研推だより~主任の目 - 小平市教育委員会

研推だより
主任の目
~今日の授業、私はこう見た~
平成26年5月14日(水) 5校時
題材名「きつつきの商売」(第3学年1組)
平成26年 5月14日(水)
小平市立花小金井小学校
NO.10
研究主任
授業者
今回は、今年度最初の授業研究でした。第3学年「きつつきの商売」の授業実践に、どのような意
味や価値があるのかについて、「わたしはこう見た」とう観点からですが、いくつか整理しておきたい
と思います。
1.普段の授業となんら変わらない・・・・・に最も大きな価値
3年1組の「きつつき・・・・」を参観するのは、本時で4回目になり
ました。これまで3回の授業でも、一貫して読み取りを音読に生かす
指導が続いてきました。本時は、ギャラリー(?)がいて、子どもた
ちのテンションが上がっていたことを除けば、前の3回と質的に何ら
変わらない授業が展開されています。このことは、少なくとも今回の
実践は、授業研究レベルの試行錯誤が日々の授業で繰り返されている
ことを示すものです。
校内研究の最大の目的は「授業改善」。正解と終わりがない、丹念で地道な試行錯誤がその本質です。
第1回目の授業公開の中に、授業改善への確かな手応えが感じられることに、最も大きな価値を見い
出すことができます。
以下、校内研究という枠組みの中で、今回の実践から得たものについて記します。
2.音読の目的は何か
協議会では、音読の工夫についての話題が多く出ました。ここで整理しておきたいのは、音読の目
的は何かという点です。
低学年では、何度も読むことそのものが目的になりつつあります。もちろん、音読劇そのものが目
的ではないのですが、低学年の読みの比重は、授業の中でも(花小の場合)3割を超えるものがあり
ます。一方で、今回の実践で、音読には「確かな読み」を支えるという意味合いがあります。音楽、
図工では、表現のさせ方に無限の広がりがあり、同時に表現させることそのものが目的になる場合が
少なくないのに対し、3年生国語科の音読(表現)は、読み取りの手立てにもなります。高学年の国
語の授業では、音読の目的をさらに違った角度からとらえることもできるでしょう。
今回の実践では、音読は読み取りと一体化させた、あくまでも「読みの手立て」。音読は「確かな読
み」のために用いられたものです。このことが明確になっていたために、授業(少なくとも参観した
4本の授業)では常に正確な読みと、これに基づく音読が指導されていました。目的が明確に読み取
れたということです。目的を明確化することの意味・意義は、校内全体で再確認したい点です。
3.高学年分科会との接点は何か
今回の実践で授業者が読ませたのは、①位置、方向、距離
など場面の設定にかかわること ②登場人物の気持ち の2
点でした。これは高学年で使う「読みの観点」の一部に他な
りません。
参観カードの記述んでみると、この点に関する指摘を見つ
けることができます。高学年では、対人物、主題などにも読
みを広げようとしているのに対し、中学年ではその基本とな
る①②のような点を、音読と組み合わせて丹念に読ませる。
これは、中学年分科会として、あらたな研究内容として大切
にされるべきです。
高学年との接続もさることながら、このような観点からの
授業が日々行われていることにも、授業改善への手がかりを感じます。この点にも、花小として読み
をどのように進めていくのかに、一本筋が通ってきたことを感じます。
4.本文のどの場面を取り上げるのか
~場面による「読み取る中身」の違い~
例えば、次の二つの場面を考えてみます。
A)野うさぎを大きなブナの木の下に立たせた場面で「さあ、いきますよ」をどう読ませるか
B)シャバシャバシャバ などの音をにこにこして聞いていた場面で、「音」をどう読ませるか
前者は本文の細かい読み取りが音読に活かされる場面です。野うさぎは大きなぶなの下にいて、き
つつきは木のてっぺん近くにいます。両者に距離があることを読み取ることは簡単で、実際の授業で
も「さあ~~~、いきますよ~~~~」と、遠くの人に言うように大きな声で読む子どもが半数以上
を占めました。
しかし後者は、雨音や野ねずみの気持ちについて読み取ったことを音読に生かすには、「想像力」を
働かせる必要があります。いわばイメージを膨らませ、想像力を働かせて読む場面。「ザワワーン」と
語尾を伸ばして読んだKさんは、森の中の響きを想像して読みを工夫しています。イメージを膨らま
せて、それぞれの個性を発揮させながら音読を工夫するのに適しています。
場面によって読ませ方・考える道筋を変えていけばよい、というのが本実践から得られた成果でし
ょう。このことは、実際に実践してみなければ分からないことでした。
「どの本文を取り上げるか、どの場面を使うか」についての検討が鍵になることは言うまでもあり
ません。
5.研修内容の共有
昨年度のミニ研修で2年生から提案された記号
が、1~4学年で使われつつあります。音読記号
をどう使うかは、現段階では課題です。しかし低
・中学年で音読の占める割合を考えると、音読記
号(少なくとも共通のルール)はあってしかるべ
きでしょう。高学年が読み取り・読み取ったこと
への考えを表現する、が指導の重点となるのであ
れば、記号は補助的なものになるかもしれません。
いずれにしても、一つの教育情報を、各学年が
共有しようとしていることは確かです。このこと
は、子どもたちにとっては、とてもわかりやすい
ことです。なぜなら、どの先生も同じ記号を使って同じような授業をしてくれれば、混乱はおこらな
いし、どの子にもわかりやすい指導が展開できる可能性があるからです。
研修内容の共有は、指導法の共有であると同時に、子どもの「分かる授業」を支えることにもつな
がる重要な視点です。
7.花小として「音読」をどう考えるのか
改めて、この図を出したいと思います。前述の「音読の目
的」でも触れましたが、2年目に入って「花小として音読を
どう考え、学年を追うごとにどのように実践するか」が、授
業というレベルではっきりしてきました。現在の校内研究が、
学校としての研究活動、すなわち個人研究ではない学校とし
ての組織的な研究活動として動き出していることに、今後の
展望を感じます。
以上、研究主任の目から何点か記しました。今回の3年生の授業実践を基に、「花小としてどう考え
るのか」を明らかにすることが主任の責務です。このことに向けて、中学年分科会の先生方から、貴
重な情報と考える機会を与えていただいたことに、心から感謝申し上げます。