逆流性食道炎のPPI療法に影響を与える因子CYP2C19 - e-CLINICIAN

薬
剤
は
肝
臓
に
お
い
て
主
に
代
謝
酵
素
チ
ト
ク
ロ
ー
C
Y
P
2
C
19
の
遺
伝
的
多
型
に
つ
い
て
(1
0
3
2)
分
影
響
す
る
と
考
え
ら
れ
る
。
れ の
て 除
き 菌
た 治
が2)療
、 の
逆 成
流 績
性 に
食 影
道 響
炎 を
の 与
治 え
療 る
に こ
関 と
し が
て 報
も 告
十 さ
の
症
状
で
患
者
の
流
症
︶
の
最
も
典
型
的
な
病
態
で
あ
り
、
胸
や
け
な
ど
逆
流
性
食
道
炎
︵
逆
食
︶
は
G
E
R
D
︵
胃
食
道
逆
は
じ
め
に
こ
と
が
明
ら
か
に
な
っ
て
き
た
。
こ
の
遺
︵ 伝
的
多
型
は
︶
そ
の
結
果
P
P
I
の
薬
物
体
内
動
態
に
個
体
差
が
あ
る
5
0
︵
C
Y
P
︶
2
C
1
9
に
遺
伝
的
多
型
が
存
在
し
、
を
低
下
さ
せ
、
重
P
P
I
を
用
い
た
治 療
−
ム
P
4
5
0
に
て
代
謝
を
受
け
る
が
、
こ
の
代
謝
酵
素
症
例
で
は
出
血
や
狭
窄
な
ど
の
原
因
と
も
な
る
。
さ
ら
影逆
流
性
食
道
炎
の
P
P
I
療
法
に
酸 C 響
分 Y を
泌 P 与
抑 2 え
制 C
効1
9る
果 遺 因
伝 子
子
多
型
と
−
に
は
様
々
な
サ
ブ
タ
イ
プ
が
存
在
し
、
薬
剤
に
よ
り
代
︵
以
下
、
P
P
I
︶
は
そ
る に
可 近
能 年
性 で
が は
示 、
唆 胃
さ 食
れ 道
て 接
い 合
る1)部
。 癌
の
増
加
に
も
関
与
す
H. pylori
の
強
力
な
胃
酸
分
泌
抑
制
効
果
か
ら
、
逆
流
性
食
道
炎
Helicobacter pylori
に
対
し
最
も
効
果
的
な
治
療
薬
と
し
て
使
用
さ
れ
て
い
quality of life
る
。
P
P
I
は
主
に
肝
臓
に
て
代
謝
を
受
け
る
が
、
近
Proton pump inhibitor
年
こ
の
代
謝
酵
素
の
一
つ
で
あ
る
チ
ト
ク
ロ
ー
ム
P
4
川大
村原
昌秀
司一
*
CLINICIAN ’03 NO. 525
82
① 各プロトンポンプ阻害剤の代謝経路
5-O-Desmethylomeprazole
3-Hydroxyomeprazole
CYP2C19
CYP3A4
Lansoprazole
Omeprazole
CYP2C19
CYP2C19
CYP3A4
5-Hydroxyomeprazole
CYP3A4
Omeprazole sulphone
CYP3A4
5-Hydroxylansoprazole Lansoprazole sulphone
CYP2C19
Omeprazole hydroxysulphone
Rabeprazole
CYP2C19
nonenzymatic
CYP3A4
Rabeprazole thioether
Demethylated-rabeprazole
Rabeprazole sulphone
(文献 3)
より引用改変)
extensive metabolizer homo-EM
metabolizer hetero-EM
83
せ
に
よ
り
、
変
異
の
み
ら
れ
な
い
homozygous
heterozygous extensive
方
に
点
突
然
︵ 変
異
を
認
め ︵
る
︶
、
両
方
に
︶
点
、
突
ど
然
ち
変
ら
異
か
一
を
ク
ソ
ン
