消化管吻合器EEA を使用した Biーーr。th ー法再建術の検討

日消外会誌 22(1),60∼
64,1989年
法
の検討
消化管吻合器 E E A を 使用 した B l l l r o t h I再建術
北海道大学第 1 外 科
真鍋 邦 彦
石
佐野 文 男
内
村 美 樹
野 純 一
BILLROTH I GASTRECTOMY WITH
田
西
修
EEA STAPLER
Kunih止 o MANABE,Haruki ISHIMURA,Osamu NISHIDA,
Funio SANO and Junichi UCHINO
First Department of Surgery,School of帥
I edicine,Hokkaido University
消化管吻合器 ( E E A ) を 応用 した B l l r o t h I 型
胃切除術 の臨床成績 を, 手 縫 い法 と比較検 討 した。
e m b e r t 法 ) 2 0 5 例であ る. 出 血量 は両群間 に
対象 は器械 吻合 ( M i t t a l 法) 1 4 6 例, 手 縫 い法 ( A l b e r tL‐
有意 の差 は なか った。吻合時間 は器械吻合平均 1 3 分, 手 縫 い吻合平均3 9 分で あ った ( p < 0 . 0 0 1 ) . 吻 合
部合併症 は, 手 縫 い法で は縫合不全 ( 5 9 % ) の みであ ったが, 器 械吻合法 では出血 ( 0 7 % ) , 縫 合不
全 ( 0 . 7 % ) お よび狭窄 ( 2 7 % ) が
認 め られた。器械吻合 の合併症 はいず れ も操作 に不慣 れ な初期 の
もので重 篤 な ものはなか った , 器 械吻合法 は操作 の簡略化 に よる手術時間 の短縮 と吻合部 の十 分 な強
度 の保持 が得 られ, 術 者 の負担 を大幅 に軽減す るもの と考 え る。
索引用語 !消 化管器械吻合,EEA,Blllroth I法
再建術,消 化管吻合部合併症
表 1 胃 手 術症 / / 1
1. は じめ に
Autosuture EEA(United States Surgical Corpora‐
tion)が1977年に発売 され10年が経過 し,わ が 国で も消
化器外科 の領域 では広 く普及 しつつ あ る。 しか し,一
般 には手縫 い操作 が 困難 な吻合 に限定 して使用 され て
い るのが現状 で あ る。
Y)
全摘 ( R o u x ―
Blllroth I
Blllroth II
胃 ・空腸 吻合 ( 非切 除)
Blllroth型再建 は通常,手 縫 い操作で とくに困難 な
く施行 され るが,近 年 改 良 された消化 管吻合器 の応用
は大 きな利点 が期待 で きる。 そ の最大 の ものは操作 の
表 2 胃 手術症4/1
簡略化 に よる手術時間 の短縮 で あ る。 また,吻 合部 の
治癒過程 にお け る十 分 な強度 の保持 が得 られ ることか
ら,い わゆ る異常環境 下 の吻合 に適 してい る と考 え ら
れ る。
この よ うな観点 か ら,わ れわれ は1979年以来各種 消
)ので,Bll‐
化管吻合 に積極的 に EEAを 使用 して きた 1レ
lroth I法再建 にお け る手縫 い 吻合 法 と器 械 吻合 法 と
を比較検討 した知見 を述 べ る.
I法 再建術 は351例 で あ るが, こ の うち手縫 い 吻合205
2.対 象 と方法
421と器械 吻合 146例 とを対象 に 臨床的成績 を比 較 検 討
1975年か ら1987年までの12年間 に経験 した Blllroth
< 1 9 8 8 年1 0 月1 2 日受理> 別 刷請求先 i 真鍋 邦 彦
〒0 6 0 本L 幌市北区北1 5 条西 7 丁 目 北海道大学 医学
部第 1 外 科
した (表 1,2).
器械 吻合手技 :
通常 の 幽門側 胃切除 の操作 を進 め,十 二 指腸 を切離
す る。 この時,後 の操 作 が容易 とな るよ うに,十 分 な
61(61)
1989年1月
図 1 幽 門 よ り大弯を切開 し,病 変部 に接触 しない よ
うに EEAを 胃内腔 に挿 入す る。吻合予定部 の 胃後
図 2 幽 門 よ り器械 を 胃腔 内 に挿入 し,胃 後壁大弯側
に center rodを
貫通 させ る。
壁大弯側 に center rodを
貫通 させ る.anvilを 装着
し胃十 二指腸吻合を行 う。
図 3 十 二 指揚断端 に a v i l を挿入 し, 経 絡縫合を結繁
こcenter rod“こ密着す るよ うヤ
こ,
fる .組 織 が 十分 “
縫合糸を さらに一巻 きして結熱す る。
Kocherの 授動 と,十 二 指腸断端 を可及的長 く(1 5cm
以上)処 理 してお く。十 二 指腸断端 の経 絡縫合 には,
滑 りが良 く,切 れ に くく,組 織損傷 の少 な い針付 きの
2 0 Surgilonまたは Proleenを 使用 してい る。
つ ぎに,幽 門 よ り冒大弯 を切 開 (病変 が大弯側 に あ
る場合 は小弯 を切開 し)病 巣 を観察す る。
awilを 装着 せ ず に EEAを
幽 門 よ り胃内腔 に 挿 入
し,吻 合予定部 の 胃大弯側後壁 に center rodを貫通 さ
せ る。center rOdを粘膜側 よ り押 しつ けた まま メスで
奨膜 を穿刺 す る と,容 易 に rodは 買通す る。wing nut
を回 し rOdを 十 分突 出 させ ,anvilを 装着す る.
