平成 20 年度 岩手県農業研究センター試験研究成果書 子宮頸管粘液pHによる黒毛和種の過剰排卵処理後の卵巣反 応の推定 [要約]過 剰 反 応 処 理 後 の 卵 巣 反 応 は 、血 中 プ ロ ゲ ス テ ロ ン 濃 度 ま た は 子 宮 頸 管 粘 液 の pHを 測 定 す る こ と で 推 定 で き 、血 中 プ ロ ゲ ス テ ロ ン 濃 度 は 発 情 後 7∼ 8日 お よ び 過 剰 排 卵 処 理 開 始 時 に 5.0ng/mlお よ び 7.0ng/ml以 上 、 子 宮 頸 管 粘 液 pHは 、 発 情 後 7 ∼ 8日 に 6.0∼ 7.0未 満 で 反 応 性 は 良 好 で あ り 、 7.8以 上 で は 著 し く 悪 い 区分 指導 題名 キーワード 過剰排卵処理 プロゲステロン濃度 子宮頸管粘液pH 家畜育種研究室 1 背景とねらい 過 剰 排 卵 処 理 に 対 す る 反 応 性 は 個 体 差 が 大 き く 、同 一 個 体 に お い て も そ の 時 に よ りばらつきがあることが知られている。反応性の悪い牛を事前に知ることができれ ば供卵牛の選定や過剰排卵処理に係る経費の節減が可能である。過剰排卵処理に対 す る 反 応 は 、血 統 、FSH 製 剤 の 投 与 量 、処 理 開 始 時 の 小 卵 胞 数 な ど 多 く の 要 因 が 関 与 することが知られている。その一要因として処理開始時の血中プロゲステロン濃度 と処理後の反応性の関連を調査し、簡易に判定できる指標を作成する。 2 成果の内容 (1) 過剰排卵処理後の卵巣の反応性は、発 情 周 期 7∼ 8 日 目 お よ び 過 剰 排 卵 処 理 開 始 時の血中プロゲステロン濃度が低い牛で悪く、血中プロゲステロン濃度を測定 す る こ と で 処 理 後 の 反 応 性 を 推 定 で き る ( 表 1∼ 3、 図 1) 。 (2) 発 情 周 期 7∼ 8 日 目 お よ び 9∼ 14 日 の 血 中 プ ロ ゲ ス テ ロ ン 濃 度 は 、 子 宮 頸 管 粘 液 pH を 測 定 す る こ と で 推 定 す る こ と が で き る ( 図 2) 。 (3) 過 剰 排卵処 理 後 の 卵 巣 反 応 の 目 安 は 、 血 中 プ ロ ゲ ス テ ロ ン 濃 度 は 、 発 情 後 7 ∼ 8 日 お よ び 過 剰 排 卵 処 理 開 始 時 に 5.0ng/ml お よ び 7.0ng/ml 以 上 、子 宮 頸 管 粘 液 pH は 、 発 情 後 7∼ 8 日 に 6.0∼ 7.0 未 満 が 良 好 で あ り 、 7.8 以 上 で は 著 し く 悪 い ( 表 2、 表 4、 表 5) 。 3 成果活用上の留意事項 (1) 黒毛和種供卵牛に FSH 製剤 20AU を用いて過剰排卵処理を施した成績である。 (2) 血 中 プ ロ ゲ ス テ ロ ン 濃 度 お よ び 子 宮 頸 管 粘 液 pH に よ り 、 過 剰 排 卵 処 理 後 に 無 発情であった牛を選定することはできない。 (3) 子 宮 頸 管 粘 液 pH6.0 未 満 の も の に つ い て の 卵 巣 反 応 と の 関 連 は 不 明 で あ る 。 (4) 子 宮 頸 管 粘 液 pH は 空 気 に 触 れ る こ と で 変 化 す る の で NJ カ テ ー テ ル を 用 い て 採 取 し 、携 帯 式 pH 測 定 器( ア ズ ワ ン( 株 )ラ コ ム テ ス タ ー pH 計 )で た だ ち に 測 定する。 4 成果の活用方法等 (1)適用地帯又は対象者等 獣医師 (2)期待する活用効果 効率的な採卵のための供卵牛の選定、過剰排卵処理経費の節減 5 当該事項に係る試験研究課題 ( H17∼ H19) 正 常 胚 安 定 生 産 技 術 の 確 立 (県 単 ) 6 研究担当者 細川泰子 7 参考資料・文献 中野千代ら;供胚牛の血液成分と卵巣反応の関係について繁殖技術会 誌 ,14,3,177-180 (指 )− 47− 1 8 20 試験成績の概要(具体的なデータ) b 15 (ng/ml) 1∼ 5 個 5 6∼ 8 個 - 9 個≦ 5.46±2.71 − 12 