質 疑:村
断 が9例75%と,16歳
田清 高(近
畿 大 耳 鼻 科)
両 耳 聴 が で き て い る と判 断 され る症 例 は 何
%あ
った か 。
応 答:土
井
直(関
意(P<0,02)に
は21例81%で
西 医 大 耳 鼻 科)
小 児 で も乳 突 腔 の 充 填 は,将
以 上 の3例21%よ
り有
高 率 で あ った 。7)耳 小 骨 異 常
キ ヌ タ 骨 長 脚 と ア ブ ミ骨 上 部 構i
造 に 観 察 さ れ た 。 ア ブ ミ骨 底 板 の 固 着 は10例
来 的 な感音性
難 聴 に は 影 響 しな い と考 え て い る。
39%で
み ら れ た 。 キ ヌ タ骨 長 脚 欠 損 は15歳 以
下 で9例75%と16歳
鼓 膜 正 常 症 例 は,難 聴 を 健 診 で指 摘 され 受
診 した症 例 で あ った 。
意(p<0.05)に
以 上 の4例29%に
比べ有
高 頻 度 で あ っ た 。 ア ブ ミ骨 上
部 構 造 の 変 形 は16歳 以 上 で 有 意 に 高 頻 度 で あ
っ た 。8)術 後ABgapが20dB以
の は1型3/3例,3亜
(5)小 児の鼓膜正常伝音性難聴
stapedectomy2/2例
型5/6例,
で あ っ た 。
stapedotomyは1/3例,可
○ 池 田 稔,生 井 明浩,山 内 由紀,
野 口雄 五,吉 川 琢 磨
(日本大学医学部耳鼻咽喉科)
内 とな った
型6/7例,4亜
しか
動 術 で は0/2例
し
と不
良で あ った。卵 円窓 形成 不全 のた め の伝音再 建
不 能 例 が2例
質 疑:村
存 在 した 。
田 清 高(近
畿 大 耳 鼻 科)
耳 小 骨 連 鎖 離 断 で ア ブ ミ骨 可 動 性 の 有 無 は
手 術 が施 行 され た 先 天性 真珠 腫14例,耳
小
一 一10一
ど の よ うに して 推i測 して い る か.
小 児 耳V◎L20,No.2,1999
応 答:池
田
稔(日
再 び0型 を行 な い,1型
大 耳 鼻 科)
イ ソ ピ ー ダ ソ ス テ ス トを 施 行 して い るが,
を 行 な った2例 の う
ち1例 で再 度1型 を行 な った 。2回0型
を行 な
った症例 は,再 手衛時 に遺残性 真珠腫を認めた。
他に特 別 な検査 法は 行 って いない。
10症 例 中 で 再 形 成 性 真 珠 腫 を認 め た 症 例 は な
か った。 聴 力 は 皿型 を 行 な った4症 例 では 改
(6)ダ
ウ ソ症 児 の 真 珠 腫 性 中 耳
炎10症
善傾 向が認 め られ たが,そ の他 の症 例 は改善 が
例 に対 す る鼓 室 形
悪 か った。 今 回 の症 例 は術 後 も滲 出性 中耳炎 の
成術
反復 が 多 く再含 気 化が 不 良で あ り,聴 力 の改 善
が不 良で あ る原 因 とも考 え られ た。 また再含 気
○今村祐佳子,飯 野ゆき子,鈴 木淳一
(帝京大学耳鼻咽喉科)
化 が不 良 では あ ったが,術 後 の遺 残 性真 珠種 は
1例 にみ られ た ものの再 形成 性 真珠 種 は1例 も
認 め られ なか った。
昭 和59年 か ら 平 成11年 ま で 当 科 に お い て 手
全 例 で術 後 に外 耳道 狭 窄 が生 じ,5例 は外 耳
術 を 施 行 した ダ ウ ソ症 児 の 真 珠 腫 性 中 耳 炎10
道 拡 大術 が必 要 で あ った。 また再 狭 窄を 防 ぐた
症 例 を 報 告 した(男
め 小 児 用 挿 管 チ ュー ブ を利 用 しス テ ソ トと し
時 の 年 齢 は8ヵ
児6例
・女 児4例).初
月 か ら14歳 で,受
診
診 の 理 由は
た。
質疑:小 林俊 光(長 崎 大 耳鼻 科)
難 聴 と 耳 漏 が も っ と も多 か った 。
各 症 例 は 術 前 ・術 後 と も に,患 側 あ る い は 対
ダ ウソ症 の 真珠 腫 に対 して は教科 書的 に も
側 に も滲 出 性 中 耳 炎 を 合 併 す る症 例 が 多 か っ
外 耳孔 の拡大 を 施行 す るOpen法
た 。 真 珠 腫 の 型 は,弛
れ て い る。
緩 部 型 ・緊 張 部 後 上 部 型
中 心 穿 孔 型 の1頂に 多 く,当 科 で 以 前 報 告 した
10歳 以 下 の 小 児 真 珠 腫 の 初 回 手 術 例 の 統 計 と
比 較 し て,特
に ダ ウ ン症 児 に 特 徴 的 な 型 が あ る
とは 考 え られ な か った 。
術 式 は,初
皿 型 変 法3例
の う ち4例
よ うな術式 を とるべ きでは ない か。
応 答:今 村祐 佳子(帝 京大 学耳 鼻科)
で2次
た めに 耳 甲介軟 骨 を摘 出 して充 分拡 大 してい
手術 を
行 な った 。2次 手 術 は0型
を 行 な った5例
ち,1例
でy型
が 皿型 変 法,1例
外耳 道狭 窄 防止 の ため には,初 めか らそ の
狭 窄 す る部位 は軟 骨部 で あ り,狭 窄防止 の
回 手 術 で は0型5例,1型2例,
で,こ
が適 応 とさ
変 法,1例
のう
で
一11一
ます。 又 当科 では 小児 の真珠 腫 に対 して は後
壁再 建 型 の手術 を行 ってお り,ダ ウン症 児 も
例外 で は あ りませ ん。
小 児 耳V◎1.20,No.2,1999
㊥亀
①回 回串⑪冊目昌回咀励団寵自
第三群 の まとめ
座長
小
今 回 の 指 定 演 題 「小 児 の 難 治 性 耳 疾 患 」 と ビ
デ オ 演 題 か ら な る群 で あ る。
第7席1軟
他 覚 的 耳 鳴 は しば しば 報 告 され る疾 患 で あ る。
ァイ バ ー ス コ ー
プ に よる 軟 口蓋 の 運 動 と耳 鳴 音 の 同期,耳
放 時 間,耳
俊
光(長 崎大学耳鼻咽喉科)
りこ む 危 険 が あ る。 す な わ ち,sensitivityは
上 す る がspeci丘cityは
