第28号 平成24年9月発行 PDF形式ダウンロード - 富山県立中央病院

平成24年9月発行
第28号
「小児外科」開設
4月1日、当院に小児外科が開設されました。富山市民病院より2名の医師が移籍して診療を開始し、6月には
中央病棟2階に、新生児・小児の外科系疾患の手術室が稼働を開始しました。
診療内容としては、まず富山県内で唯一の総合周産期母子医療センターを有する当院において、産婦人科や小児
科と連携を取りながらの新生児や未熟児の外科疾患の手術が挙げられます。4月から7月までの4ヶ月間に8例の
新生児手術を執刀し、当院の周産期チームの一端を担っているところです。また、新生児以外の領域でも、県内全
域から紹介を受け、鼠径ヘルニアや急性虫垂炎といった日常的な疾患をはじめ、先天性胆道閉鎖症(出生後3〜4
週を過ぎても黄疸が続き、同時に灰白色の便を認めるようになり、放置すると肝硬変に移行する疾患)や、ヒルシ
ュスプルング病(先天的に腸の神経節細胞が欠損している為、蠕動運動が起こらず、腹部膨満や排便障害を認める
疾患)といった小児外科領域に特有の疾患の手術も担当しています。
さらに尿管結石のような泌尿器科疾患や、漏斗胸のような胸部疾患では、それぞれ当院の泌尿器科、呼吸器外科
と共同で診療に当たっています。
これからも「富山で生まれた子供たちを富山の医療で治してあげたい」をモットーに、多くの先生方と協力しな
がら、小児外科医療を充実させていきたいと考えています。
(小児外科部長 岡田 安弘)
救命救急センターが新しくなりました
8月1日、重症患者を受け入れる救命救急センターがリニューアルしました。大きな改修点は「救急車専用入口」
と救急車以外で来院された方の入口を別々にしたことです。これにより救急車来院の方のプライバシーに今まで以
上に配慮すると共に、より効率的に重症救急搬送患者の診療に当たることができるようになりました。4つある重
症処置室につきましても、個室化して面積を広くすることでより高度な医療を提供できるようになりました。また、
特殊化学災害や特殊薬物汚染患者に対応できるような「除染室」も外から直接入れるように設置しました。
また、独歩来院された方を診療する部屋を新たに作ったことで、救急搬送された方とは別に落ち着いた診療空間
での診療が可能となりました。さらに、婦人科診察室や眼科診察室、耳鼻科診察室といった専門診察室も設置され、
緊急時には、より早急な対応ができるようになりました。
救命救急センターは重症患者への治療が最優先となるため、治療順序の変更やお待たせすることがあることを御
理解いただきたいと思います。入口が 2 つになったことで、これまで当センターを受診されたことがある方は混乱
されるかもしれませんが、案内表示を確認していただきますようお願いいたします。
(救命救急センター科医長 山田 毅)
内科(呼吸器部門)
R espiro l o g y
呼吸器とは
人間は、呼吸をすることにより、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を捨てます。呼吸器とは、呼
吸をするために必要な臓器を指し、空気の通り道である気道と、酸素や二酸化炭素を交換する場であ
る肺胞から構成されています。
内科(呼吸器部門)では、気道である気管・気管支、無数の肺胞から構成される肺、肺を包んでい
る膜である胸膜、などに生じる疾患を扱っています。
呼吸器の病気
主な呼吸器の疾患としては、肺や気管支に細菌などが感染した「呼吸器感染症(肺炎、肺結核、気
管支炎など)」、肺に出来た悪性腫瘍である「肺癌」、肺を包む膜(胸膜)に悪性腫瘍が出来た「胸膜悪
性中皮腫」、気管支が細くなって苦しくなる「気管支喘息」、タバコなどの吸いすぎで肺が傷んだ状態
である「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」、肺が硬くなって呼吸がしにくくなってくる「間質性肺炎」、様々
な原因のために咳が止まらない状態の「慢性咳嗽」、などの診療を行っています。
当科における最近の話題
超音波気管支内視鏡を導入いたしました。
気管支の周りのリンパ節に異常が生じる疾患には、肺癌、サル
コイドーシス、悪性リンパ腫などがありますが、その診断には、
生検(針を刺して組織の一部を採取)することが必要です。従来は、
全身麻酔下の手術での生検が必要であり、患者さんの負担は大き
いものでした。今回導入した超音波気管支内視鏡は、通常の気管
支鏡と違い、気管
支の周りのリンパ
超音波気管支内視鏡と穿刺針
節を超音波で見な
がら安全に生検することができます。この内視鏡を用
いて生検を行えば、手術に比べ、患者さんの負担がか
なり軽減します。また、高確率に診断をつけることが
できています。
患者さんの負担をできるだけ軽減しながら、確実な
診断と治療で、良い医療を提供できるように努めてい
ます。
超音波気管支内視鏡を用いた生検のイメージ図
ヒーリングギャラリー開催
(内科(呼吸器)医長 谷口 浩和)
☆ ☆ 今年も、近代美術館収蔵品展を行います。☆ ☆
