活性型ビタミン D

2
2‒D 治 療 に 用 い る 薬 剤 活 性 型 ビ タ ミ ン D
治療に用いる薬剤
D
活性型ビタミン D
活性型ビタミン D 製剤の使用目的・使い分け,
ミン D 製在の多面的作用,予後改善効果の可
上記のガイドラインでの活性型ビタミン D 製
能性についても述べます。
剤の位置づけについて述べ,さらに活性型ビタ
慢性腎臓病(CKD)における
ビタミン D の代謝( )
図1
1)
本吉広 ,庄司哲雄
2)
1)蒼龍会井上病院 内科,2)大阪市立大学大学院医学研究科 老年血管病態学
食物から摂取されたビタミン D や紫外線に
腺ホルモン(PTH)の合成,分泌を抑制する
より皮膚で合成されたビタミン D はそのまま
働きがあります。
ではまだ生体内で作用する活性型のビタミン D
慢性腎不全∼透析患者では,活性型ビタミン
ではありません。これがまず肝臓でその 25 位
D の不足状態になりますが,それには 2 つの機
の部分が水酸化され,その後腎臓で 1α水酸化
序が知られています。第 1 の機序は,腎臓での
酵素により 1 位の部分が水酸化され生体内で作
1α水酸化酵素の低下により水酸化の障害のた
用する活性型の 1α, 25(OH)2D となり生物学
め 1α,25(OH)2D の産生が低下してしまうと
透析患者では主に低カルシウム血症の是正,二次性副甲状腺機能亢進症の治療目的で活性
的作用を発揮するステロイドホルモンになりま
いうものです。
型ビタミン D 製剤を用います。
す。活性型ビタミン D は主にビタミン D 受容
第 2 の機序は,FGF(Fibroblast growth factor)
体(VDR)を介して作用を示します。腸管か
-23 の影響です。CKD の初期の段階から,リン過
らのカルシウム吸収を促進させて血清カルシウ
剰を防止するために,骨から FGF-23 が分泌さ
ムを増加させたり,副甲状腺に作用して副甲状
れ,腎臓に作用して尿中へのリン排泄を増やし
POINT
1
2
3
4
5
透析患者では活性型ビタミン D の不足状態です。
活性型ビタミン D 製剤には経口製剤,静注製剤が数種類ずつあり,目的によって使い分けます。
日本透析医学会の「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」では血
清リン,カルシウム値に応じての活性型ビタミン D 製剤の使用指針が示されています。
ビタミン D には骨・ミネラル代謝以外の「多面的作用」があるといわれています。
腎機能低下
はじめに
リン蓄積を回避するために
骨より FGF-23 分泌亢進
透析患者においてリン,カルシウムなどのミ
イン」が作成されましたが,その発展版として
ネラル代謝異常は骨や副甲状腺機能に影響する
2012 年に「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代
だけではなく,血管石灰化を高率に合併し心血
謝異常の診療ガイドライン」
が発表されました。
管系疾患や生命予後にも影響します。そのため
CKD-MBD の管理においてリン,カルシウム,
CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代
PTH をコントロールする薬剤の使用は重要な
謝異常)という名称で全身性の疾患としてとら
治療手段です。とくにリン吸着剤,活性型ビタ
えられるようになっています。
ミン D 製剤,そして塩酸シナカルセトの重要
日本透析医学会から 2006 年に「透析患者に
性が大きいです。この章では腎機能の低下し
おける二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドラ
た患者でのビタミン D の代謝,透析患者での
44
透析スタッフ 2015 Vol.3 No.1
腎臓での水酸化酵素の低下
のためビタミン D が活性化されず
活性型ビタミン D の低下
低カルシウム血症
FGF-23 で代償しきれず
高リン血症
PTH 分泌亢進
二次性副甲状腺
機能亢進症
→線維性骨炎
高リン,高カルシウム血症
により血管石灰化促進
→心血管疾患・死亡
図 1 CKD-MBD の病態
腎機能低下,FGF-23 の低下により活性型ビタミン D
産生が低下します。
そして副甲状腺機能,骨への影響がおこりますが,さ
らには血管石灰化をきたし生命予後にも関係します。
透析スタッフ 2015 Vol.3 No.1
45