口 蓋 ミ オ ク ロ ー ヌ ス と合 併 す る
蔵 野 ら は14歳 例 を 提 示 し,フ
林
鳴 音 の 周 波 数 分 析,CT・MRIに
管開
よ
向
低 下 す る と い うわ け だ
(筆 者 はspeci丘cityの 低 下 は そ れ ほ ど 大 き くは
な い も の と考 え て い る が)。
どち らの 基 準 が 正 しい とい う こ とは な い 。 ど
ち ら の 基 準 に 従 うか は,何
を 論 じた い か に よ
る。 も し,先 天 性 真 珠 腫 の 特 徴 を 論 ず る の で あ
る器 質 的 疾 患 の 検 索 な ど詳 細 に 解 析 した 。 そ の
れ ばDerlackiの
結 果,器
源 は 耳管管 腔
珠 腫 を 集 め て そ の 特 徴 を ま とめ る の が 正 確 で あ
離 着 音 ま た は 軟 口i蓋と咽 頭 後 壁 離 着 音 と推 定 し
ろ う。 しか し,先 天 性 真 珠 腫 の 頻 度 を 論 じる な
質 的 疾 患 は否 定 され,音
基 準 に 従 い 「純 正 」 先 天 性 真
え た 。 しか し,過 去 の 多 くの報 告 例 が そ うで あ
らば 中 耳 炎 の既 往 に と らわ れ な い 後 者 の 基 準 を
る よ うに,治
用 い る の が よ り実 態 に 合 っ て い よ う。 こ の ほ
療 効 果 は み ら れ な か った 。 順 天 堂
大 浦 安 病 院 小 児 科 大 塚 教 授 よ りチ ヅ クに 似 た 病
か,先
天 性 真 珠 腫 に 鼓 膜 穿 孔 が あ と か ら生 じ
態 で あ れ ぽ ハ ロペ リ ドー ル が 有 効 で は な い か と
て,後
天 性 緊 張 部 型 真 珠 腫 と誤 られ る場 合 も あ
り得 よ う。 逆 に,後
の示 唆が あ った。
第8席:小
児 真 珠 腫 に は か な りの 頻 度 で 先
天 性弛 緩部 型真 珠腫 であ り
な が ら 弛 緩 部 の 陥 凹 内 に 肉 芽 が 生 じ,さ
らに同
天 性 真 珠 腫 が 含 まれ て い る と推 定 され て い る。
部 を 表 皮 が 被 った た め に 陥 凹 部 が 閉 鎖 し正 常 鼓
しか し,そ
膜 所 見 を 呈 す よ うに な っ た た め,先
の 割 合 は 報 告 者 ご とに 大 き く異 な
天性 真珠 腫
が 難聴 か
と誤 って 分 類 され る こ と も あ ろ う(こ の た め 筆
れ らは 鼓 膜 正 常 ま た は
老 は 鼓 膜 弛 緩 部 の裏 面 に あ る 真 珠 腫 は穿 孔 が 無
滲 出 性 中 耳 炎 と して 治 療 され て い た も の が 多 い
く と も先 天 性 真 珠 腫 と は し な い こ と に して い
こ とか ら,先
る)。
る 、 工 藤 らは 小 児 真 珠 腫28例 中9例
ら発 見 され て い た が,こ
天 性 真 珠 腫 の 疑 い が 濃 い と考 え
た◎
以 上 の よ うに 先 天 性 真 珠 腫 の診 断 は 容 易 で な
先 天 性 真 珠 腫 の 定 義 の 適 否 が 論 じ られ て 久 し
い 。Derlackiの
定 義 が 有 名 だ が,こ
の定 義 の
い 。 筆 者 は い か な る定 義 に よ っ て も,先 天 性 真
珠 腫 と後 天 性 真 珠 腫 を100%正
し く分 類 す る こ
問題 点は 中耳 炎 の既往 が あれぽ 先天 性真珠 腫 か
と は 不 可 能 と思 っ て い る 。 神 の み ぞ 知 る で あ
ら除 外 す る点 で あ る。 気 づ か な い 場 合 を 含 め れ
る。
ば 幼 小 児 の 過 半 数 が 中 耳 炎 に罹 患 す る の で あ る
か ら,Derlackiの
定 義 は,真
第9席:鼓
膜 癒 着症 は 難 治 の 中 耳 疾 患 の 代
の先 天 性 真 珠 腫
表 とい え る。 小 児 例 は 癒 着 の 程 度 が 軽 く,手 術
を 相 当 数 取 り こぼ して い る は ず で あ る。 す な わ
成 績 も 大 人 に 比 較 し て 良 好 で あ る と い う報 告
ち,speciflcityは
(末 武:耳
高iいが,sensitivityは
い え る 。 しか し一 方,中
こ と に す る と,少
低 いと
耳炎 の既 往 を問わ な い
数 な が ら も後 天 性 真 珠 腫 を 取
一12一
科 学 会1997)に
基 づ き,馬 場 ら は 小
児 鼓 膜 癒 着 症 に 鼓 膜 剥 離,チ
ューブ留置 を基本
と した 手 術 を 施 行 し,現 在 の と こ ろ 成 績 は 良 好
小 児 耳V◎L20,N◎.2,1999
と した 。 手 術 を 決 断 しが た い疾 患 で あ る が,検
オ ク ロー ヌス に 対 す る 治 療 と して ベ ソ ゾジ ア ゼ
討 され て よい 治 療 方 針 と思 う。
ピ ソ類(ジ
ア ゼ パ ム,ク
プ酸 エ チ ル),抗
ドー パ ミン薬(チ
投 与 を お こ な っ た が,耳
⑦
質 疑:川
城 信 子(国
6,7年
田 隆 志2),成
尾 一 彦3),
鳴 音 の 頻 度,強
度,と
立 小 児 耳 鼻 科)
と7歳)に
つい て耳 科学 会
で 報 告 した 。 そ の 後 の 経 過 を み る と6,7年
(1)大淀 病 院耳 鼻 咽喉 科,2)星 ヶ丘 厚 生 年 金
経 過 した 現 在,他
病 院 耳 鼻咽 喉 科,3)奈 良 医 大 耳鼻 咽 喉 科)
覚 的 筋 性 耳 鳴 は 消 失 し,意
識 的 に 鳴 らす こ とが で き る.薬
ず,自
致 や 開 口運 動 に よ る変 化 を 認 め な か った.耳
の 頻 度 は 一 定 せ ず,完
応 答:蔵
止 す る こ とは 出
野 晃 治(大 淀 病 院 耳 鼻 科)
本 人 は,耳
鳴
