発表要旨

H15/8/7 さけ・ます資源管理連絡会議
(1)① 我が国のさけ・ます資源を
取り巻く国際情勢
我が国のさけ・ます資源を取り巻く国際情勢
水産庁漁場資源課
神頭
一郎
戦後、我が国漁業は、敗戦からの復興と共に、生産規模及び活動範囲において急速
な発展を遂げた。一方、200海里時代の到来による資源ナショナリズムの定着及びI
WCに象徴される政治的圧力等の外的要因により、近年、縮小を余儀なくされている。
まぐろ類に次いで大きな生産高を誇るさけ・ます漁業といえども例外ではない。
かつての我が国さけ・ます漁業は、北洋流し網漁業による生産が隆盛を極めたが、
他の漁業と同様、資源ナショナリズムの浸透により、主役の座が沿岸の定置網漁業に移
行した。近年では生産の殆どが、これら定置網漁業に支えられていると言っても過言で
はない。また、これら定置網漁業は、言うまでもなく、さけ・ます人工孵化放流事業に
より支えられている。
果たして、北洋流し網漁業の撤退により、我が国さけ・ます漁業に対する国際的圧
力は無事終焉したと言えるのか?
また、順調な発展を遂げてきた人工孵化放流事業に
立脚した沿岸さけ・ます定置網漁業は安泰と言えるのか?
近年、我が国漁業への国際的圧力の矛先は、単なる資源ナショナリズムの問題から、
環境・生態的視点に立った複雑な問題へと移行しつつある。このことは、過去のさけ・
ます流し網漁業における海鳥・海産ほ乳類の混獲問題等において、既に経験済みである。
さらに、公海流し網漁業の全面禁漁以降は、人工孵化放流事業による資源増大に伴う環
境収容力への影響、人工孵化放流魚が天然生育魚に与える生物間競合による影響など、
懸念材料を数え上げれば枚挙にいとまがない。
我が国は、こうした国際的圧力に対し、試験研究機関が中心となって科学研究調査
の充実に努めている。かつて不本意な撤退を余儀なくされた漁業と同じ轍を再び踏まな
いためにも。
(了)