4
に
お
け
る
2
つ
の
点
突
然
変
異
の
組
み
合
わ
C
Y
P
2
C
1
9
の
遺
伝
的
多
型
は
エ
ク
ソ
ン
5
と
エ
こ
と
が
注
目
さ
れ
て
き
た
。
P
I
内
服
時
の
体
内
薬
物
動
態
の
個
体
差
に
影
響
す
る
P
2
C
19
に
遺
伝
的
多
型
が
存
在
し
、
こ
の
多
型
が
P
CLINICIAN ’03 NO. 525
て Z
い に
る お
︵ い
図 て
!3)は
そ
︶
。 の
そ 影
し 響
て が
最 少
近 な
こ い
の こ
代 と
謝 が
酵 報
素 告
C さ
Y れ
は
C
Y
P
2
C
1
9
の
影
響
が
大
き
い
の
に
対
し
、
R
P
り
若
干
異
な
る
。
O
P
Z
、
L
P
Z
の
代
謝
に
お
い
て
4
が
影
響
す
る
が
、
代
謝
経
路
は
P
P
I
の
種
類
に
よ
さ
れ
、
サ
ブ
タ
イ
プ
の
C
Y
P
2
C
19
や
C
Y
P
3
A
プ
ラ
ゾ
ー
ル
︵
R
P
Z
︶
︶
も
こ
の
経
路
に
よ
り
代
謝
︵
O
P
Z
︶
、
ラ
ン
ソ
プ
ラ
ゾ
ー
ル
︵
L
P
Z
︶
、
ラ
ベ
用
さ
れ
て
い
る
3
種
類
の
P
P
I
︵
オ
メ
プ
ラ
ゾ
ー
ル
謝
に
関
わ
る
サ
ブ
タ
イ
プ
が
異
な
る
。
現
在
国
内
で
使
(1
0
3
3)
② ランソプラゾール 30mg/day 内服8日後の血中濃度
LPZ 30mg
1800
: homo-EM
: hetero-EM
: PM
Plasma LPZ(ng/m/)
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24 hr
Time
P<0.0001
AUC for LPZ(ng/h/m/)
10000
8000
6000
4000
2000
0
homo-EM
hetero-EM
PM
(文献 4)
より引用改変)
(1
0
3
4)
e o れ 認
r
る め
o E 。 る
M P
E に P
M 対 I
で し 内
は 、 服
薬 1 時
剤 つ の
代 の 薬
謝 変 剤 ︵
が 異 代
や が 謝 ︶
や み が の
遅 ら 正 3
く れ 常 群
、 る な に
P h h 分
M e o 類
に t m さ
CLINICIAN ’03 NO. 525
poor metabolizer PM
12000
お
い
て
は
代
謝
酵
素
の
失
活
に
よ
り
代
謝
が
も
っ
と
も
−
P=0.0537 P=0.0019
遅
く
な
る
。
こ
の
薬
剤
代
謝
能
の
差
に
よ
り
P
P
I
と
−
14000
く
に
C
Y
P
2
C
1
9
代
謝
酵
素
の
影
響
の
大
き
い
O
P
84
③ CYP2C19遺伝子多型とランソプラゾール30mg/day
投与8週後の逆流性食道炎治癒率
P<0.05
P<0.05
95.0%
89.8%
100%
77.4%
homoEMs
n=31
heteroEMs
n=40
PMs
n=17
C
19
遺
伝
的
多
型
は
人
種
間
に
よ
り
そ
の
頻
度
が
異
な
こ
と E
が M
明 、
ら P
か M
と の
さ 順
れ に
て 酸
い 分
る5)泌
。 抑
さ 制
ら 効
に 果
、 が
C 強
Y く
P な
2 る
よ
り
も
顕
著
に
表
れ
る
と
推
測
さ
れ
る
。
療
効
果
に
C
Y
P
2
C
1
9
遺
伝
的
多
型
の
影
響
が
欧
米
胃
内
pH
に
も
C
Y
P
2
C
19
遺
伝
的
多
型
各
群
に
お
い
差
異
が
み
ら
れ
︵
図
!
