陣十二指腸切除後再建法としての今永法の検討 - 日本消化器外科学会

日消外会誌 20(4)i919∼
924,1987年
特集 5
陣十二指腸切除後再建法 としての今永法 の検討
中尾 昭 公
野浪 敏 明
岸 本 若 彦
原 田 明 生
鈴 木 祐一
末 永 昌宏
市 原
高 木
透 弘
名古屋大学医学部第 2外 科
EXPERIENCES OF IMANAGA'S METHOD IN PANCREATODUODENECTOMY
Akimasa NAKAO,Wakahko KISHIMOTO,Yuichi SUZUKI,
Toru ICHIHARA,Toshiaki NONAMI,Akio HARADA,
Masahtto SUENAGA and Hiroshi TAKAGI
Second Department of Surgery,NagOya University School of Medicine
膵頭十二指腸切除後 の再建法 として今永法 を基本術式 としているので,わ れわれの施行 している術
式 と成績について検討 した。
1981年7月 よ り1986年4月 までの 4年 10カ月間に解十二指腸切除術 を83例に施行 した。術式 は陣全
摘術43例,膵 頭十二指腸切除術40例であ り,膵 頭十二指腸切除術40例中,今 永法 で再建 した34例を中
認 めなか ったが,
心 に術後成績 について検討 した。今永法膵頭十二指腸切除術施行34例中,直 死711は
解空腸縫合不全を 3例 (8,8%)に 認 め, 2例 がその合併症 で入院死 した。 1984年以後 は重篤な合併症
もな く,術 後陣内外分泌能 の検討 で も比較的良好 に維持 されてお り,今 永法 は簡便 かつ生理的な再建
法 と考 えられ る.
索引用語 :膵 頭十二 指腸切除術,今 永法,肝 空腸端側吻合術
I . 結 言
膵頭十二指腸切除術 (pancreatOduodenectomy,以
で門脈や鮮 に癌 の浸潤 を認めない症例を対象 としてい
る。
a)開 腹
下 PDと 略す)後 の再建法 としては各種 の方法 が報告
され,今 日に至 っている。われわれ は陣頭部領域癌 を
下 TPと
中心 に陣全摘術 (total pancreatectomy,以
す る。
略す)や PDを 積極的 に施行 し,再 建 は主 として今永
施行 して きたので,わ れわれ の施行 してい る今
法1)を
永法再建 の術式 と成績 について報告す る。
b)腸 間膜根部 の郭清 と上腸間膜静脈 の露出
大網を横行結腸付着部 にて切離 し,結 腸間膜 の郭清
と腸間膜根部 の郭清を施行 しつつ,陣 下縁 にて上腸間
II.わ れわれの施行 してい る今永法再建術
1)標 準膵頭十二指腸切除術 (標準 PD)
標準 PDと は上腸間膜動脈神経叢,左 右腹腔神経節
は温存 し,大 動脈 周囲 の リンパ節郭清 を施行 しな い
PDを 称 している.中 下部胆管癌や十 二指腸乳頭部癌
※第28回日消外会総会 シンポ 1:陣 頭十二指腸切除後
の再建法をめ ぐる諸問題
<1986年 11月7日 受理>別 刷請求先 :中 尾 昭 公
〒466 名 古屋市昭和 区鶴舞 町65 名 古屋 大学 医学部
第 2外 科
剣状突起 より賄左方を通 る上腹部正中切開 にて開腹
膜静脈 を露出す る。十二指腸下行脚右縁 にて後腹膜 に
切開を加 え Kocherの 授動術を充分,施 行 してお く.