a,b<0.05 a 7.93±2.72 b P4 濃 度 数 (ng/ml) 8 5.96±1.87 6 6.53±3.24 33 11.04±3.37 黄体直径 (cm) a 10 5 a b 2.25±0.25 c 2.08±0.55 0 2.12±0.44 11 ∼ 15 個 16 ∼ 20 個 20 個 以 上 数 頭 8個 9∼ 10 個 P4 濃 度 5個 頭 a 6∼ 黄体数 表2 過剰排卵処理開始時 発 情 後 7∼ 8 日 採卵時 血中P4濃度(ng/ml) 血 中プ ロ ゲス テ ロン (P4) 濃度 と 採卵 時の 黄 体数 の 関係 1∼ 表1 黄体数 a,c<0.01 △ 発 情 後 7∼ 8 日 ● 過 剰 排 卵 処 理 開 始 時 異符号間に有意差有り プ ロゲ ス テロ ン 濃度 お よび 過 剰排 卵 処理 後 の 図1 黄体 数 別の 頭 数割 合 過 剰排 卵 処理 後 の黄 体 数別 の 血中 プ ロゲ ス テロ ン 濃度 の 分布 血中 プ ロゲ ス テロ ン 濃度 黄体 数 発情 後 7∼8 日 * 過剰 排 卵処 理 開始 日 * 5 ng/ml> 5 ng/ml≦ 7 ng/ml> 7 ng/ml≦ 1∼8 個 3( 75.0) 2( 15.4) 6(66.7) 8(21.1) 9 個以 上 1 (25.0) 11 (84.6) 3(33.3) 30( 78.9) 合計 4 13 9 38 2×2 分 割表 に よる カ イ二 乗 検定 に より 各 区の 出 現率 に 有意 差 有り 表3 (*p<0.01) 同 一個 体 にお け る過 剰 排卵 処 理開 始 時 の血 中 プロ ゲ ステ ロ ン濃 度 と採 卵 成績 発情後7∼8日 8.5 8.5 子宮頸管粘液pH 8 子宮頸管粘液pH 発情後9∼14日 7.5 7 6.5 n=20 6 r=0.74 5.5 8 A 7.5 7 B 6.5 n=10 6 5 C r=0.65 5.5 採卵 年 月 P4 濃 度 回収 黄体 数 H18. 7 H18.10 H19.11 H17. 7 H17.10 H20. 5 H20. 7 (ng/ml) 11.0 3.66 9.72 7.15 4.98 9.8 6.6 卵数 19 1 10 11 2 6 0 19 1 10 11 3 6 3 月 月 月 月 月 月 月 5 0 10 20 血中P4濃度(ng/ml) 図2 血 中プ ロ ゲス テ ロン 濃 度と 子 宮頸 管 粘液 pH の 関 0 10 20 血中P4濃度(ng/ml) 表 4 発 情後 の 異な る 時期 に 採取 し た子 宮 頸管 粘 液の pH とそ の 後の 過 剰排 卵 処理 に おけ る 回収 卵 数、黄 体数 の 関 係 子宮 頸 管粘 液 子宮 頸 管 回収 胚 数 黄体 数 反応 不 良頭 数 * 採取 日 発情 後 7-8 日 粘液 の pH 6.00 - 6.99 7.00 - 7.79 ≧7.80 頭数 11 19 2 (平 均値±標 準 誤差 ) a 12.5 ± 7.3 a 8.5 ± 5.3 b 0.5 ± 0.7 (平 均値±標 準 誤差 ) a 14.0 ± 5.6 b 10.3 ± 4.8 c 3.0 ± 1.4 8.7 ± 16.3 6.00 - 6.99 3 5.8 ± 9.7 7.00 - 7.79 6 ≧7.80 *反 応不 良 頭数 ;黄 体数 5 個 以下 の 頭数 、 異符 号 間に 有 意差 有 り 16.3 ± 7.1 9.7 ± 5.8 - 発情 後 9-14 日 表5 過 剰排 卵 処理 後 の卵 巣 反応 の 推定 指 標 反応 性 発情 周期 7∼8 日 ◎ ○ × 過剰 排 卵処 理 開始 日 ◎ ○ × 血中 プ ロゲ ス テロ ン 濃度 (ng/ml) 5.0 以 上 5.0 未 満 子宮 頸 管粘 液 pH 6.0∼7.0 未 満 7.0∼7.8 未 満 7.8 以 上 7.0 以 上 7.0 未 満 (指 )− 47− 2 − − − (%) a 1 ( 9.1 ) a 3 ( 15.8 ) b 2 ( 100 ) 0 ( 0 ) 1 (16.7 ) −
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