︶
、
そ
の
結
果
薬
剤
服
用
時
の
Z
や
L
P
Z4)
に
お
い
て
、
内
服
時
の
薬
物
血
中
濃
度
に
で
E は
M h
40 o
∼ m
50 o
%
、 E
P M
M
約 30
20 ∼
% 40
と %
報 、
告 h
さ e
れ t
て e
お r
り6)o
、
P
M
数
%
で
あ
る
の
に
対
し
、
日
本
を
含
め
た
ア
ジ
ア
り
、
欧
米
に
お
い
て
は
h
o
m
o
て
差
が
み
ら
れ
、
h
o
m
o
−
全体
n=88
−
治癒率
(%)
E
M
、
h
e
t
e
r
o
(文献 7)
より引用改変)
CLINICIAN ’03 NO. 525
C
Y
P
2
C
1
9
遺
伝
的
多
型
逆 と
流
性
食
道
炎
の
治
療
そ
の
頻
度
よ
り
日
本
に
お
い
て
は
P
P
I
治
療
時
の
治
−
け
る わ
P れ
P わ
I れ
の は
一 代
つ 謝
で 酵
あ 素
る C
L Y
P P
Z 2
3
0C
"1
9
/ の
日 影
を 響
用 を
い う
−
て
び
ら
ん
性
逆
流
性
食
道
炎
と
診
断
さ
れ
た
患
者
を
対
−
E
M
群
や
2
つ
の
変
o 果 P 象
m 、 2 と
o C C し
9て
Y1
E P 遺 初
M 2 伝 期
群 C 的 治
9多 療
の1
8 遺 型 を
週 伝 の 行
後 子 関 い
の に 係 、
逆 変 を そ
食 異 検 の
治 の 討 治
癒 み し 療
率 ら た7)成
が れ 。 績
、 な そ と
1 い の C
つ h 結 Y
−
85
の
変
異
を
持
つ
h
e
t
e
r
o
−
異
を
持
つ
P
M
群
に
比
べ
有
意
に
低
い
と
い
う
結
果
が
E
M
70
∼
80
%
、
(1
0
3
5)
ら
れ
る
も
の
と
推
測
さ
れ
る
。
一
方
、
薬
物
血
中
濃
度
な
薬
物
血
中
濃
度
が
得
ら
れ
、
良
好
な
治
療
効
果
が
得
慮
し
、
常
用
量
P
P
I
よ
り
も
増
量
投
与
に
よ
り
有
効
よ
っ
て
こ
の
よ
う
な
症
例
に
は
、
薬
物
の
代
謝
能
を
考
告 の
さ 非
れ 再
て 発
い8)率
る9)が
。 約
し 70
か ∼
し 90
、 %
P と
P 良
I 好
維 な
持 治
療 療
法 成
中 績
に が
お 報
れ
た
。
P
P
I
に
よ
る
逆
食
維
持
療
法
は
内
服
1
年
後
O
P
Z
、
L
P
Z
、
さ
ら
に
R
P
Z
で
も
保
険
認
可
さ
近
年
国
内
で
も
よ
う
や
く
逆
食
に
対
す
る
維
持
療
法
が
期
治
療
後
に
も
維
持
療
法
が
必
要
に
な
る
症
例
が
多
く
、
逆
流
性
食
道
炎
は
再
発
・
再
燃
を
繰
り
返
し
易
く
初
(1
0
3
6)
ら
れ
て
い
な
い
症
例
が
存
在
し
て
い
る
と
考
え
ら
れ
た
。
C
Y
P
2
C
19
遺
伝
的
多
型
の
影
響
量
の
L
P
Z
30
"
で
は
十
分
な
酸
分
泌
抑
制
効
果
が
得
P
P
I
維
持
療
法
に
お
け
る
E
M
患
者
の
中
に
は
そ
の
速
や
か
な
代
謝
よ
り
常
用
与
え
、
L
P
Z
に
よ
る
逆
食
の
治
療
で
は
、
h
o
m
o
P
2
C
1
9
遺
伝
的
多
型
が
逆
食
の
治
療
成
績
に
影
響
を
こ
と
か
ら
P
P
I
の
薬
物
動
態
に
影
響
を
与
え
る
C
Y
癒
率
と
の
明
ら
か
な
関
係
は
見
ら
れ
な
か
っ
た
。
こ
の
い
て
も
検
討
を
行
っ
た
が
、
こ
れ
ら
の
因
子
は
逆
食
治
ら
れ
る
。
効
果
が
得
ら
れ
る
治
療
法
と
な
り
得
る
可
能
性
も
考
え
剤
の
増
量
以
外
に
、
R
P
Z
へ
の
変
更
が
良
好
な
治
療
ら
れ
な
い
h
o
m
o
想
さ
れ
、
さ
ら
に
他
P
P
I
投
与
で
十
分
な
効
果
が
得
E
M
症
例
に
お
い
て
は
、
同
薬
胃
粘
膜
萎
縮
の
指
標
と
な
る
の
逆
食
の
治
療
前
の
重
症
度
、
H. pylori
の
高
く
な
る
P
M
群
の
中
に
は
、
P
P
I
を
常