c)肝 十二指腸間膜 の郭清 と門脈 の露 出
次 に肝門部 より肝十二指腸間膜 の郭清をはじめ,胆
す る。
襲動脈を根部 で結繁切離 した後,胆 嚢床をtll離
総肝管を肝門部 にて切離 し,固 有肝動脈周囲,総 胆管
周囲,門 脈周囲を郭清す る。右 胃動脈,胃 に 指腸動
脈 は根部 にて結繁切離す る。総肝動脈周囲,腹 腔動脈
周囲,左 胃動脈根部 は郭清す る。
d)冒 な らびに空陽 の切離
96(920)
鮮十二指腸切除後再建法 としての今永法の検討
空腸 は Treitz靭帯 よ り約10cm肛 門側 に て切 断 し,
胃は幽門側2/3を切 除す る。
e)膵 の離 断
解 と門脈 な らびに上腸 間膜動脈 の前面 との間 を用手
日消外会誌 20巻
4号
膜 を開 き,空 腸 を後結腸性 に挙上 す る。空腸 断端 よ り
約 10cmに て解空腸端 側吻合 を施 行す る。空腸 は膵 管
チ ュー ブ挿入用 の小孔 を電気 メス にて開 け るのみで奨
膜筋層切 開 は加 えない。後 列陣 断端空腸装膜 筋層縫合
的 に景J離し,陣 切離線 は門脈左縁 とし,そ の頭側 は大
を atraurnatic needleの
卜0絹 糸 にて膵 切 離 端 と空 腸
めの絹糸 にて結 繁す る。膵切離 予定線 の約5Hlm尾 側 に
の 間 に死腔 ので きな い よ うに約 6針 か けた後 ,陣 管
て膵上,下縁 に解 の長軸 と直 角方 向に atraurnatic nee― チ ュー プを空腸 内へ挿 入 し,中 央 部 の 固定糸 を使用 し
dleの卜0絹 糸 で 止血 用 の 横 マ ッ トレス縫 合 を各 1針
て鮮管空腸粘膜縫合 を施行す るが一 部膵実質 に も針 を
置 いた後,小 腸鉗子 で膵尾側 をやわ らか く把持 し, メ
通 し,空 腸 は全層 にか けて い る(図 2)。 後列膵空腸縫
ス にて切離す る(図 1),こ の時,騨 管 はあ えて長 く残
合糸 を結繁 し,次 いで膵管空腸粘膜縫合 糸 を結熱す る。
さない.ま た膵尾側後面 は膵切離線 よ り約 2cm尾 側 ま
で剣離 してお くと後 の膵空腸吻合 が 容易 とな る。
膵空腸 吻合 は粘膜縫合 を原則 とし,膵 管 が細 い場合 に
は この 1針 のみ の縫合 としてい るが,で きる限 り粘膜
膵切離端 の処理 は主膵管 を巻 き込 まない よ うに, さ
らに膵管上 ,下 方 に マ ッ トレス縫合 を各 1針 追加 し,
先 の止血 用縫合 糸 と一 部交差す る よ うに,や わ らか く
結繁す る。 この 4針 の マ ッ トレス縫合 にて膵切離端 の
縫合 を 2∼ 3針 加 える こ とに して い る。陣管径 が太 い
上血 と徴細 な膵 液 の漏 出 は防止 され る。膵管 内へ は側
孔付 シ リヨンチ ュー プを挿入す るが, この解管 チ ュー
プの大 さは膵 管径 と同等 とし,長 さは7∼8cmを 用 い
る。陣管 チ ュー プの中央 は atraumatic needleの
3-0絹
場合 には容易 に粘膜縫合 が施 行 で きる。次 に前列陣 断
端空腸奨膜筋層縫合 を同様 に約 6針 ,結 節縫 合 にて施
行す る。 なお,膵 断端部 の針 の刺 入 は膵切離端止血用
マ ッ トレス縫合糸 の尾側 よ りお こな ってい る (図 3).
