南海地震による地盤の液状化 - 工学部 - 香川大学

南海地震による地盤の液状化
研究担当:岡添麻衣,川井淳,長谷川修一
1.地盤の液状化とは
(1)液状化の定義
(3)液状化しやすい地盤条件
地震によって地下水に満たされた土(主に砂)が,泥水になって地表に噴出する現象を液状化と
・やわらかい.(N 値(地盤の固さを表した値)がおおむね 15 以下である.)
いいます。液状化した後の地盤は沈下し、建物などが傾いてしまう危険性があります(図-1).
・地下水位より下にあって,飽和している.
・小さい粒の含まれる量が低く,粒の大きさがそろった中位の粒の砂の層からなる.
(4)液状化しやすい地形
・地下水位の高い沖積低地
・埋立地
・自然堤防
①初期状態
②液状化
③再堆積
(ゆる詰め)
(浮遊状態)
(下部に密に詰まっている)
図-1
液状化による地盤の沈下
・三角州
(5)液状化判定の方法
液状化判定は,地震による液状化を起こそうとする力と砂層の液状化に抵抗する力とを比べて
(2)液状化による被害
判定を行います.ある地点の液状化危険度を簡易に予測する場合,その地点の地盤の液状化の程
液状化した砂地盤は一般の液体と同じように浮力を持つため,地盤の支持力を著しく失わせ,
度を表す指標として液状化安全率(FL)を地盤深さに対して積分した液状化ポテンシャル(PL 値)
その上に建っている建築物や構造物に大きな被害をもたらします(図-2,3).また,地下の埋
を用います(表-1).
設管等にも被害を与え,埋設管や継手の破断,極端な場合には管が地上に浮上してしまうこと
もあります.
図-2
液状化による噴砂(2001 年芸予地震)
表-1
図-3
液状化危険度判定表
(日本道路協会(1999)「道路橋示方書」より)
液状化による道路の変状(2001 年芸予地震)
PL値
ランク
15<PL
A
5<PL≦15
B
0<PL≦5
C
PL=0
D
液状化の判定
液状化危険度は,極めて高い.液状化に関する詳細な
調査と液状化対策は不可避である。
液状化危険度が高い.重要な構造物に対して,より詳
細な調査が必要.液状化対策が一般的に必要。
液状化危険度は低い.特に重要な構造物の設計に際し
ては,より詳細な調査が必要.
液状化危険度はかなり低い.液状化に関する詳細な調
査は一般に不要.
2.過去の液状化事例
(1)1946 年の南海地震による液状化
1946 年の南海地震では,香川県でも埋立地や塩田において液状化が発生したようです(図-4).
図-4
1946 年南海地震震度分布(若松加寿江(1991)「日本の地盤液状化履歴図」より)
(2)遺跡調査による液状化跡
高松平野では,遺跡調査によって 10 ヶ所の液状化跡が発見されています(図-5).また,このうち
8 ヶ所は,液状化が発見しにくいとされる香東川扇状地で確認されています.したがって、場所ご
図-5
との地盤情報に基づく液状化の判定が必要です.
3.高松平野の液状化予測図の作成
(1)ボーリング資料による液状化判定
南海地震のようなプレート境界地震を想定して、ボーリングデータ
を使って香川大学工学部キャンパスの判定を行いました(図-6).
←図-6
PL 値による液状化
の判定の例
その結果,液状化危険度が大きいことがわかりました。これは、
周辺で、液状化跡が確認されていることとも一致しています。
(2)液状化予測図の作成
ボーリングデータと地形分類による液状化判定を総合して、高松
平野の液状化予測図を作成しました(図-7).今後はボーリング
データを増やして、精度のよい液状化予測図を作成する予定です。
図-7→
液状化予測図
高松市の地質と遺跡分布図