用
量
よ
pepsinogen I/II
り
減
量
し
て
投
与
し
て
も
有
効
な
治
療
成
績
が
得
ら
れ
−
い
て
も
再
発
す
る
症
例
が
み
ら
れ
る
。
こ
の
よ
う
な
再
る
症
例
が
存
在
す
る
可
能
性
が
考
え
ら
れ
る
。
−
こ
れ
に
対
し
、
R
P
Z
は
非
酵
素
的
代
謝
が
中
心
で
感
染
比 の
に 有
つ 無
、
用
い
た
場
合
は
、
安
定
し
た
効
果
が
得
ら
れ
る
事
が
予
な
い
薬
剤
で
あ
る
。
よ
っ
て
逆
食
の
治
療
に
R
P
Z
を
CLINICIAN ’03 NO. 525
得
ら
れ
た
︵
図
!
︶
。
ま
た
こ
の
検
討
で
は
、
各
患
者
あ
り
、
当
然
C
Y
P
2
C
19
遺
伝
的
多
型
の
影
響
が
少
86
H.
助
教
授
︶
*
Lagergren, J., Bergstrom, R., Lindgren, A., et al. :
Symptomatic gastroesophageal reflux as a risk factor for
esophageal adenocarcinoma. N. Engl. J. Med., 340, 825
831(1999)
消
化
器
内
科
︶
Furuta, T., Shirai, N., Takashima, M., et al. : Effect of
genotypic differences in CYP2C19 on cure rates for
Helicobacter pylori infection by triple therapy with a
proton pump inhibitor, amoxicillin, and clarithromycin.
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Ishizaki, T., Horai, Y., Review article : cytochrome P450
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Adachi, K., Katsube, T., Kawamura, A., et al. : CYP2C
19 genotype status and intragastric pH during dosing
∼
pylori
︵
帯
広
第
一
病
院
∼
(1
0
3
7)
CLINICIAN ’03 NO. 525
87
1)文
献
2)
∼
∼
感
染
率
の
低
下
な
ど
で
、
今
後
日
本
に
お
い
て
3)
4)
5)
発
の
原
因
に
は
様
々
な
要
因
が
報
告
さ
れ
て
い
る
が
、
影 い P
響 う P
を 報 I
与 告 内
え が 服
る 見 時
C ら の
Y れ 胃
P る10)内
2 。 pH
C P の
19 P 値
遺 I が
伝 内 再
的 服 発
多 時 に
型 の 関
は 胃 連
当 内 す
然 pH る
維 に と
持
療
法
に
お
け
る
有
効
性
に
も
影
響
を
及
ぼ
す
こ
と
が
予
想
さ
れ
る
。
お
わ
り
に
わ
が
国
に
お
け
る
逆
食
の
今
後
に
関
し
て
は
、
食
生
活
を
中
心
と
し
た
生
活
習
慣
の
欧
米
化
、
人
口
の
高
齢
化
、
さ
ら
に
逆
食
の
発
症
に
抑
制
的
に
作
用
す
る
増
加
す
る
こ
と
が
懸
念
さ
れ
て
い
る
。
よ
っ
て
、
逆
食
の
治
療
に
有
効
な
P
P
I
は
さ
ら
に
重
要
な
薬
剤
に
な
る
と
推
測
さ
れ
、
今
回
述
べ
た
C
Y
P
2
C
1
9
遺
伝
的
多
型
の
影
響
な
ど
の
P
P
I
の
治
療
効
果
に
影
響
を
及
ぼ
す
要
因
の
臨
床
的
意
義
も
さ
ら
に
重
要
に
な
る
も
の
と
考
え
ら
れ
る
。
︵
東
北
大
学
消
化
器
内
科
・
保
健
管
理
セ
ン
タ
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CLINICIAN ’03 NO. 525
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