g)総 肝管空腸吻合
総肝管空腸端側 吻合 は PTCDが
留置 され て い な い
場 合 は留置 した 後 に,陣 空腸 吻合部 よ り約 10cm圧 門
糸で内腔 を閉塞 しない よ うに結繁 固定 してお き,後 に
膵管空腸粘膜縫合 に用 い る。 また空 腸 へ挿 入す る部 分
には側孔 を 2個 開 けてお く.門 脈 ,上 腸間膜 静脈 と膵
との交通 糸を結繁切離 し,上 腸間膜動脈 は右縁 を一 部
図 2 解 切離端の処理 と後列解空腸縫合
露 出 させ ,下 膵十 二 指腸動脈 を根部 で結繁切離す る。
膵頭神経叢第一 部 と第 二 部 を切 除す る と胆 嚢,総担管,
胃,十 二 指腸,空 腸起始部 ,膵 頭部, リ ンパ 節 が一 塊
として切除 され る。
つ 陣空腸吻合
消化管 の再建 で あ るが 中結腸動 静脈 右方 にて結腸間
図 1 膵 切離線の頭側は結熱 し,尾 側 は解上,下 縁に
横 マ ットレス縫合を各 1針 置いた後,小 腸eLl子
でや
わ らか く把持 しメスにて切離する。
図 3 前 列瞬空腸縫合の終了
97(921)
1987年4月
表 1 膵 十 二指腸切除例 の病名 と手術 々式
図 4 今 永法 による標準 PD後 の消化管再建
,0+PV
乳 頭 部 お
中下部胆害癌
際
炎
十二指ほ恵
阻 衷
癌
良性胆む狭窄
, 肉
田
際島細胞田
計
0 9 6 3 3 2 1 1 1
, ︲
恵
解
421苫
培1科t l + r ' , , t o | + * t o r o , 卸
1謡
1格
│
1 9 8 , 7 - 1 9 8 6 . 4 ) 〔芭亮帥
て
名
古8 大 学お二外科
男性61名,女 性22名,年 齢 は36歳か ら83歳 にお よび,
一
側 にて40の atraumatic needleの吸収 糸 で 連 続 層
縫合 にて施行す る。
平均年齢 は60.7歳であ った。術式 は門脈合併切除 を伴
,標 準 PD(PD)30例 ,拡
う拡大 TP(TPttPV)42例
,門 脈切 除を施行 しな い拡大 (
で あ った。再建法 につ いては標準 PD 30
。
例 中24例が 今永法,5例 が Child法 ,1例 が R,Y法 で
あ り,拡 大 PD 10例はす べ て今永法 で あ った。拡大 TP
h)胃 空腸吻合
大 PD(PDtt PV)10例
最後 に 胃空腸端 々吻合 を施行 し消化管 の再建 を終 了
TP(TP)1例
す る (図 4).
1)ド レンの留置 と閉腹
ドレンは ペ ン ローズ ドレンを用 い,総 肝管空腸吻合
部 と膵空腸吻合部 に留置す る。腹壁創 を縫合閉鎖 し手
術 を終了す る。
2)拡 大解頭十 二 指腸切除術 (拡大 PD)
主 として陣頭部癌 の体尾部進展 を認 めない症例や,
につ いては43例中40例を今永法,3例 を R‐Y法 で再 建
した。
2)術 後合併症 について
PDで 最 も問題 とな る合併症 は膵 空腸縫合不全 で あ
り,今 永法標準 PD 24例中 3例 に膵空腸縫合 不全 が 認
中下部胆管癌 あ るいは十 二 指腸乳頭部癌 で 門脈や膵 に
癌 の浸潤 が疑 われ る症例 を対象 として い る。術式 は ア
ル ス ロン カテ ーテ ル を用 いた 門脈 バ イパ ス分法 施行 下
め られた が,今 永法拡大 PD 10例においては陣空腸縫
に門脈合併陣頭体部切除術 を施行 し,広 範 リンパ 飾郭
腸縫合不全 を認めた症例 の残存膵 はす べ て硬化 を認 め
清,上 腸間膜動脈 神経叢,左 右腹腔神経節 も切除す る
もので あ る。 門脈再建 は門脈 上腸 間膜 静脈端 々吻合 で
ない症例 で あ った。
施行 し,陣 摘 を加 え陣 静脈 は結繁 してい る。消化管 の
合不全 は認 めてお らず,今 永法 におけ る膵空腸縫合不
全 の発生率 は34例中 3例 (8`8%)で あ った。 また膵 空
直死例 は PD施 行例 では 1例 も認 めていないが,拡
大 TP施 行例 では43例中 4例 (9.3%)に 認 めていい る。
3)拡 大膵全摘術 (拡大 TP)
しか し,今 永法標 準 PD施 行例 で は直死例 は認 め な い
ものの 2例 が膵空腸縫 合不全 に伴 う合併症 で入院死 し
主 として体尾部進展 を有す る膵 頭部癌 を対象 として
てい る.
