骨粗鬆症臨床セミナー報告

骨粗鬆症臨床セミナー報告
激動している骨粗鬆症治療
GE ヘルスケア・ジャパン株式会社 X-ray セールス&マーケティング部
塩谷朋子
方を測定し、基準に対して低い方を採用することで骨粗鬆症の見
プして紹介されました。先にも記した通り、PTH は椎体の BMD 値
逃しを防ぐことが目的です。
の上昇が顕著であり、症例によっては綺麗に上昇線を描くグラフ
現在骨粗鬆症の治療は薬剤投与が主流であることは言うまでも
上村先生は、これを当然のこととした上で更に大腿骨は左右両
が紹介されました。
ありませんが、その治療も今は 2 度目の新時代に入っていると上
方とも測定すべきと主張します。
また、大腿骨の左右差については、投薬後の BMD 値が右と左で
れる松本市のかみむらクリニック上村幹男先生にお願いし、最新
村先生は指摘していらっしゃいます。
かみむらクリニックにおける腰椎及び大腿骨の測定数は累計で
約 10% の差が生じている例や、部位によって上昇や下降を繰り返
の骨粗鬆症治療についてその背景、歴史、薬剤、更には症例につ
1 度目は 2001 年の各種ビスフォスフォネート(アレンドロネー
20,000 件近いそうですが、投薬開始の判断及びモニタリングは原
す症例など、専門家でもなかなか説明し難い例を挙げられ、骨粗
いて語っていただきました。本稿はその概要報告です。
ト、リセドロネート、以下 BP)と SERM(ラロキシフェン)の登
則腰椎と大腿骨近位部の両側を測定して行っています。その結果、
鬆症診断及び治療の難しさについても指摘されていらっしゃいま
まずは我が国における骨粗鬆症治療の患者数が、罹患数に比し
場であり、それまで治療できなかった骨粗鬆症が、これらの薬剤
大腿骨 BMD の左右差は意外に大きく、もし片側のみで判断した場
した。
て少ないことが指摘されました。現在国内では約 1,100 万人の方
によって本格的に治療が可能になりました。
合には、20% 程度の見逃しが発生する恐れがあるといいます(図
が骨粗鬆症ではないかと推測されていますが、実際に薬剤による
そして、現在のミノドロネート、PTH(テリパラチド:TPTD)、
2)5)。腰椎と大腿骨両側の測定は部位ごとにポジションを取るよ
治療を行っている患者はわずかに 10% です 1)。
エルデカルシトールの登場が 2 度目の新時代であるといいます。
うな測定では人的かつ時間的に困難であり、これら 3 部位が簡便
この日の参加者は医師、診療放射線技師など併せて 35 名でした
上村先生は、骨粗鬆症治療は慢性疾患であり規模の小さな医療
これら薬剤の中でも PTH は非常に高い新規骨折抑制効果が認めら
かつ短時間で測定できることが求められるといいます。その意味
が、ほとんどの方が講演内容に対し満足され、有意義であったと
機関が担うことが望ましいと考えられ、また、経営においても骨
れ、今年に入り多くの臨床報告がなされています。
で、GE 製 DXA 装置は OneScan 機能を有しており、求められるべ
回答されていました。今後も同様の啓発活動は骨密度測定装置メー
粗鬆症治療を行うことは決して小さくない貢献があると指摘して
PTH は骨芽細胞の機能を活性化し、骨新生を促進する薬であり、
き性能を有しているということでした。
カーとしての責務でもあり、臨床情報と併せて提供していきたい
いらっしゃいます。
TPTD 20μg を連日 19 ヶ月投与した場合に、プラセボとの比較で
講演の最後には、先生自身が解析ソフトウェア enCORE を自身
と思います。
新規椎体骨折の発生率で 84% 抑制という非常に高い効果がありま
で操作し、豊富な臨床例からいくつか興味深いものをピックアッ
はじめに
PTHは椎体のBMD 値を顕著に上昇させる
11 月 18 日さいたま市において、弊社主催の骨粗鬆症臨床セミ
ナーを開催しました。講師には現在骨粗鬆症治療の第一線におら
整形外科と内科の情報共有が求められる
おわりに
した 3)。また、PTH は骨密度の顕著な上昇にも効果があり、同様
骨粗鬆症は静かな進行のために、どうしても医師患者双方とも
に連日 20μg を 18 ヶ月投与の場合、腰椎 BMD で 10.3% の上昇(ア
に意識が低くなりがちですが、寝たきりの原因としては男女とも
レンドロネートの場合 5.5%)、大腿骨頸部 BMD で 3.9%(同 3.5%)
に高い割合を占めており、慢性疾患としては死亡率が高いことも
の上昇がみられました。このことから PTH は、腰椎 BMD でより
指摘されています。