鳴音 につ い て大 きな苦痛 を感 じ
て いなか った。
全 に 停 止 して い る 時 間 も
意 的 に発 生,停
剤は使用せ
然 に 改 善 した 。 先 生 の 症 例 は 耳 鳴 を 苦
痛 に 感 じて い た か 。
性 。2年 前 よ りの 両 耳 の カ チ
カ チ とい う耳 鳴 を 主 訴 に 来 院 した 。 脈 拍 との 一
存 在 した が,随
ア プ リ ド)
前 に 同様 の咽 頭 ミオ ク ロ ー ヌス に よ
る 耳 鳴2例(6歳
細 井 裕 司3)
患 者 は14才,女
フラゼ
もい ず れ の薬 剤 で も軽 減 で きな か った 。
軟 口蓋 ミオ ク ロー ヌ ス に よ
る他 覚 的 耳 鳴 の1例
○ 藏 野 晃 治1),上
ロナ ゼ パ ム,ロ
質 疑:大
塚 親 哉(順
天 堂 大 学 浦 安 病 院 小 児 科)
チ ッ ク も考 え られ る との 話 だ が チ ッ ク とす
来 な か った 。
純 音 聴 力 検 査 は 異 常 認 め ず,テ
ム は 両 側 と もA型
れ ば ハ ・ペ リ ドー ル が 有 効 で あ る。 使 用 さ れ
ィソバ ノ グラ
で あ った 、 鼻 咽 腔 フ ァイ バ
た 経 験 が あ ります か 。
ー ス コ ー プ検 査 に て 軟 口蓋 と咽 頭 後 壁 の 離 着 が
視 覚 的 に 確 認 され,軟
応 答:蔵 野 晃 治(大 淀 病 院 耳 鼻 科)
ハ ロペ リ ドー ル に つ い て は,こ れ 以 上 の 薬
口蓋 ミオ ク ロ ー フ ス と耳
鳴 音 は 同 期 して 観 察 さ れ た 。 音 響 耳 管 法 に よ る
剤 投 与 に つ い て 母 親 の 理 解 が 得 られ な か った
耳 管機 能 検 査 を 施 行 した 。 患 者 に は 嚥 下 運 動 を
の で 行 い ませ ん で した 。
さ せ て い な い に もか か わ らず,軟 口蓋 ミオ ク ロ
ー ヌス 及 び 耳 鳴 音 と 同 期 した 耳 管 の 開 放 を 認 め
た 。 耳 管 開 放 時 間 は270∼420msecで
(8)小 児鼓膜癒着症 の手術療 法
あ った 。
サ ウ ソ ドス ペ ク トロ グ ラ ム を 作 成 し耳 鳴 音 の 分
析 を 行 っ た と こ ろ,耳
20msecで,周
波 数 は1800∼6000Hzお
8000∼10000H3に
よび
分 布 して い た 。 この 症 例 の
鼻 咽 腔 フ ァイ バ ー ス コ ー プ 検 査,耳
査,サ
○ 馬 場 保,中 尾 善 亮,小 林 俊 光
(長崎大学耳鼻咽喉科)
鳴 音 の 持 続 時 間 は10∼
管機能検
鼓 膜癒着 症 は中 耳炎 の後遺症 で難治 な耳疾患
の代表 とされ る。進 行す れば 耳小骨 破壊 に よる
ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム の 結 果 よ りこ の
症 例 の耳 鳴 は 耳 管 管 腔 離 着 音,あ
る い は 軟 口蓋
難聴 ・耳漏 や真 珠腫 性 中耳 炎 の可能性 もあ る。
と咽 頭 後 離 着 音 に よ る も の と考 え ら れ た 。 軟 口
しか し,手 術療 法 は術後 の鼓膜 の再癒 着 の問 題
蓋 ミオ ク ロー ヌ ス の 器 質 的 な 原 因 を 検 索 す る た
もあ り耳漏 や難 聴 のな い症 例 では積 極的 に行 わ
めCT,MR王,MRA,ABRを
常
れ て い るわ け では な く,耳 鼻科 医 と して も対 応
を 認 め な か っ た 。 ま た 軟 口蓋 ミオ ク ロ ー ヌ ス以
に苦 慮す る疾患 の一つ で あ る。 最近 我 々は 小児
外 の 神 経 学 的 異 常 も認 め な か っ た 、 器 質 的 疾 患
の鼓 膜癒 着 症 に対 し,病 態 の進 行 防正 の観 点か
施 行 し た が,異
を 疑 わ せ る所 見 は な く,年 齢 か ら も機 能 的 疾 患
ら積 極 的 に低 侵 襲 手 術 を 行 って い る。 対 象 は
が 疑 わ れ た 。 耳 鳴 音 の 根 本 原 因 とな って い る ミ
9例9耳(部
一
三3一
分 癒着8耳,全
面癒 着1耳)で,
小児耳Vo1.20,No.2,1999
年 齢5∼15才(平
均7.9才)男
で あ る 。 術 前 聴 力 は5∼33(平
性3例
2才 児 とい う事 か ら,チ
女 性6例
均18.1)dB聴
力
ューブ留置 等 で経
過 を 見 る事 で 良 い の で は と思 い ます 。
レベ ル で 多 くは ほ ぼ 正 常 で あ っ た 。 手 術 は 全 例
外 耳 道 内 切 開 に よ る耳 鏡 内i操作 で 行 い 鼓 膜 の 剥
離 ・形 成 と経 鼓 膜 換 気 チ ュ ー ブ 留 置 を 行 った 。
術 後 の経 過 は現在 の所 全例 良好 で再癒 着等 は認
め な い 。 手 術 法 お よ び 臨 床 経 過 をVTRに
(9)難 聴 が 診 断 の契 機 とな った
小 児 中 耳 真珠 腫 の検 討
て供
○ 工 藤 典 代,小 林 由実
(千葉県 こども病院耳鼻咽喉科)
覧 す る。
質 疑:立
本 圭 吾(京
都 府 立 大 耳 鼻 科)
チ ュ ー ブ の 留 置 期 間 は ど の程 度 予 定 して い
る の か,又
応 答:馬
場
抜 去 時期 は。
保(長
小 児 の 中 耳 真 珠 腫 は 先 天 性 真 珠 腫 が 多 く,進
崎 大 耳 鼻 科)
96年 か ら 手 術 を 行 っ て い る が,チ
展 範 囲 も広 く再 発 も 多 い と い わ れ て い る 。 今
ュー ブ
回,当
施 設 で 手 術 を 行 った 真 珠 腫 新 鮮 例 に つ き
留 置 例 で は 現 在 も チ ュー ブ は 留 置 した ま ま で
発 症 の 経 緯,聴
あ り,今 後 検 討 させ て 頂 き ます 。
の で 報 告 す る.
