絶望からの再出発 1枚のペン画に魂をこめて

画家
さん
Iwasaki Hiroshi
絶望からの再出発
1枚のペン画に魂をこめて
ノスタルジックな雰囲気を醸し出す駅舎や県内各地のなつかしの風景を繊細
なペン画で描写する画家、イワサキヒロシさんが 7 月 3 日から 7 日、南町の詩
季画材ギャラリーで県内初の個展を開く。日頃公開しない原画を展示するとあ
って各方面から大いに期待されている。
「私にとって絵は『生きている証』なんです。命を注ぎ込んで一心不乱にペン
を握っていると嫌なことも忘れられ、作品ができ上がればいろんな人に喜んで
もらえる。それが生きがいです」とイワサキさんは話す。
1946 年、桐生市生まれ。独学でペン画を描き始めたのはわずか 5 年程前のこ
と。それまでは、長く建築設計士として勤め、独立して木工関係の会社を興すほどの敏
腕ビジネスマンであった。
「絵や音楽は若い頃から好きでしたが、生活の糧にはなりま
せんでしたからね」
。きっかけは経営していた会社がリーマンショックによる不景気感
に押され廃業してしまったこと。すべてを失い、生きる希望も見えなくなった頃、毎朝
散歩に出ていた敷島ばら園で会った 30 年来の友人に「絵が好きなら JR 吾妻線の駅舎
なんか風情があるから描いてみれば」と勧められた。さっそく行ってみると心和む景色
に癒された。最初はスケッチすることも恥ずかしく、人気(ひとけ)の少ない『金島駅』
から描き始め、1年程かけて全駅舎 18 駅のシリーズを完成、絵はがきとして販売を始
めた。それから上越線、わたらせ渓谷鉄道など 5 つの駅舎シリーズを完成させる。今年
4月にはペン画に初めて水彩の色付けを施した『前橋今昔十六景』シリーズを発表した。
通常の技法は、表面が滑らかなペン画用の紙に鉛筆で下書きし、ペンで線描画を完成
させ、それをケント紙に複写して、水彩で色付けをする。製作期間は1枚につき 10 日
から 1 ヵ月。ペンは 0.03mm から 1mm まで 20 本以上を使い分ける。水彩で色付けを
する時は紙にそのまま色を載せると乾燥後に紙がよれてしまうので、
専用の台に紙を“水
貼り”して色を塗るのだという。
「大事にしていることは、絵の美しさはもちろん、そ
の“構図”ですね。現地にロケハンに行き、あちこちから写真をとって最も魅力的な構
図を選び出していきます」
。絵はがきは現在、
都内も含め 100 ヶ所以上で販売されている。
ほとんどイワサキさん自ら営業に回った。絵はがきの良いところは、差出人の思いとと
もに“イワサキヒロシ”の絵が日本中に届くところだという。
今後は、好きな人物画も手がけていきたいと話すイワサキさん。
「かつての仕事仲間
や多くの人に助けられてここまで来た。命ある限り、絵で人の心を幸せにしていきたい」
と前を向いた。
[profile]
本名:岩崎弘。1946 年桐生市生まれ。早
稲田大学政治経済学部大学院卒業後、前
橋の亦野建築設計事務所で働きながら前
橋工業短期大学(当時)夜間部で建築学
を学び、更に住宅建築学を学ぶ為、東京
工業大学の篠原一男に師事。県内の建設
関連会社勤務を経て、木工製品などを手
がける株式会社アカギロアを設立、2006
年、 加 齢 黄 斑 変 性 に よ り 左 目 を 失 明。
2008 年会社を廃業。2010 年よりペン画
を描き始める。これまでに JR 吾妻線、わ
たらせ渓谷鉄道、草軽電鉄など5つの駅
舎シリーズを発表。今年4月、初の水彩
を施した『前橋今昔十六景』を完成。犬・
猫などの動物や人物画など多岐にわたり
精力的に描き続けている。前橋市荒牧町
在住。
お知らせ
9 月より期間限定で、前橋平和郵便局
を皮切りに市内 47 局で順次、イワサ
キさんの絵はがきが販売されます。ぜ
ひお手にとってご覧下さい。
草軽電鉄 万座温泉口駅
ばら園&前橋市蚕糸記念館
10
15
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7
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m o v e m e n t
7
■イワサキ ヒロシ
ペン画展
47
6
ペン画を描き始めてから 年。初
めての個展が開催されます。昔懐か
しい風景を繊細なタッチで一本一本
描きこんだ作品はどれも味わいがあ
り、遠い日の情景が手に取るように
伝わってきます。
命を注ぎこむように丁寧に描きこ
まれたペンのタッチが生む世界。原
画だからこそ味わえる感動がそこに
あるはずです。
◉会期
(金)
2015年 月 日
(火)
~ 日
◉時間 : ~ :
(最終日は : まで)
◉観覧料 無料
◉出展作品
前橋今昔十六景、猫、犬、
草軽電鉄、上毛電鉄の駅舎
◉会場 詩季画材
Fギャラリー
前橋市南町4 ー ー
ー 24 5
ー 196
TEL 027 2
2