FDG-PET 検査の最適撮像条件の基礎的検討 - 日本放射線技術学会

FDG-PET 検査の最適撮像条件の基礎的検討
東北大学病院 診療技術部放射線部門
○佐藤 静
今野 基之
酒見 紀久子
児玉 裕康
(Satoh Shizuka)
(Konno Motoyuki)
(Sakemi Kikuko)
(Kodama Hiroyasu)
小田桐 逸人
南部 武幸
阿部 養悦
梁川 功
(Odagiri Hayato)
(Nanbu Takeyuki)
(Abe Youetsu)
(Yanagawa Isao)
東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野
日本メジフィジックス株式会社
福田 寛 (Fukuda Hiroshi)
佐藤 多智雄 (Satoh Tachio)
【目的】
当院のPET/CT検査は、サイクロトロンにより18F-FDGを自家合成している。PET/CT検査法は18F-FDG
投与1時間の安静後に撮影している。今回、PET/CT検査において、18F-FDG放射能量の投与不足や投
与予定時間の遅れを想定し、その場合に対処する最適撮像条件についての基礎的検討を行なったので
4mm
報告する。
15mm
【使用機器】
PET/CT装置はBiograph Duo(SIEMENS社)、
使用ファントムは放射形コンピュータ断層撮影用ファントム
(JIS Z 4,922型)でFig.1に示す。ファントムは内径4、6、8、
10、12および15mmを有し陽性像測定用である。
6mm
12mm
8mm
10mm
Fig.1 ファントム
【方法・検討項目】
ファントム内の容量は4,000ccであり、そのファントム内に注入する18F-FDGの総量は15MBqを基準とした。
これは臨床検査の投与量から算定した。基準値の15MBqを中心に1/2倍の7.5MBqおよび2.0倍の30MBq
について、臨床検査条件である、1ベット2分でスキャンした。
検討項目は以下である。
1. 投与予定時間から30分毎に、180分まで遅延した場合について評価した。
2. 投与予定時間が遅延した場合、基準画像と同じ総カウントになる収集時間について評価した。
3. 画像再構成OSEM法の処理条件を変更した場合について評価した。
なお、項目1,2はいずれも患者への投与遅れを想定して行った。
【結果】
Fig.2 は フ ァ ン ト ム 内 の 放 射 能 量 が 基 準 値
(15MBq)、1/2倍(7.5MBq)および2倍(30MBq)に
おける、予定時間と遅延30分、60分、120分および
180分後に得られた画像を示した。スキャン時間は
全画像2分である。基準画像は基準の1.0倍の予定
時間(1番左の真ん中)の画像である。基準値量の
画像では60分遅れまでも内径10mmの陽性像まで
識別できるが、120分遅れになると内径12mmも不
鮮明になった。また、基準の1/2倍では予定時間
撮影であっても、画像にばらつきが見られ、この画
像と類似する画像は基準値の120分遅れに相当す
る。この画像を鮮明にするには120秒以上のスキャ
Fig.2 時間経過毎の画像
ン時間が必要であると考えられる。さらに、基準の
2.0倍では120分遅れと基準値の画像が一致した。
それ以前の基準値と30、60、90分の遅れでは良好
な画像が得られた。Fig.2の矢印どうしの画像はほ
ぼ同等になると考えられた。これは18Fの半減期か
ら考えると予想通りとなった。
Fig.3は1.0倍の基準画像と同じ総カウントになる
ようスキャン時間を変化させて撮影した画像を示した。
放射能量の減少に伴いスキャン時間は長くなるが、
1.0倍の基準画像と視覚的に大きな差は認められず、
ほぼ同等の画像が得られた。
Table 1はFig.3の収集時間を示した。かっこ内は
基準画像に対する時間の割合である。例えば、放射
能量が基準値の1/2倍でスキャンが60分遅れの場合
では、撮影時間は323秒であり、基準画像と比べて
2.69倍の時間が必要であった。
Fig.4 は 画 像 再 構 成 OSEM 法 に よ り iteration 、
subsetの積を変更して比較した画像を示した。
基準値の画像(iteration2、subset8)はスキャン時
間120秒である。この基準画像のiteration2を固定し、
subsetを4および8に変化させて比較した。基準画像
および2倍放射能量では画像は鮮明に見える。また、
subsetを変更することで、さらに画像が鮮明に見えて
いることが示唆された。しかし、1/2倍放射能量では
画像も不鮮明であった。今回のsubsetのみを変更し
ても基準画像に近づかなかった。
Fig.3 同一カウント収集における画像
Table 1 同一カウント収集ための時間
予定
時間
30分
遅れ
60分
遅れ
90分
遅れ
120分
遅れ
150分
遅れ
180分
遅れ
基準の 69s
84s 102s 117s 140s 168s 190s
2.0倍 (0.58) (0.70) (0.85) (0.98) (1.17) (1.40) (1.58)
基準の 120s 147s 174s 195s 239s 289s 340s
1.0倍 (1.00) (1.23) (1.45) (1.63) (1.99) (2.41) (2.84)
基準の 228s 272s 323s 386s 453s 531s 618s
½倍 (1.91) (2.26) (2.69) (3.21) (3.77) (4.43) (5.15)
投与量が基準の1/2倍で投与60分遅れの場合
収集時間割合= 323s÷120s = 2.69
【まとめ】
1. 放射能量が基準の2倍の場合は、観察した180
分まで基準画像と同等の画像を示した。
2. 同一カウント収集した画像は、基準画像と同等
の画像を示した。また、基準画像と同一カウント
を得る撮影時間は、1/2倍では228秒、2倍では
69秒であった。
3. 1/2倍投与量では、OSEM法の再構成条件の
subsetを変更しても、基準画像と同等の画像は
得られなかった。
Fig.4 OSEM 法による画像の比較
【考察】
今回の実験から、投与時間遅延による放射能量の減衰や撮影開始時間の遅延による画像への影響を
把握し、安定した画像提供を行うために必要な撮影時間を推測することができた。
今後は臨床における最適投与量、撮影時間を検討していきたい。