追 加:小
林 俊 光(長
る い は 行 っ て もチ ュ ーヴ 留 置 の
み で 経 過 を み る こ とが 多 い と思 う。
い る 間 に 癒 着 が 広 範 に な り進 行 し て ゆ く の
在 は2∼3歳
を 行 っ た 真 珠 腫 新 鮮 例 は30例 で あ り,そ
で あ っ て も鼓 膜 剥 離 と チ
のう
ち13例 が 学 校 健 診 な ど で 難 聴 を 指 摘 さ れ た こ
と が,真
しか し,今 回 の報 告 に み る よ うに 放 置 して
で,現
術 所 見 な ど検 討 を 行 った
1990年 か ら99年 ま で の10年 間 に 当 科 で 手 術
崎 大 耳 鼻 科)
幼 小 で あ る と,多 少 の 癒 着 が あ っ て も手 術
を 行 わ ず,あ
力,手
珠 腫 の 発 見 の 契 機 に な って い た 。17
例 は 幼 小 児 期 か ら の 度 重 な る 耳 漏 が あ り,真 珠
腫診 断に至 っていた 。
難 聴 指i摘年 齢 は6才
か ら11才 で あ っ た 。 そ
ュ ー ブ 留 置 を 早 期 に 行 うこ と と して い る。 ま
の 後 半 年 か ら4年
た,チ
断 ・手 術 に 至 って い た 。 難 聴 か ら滲 出性 中 耳 炎
ュー ブ は 可 及 的 長 期 に 入 れ て お く方 針
としてい る。
質 疑:工
藤 典 代(千
を 疑 わ れ,滲
葉 県 こ ど も病 院 耳 鼻 科)
中 の 治 療 を 受 け て い た 例 が13例
中12例 あ っ た 。 うち 鼓 膜 チ ュー ブ 留 置 は2例,
鼓 膜 換 気 チ ュ ー ブが 留 置 して い る 間 は 経 過
が 良 好 で も,チ
経 過 後 に当 科 を 紹 介 され 診
ュー ブ が 脱 落 した あ とに,再
鼓 膜 切 開 す る も滲 出 液 な し,が2例
で あ った 。
鼓 膜 の 状 況 は 全 例 に 穿 孔 を 認 め ず,2例
に肉芽
癒 着 を 示 す 例 が 多 い と思 わ れ ます が い か が で
が 認 め られ た 。 対 側 耳 の 状 況 は 滲 中 が8例,
し ょ うか 。
正 常 が8例
応 答:馬 場 保(長 崎 大 耳 鼻 科)
一 例 ,我 々は 経 験 が あ り,ISlointに
手 術 ま で の 期 間 に 感 音 難 聴 を 来 し た 例 は1
癒着
例 あ った 。 手 術 時 に確 認 され た 耳 小骨 の破 壊
した 例 が あ る が 癒 着 は軽 度 で 再 チ ュ ー ブ留 置
は,槌
を 行 って 癒 着 の 進 行 は 現 在 の と こ ろ な い 。
鐙 が5例
質 疑:中
尾 圭 介(耳
で あ った 、
鼻 科)
・砧 が1例,砧
例 あ った 。手 術 は1型
に も長 期 か か る と思 わ れ ま す が,今 後 の マ ネ
ー ジ メ ソ トに つ い て 御 教 示 下 さ る と幸 い で
4型 変 法 が9例
す、
例 に よ り段 階 的2期
保(長
崎 大 耳 鼻 科)
あ った 。13例
の うち 鐙 骨 の 上 部 構 造 が 消 失 して い た 例 が10
て い ま す 。 聴 力 評 価 も難 し く,耳 管 機 能 成 熟
場
・砧 ・
で あ った。 術 前 の 聴 力 は 平均 で それ
ぞ れ28.8dB,40.7dB,41.7dBで
2才 前 後 の 子 供 で す で に 癒 着 高 度 の 例 を 診
応 答:馬
・鐙 が7例,槌
た うち の5例
が1例,3型
で あ り,再 発 は4型
変 法 が3例,
変法 を行 っ
に 見 られ た 。 な お96年 か ら は 症
手 術 を 行 って い る 。
以 上 の よ うに 難 聴 か ら発 見 され た 小 児 の 真 珠
一14一
小 児 耳VoL20,No.2,1999
腫 は 半 数 が 就 学 前 後 で 難 聴 を 指 摘 され る に も拘
私 ど も の100例 近 くの 小 児 真 珠 腫 の 統 計 で
らず,当 初 滲 中 と診 断 され 治療 を受 け て い る 例
は,先
が 多 く,診
い な い 。 しか し遺 残 性 は や は り多 い の で,先
断 確i定 ま で に6ヵ
月 か ら4年
を要
天 性 真 珠 腫 で は 再 形 成 真 珠 性 は 生 じて
して い た 。 鼓 膜 に は 穿 孔 は な く,手 術 時 の 砧 ・
生 が お っ し ゃ る よ うに 段 階 手 術 を 施 行 す る の
鐙 骨 の 破 壊 の 程 度 か ら して も真 珠 腫 は 進 展 例 が
が 望 しい と考 え て お ります が 。
多 く これ ら は 先 天 性 真 珠 腫 と考 え て い る。
質 疑 及 び 追 加:飯
野 ゆ き子(帝
再 発 は 遺 残 性 か,そ
篠答:工
京 大 耳 鼻 科)
藤 典 代(千
葉 県 こ ど も病 院 耳 鼻 科)
再 発 例 は す べ て 遺 残 性 再 発 と考 え て い ま
れ と も再 形 成 性 で す
か?
一15一
す。
小 児 耳VoL20,N◎.2,1999
㊥o◎回 図窃⑪馳目厨團咀劉団寵會
第四群 の まとめ
座長
本 群 は 一般 と指 定 演 題 の 混 合 で,言
鈴
鹿
語 外来 か
有
子(金 沢医科大学耳鼻咽喉科)
PBP遺
伝 子 の 変 異 検 索 で は,PBP遺
らみ た 中 耳 疾 患 の 検 討 と い う こ と で 聴 覚 聴 覚 士
異 とpenicillinGに
の 立 場 で の発 表,小
し,今
児 科 医 の 立 場 か ら歪 成 分 耳
音 響 放 射(DPOAE)と
聴 性 脳 幹 反 応 の 比 較,
急 性 中 耳 炎 起 炎 菌 のPCR法
結 合 蛋 白(PBP)遺
に よるペ ニ シ リソ
伝 子 変 異 の 検 討 の3題
で
あ る。
の 検 討 で,言
間 に 言 語 外 来 を 初 診 した127例
語 発 育 遅 延 が 主 訴 の70%以
上を
児 が 一 番 多 か っ た 。 全 症 例 の うち 精
査 に よ る 難 聴 は28例 で あ り,両
あ っ た が,そ
の うち7例
い て い な い 例 で,言
回 の タ ー ゲ ッ トで あ る肺 炎 球 菌 の 薬 剤 感
受 性 を 迅 速 に示 し,こ れ か ら ま す ます 応 用 され
な け れ ば な らな い 研 究 と思 わ れ る 。 しか し中 耳
炎 を 繰 り返 す 毎 にPBP遺
伝 子 の変 異 パ ター ソ
異 な る こ とが 多 い とい う こ とな の で,さ
らな る
因 子 の存 在 を 考 え ね ぽ な らな い と い う演 者 の 仮
説 に は 共 感 す る。
側 性 は82%も
は 家 族 が 難聴 に 気 づ
語 の遅 れ に 比 べ 難 聴 は 周 囲
⑩
言語 外 来 か らみ た 中耳 疾 患
の検 討
に は わ か りに くい こ とを 暗 示 して い た 。 全 症 例
の うち 中 等 度 以 上 の 難 聴 は9例
性 は7例
が よ く相 関
お よ び パ ル ス フ ィー ル ド電 気 泳 動 の パ タ ー ンが
演 題10は2年
占 め,2歳
対 す るMIC値
伝 子 の変
で 全 体 の6%に
で,か
つ両側
○早川 忍,鈴 鹿有子,友 田幸一
(金沢医科大学耳鼻咽喉科)
しか あ た ら な か った 。
こ の結 果 か ら大 半 を 占 め る 軽 度,ま
た片側 性難
聴 で も言 語 発 達 に 影 響 す る とい うこ とに な る。
難 聴 の 原 因 は 滲 出性 中 耳 炎 が ほ とん ど と い うこ
とな の で,ま
す ます 言 語 習 得 時 の こ の 疾 患 の コ
ン トロ ー・ル が 大 切 だ と考 え られ た 。
演 題11はDPOAEの
過 去2年
例(男
間 に 初 め て 受 診 した 言 語 障 害 児127
児91例,女
児36例 。 年 齢 は0∼11歳)の
うち 難 聴 特 に 中 耳 疾 患 に よ る難 聴 に つ い て 検 討
検 討 で あ る。 小 児 難 聴
した。 対 象 の 言語 障 害 の種 類 は言 語 発 達 遅 滞
の 精 査 に お い て 徐 々 に 普 及 して い る方 法 で は あ
91例,構
る が,特
2例 。 聴 力 は 各 種 の 幼 児 聴 力 検 査 と必 要 に 応 じ
性 を 知 りな が ら測 定,判
大 切 で あ る 。 そ こ でABRと
定 す る こ とが
の比較 は重要 な こ
と で あ る 。 対 象 は43児(62耳)で,基
準 の設
定 に よ っ て は 聴 力 正 常 児 と異 常 児 を 区 別 で き,
てABRを
音 障 害23例,吃
音11例,小
行 い 判 定 した 。 両 側 性 難 聴 で 左 右 差
が あ る場 合 は 良 い 聴 力 の 程 度 で 分 類 した 。
全127例
中20dB以
上 の 難 聴 は28例(22%)。
ま た 疾 患 に よ り反 応 に 差 が あ る の も 興 味 深 か っ
両 側 性 難 聴 は23例(82%)だ
た 。 薪 生 児 に つ い て は こ の よ うに 小 児 科 で も ア
難 聴 の 程 度 は 軽 度(20∼40dB)16例(68%),
ク テ ィ ブ に 測 定 して い た だ くこ とは 大 切 だ と痛
中 等 度(40∼60dB5例(18%),高
感 した.