再建 は標準 PDと 同様 に施 行す る.
い る。
拡大 PDと 同様 な手術操作で門脈 パ イパ ス法 施行下
に 門脈 合併膵全摘術 を施 行す る もので あ るゆ.門 脈再
1983年よ り陣空腸吻合術式 を前述 した 方法 に統
一し
て24例の今永法 PDを 施行 して きたが,膵 空腸縫 合不
建後,後 結 腸 にて空 腸 断端 よ り15∼20cmに て 総肝 管
全 は経験 してお らず,重 篤 な合併症 も認 めていない。
とくに今永法拡大 PD施 行10例は術後,重 篤 な合併症
空腸端側吻合 を施行 し,最後 に胃空腸吻合 を施行す る。
もな く,全 例 が退院可能 であ った。 さ らに1985年以後
は 拡 大 PD例
と拡 大 T P 例 に は 術 中 照 射 ( L i n a c ,
HH.障 十 二 指腸切 除例 の検 討
1)対 象症例 と手術 々式 (表 1)
3 , 0 0 0 r a d ) も併用 してい るが重篤 な合併症 は経験 して
1981年 7月 よ り1986年 4月 までの 4年 10カ月間 に膵
いない。
十 二 指腸切 除術 を施行 した症例 は膵癌 47例 ,十 二 指腸
乳頭部癌 10例,中 下部胆管痛 9例 な どの83例で あ り,
術後 胆管 炎 に よる と思わ れ る発 熱 は 今 永法 に よ る
P D 施 行例 で は 1 7 1 1 も
認 め られず, R ―Y 法 に よる P D
膵十二 指腸切除後再建法 としての今永法 の検討
施行例 に 1例 認 めた。
日消外会誌 20巻
4号
他 の 2例 は保存的治療 で治癒 した 。消化管通過障害 の
ZBS,insulinogenic index)を検 討す る と今永法標準
PD施 行例 では低 下例 も認 め られた が,上 昇例 も過半
数 に認 め られた。一 方,今永法拡大 PD施 行例 では全例
が低下 し,Child法 標 準 PD施 行 3例 にお いて も低 下
原 因 としては空腸 を結腸間膜 の左方 よ り後結腸性 に挙
を認 めた (図 5)。
術後上部消化管通過障害 を今永法 PD施 行34例中 3
例 に認 め, 1例 は再開腹癒着素」
離術 を必要 としたが,
上 し,挙 上空揚 が 中結腸動静脈,横 行結腸 と脊椎 の間
で圧迫 された こ とが考慮 された.そ こで空腸 を結腸間
膜右方 か ら後結腸性 に挙上す ることに よ り,以 後,消
化管通過 障害 は まった く認 めてい な い。
3)術 後膵 内外分泌能変化
術後 1年 以上生存例 で癌 の再発徴候 の な い症例 にお
いて,解 内分泌能 の変化 を50gブ ドウ糖経 口負荷試験
を施行 し,血 糖 (BS)と イ ンス リン (IRI)を測定 し,
術前 と比 較検 討 した。 血 糖 につ いては 今永法標 準 PD
施行例 では無変化や改善例 を多 く認 めた のに比較 し,
Child法では軽度悪化例 が半 数 に認 め られた。そ こで
ブ ドウ糖 負荷後30分迄 の イ ンス リン分泌反応 (ZIR1/
図 5 術 式別 の術後 Insulinogenic lndexの
変化
術 後,膵 外 分泌能 を検索 す る 目的 で同様 に PFD試
験 (PFD ①,Eisai)と便 中 キ モ トリプシン (MOnOtest
①,Boehringer Manheim)の 測定 を施行 した 。
今永法標 準 PD施 行711はChild法標 準 PD施 行例 や
今永法拡大 PD施 行例 に比 較 して PFD,便 中 キ モ トリ
プシ ン とも高値 を認め る症例 が 多 か ったが有意差 は認
め られ なか った (図 6).