静かな詩情にあふれる日本画・油彩画、色彩と線がひびきあう版画作品などを展示します。 見る人の心にゆたかに語りかける作品の数々を、この機会にぜひご覧ください。
期間: 10 月 22 日 ( 月 ) ~ 26 日 ( 金 ) 、場所: 当院 5階大ホール 開場: 午前9時~午後4時 (26 日は午後 3 時まで ) ( 入場無料) 健康ライフ
No.28
立
Welcome to HEALTHY LIFE
初期は無症状ですが、局所で進行すれば排尿障害や血尿を生じます。骨転移や後腹膜リンパ節転移をきたす
こともあり、骨痛や下肢浮腫の原因になります。
肛門からのアプローチにて、直腸診と経直腸的前立腺エコーを行います。ちなみに前立腺癌と前立腺肥大症
は触診上、硬さに違いがあります。癌は石のような硬さ、肥大症はゴム板の印象です。内臓器の中で指 1 本で
診察できるのは前立腺だけです。
まず採血にて PSA(前立腺特異抗原)を測定します。正常上限を一
般に 4.0ng/ml に定めており、これを超えると精査の対象になります。
膀胱
確定診断は、経直腸的前立腺エコー下に行う、針生検によります。
直腸
癌の所在が分からないことも多いので、画像上前立腺を8- 12 カ所
に想定・分割し、各箇所から組織採取するのが一般的です。
ホルモン治療として知られています。抗がん剤のように直接癌細胞
を殺す治療ではありません。前立腺癌は男性ホルモンが存在すると活
発に増殖を始めるので、逆に体内の男性ホルモンを著しく低下させ、
膀胱の下方、直腸の前方に位置する
さらに癌細胞内に男性ホルモンが取り込まれないようにすることで癌細胞を自滅に追い込むことができます。
これがホルモン治療の仕組みです。
(泌尿器科部長 瀬戸 親)
臨床検査部より
PSA 検査について
PSA とは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)の略です。他の臓器にはない前立腺細胞でのみ作られ
る糖蛋白で、前立腺がんのスクリーニング検査として早期発見に有用な腫瘍マーカーの検査です。当院では化
学発光免疫測定法(CLIA 法)を用い、高感度 PSA を測定しています。基準値は 4.0ng/ml 以下で、当院では来
院された当日に結果が判明します。早期の前立腺がんで陽性になることもある一方で、前立腺肥大症でも陽性
になることがあります。確定診断には前立腺生検が必要になります。
薬剤部より
(臨床検査技師 江尻 ゆかり)
1〜3ヶ月に1度の注射で、痛みも少ない
前立腺がん細胞の増殖を抑える治療をホルモン療法といいます。使用される薬には注射剤と飲み薬がありま
す。注射剤は精巣由来の男性ホルモンの産生を抑えるもので、リュープリンとゾラデックスがあります。1~
3ヶ月ごとに1回皮下注射するだけです。副作用として、ほてり、性機能障害などがあります。飲み薬は副腎
由来の男性ホルモンが前立腺がん細胞に働くのを抑えるもので、オダイン、ビタルカミド、プロスタールなど
があります。副作用として、下痢、肝障害などがあります。 看護部より
(薬剤師 神吉 絹子)
前立腺超音波検査について
前立腺超音波検査は、肛門からの検査で羞恥心を伴うため、あらかじめ、患者さんに
十分な説明を行い、同意を得ています。プライバシーを確保し、診察台に寝ていただき、
仰向けで両膝を両手で抱える姿勢になり、医師が前立腺の触診をします。診察台は狭い
ので、転落しないよう注意しています。次いで、左向きになって、超音波発信装置を肛
門からゆっくり挿入します。患者さんの羞恥心が少しでも和らぐよう声をかけながら、
不安の軽減に努めています。
(泌尿器科外来看護師 藤沢 美子)
栄 養 管 理 科 の 紹∼専門の看護師による糖尿病の療養指導∼
介 ~管理栄養士の役割~
生活習慣病指導室
平成13年に開設した「生活習慣病指導室」
では、患者さんが生涯にわたり健康維持に努め合併症の発症や進展を防止
栄養管理科では、管理栄養士
6 名が中心となって、①入院中の患者さん一人ひとりの病状にあった食
することを目的に、
日本糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師2名が交代で療養指導を担当しています。
糖尿病、脂質異
事の提供 ②食事療法の理解と実践のための管理栄養士による栄養指導の実施 ③ NST(栄養サポート
常症、肥満症などの方を対象に、病気について、検査、食事や運動と生活習慣との関係、薬物療法、衛生、手術や旅行時、
チーム)をはじめとするチーム医療での活動を展開しています。
災害時の対応法など幅広い情報を提供しています。
入院患者さんの重症化・高齢化が進むに伴い、化学療法等の副作用による食事量の低下や摂食・嚥下
特に糖尿病の指導に力を入れ、はじめて来院された方には信頼関係を築きながら治療意欲が高まるように積極的に
が難しい場合が多くなっています。病態・状態にあわせて、量・軟らかさ・味付けを調整し、少しでも
関わっています。
糖尿病教育入院の方には、入院後のスケジュール表を事前にお渡しし、血糖自己測定や食事の計算方