以 上)2例(14%).
演 題12はPCR法
が いか に迅 速 で 有意 義 な検
査 法 で あ る か が 強 調 され た 。 本PCR法
に よる
一16一
児失 語 症
った が,そ れ ら の
度(60dB
難 聴 の 種 類 は 伝 音 性 難 聴 が21例(75%),感
音 性 難 聴6例,混
合 性 難 聴1例
、
小 児 耳V◎1.20,No.2,1999
伝 音 系 障 害 の 原 因 は 滲 出 性 中耳 炎 が19例(86
%)と
最 も多 く認 め られ,そ
塞 栓2例
の他 は両側 の耳垢
と一 側 の 外 耳 道 閉 鎖1例
側 滲 出 性 中 耳 炎16例 の う ち7例
⑪
小 児 に お け る歪 成 分 耳 音 響
だ った。 両
放 射(DPOAE)と
は難 聴 に気 付
幹反 応
か れ て い な か った.
本研 究会 の今 回の テーマ であ る中耳疾 恵は滲
○安原昭博ユ),越智文子z),小 林陽之助窯)
σ)関
西医科大学附属香里病院小児科,
2)関
西医科大学小児科)
出 性 中 耳 炎 の み 認 め られ た 。 滲 出 性 中 耳 炎 を 示
した そ の 割 合 は 言 語 障 害 を 示 した 全 症 例127例
中 で は 約15%,難
聴 性 脳
聴 を 示 し た28例 中 で は 約7
割 だ った 。 両 側 滲 出 性 中 耳 炎16例 の うち 軽 度
難 聴13例,中
等 度 難 聴 は3例
だ った。 滲 出性
DPOAEは
周 波 数 特 異 性 が 高 く,特 に 高 音 域
中 耳 炎 は そ の 程 度 が 軽 い 事 が 多 く,見 過 ご され
の 聴 力 との 相 関 が 高 い とい われ て い る。 我 々は,
る事 が 多 い 疾 患 だ が,過
0∼10歳
去 の報 告 を み る と軽 ・
ま で の 小 児 のDPOAEを
記 録 しABR
中 等 度 難 聴 が 言 語 や 構 音 の 発 達 に 影 響 す る事 が
のV波
知 られ て い る 。 今 回 の 対 象 例 は 既 に 言 語 発 達 遅
児 に お け るDPOAEの
滞 や 構 音 障 害 を 示 して い る小 児 な の で,当
然よ
は,小
児43名(62耳),年
り良 い 聴 力 の 獲 得 が 望 ま しい と考 え られ る。 言
歳,男
女 比 は24:23で
語 の ケア を 行 う際 に は 難 聴 を早 期 に 発 見 し,治
に つ い て は,保
療 や 聴 力 管 埋 を 行 う事 が 重 要 と考 え られ ます 。
はScoutDPOAEsystcm(Bio-logic社)を
今 回 の 結 果 は 横 断 調 査 な の で言 語 障 害 と滲 出性
て 記 録 した 。 音 圧 はF1を65dBSPL,F2を
中 耳炎 の関 係 に つ い て は述 べ る事 は で きな い
55dBSPLと
が,今
定 した 。F2が537Hzか
後 の 検 討 課 題 と した い 。
質 疑1大
塚 親 哉(順
天 堂 大 学 浦 安 病 院 小 児 科)
① 言 語 発 達 遅 滞(軽,中
等 度 に よって お こ
のか 。 音 の省 略 な どは あ る の か 。
忍(金
齢 は 生 後14日 か ら10
あ る 。DPOAEの
測定
護 者 か ら 同 意 を 得 た 。DPOAE
用い
し,周 波 数 比 はF2/F1=1.2に
ら7,959Hzま
設
で間の
した 。Falsepositiverateが
測定
低 くSensitivityが
最 も 高 い と き を 検 討 す る と,DP・NF>4dBが
② 軽 度 の 難 聴 で の構 音 障 害 は どの よ うな も
川
特 徴 を検 討 した。 対 象
9周 波 数 に お い て2F1-F2のDPOAEを
る)に 何 か 特 徴 が み ら れ る の か 。
応 答:早
反 応 閾 値 と比 較 す る こ と に よ っ て,小
7周 波 数 中4個
以 上 のF2周
波 数 て み られ る と
き で あ り,こ の 基 準 でABRに
沢 医 大 耳 鼻 科)
よ る聴 力 正 常 児
と異 常 児 とを 明 確 に 分 け られ た 。
① 今 回 は そ の よ うな 内 容 の 検 討 は して い な
F2=2002Hz以
下 で5歳
以 上 と4歳
以 下 とを
い 。 印 象 と して は 精 神 発 達 遅 滞 を 伴 わ な い 児
比 較 した 場 合,5歳
で は 理 解 面 が 良 い の に 比 べ 表 出面 が 悪 い よ う
が 低 い 傾 向 が あ っ た。 聴 力 正 常 児 に お け る年 齢
に 思 って い る。
別DPOAEの
② 今 回 は 口蓋 裂 の 異 常 構 音 が 多 く,と
傾 向 は な か った が,質
くに
問 い た だ い た よ うな音
の省 略 を 示 す 症 例 も過 去 に い た 。
以 上 の 方 が3∼11dB,NF
中 で,F2・=977Hzに
ヵ 月 児 ま でDPOAEが
逆 転 した 。ABRが
F2=4,004Hz以
陽 性 で,1歳
お い て は11
以降 陰性 に
無 反 応 で あ った 症 例 で も,
上 の 高 周 波 数 域 でDP-NFが
陽 性 と な り,内 耳 の 外 有 毛 細 胞 の機 能 が 一部 残
存 して い る可 能 性 が示 唆 され た 。 滲 出性 中 耳 炎
で は,ABRの
反 応 が 不 良 で あ った.
