「四国技報」第12巻24号 平成25年1月1日 徳島小松島港沖洲(外)地区耐震強化岸壁の整備について 小松島港湾・空港整備事務所 保全課 保全係長 前田 千 1.はじめに 小松島港湾・空港整備事務所では徳島小松島港沖洲ターミナル整備事業において、耐震強化岸壁の整 備を進めています。本稿では、整備目的と現在完了しているケーソン据付までの施工概要について紹 介します。 2.事業概要 徳島小松島港は、四国東部、徳島県の紀伊水道沿岸のほぼ中央に位置し、背後には徳島県の政治・ 経済・文化の中心地である徳島市及び小松島市を擁しています。また、四国において長距離フェリー が寄港している数少ない港の一つであり、関東・近畿・九州と四国を結び、高速道路や国道に直結し た四国の東の玄関口としての機能を担っています。 このような中、東京港~徳島小松島港~北九州港を結ぶフェリー航路は毎日就航していますが、フ ェリー貨物がほぼ満載になっている曜日もあるなど、取扱能力は限界に達しています。 このため、今後の利用企業の生産活動の増加や、モーダルシフトの進展に伴う貨物需要の増大を図 るため、フェリーの大型化に対応した新たなターミナルを整備するものです。 なお、本ターミナルは地震に強い構造とし、今後高い確率で発生が予想される東南海・南海地震な どの大規模地震発生後の被災地域への緊急物資等の搬入に加え、一定の物流機能を維持し、地域経済 への影響を軽減します。 <沖洲ターミナル> 岸壁水深 8.5m(耐震強化岸壁) 東京港・北九州港へ 図-1 事業概要図 37 「四国技報」第12巻24号 平成25年1月1日 3.整備の経緯 平成 21 年度予算にて新規事業採択された 後、現地着手に向けて事前調整を進め、平成 23 年度に泊地の浚渫を開始しました。浚渫工 事で発生した浚渫土の内、粘性土については 管中混合固化処理をして土捨場へ揚土しまし た。 また、平成 23 年度から 24 年度にかけて、 深層混合処理工法(CDM 工法)を用いて地 盤改良を行い、平成 24 年度には地盤改良をし た地盤直上の土砂の床掘を実施し、基礎マウ ンドを造成してケーソンを 12 函据え付け、現 在に至っています。 図-2 耐震強化岸壁標準断面図 4.施工概要 (1)浚渫 岸壁前面の泊地及び航路・泊地の浚渫を行い、砂質土は主にバージアンローダ船にて土捨場へ揚 土し、粘性土においては空気圧送船及び固化材供給船を使用し管中混合固化処理した上で土捨場へ 揚土しています。なお、現場条件より揚土距離が長く 1 日の揚土量が多いことから、本事業では 6,000PS 級の空気圧送船を使用しました。 また、管中混合固化処理するためのセメントの添加量は、事前に配合試験を実施し土捨場に求め られる管中混合固化処理土の強度を基に算出しました。施工においては、揚土量を自動計測し、専 用のシステムにおいて揚土量に対するセメント添加量を瞬時に計算し、自動でセメントが添加され るようになっています。 図-3 管中混合固化処理工法 概要 写真-1 空気圧送船 (2)地盤改良 主にケーソン据付直下に海上における深層混合処理工法(CDM 工法)にて地盤改良を実施しま した。改良形式は壁式で改良率はケーソン直下の一部分は 100%改良、それ以外の部分は 50%改良 であり、施工機械は先端に処理機が装備されている 1 回の改良面積が 4.6m2 級の深層混合処理船を 使用しました。 改良方式は図-4に示すとおり、処理機先端の攪拌翼で掘進していき、支持地盤まで到達した後、 セメントスラリーを吐出し攪拌しながら引き抜いて改良を行う「引抜吐出方式」で施工を行いました。 38 「四国技報」第12巻24号 平成25年1月1日 この「引抜吐出方式」は、主に中型船(4.6m2 級)及び大型船(5.7m2 級)で施工されます。 その他の工法としては、掘進しながらセメントスラリーを吐出し攪拌する「貫入吐出方式」があ り、主に小型船(2.2m2 級)で施工されます。 また、本施工に先立ち、管中混合固化処理と同じように配合試験を実施し、設計基準強度に対す るセメント添加量を設定しております。現場におけるセメントの添加及びスラリー注入量は、すべ て自動制御で行っています。 図-4 深層混合処理工法 施工方法 写真-2 深層混合処理船 (3)基礎捨石(ケーソンを据え付けるマウンド) 深層混合処理工法による地盤改良実施後、基礎捨石を施工するため、表層土の浚渫・床掘を実施し ました。浚渫・床掘した土砂は、前述したとおり砂質土は主にバージアンローダ船で揚土し、粘性土 においては管中混合固化処理を行い揚土しました。 その後、浚渫・床掘した場所へ基礎捨石を投入して均し作業を行い、ケーソンを据え付けるマウン ドを構築しました。 (4)ケーソン据付 ケーソン(12 函)の据付は吊り降ろし方 式(起重機船でケーソンを吊ったまま据付 現場までえい航して据え付ける方式)で 3,000t 吊の大型起重機船を使用しました。 据付時には、通常の据付作業時の内容に 加え、オペレーターがケーソンの据付状況 をリアルタイム画像で確認しながら微調整 を行い、据付作業を行いました。 写真-3で吊り上げているケーソンは、 重量が約 1,400t、高さ 11.3m あり、起重機 写真-3 船は高さが約 120m あります。 ケーソン吊り出し状況 (5)今後の施工について 今後は、引き続き泊地及び航路・泊地の浚渫を進めていくと共に、残りの 4 函のケーソンの製作 ・据付、上部工及び裏込・裏埋の施工を実施し平成 26 年度中の完成を目指しています。 39 「四国技報」第12巻24号 平成25年1月1日 5.事業のイメージアップ 本事業は海上工事がメインになるため、普 段は見ることのできない大型船舶を多く使用 します。特に一般の方は海上工事とはどんな 工事なのか、ほとんどの方が全く知りません。 そこで、本事業を一般の方に知ってもらう ため、地元の小学生、高専生、大学生等を対 象に現場見学会を実施してきました。 現場見学会は浚渫及び地盤改良施工時とケ ーソン据付時に数回開催し、施工する大型船 舶を前に「すごい!」と歓声が上がる場面も 写真-4 多く見られました。 現場見学会 6.おわりに 本稿では、徳島小松島港沖洲ターミナル整備事業において、当事務所が整備している耐震岸壁の 施工について報告させていただきました。 本事業は今後、泊地及び航路・泊地の浚渫、残りの 4 函のケーソンの製作・据付、上部工及び裏 込・裏埋工と続きますが、引き続き安全に留意し、現場見学会等事業の内容を広めるための取り組 みを行い、無事に事業を完了させるよう進めてまいります。 40
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