日本の農家男子の結婚と農業経営―2010 年農業センサスによる分析

日本の農家男子の結婚と農業経営― 2010 年農業センサスによる分析―
Difficulty of Male Marriage and Farm Household Income in Japan
西村教子(鳥取環境大学)
Noriko NISHIMURA(Tottori University of Environmental Studies)
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仙田徹志(京都大学)
Tetsuji SENDA(Kyoto University)
日本の男子生涯未婚率は 1980 年以降急激に上昇しはじめ、2010 年には 20.14%に
達した。男女ともに進展する晩婚化、未婚化は、性比や人口構造変化だけでは説明で
きず、男女の社会経済的要因の格差の縮小が大きく関与していると言われている。特
に農村部では後継者問題の解決を見ないまま農業労働力の高齢化、加速的な人口減少
が続いている。その一端を担っているのは農業経営者や後継者の未婚である。多くの
農業経営が家族を中心とした農家という形態から脱却できない中、彼らの未婚状態の
継続は将来的に農家や農村社会の存続を不可能にする。
一般的に結婚行動研究は人口学や社会学分野で取り組まれ、近年では経済学的な視
点による実証的分析も進んでいる。しかし、男子の結婚行動に関する研究は若者の非
正規雇用化との関係を中心に近年始まったばかりである。一方、農家の嫁不足の言葉
に代表される農家の未婚問題は農業労働力や農村社会の観点から事例を中心に、農業
や農家、イエそして農村社会といった取り巻く特殊な環境によって説明されることが
多く、統計資料を用いた実証研究は進んでいないのが現状である。
2010 年の国勢調査の結果によると、農林業に就業する 40-44 歳男子の未婚率は
33.1%、その他産業に比べて約 10 ポイント高くなっており、産業間格差が認められ
る。さらに、同年の農林業センサスによる農家男子を見ても、彼らの専従者率は非常
に低いにもかかわらず、国勢調査と同様の結果であった。そこで、結婚が男子の所得
や所得の男女間格差で規定されるのであれば、農家未婚もまた経済的要因が影響を与
えていることが考えられる。
そこで、本報告は 2010 年の農林業センサスの個票を用い、若年の農業経営者と同
居後継者の結婚を農家の農業経営状況や自身の農業従事状況などから説明し、彼らの
結婚問題が農家の低収入に起因することを明らかにしようとするものである。