4)術 後栄養状態 につ いて
今永法標準 PD施 行例 では術後,経 口摂取量 も充 分
で下痢 もな く,血 清総蛋 自, アル ブ ミン,総 コレス テ
ロール とも術 後 2年 までの検 討で は術前値 と比較 して
低下 は認 め なか った。体重 も術前 に比 較 して増加す る
もの が 多 か った。一 方,今永法拡大 PD施 行421で
は頻 回
の下痢 を認め る症例 もあ るが,塩 酸 Pペ ラ ミ ドの投与
と膵酵素剤 の投与 で コン トロール可能 で あ り,食 事摂
取量 も比較 的満足 で きるもので あ った。 また血 清総蛋
白,ア ル ブ ミン とも術 後 2年 までの検討 では 良好 に維
持 され ていたが,総 ヨ レス テ ロール と体重 は術後,軽
度低下傾 向を認め ,今 永法標準 PD施 行例 と比 較 す る
と有意 な低値 を認 めた。
8
0
術後 6カ 月以上経過例で肝 CTを 施行 し,脂 肪肝 の
防
6
0
5
0
発生 につ いて検討 した 。今永法標準 PD施 行例 で は検
索 しえた11例中,著 明 な脂 肪 肝 の 発 生 は 認 め られ な
4
0
い
2
0
,
0
か ったが,今 永法拡大 PD施 行例 では 6例 中 3例 に認
め られた。 しか し,脂 肪肝 を認 めた症例 も血液生化学
的 には異常値 を認 めず ほ とん どが社会復 帰 してお り,
現在 の ところ臨床 的 には何 ら問題 とな っていない。
I V . 考察
図 6 術 式別の術後 PFD値 と便中キモ トリプシンの
活性値
膵癌 取扱 い規約 ので は再建術 式 の種 類 を空腸 口側端
よ り胆管,膵 ,胃 の順 に吻合 した もの を PD‐I,輝,胆
管,胃 の順 に吻合 した もの を PD‐II,胃,解 ,胆 管 の順
に 吻 合 した もの を PD‐IIIに分 類 して お り,一 般 に
Whipple法 51はPD‐1,Child法 りは PD‐II, 今永法 1),
Cattell法61はPD‐IIIと分類 され る こ とにな る。しか し
今永法 以外 の これ ら再建法 はす べ て食物 を胆管吻合部
や膵 吻合部 に通過 させ ない よ うに工夫 した再 建法 とい
的
的
帥
m
帥
帥
うこ とがで き, この点 で大 きな相違 が あ る。
また 膵 空 腸 吻 合 法 は 解 断 端 を 空 腸 に 嵌 入 させ る
の 方 法 (端 々吻 合)と 空 腸 側 壁 に 吻 合 す る
Childつ
99(923)
1987年4月
Whippleら "の 方法 (端側 吻合)と に大別 で きる.PD
幽門側 2/3胃切除を原則 としてお り,現在 の と ころ認 め
で解空腸縫合不全 に関連す る合併症 は,時 に致命 的 と
ていない。
な り,そ のため安全 で確実 な膵空腸吻合法 が必要 とさ
術後 は高 力 Fリ ー輸液 で管理 してい るが,一 般 に残
存陣 内分泌機能 が 良好 な症例 では イ ンス リン投与 は必
れ る。われわ れ は拡大 TPを 多数例 に施 行 して きた が,
一 般 に膵頭部癌 の体尾部進展例 が
適応 であ り,根 治性
を得 るため に施行 してお り,解 空腸縫合不全 に伴 う合
併症 を危倶 しての もので は な い.拡 大 TPで は膵空腸
吻合 に伴 う合併症 は当然 回避 され る。し か し,拡 大手
術 な らびに陣 全摘 に随伴 した さま ざまな合併症ゆが問
題 となるが本稿 では害J愛した。われわれ の端側陣空腸
吻合術 は肝管 チ ュー ブは ロス トチ ュー プ としてお り,
要 とせず ,術後 10日前 後 に PTCD造
影 な らびに上部消
化管透視 を施行 し,縫 合不全 のない こ とを確認 し, さ
らに ドレン よ りの排液状況 を確認 しつつ経 日摂取 を開