食べやすい食事となるように工夫しています。
法などの習得内容を説明し、
入院後の治療が効率よく進行するように配慮しています。入院中は私たちも病棟での回診
やその後の検討会に参加し、
在宅での治療の継続に向けて積極的に意見交換しています。退院後初めて受診される方の
一方、糖尿病や腎臓病、心臓病や肝疾患等は、適切な食事管理により進行や合併症を防ぐことができ
多くは自己管理をしっかりされていますが、
難しい点に関しては実生活での様子や心理面に配慮しながらアドバイスを
ます。食事療法を理解していただき、具体的な食材の選び方や調理方法等、実践につながる指導を行う
続けていきます。
ことも管理栄養士の重要な役割です。
通院中、妊娠の合併やがん化学療法、
ステロイドなどの影響で血糖値が急激に上昇する場合もありますが、
そのような
さらに、医師・看護師・薬剤師等多職種が連携するチー
時もすぐ外来でインスリン自己注射指導を行うことで、病態の悪化が回避できます。最近のGLP-1受容体作動薬(高血糖
時にインスリン分泌を促すインクレチン関連薬)も、
「ム医療の中で、管理栄養士は栄養・食事の専門職として患
外来自己注射パス」
を用いて導入することで安全に開始しています。
者さんの栄養管理・食事療法を支援しており、また今年度
糖尿病腎症の方への低蛋白食の指導、足病変のケア、
1型糖尿病の方への持続皮下インスリン注入療法(インスリンポン
からは、糖尿病における透析予防診療チームのメンバーと
プ)の手技指導も増えてきました。1型糖尿病や妊娠糖尿病など若い方に対しては、
人生の節目の悩みや将来への不安の
軽減のために精神的な援助も欠かせません。一方、合併症を伴った方、
高齢、認知症、独居の方も多く通院されています
しての外来での活動も加わりました。
が、
日常生活を安全に過ごしていくために、
どのような支援や協力ができるのか、
ご家族の介護の負担の軽減も考慮しな
適切な栄養管理は治療の基本となります。今後も「おい
がらご本人とご家族にアドバイスしています。指導室前の「学習ルーム」
では、DVD視聴や学習ノート(当院独自のテキ
しく食べて早く元気に」を目標に、一人でも多くの患者さ
スト)やパンフレットを活用し効率的な学習の場として利用していただいています。
んの健康を願い、栄養管理の重要性を伝えていきたいと考
「生活習慣病指導室」は、医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士などの多くの部署
えています。
と密に連携しチーム医療の中心的役割を果たしながら効果的指導に繋げています。
そ
の後かかりつけ医にお戻りになった後も、
栄養指導室での個別指導 生涯にわたり良好な血糖管理を維持してい (栄養管理科 盛野 千香子)
ただくために「糖尿病医療連携カード」の発行、
「年一回の外来チェックコース」
「地域
スタッフとの勉強会」
「糖尿病フォローアップ入院」など様々な取り組みを通し病診連
携のキーステーションとして情報を発信し続けています。
生活習慣病指導室
(内科(内分泌・代謝)外来 生活習慣病指導室 日本糖尿病療養指導士 鶴木 多恵子)
患者図書室「はなみずき」ができました
診察受付時間等
診察受付時間等
『看護の日』ふれあい看護体験2012
心和ます書籍や、病気について わかりやすく説明したパンフレットなどがあります。
東部小学校の6年生100名を迎え、看護師の仕事を通して
「命の
当院を利用される方であれば、どなたでもご利用できます。
大切さ」
「助け合う心」
を体験してもらおうと平成24年5月9日にふれ
あい看護体験が中央病院5階ホールで行われました。助産師によ
初診の方は、原則かかりつけ医からの診療情報提供書
場所:中央病棟2階
る
「生まれてきてくれてありがとう」
の話を聞き、生命の誕生を考え、
(紹介状)をお持ちください。
開室日時:平日 9時~16時 その後、8∼9名編成のグループに分かれ、
看護の実際を見学しても
かかりつけ医から、地域連携室を通して、事前予約
ができます。
【書籍、DVD、インターネット
(有料)
】
らいました。
初診の方は、原則かかりつけ医からの診療情報提供書
(紹介状)をお持ちください。
「やさしさ・信頼・安心」看護師さんと患者さんの間で、
この3つ
かかりつけ医から、地域連携室を通して、事前予約
予約変更の受付
ができます。
が全て揃っているからこそ、患者さんの「笑顔」が生まれてくるのだ
と思った という感想や、中には、看護師の仕事を学んで看護師に
予約変更の受付
なってみたいと将来の夢が広がりました という声もあり、今回の
「ふれあい看護体験」
で「看護の心」、命を支える
「看護の優しさ」を
100名の小学生達は、体験してくれたと思います。 (看護部看護研修科長 斉藤 恵子)
面会時間
13:00∼20:00(集中治療室の面会は14:00∼15:00)
面会時間
13:00∼20:00
(集中治療室の面会は14:00∼15:00)
当院は、かかりつけ医との
当院は、かかりつけ医との
地
域医療の連携を推進しています
地域医療の連携を推進しています