顕著に上昇が認められると考えられます(図 1)4)。
骨粗鬆症によって、直接死につながるわけではありませんが、骨
日本では 2010 年に、デイリーの自己注射タイプの PTH が発売
粗鬆症起因の大腿骨頸部骨折発生 1 年以内の死亡率は約 10% にも
され本格的な治療が開始されましたが、医師によっては骨粗鬆症
達しています。また、臨床骨折発生後の死亡の相対リスクに関して
治療でデイリーの自己注射という管理の難しさを懸念する声もあ
も、前腕遠位部骨折を 1.0 とした場合に大腿骨頸部骨折では 6.7 に、
るといいます。
更に椎体骨折では 8.6 とリスクが高いことが報告されています 。
しかし、上村先生は自身の経験からデイリーの自己注射を勧め
このように、骨粗鬆症は注目すべき疾患であるにも関わらず、
た患者で、それを拒絶した方はごくわずかであったと語りました。
参考文献
上記のように治療を行っている患者の割合は高くありません。こ
また、2011 年にはウィークリーの注射タイプの PTH も登場し投
2) Cauley JA et al.; Osteoporosis Int 11 556-561, 2000
の点について上村先生は、整形外科医と内科医の間の情報の断裂
与の選択肢が広がったといいます。これにより現在多くの医師が
を指摘していらっしゃいます。
PTH の投与を始め、関心も高まっているといいます。その投薬に
通常腰の痛みにしろ、骨折にしろ、骨粗鬆症起因と思われる症状
関して、現在は PTH のみならず骨粗鬆症薬は様々な特性の薬が出
が出た場合に、患者は整形外科を受診するのが普通です。しかしそ
ており、個々の患者さんの状態に応じてエビデンスに基づいた最
の後に、その患者が骨折の合併症として内科疾患を発症した場合
適な治療が必要だと力説されました。
2)
には整形外科を受診することは当然なく、近隣の内科を受診する
ケースが一般的です。
1) 骨粗鬆症財団による
3) Prevhal S, et al.: Curr Med Res Opln. 25(4), 921-928, 2009
図 1:FACT 試験 腰椎 BMD 及び大腿骨頸部 BMD(DXA)
4) McClung MR, et al.: Arch Intern Med. 165, 1762-1768, 2005
TPTD= テリパラチド ; ALN= アレンドロネート ; FACT:Forteo Alendronate Comparison Trial
McClung MR, et al. : Arch Intern Med. 165, 1762-1768, 2005
5) 池上、上村 BJN, 2011
GE DXA 装置 PRODIGY
医療機器認証番号:21500BZY00582000 号
販売名称:X 線骨密度装置 PRODIGY
本装置はクラス II 医療機器、設置管理医療機器・特定保守管理医療機器に該当します。
大腿骨BMDは左右差がある
この場合に内科医は、骨粗鬆症との関連を疑うことなく当該の
では、エビデンスに基づいた治療とは何でしょうか? それは
疾患にのみ注視し、結果として骨粗鬆症という根源疾患に目がい
やはりガイドラインに従うことと患者の BMD を正しく測定するこ
かないのではないかと指摘されています。つまり、整形外科医は
とであるといいます。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」にお
重症化した骨粗鬆症患者を追うことができず、逆に内科医は顕在
いては「脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準」が示されて
化した疾患にのみ目が奪われ、骨粗鬆症まで遡及しないのが現状
おり、薬物治療の開始基準が明示されています。また、同ガイド
であろうという指摘です。いずれにしろ骨粗鬆症という変容する
ラインでは BMD の測定方法として、椎体と大腿骨近位部の測定を
疾患に関しては整形外科、内科ともに感度を上げて取り組むこと
推奨しており、治療開始の判断及びモニタリングに関してガイド
が求められています。
ラインに従うことが重要であると主張します。椎体と大腿骨の両
図 2:大腿骨 DXA の反対側の大腿骨低骨密度に対する感度(%)
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GE today January 2013
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