始 してい る。
退院後 の管理 につ いては標 準 PD施 行例 では ほ とん
どが投薬 を必要 とせず ,全 例 が社会復 帰 して い る。 一
方,拡 大 PD施 行例 で は先 に述 べ た種 々の問題 が あ る
膵液 を体外 へ は ドレナ ー ジ していないが,解 管 チ ュー
ブ も短 く,チ ュー プ内 の抵抗 も少 な いため に膵液 は空
が,一 般 には イ ンス リン投与 も必要 とせず ,社 会復 帰
腸 内 へ 良好 に流 出 して い る もの と推 察 され る。膵 管
チ ュー ブは術後数 力月以内 に 自然脱落 し,排 便 ととも
り,外 来通院 にて膵酵素剤や 止潟 剤 の投与 と EDの 補
に 自然排 出 され,膵 管 チ ュー ブ留置 に起 因す る合 併症
も可能 で拡大膵全摘 に比較 すれ ば,は るかに有利 で あ
充投与 に よ り管理可能 であ る。
V . 結
語
は経験 していない。膵切離端 の処理 につ いて も止血 の
膵十 二 指腸切除後再建法 としてわれわれの施行 して
み に とどめ,通 糸結繁 な どに よる止血 は壊死巣 が発来
し,よ くない とす る報告りもあ る。解 と吻合す る空 腸 に
い る今永法 の術式 と成績 を中心 に報 告 した。術 後比較
的早 期 にお け る検 討 で は 本法 は重 篤 な合 併 症 も少 な
つ いて も装膜筋層 を切開 あ るいは切除す る方法 もあ る
く,陣 内外 分泌能 も良好 に保持 されてお り,簡 便 かつ
が,出 血 や腸 内容 の漏 出 とい った危険性 もあ り,わ れ
われ は膵管 チ ュー ブ挿 入用 の小孔 を開 け るのみ に して
生理的 な再建法 と考 え られた。今後 さらに術後陣 内外
い る。 われわれは膵切離端 よ りの出血 と膵液 の漏 出を
と空腸 との間 に死 腔 ので きな い よ うに密着 させて縫合
重 な長期観察 と他法 との比較検討 が必要 で あ る。
稿を終えるにあた り,本 研究に御協力をいただ きました
一官市立市民病院,市立岡崎病院,市立四 日市病院,岐阜県
す る ことが膵空腸縫合不全 防止 の重要 なポイ ン トで あ
立多治見病院の外科諸先生に深甚の感謝の意を表 します。
確実 に止 め,解 管空腸吻合 は粘膜縫合 とし,陣 切離端
る と 考 え て い る。陣 空 腸 縫 合 不 全 の 発 生 率 は
Warrenlの 8.4%(28/335),Herterl'8.8%(9/102),
Lerurり14.5%(15/103),光 野1め
13.7%(10/73),佐
藤141(12.7%(8/63),宙 木,尾 形 らり5.6%(5/90)の
報告 があ り,我 々の今永法再建 における成績8.8%(3/
34)は 比較的良好 なもの といえる。
今永法 では食物 の胆管内逆流 による術後胆管炎 が危
惧 されるが,術 後上部消化管透視 で検討す ると,仰 臥
位 では造影剤 の胆道内逆流 が容易に認 め られるが,立
位 にす るとすみやかに空腸 内に流 出し,肝 胆道 シンチ
で も胆汁 のすみやかな下部消化管 へ の移行が認 め られ
るのに対 し,Child法 では挙上空腸内 に長時間 にわた
る停滞 が認め られる ことも今永法において胆管炎が少
ない原因の一つ とも推察 され る。
今永法 では前結腸性 に消化管を再建 した方 がよい と
す る意見1つもあるが,前 結腸性の再建 では 胃空腸吻合
部や胆管空腸吻合部に緊張 がかか り,わ れわれは後結
腸性再建を原則 として い る.術 後吻合部潰瘍 の発生 は
分泌能,代 謝栄養状態,社 会復 帰状況 な どにつ いて厳
文
献
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