質 疑:柿
阪 北 逓 信 病 院 耳 鼻 科)
本 晋 吾(大
DPOAEは,自
一17一
結 果 が比 較 的 良好 であ るに もか
か わ らずDPOAEの
分 も何 症 例 か 経 験 が あ り ま
小児耳VoL20,No.2,1999
す が,再
現 性 に 乏 しい と い う印 象 が あ り ま
す 。 波 形 が ア ー チ フ ァ ク トな の か,実
応 波 か,鑑
体 希 釈 法 に よ るMICの
際 の反
別 が 困 難 に 思 え る場 合 が あ りま
pbp2b,pbp2x遺
す 、 何 か よい 方 法 が あ れ ば 御 教 示 下 さ い 。
応 答:安
原 昭 博(関
DPOAEを
灘 定 と と もに,Polym-
erasechainreaction(PCR)法
に よ る,pbpla,
伝 子 の 変 異 を検 討 した 。 さ ら
に 連 続 し て 検 出 され た 菌 株(11エ
22株)に
西 医 大 耳,鼻科)
再 現 性 よ く記 録 す る た め に は,
ピ ソ ー ド:
お い て は パ ル ス フ ィ ー ル ド電 気 泳 動
法(puユsed一 五eldgelelectrophoresis:PFGE)
被 検 者 を 睡 眠 さ せ て 測 定 す る必 要 性 が あ る 。
を 用 い て エ ピ ソ ー ド毎 の 菌 の 同 ∼ 性 を 検 討 し
た。
(結 果)PCR法
⑫ 分子生物 学的手法 を用 いた
急性中耳炎起炎菌 の検索
32%にPBP遺
に よ り,S,pneumoniaeの
伝 子 の3遣
検 出 さ れ た 。PBP遺
伝 子 の 変異 頻 度 が増 加 す
る に 従 が っ て,penicillinGに
○ 島 田 純,保 富 宗 城,荒 井 潤,
鈴 本 正 樹,山 中 昇
(和歌山県立医科大学 耳鼻咽喉科)
約
伝 子す べ て に変 異 が
増 加 も認 め た 。 ま た,こ
対 す るMIC値
れ ら のPBP遺
異 パ タ ー ソ お よ びPFGEパ
の
タ ー ンは,連
伝子 変
続す
る エ ピ ソ ー ド11組 中 そ れ ぞ れ82%,91%に
お
い て 異 な って い た 。
(目 的)急
性 中 耳 炎 は 幼 児 期 に 頻 回 に 罹 患 し,
(考 察)PRSPはMRSAと
異 な り市 中 感 染
多 くは 鼻 咽 腔 に 存 在 す るHaemophilusin且uen-
症 と して 蔓 延 す る こ と か ら も迅 速 な 検 査 診 断 が
zae,Streptococcuspneumoniae,Movaxella
求 め られ る 。 しか し,従 来 の 微 量 液 体 希 釈 法 に
catarrhalisの 経 耳 管 的 感 染 に よ り発 症 す る と考
基 づ くPRSPの
え られ る 。 しか し近 年 で はpeniciUinresistant
め,臨
S.pneumoniae(PRSP)な
あ る と考 え る。今 回 行 っ たPCR法
ど の薬 剤 耐 性 菌 の 出
検 索 に は,長
時 間 を 要 す るた
床 に お い て 適 切 な 抗 生 剤 の選 択 に 問 題 が
現 と共 に 難 治 化/反 復 例 の 増 加 が 問 題 と され て
遺 伝 子 の 変 異 検 索 で は,PBP遺
お り,こ の よ うな 起 炎 菌 の 変 化 が 鼻 咽 腔 に お い
penicillinGに
て ど の よ うに 起 こ っ て い るか に つ い て は 不 明 な
S.pneumoniaeの
対 す るMIC値
に よ るPBP
伝 子 の変 異 と
が よ く相 関 し,
薬 剤 感 受 性 を し る迅 速 検 査 法
点 も多 い 。 今 回 は 急 性 中耳 炎 患 児 の 鼻 咽 腔 よ り
と して 有 用 で あ る こ とが わ か った 。 さ らに,急
検 出 され た 肺 炎 球 菌 に つ い て,PCR法
を用い
たPenicillinbindingProtein(PBP)遺
伝子変
性 中 耳 炎 の エ ピ ソ ー ド毎 にPBP遣
伝子 の変異
パ タ ー ソお よ びPFGEパ
タ ー ンが 異 な る こ と
異 の検 討,同
が 多 く,中 耳 炎 を く り返 す 場 合,そ
一 患 児 で つ づ い て 検 出 され た 菌 種
の 同一 性 に つ い て検 討 した 。
(方 法)和
起 炎 菌(ク
歌 山 県 立 医 科 大 学 を 受 診 した0∼5
一一18・
ロ ー ソ)に
起 こ され や す い こ とが 示 唆 さ れ た 。
を 対 象 と した 。 微 量 液
一
れ らはあ る
よ り引 き起 こ され る の で
は な く,別 の 起 炎 菌(ク
歳 ま で の 小 児 急 性 中 耳 炎 患 児 よ り分 離 同定 され
たS.pneumoniae63株
ロ ー ソ)に
よって引 き
小 児 耳V◎L20,No.2,1999
㊥o①回 口串⑪四図厨圃咀尉団寵臼1
第 五 群 の ま とめ 糊
座長
飯
々に上 昇 し,現 在 は 一側 は ろ う,一 側 は約100
発 な質疑応 答 が なされた。
膜 換 気 チ ュー
dBの 混 合 難 聴 とな って い る。 こ の よ うに ム コ
経 過 時 の 現 況 一一 治 癒 遷 延 例 の 臨
多糖 症 に合 併す る難 聴 はお そ ら く耳 管軟 骨 の器
第13庸 は,小
ブ 留 置 後5年
ゆ き 子(帝 京大学耳鼻咽喉科)
癒着 を み てい る。 そ の後,両 側 の骨 導閾 値ず 徐
本 群 で は 難 治 性 滲 出 性 中 耳 炎 に 関 す る3題
が 発 表 され,活
野
林 ら に よ る"鼓
床 的 検 討 一"で あ った 。 初 回 の チ ュ ー ブ留 置 後,
質的 変化 か ら,機 能 障害 が お こ り,難 治 性 の滲
5年 以 上 経 過 した 小 児 例 で は,ほ
小児
出性 中耳炎 が発症 す る もの と考 え られ る。 しか
に お い て 滲 出 性 中 耳 炎 は両 側 と も 治 癒 して い た
し感 音難 聴 の合 併が 高率 で あ る こ とが報 告 され
が,20%は
て い る こ とか ら,十 分 な経過 観 察が 必要 と考 え
ぼ80%の
い ま だ 滲 出 性 中 耳 炎 を 有 して い た 。
こ れ を 直 っ て い る も の が 多 い と と る か,5人
1人 は5年
に
る。
た っ て も 直 らな い と と る か は い ろ い
第15席 は,長 谷 部 らに よる"滲 出性 中耳 炎
ろ 考 え が あ るで あ ろ う。 さ らに こ の 治 癒 遷 延 例
に お け る乳 突 蜂 巣 硬 化 像 と軟 部 陰影"で あ っ
は,滲
た。 チ ュー ブ留 置を 要 した難 治性 滲 出性 中耳炎
出 性 中 耳 炎 と初 め て 診 断 され た 年 齢 が 小
