Ca・骨代謝総論

Ca・骨代謝総論
3年生内分泌レクチャー
担当 廣田
2012.12.11
1、Ca代謝概論
2、Ca代謝に関わる因子
3、高Ca血症、低Ca血症
4、骨代謝と内分泌
5、骨粗鬆症
1、Ca代謝概論
Caとは?
● Caは原子量40.08のアルカリ金属
● 生体構造維持に不可欠な骨の主要構成
成分(成人で体内に約1kg存在、その大
部分99%は骨に存在)
● その他筋肉収縮、神経興奮性などの各種
細胞機能の調節因子となっている。
● 血清Caのうち約45%はアルブミンなど血
清蛋白と結合している。
Ca吸収と排泄
Ca吸収と排泄
腸管
十二指腸など上部小腸から吸収。正味
100~150mg吸収。最も重要な因子は活性
型ビタミンD。
腎臓
糸球体で濾過されたCaの95%以上は再
吸収される。正味排泄量は100~150mg。
骨
リモデリングを常に行っている。PTH作用
により骨吸収を高めCaを動員する。
2、Ca代謝に関わる因子
PTH
PTH分泌・代謝
● 副甲状腺より分泌され、血清Caイオン濃
度の上昇により、Ca感知受容体(CaSR)を
介して分泌が抑制される。
● その他活性型ビタミンD、著しい低Mg血
症により分泌が抑制される。
● 血中半減期は2~3分で、主に肝臓で、
一部腎臓で行われる。
PTH作用
● 主要な役目は血清Ca濃度の調節であり、
主要標的臓器は腎と骨である。
● 腎では遠位尿細管に作用してCa再吸収
を促進。近位尿細管では1α水酸化酵素
を活性化し1,25(OH)2Dの産生を高める。
同時にP再吸収を抑制する。
● 骨に対して骨吸収を促進して血中へCa
を動員する。
ビタミンD
● 紫外線の働きにより
皮膚においてコレステ
ロール前駆体から生合
成されるものと、食事に
よる摂取からなる。
● 肝臓で25位が、さら
に腎近位尿細管で1α
位が水酸化され活性型
ビタミンDとなる。
ビタミンD作用
● 最も重要な作用は腸管でのCa・Pの吸収を促
進すること。
● さらに腎遠位尿細管においてCa再吸収を高
める。また副甲状腺に働いてPTH合成を抑制
する。
カルシトニン
● 甲状腺C細胞より分泌される32個のアミノ
酸からなるペプチド。血清Ca上昇によりCaSR
を介して分泌が促進される。
● 骨において破骨細胞の骨吸収能を抑制す
る。Caの骨への移行を促進させる。
● 一方腎においてCa再吸収を促進すると共
にビタミンDを活性化し、Ca保持に働く。PTH
とは独立した効果であると考えられている。
3、高Ca血症、低Ca血症
検査項目
血清Ca(正常8.5~10.5mg/dl)
補正Ca=測定値Ca+(4-血清Alb)
尿中Ca 200mg/日未満が正常
血清P(正常2.5~4.5mg/dl)
P再吸収率試験(%TRP) 正常81~90%
%TRP={1-(尿中P×血清Cr)/(血清P×
尿中Cr)}×100
尿細管P最大再吸収率(TmPO4/GFR)
検査項目
副甲状腺ホルモン(PTH)
以前はC末端を認識するPTH-Cが使われていた
が不活性部分も測定してしまう(活性のあるのはN
末端1-34の部分)。
現在は広くintact PTH(正常10~65pg/ml)が汎
用される。しかしN末端断片の7-84も測定してしま
う。
近年は高感度PTHやwhole PTH測定が可能
検査項目
活性型ビタミンD 1.25(OH)2D
正常18~50pg/ml
副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)
悪性腫瘍から産生
正常は1.1pmol/l未満
カルシトニン(正常15~86pg/ml)
高Ca血症
主な症状
全身症状
倦怠感、筋緊張、筋力低下、脱水
消化器症状 悪心、嘔吐、食欲不振、便秘
消化性潰瘍、膵炎
腎症状
口渇、多飲、多尿、尿路結石
神経症状
うつ状態、錯乱、昏睡
骨症状
骨関節痛、病的骨折
血清Ca 12mg/dlを超えるようになると高度な脱水症
状、意識レベル低下を伴い危険である。
高Ca血症の鑑別
低Ca血症
主要症候
テタニー、知覚異常
こむら返り
痙攣、喉頭・気管支痙攣
QT延長
Chvostek徴候
Trousseau徴候
低Ca血症の鑑別
4、骨代謝と内分泌
骨リモデリング
常に骨は吸収と形成を繰り返しながらCa含量
を一定に保っている。
骨代謝を調節する因子
●
●
●
●
PTH
活性型ビタミンD
エストロゲン
レプチン
など
グルココルチコイドと骨代謝
内分泌疾患と骨代謝
● 成長ホルモン、IGF-1
骨芽細胞増殖・分化を促進する作用を有する。
先端巨大症では骨代謝回転の亢進
成人GH分泌不全では骨密度減少⇒骨粗鬆
症におけるGH補充療法の可能性?
● 甲状腺ホルモン
破骨細胞を刺激し骨吸収亢進
甲状腺機能亢進症では高Ca血症、骨吸収増
大。幼少時の機能低下症では骨年齢の遅延。
TSH抑制療法は骨密度低下・骨折のリスク増
大を起こす。
糖尿病と骨代謝
5、骨粗鬆症
骨粗鬆とは
2001年NIHコンセンサス会議
骨強度に問題があり骨折を起こしやすくなる疾患
骨量または骨質が劣化して
骨折が起こりやすくなった状態
疫学
骨密度測定からすると日本人では約1280万人
の患者が存在する(2005年)。1年間に男性
0.6%・女性2.3%が新規発症、年々大腿骨頚部
骨折患者数は増加している。
● 75歳女性を1年間放置すると約5%が新規に
脊椎骨折する。
● 骨粗鬆症の新規骨折発生率は正常骨密度例
の約7倍に相当する。
骨粗鬆症は生活の質を低下させるだけでなく長
期的には骨折の有無に関わらず死亡リスクを有
意に上昇させる。
発症要因
1、遺伝的要因
2、骨量頂値
3、閉経
4、Ca代謝
診断
骨形成マーカー
OC、BAPなど
骨吸収マーカー
DPD、NTX、ⅠCTPなど
治療
● 予防的治療
運動・栄養(Ca摂取)
● 対症療法
骨折疼痛の鎮痛(NSAID、カルシトニン製
剤など)
コルセットの使用
● 根治的療法
PTH製剤
ヒトPTH(1-34)テリパラチドを持続的に皮下
投与すると、骨吸収が骨形成を上回り骨量減
少が生じる。
テリパラチドを1日1回間歇的に投与すると骨
芽細胞の分化が促進され、一方骨芽細胞のア
ポトーシスを抑制する。
テリパラチド間歇投与は破骨細胞活性よりも
骨芽細胞活性を選択的に刺激して、新しい骨
の形成を促進する。これにより骨形成が急速に
促進され骨量を増加し、骨折リスクが低下する。