さ け れ ぽ 小 さい ほ ど,ま た 鼓 膜 の 高 度 陥 凹 が 認
のCTを
め られ た も の,乳
らに
を経 過 して も,乳 突蜂 巣 に軟 部組 織陰 影 を有す
中 耳 貯 留 液 中 に コ レス テ リ ソの 結 晶 が 認 め られ
る もの が 小 児 で も27%に み られ た とい う。 さ
突 蜂 巣 の 発 育 不 良 例,さ
た も の が 多 い とい う。 筆 者 は,滲
調 べ てみ る と,チ ューブ留置 後3ヵ 月
出性 中耳炎 を
らにそ の よ うな症 例 で は乳突 蜂巣 の硬 化度 が 高
あ るい は 経 過 観
度 であ った。 演者 らは,こ の よ うな器 質 化病変
察 し て お り,遷 延 例 が 多 い こ と を 指 摘 し て きて
を有 す る滲 出性 中耳 炎症 例 では,将 来 上 鼓室 陥
有 す る ダ ウ ン症 児 を 多 数 治 療
い るが,ま
さに これ ら のす べ て が あ て は ま るの
凹 な どの真珠 腫 に進 展す る可 能性 が あ る ことを
が ダ ウ ン症 児 で あ る 。 臨 床 的 に 非 常 に 参 考 に な
示 唆 した。確 か に真 珠腫 症例 で は正常 例 に比較
る結 果 で あ る 。
して,乳 突蜂 巣 の発 育不 良例 が 多 い。 や は りこ
コ多 糖 症 の 一
の よ うに乳突 蜂 巣粘膜 に病変 が残 存 してい る も
あ っ た 、 ム コ多 糖 症 は種 々 の サ ブ タ イ プ
の,硬 化 病変 が 高度 の ものは,真 珠腫 へ の進 展
第14席 は,高
例"で
橋 ら に よ る"ム
が 報 告 さ れ て い る が,演
者 らは,Scheie症
候
の リス クフア クター と考 えて よい もの と思わ れ
群 で 滲 出 性 中 耳 炎 を 合 併 した 現 在18歳 の 症 例
るが,さ らに長 期 の観察 を是 非 行 な って いた だ
を 報 告 した 。 こ の 滲 出 性 中 耳 炎 は 難 治 性 で,数
きた い。
回 に わ た り,鼓 膜 チ ュ ー ブ 留 置 術 を 施 行 され て
い る が,中
耳 炎 は 治 癒 せ ず,伝
音 難 聴 の進 行 を
み て い る とい う。 筆 者 も ム コ 多 糖 症 のHunter
症 候 群 の一 例 の 経 過 を,数
い る 。 こ の 症 例 は,や
発 症 した が,そ
年 に わ た り観 察 して
は り滲 出 性 中 耳 炎 と して
の 後 両 側 鼓 膜 は 癒 着 し,一 側 に
対 して 鼓 室 形 成 術 を 施 行 した 。 しか し術 後,再
一19一
小 児 耳V◎L20,N◎.2,1999
と多 くが2∼3年
以 内 の チ ュ ー ブ留 置 期 間 で チ
ュー ブ留 置 回 数 も2回 以 内 で 治 癒 して い た 。
⑬ 鼓 膜 換 気 チ ュー ブ留 置 後
5年 経過 時 の現状一 治癒遷
延例 の臨床 的検討一
追 加:小
林 俊 光(長
崎 大 耳 鼻 科)
私 の 過 去 の 経 験 で は,10歳
を 過 ぎ て も遷
延 して い た 症 例 の 中 に 耳 管 の 逆 通 気 が 不 良 の
ケー スが 多 くみ られ た。
〇 小 林 由実,工 藤 典 代
(千葉県 こども病院耳鼻 咽喉科)
チ ュー ブ留 置 後 に蜂 巣 発 育 が み られ た の に
か か わ らず 予 後 不 良 で あ った 症 例 は や は り耳
管 機 能 不 全 が 考 え られ る と 思 う。
小 児 滲 出 性 中 耳 炎(以
ぎ る と ほ と ん ど の 例 が 治 癒 に い た る と され て い
質 疑:飯 野 ゆ き子(帝 京 大 学 耳 鼻 科)
コ レス テ リ ソ陽 性 を ど う考 え るか 。
る、 当 科 で1993年4月
応 答1小
1年 間 に,初
下OME)は10歳
を過
か ら1994年3月
まで の
回 の鼓 膜 チ ュ ー ブ留 置 を 行 った 小
児 を 対 象 と し,チ
ュー ブ 留 置 後5年
林 由 美(千
葉 県 立 こ ど も病 院 耳 鼻 科)
中 耳 腔 内 の 換 気 不 全 を 意 味 す る と思 う。
経過時 の
現 状 を調 査 した 。 対 象 症 例 は現 在 も経 過 が 追 え
て い る55例(男
齢 は2歳
児33例,女
児22例)103耳
⑭
ム
○ 高 橋 佳 文1),三
な くと
の 一 例
の 計11例 と,治 癒 遷 延 例 は20.0%で
代 康 雄1),久
保
武1),
澤 田亜 也 子2),守 田 雅 弘3)
エ)大
阪 大 学 ,2)西 宮 市 立 中央 病 院,3)箕 面 市
が 治 癒 し て い な い 不 良 群 は 男 児4例,
女 児7例
コ 多 糖 症
か ら11歳 で あ る 。 結 果 は55例 中,両
側 が 治 癒 して い る治 癒 群 が44例 で,少
も1側
で年
あ
立病院
った 。
治 癒 耳 の うち,多
くは2年
か ら3年
以 内の
チ ュ ー ブ 留 置 期 間 で チ ゴ ーブ 留 置 回 数 も2回
ム コ 多 糖 症Mucopolysaccharidosis(MPS)
以 内 で 治 癒 して い た 。 ア デ ノ イ ド肥 大 や 扁 桃 肥
は 酸 性 ム コ多 糖 の 分 解 に か か わ る リ ソ ソー ム酵
大,鼻
素 の 欠 損 に よ り,不 完 全 に 分 解 され た ム コ多 糖
副 鼻 腔 炎 の 存 在 は,治 癒 群 と不 良 群 に 有
意 差 は 認 め な か っ た 。 初 回 チ ュ ー ブ留 置 の 年 齢
が 組 織 に 沈 着,尿
に 有 意 差 は な か っ た が,初
Scheie症
(OMA)あ
る い はOMEの
回 急 性 中耳 炎
年 齢 が2歳
未満 の
中 に 排 泄 され る疾 患 で あ る。
遺 伝 の,予
候 群(MPSIS型)は
常染色 体劣性
後 の 比 較 的 良 好 なMPSで,角
例 で 難 治 化 す る 可 能 性 が 有 意 に 高 か った 。 中 耳
濁,顔
貯 留 液 中 の コ レス テ リ ソ結 晶 の 有 無 は,不
脈 弁 閉 鎖 不 全 な ど を 伴 う。
良耳
で は 検 査 例 全 て が 陽性 で あ っ た 。 鼓 膜 所 見 で は
Sade∬
度 あ る い はTos皿
貌 異 常,関
1歳 時MPSと
節 症 状,手
診 断 され,幼
動
少 時 よ り滲 出 性
度 以 上 の強度 陥 凹 が
中 耳 炎 を 繰 り返 し,長 年 に わ た り受 診 して い る
癒遷 延 に有意差 が認
Scheie症
経 過 中 見 られ た 場 合 は,治
め ら れ た 。 今 回 乳 突 蜂 巣 の 大 ぎ さ は 単 純X線
5歳,8歳
候 群 の 一 例 を 報 告 す る。
時 に 鼓 膜 チ ュ ー ブ留 置 術 を 施 行.
シ ュ ー ラ法 で撮 影 し,矩 形 面 積 法 に よ り計 測 し
以 降 耳 管 処 置 等 続 け る も,右
た 。 不 良 耳 の チ ュー ブ留 置 前 は 全 て 発育 不 良
音 性 難 聴 増 悪 繰 り返 す 。18歳 時,右
で,現 在 もそ の うち64.3%が
は 不 良 で あ り,40dB前
OMEの
膜混
根 管 症 候 群,大
不 良で あ った。
治 癒 遷 延 の 因 子 と して,は
じめ て の
OMAあ
る い はOMEと
診 断 さ れ た 年 齢,鼓
所 見,中
耳 貯 留 液 中 の コ レス テ リ ソの 有 無,乳
突 洞 の 発 育 状 態 は 重 要 と思 わ れ,治
膜
一20一
耳管 機 能
後 の 難 聴 を 呈 して い
る。 外 耳 道 も徐 々 に 骨 腫 様 の 隆 起 変 化 の た め 狭
窄 を きた し,鼓 膜 チ ュー ブ留 置 術 施 行 の妨 げ と
な っ て ぎた 。 現 在,外
癒 群 をみ る
耳 の 鼓 膜 陥 凹,伝
耳 道 形 成 術 も含 め 今 後 の
治 療 に つ き,本 人 及 び 家 族 と検 討 して い る。
小 児 耳V◎L20,N◎.2,1999
た。 これ らの こ と よ り高 度 の上鼓 室 陥凹 と乳 突
腔 の器質 化病 変 とは密 接な関 係 が あ る と考 え ら
⑯ 滲 出性 中耳炎におけ る乳突
蜂巣硬化像 と軟部陰影
れ た 。 また蜂 巣発 育 との関係 を 見 る と有 意 に発
育不 良例 に軟 部組 織 陰影 の残 存例 が 多 くみ られ
た。
○ 長 谷 部 誠 司,高 橋 晴 雄,船 曳和 雄,
永 田洋 美
(京都大学耳鼻咽喉 科)
こ こで今 回は乳 突 蜂巣 病変 の も う一 つ の指 標
と して硬 化 につ い て着 目 し,チ ュー ブ留 置前 に
もCTが
撮 れ た61耳 につ きそ の 乳 突 蜂 巣 の 硬
化度 を平 均CT濃
中耳真珠 腫 は小 児滲 出性 中耳炎 の後 遺症 の一
つ と され,時
度 でみ た。 そ の結果 有意 に乳
突腔 に軟 部組 織陰 影 が残 存す る例 の硬 化 が高 度
に 滲 出 性 中 耳 炎 に 見 られ る高 度 な
で あ った。 また成 人 例 では小 児例 に比べ さらに
上 鼓 室 陥 凹 は 真 珠 腫 の 危 険 因 子 と考 え られ て い
硬 化 が高 度 で,小 児で も器質 化病 変 を持 つ例 は
る。
将 来 硬化 が進 む可 能性 が考 え られ た。
こ こで 我 々 は これ ま で の 種 々 の 中 耳 疾 患 の 乳
蜂 巣 の発育 抑 制,硬 化 は幼 小 児期 よ りの炎症
の よ うな 高 度 の
とそ の持 続 が示 唆 され,ま た小 児滲 出性 中耳 炎
上 鼓 室 陥 凹 な どの 真 珠 腫 に 至 る成 因 と し て 乳 突
例 で時 にみ られ る乳 突腔 の器 質 化病 変は これ ら
腔 の 炎 症 性 病 変 に 着 目 した 。
と密 接 な関 係 を持 ちつ つ,乳 突腔 におけ る不 可
突 腔 の 換 気 病 態 の 観 察 か ら,こ
そ こで 以 前 に 我 々 は 滲 出 性 中 耳 炎 の 乳 突 腔 の
貯 留 液 の 器 質 化 の 有 無 を み る た め,チ
ュ ー ブ留
置 を 要 した 滲 出 性 中 耳 炎128耳 に 対 し,チ
ブ 留 置3ヵ
月 後,全
ュー
中耳貯留液が完全に排液
さ れ て か ら も 尚 残 るCT上
の軟 部 組 織 陰 影,す
逆 的換 気障 害因 子 また 炎症性 因 子 として将 来,
上鼓 室 陥 凹な どの真 珠腫 成 因 に関与 す る もの と
推測 さた。
質疑:西 山彰 子(愛 生会 病院 耳鼻 科)
① 硬 化病 変 と感音 難聴 の関 係 は?
な わ ち 器 質 化 病 変 の 有 無 に つ い て観 察 した 。 そ
② 硬化 病 変 と聴 力 との関 係は?
の 結 果,全
③ 硬化 病 変 の測定 方法 は?
体 と して28.9%,小
児 で も27%に
す
で に 軟 部 組 織 陰 影 の 残 存 が み られ た 。 また チ ュ
ー ブ留 置 後 の 鼓 膜 弛 緩 部 を み る と,陥 凹 の な い
例,軽
度 陥 凹 例 で の軟 部 組 織 陰 影 残 存 例 は そ れ
ぞ れ24.7%,23.8%で,特
に高 度 の上鼓 室 陥 凹
例 で は80%と
有 意 に軟 部 組 織 陰 影 が 残 存 す る
例 が 多 く,半
数 は乳 突 腔 を充 満 す る例 で あ っ
一21-一
応答:長 谷部 誠 司(京 大 耳鼻 科)
① 蜂 巣 の硬化 と難聴 の関係 は調 べ てい ない。
② 硬 化 度 は,CTフ
ィル ムを ス キ ャナ ーで デ
ジタル 化 し,NINinageで
度 を測定 した 。
蜂 巣 の平均CT濃
小 児 耳V◎L20,N◎.2,1999
第42回
日
場
主
日本 小 児 耳鼻 咽喉 科 研 究会 の ご案 内
時:平 成12年7月15日(土)
所:ホ テ ル京 阪 京 橋7F
(大阪市)
題:変 貌 す る急 性 感 染症
一 耐 性 菌 の 取 り扱 い一
一
お送 り下 さい 。
演 題 締 切:平 成12年4月15日(土)
〒641-0012和 歌 山市 紀三 井寺81H
和 歌 山 県 立 医科 大学 耳 鼻 咽 喉 科学 教 室
第42回 日本 小 児 耳 鼻 咽1喉科 研 究 会
会長 山 中
昇
TELO73-441-0651
FAXO73-446-3846
演 題 募 集:上 記 主 題 に 関 した演 題 を募
集 し ます 。 演 題 は400字 以
内 の 抄録 を添 え て会 長 宛
第43回
日本 小 児 耳 鼻 咽 喉 科 研 究 会 の ご 案 内
日
時:平 成12年12月2日(土)連
絡 先:
場
所:東 京商 工 会 議 所
〒154-0004東
主
題:小 児 の ア レル ギ ー疾 患
会
長:川 城
京 都 世 田谷 区 太 子堂3-35-31
国 立 小 児 病 院 耳 鼻 咽喉 科
信 子TELO3-3414-8121
一22一