胃壁 の center rod貫通部 に,初 期 には経 絡縫合 をか
けて いた。が,通 常 の操 作 では穿刺孔 が 裂 け る こ とは
図 4 胃 十 二指腸吻合 ( 側端吻合) 完 了時. 手 前 に病
巣 を含む幽門側 胃が挙上 されている。
な く,現 在 は何 もかけて いない (図 1,2).
つ ぎに,anvilを 十 二 指腸内腔 に挿 入す るが ,十 二 指
腸 が収縮 して挿 入困難 な場 合 には,吻 合 の 2, 3分 前
に硫 酸 ア トロピン0.5mgを 静とす る と腸 壁 が 弛 緩 し
操 作 が 容易 にな る。
十 二 指腸断端 の纏 絡縫合 の結繁時 には,組 織 が十分
に center rodに密着す るよ うに,縫 合糸 を さらに一 巻
きして結繁す る。 (図 3).
anvilを
次 に,wing nutを 回 し staple cartridgeと
引 き寄 せ る。 この時,十 二指腸吻合面 と目吻合面 にた
るみがで きない よ うに器械 を軽 く左方 へ牽 引 し,胃 壁
も staple cartridgeに
軽 く密着す るよ うに緊張 させ る
の 吻 合部 組 織 が 全 周連 続 性 に
よ 」
りs t a p l e l i n eり内狽
必要 が あ る。.anvilが 規定 の位置 に固定 された ことを
打 ち抜 かれてい る事 ( いわゆ る c o m p l e t e d o u g h n u t s )
確認 の上 ,並 apleを 打 ち込 み吻合 は完了す る。型 の通
を確認す る ( 図4 ) .
消化管吻合器 EEAを 使用 したBillroth I法再建術 の検討
62(62)
図 5 吻 合 部 よ り1 ∼2 c m 肛 門 側 に T A 9 0 , ま た は
P e t z をか けて幽門側 の 胃を切除す る。
日
消外会詰 22巻
1号
図 7 操 作完了時 には stapleの みで再建 されている.
友 3 BlllrOth I法 胃 ・+11指 賜吻合時間
千権 い
(n i20())
図 6 吻 合部 よ り約2 c m 幽 門側 に T A ‐9 0 をかける. 左
手 に切除 され る幽門側 目が把持 されている。
器 械
(n‐ 128)
分p l1 0帆
歴培
〔ョ
表 4 Bilroth I法
吻合部合併症
0 ( 0 0 )
12 (5 9)'
0 ( 0 0 ) …
・
p<0005
( 0 7 )
( 0 7 ) ・
( 2 7 ) ' 草
pホ< 0 0 2 5
2)吻 合操作時間
手縫 い吻合 の 胃に Petz鉗 子 をか けて切離 した 時点
か ら胃十 二 指腸吻合 (Albert‐
Lembert吻 合)を 終 了す
最 後 に, 吻 合 部 よ り 1 な い し2 c m 肛 門側 で, 胃 に
るまでの時間 と,器 械 吻合 の十 二 指腸 断端 に纏絡縫合
T A ‐9 0 か P e t z 鉗 子 をかけて 胃を閉鎖切 断す る ( 図 5 ,
をか け る時点 か ら TA‐90また は Petz針 子 で 胃を切 断
6).
処理す るまでの 時間 とを比 較す る と,前者 は平均39分,
これで 胃の切 除再建 は完了す るが, 胃 の切 断端 は全
層外翻縫合 にな ってい るた め奨膜縫 合 を加 え る1 ) ( 図
後者 は平均 13分で,26分 の差 が あ った (p<0.001)(表
7).
3)。
3)吻 合部合併症
cartridgeの大 きさは,ほ とん どの症例 で直径 28mm
の ものが挿 入可能 であ るが,ま れ に挿 入不可能 な もの
あ った (表 4)。 手縫 い法で は 出血 や狭窄 をお こした症
が あ り,専 用 の dilator(直径 28mm)な
pllは1例 もなか ったが,縫合 不全 は12例(5.9%)で あ っ
どで十二 指腸
の 口径 を確認 してお く必要 が あ る。
3 . 成
績
1 ) 出 血量
主 な吻合都 合 併 症 は 出血,縫 合 不 全 お よび 狭 窄 で
た。こ の うち 54/1は軽度 の もので 自然閉鎖 したが, 3
例 は再手術 (ド レナ ー ジ,再 縫合)を 要 した 。 また ,
4421は播種性血管 内凝 固症候群,多 臓 器障害 な どに移
胃の遊離, リ ンパ節郭清, 十 二 指腸断端 の吻合予定
部 の処理 な どには, 手 縫 い吻合4 7 1 で
も器械 吻合例 で も
行 し再手術不能 の まま死亡 した。
一 方,器 械 吻合法 では各合併症 を経
全 く同 じ操作 を加 えたため, 術 中 の 出血量 には有意 の
差 は なか った。
れ も器械操作 に習熟 していない初期 の症T/11で
,死 亡例
験 したがり,ぃ ず
は なか った。 出血 4/1は
術直後 か らの もので, 胃切 除断
1989年1月
63(63)
に吻合 したための出血 で あ った 1).
端 の staple line上
は1 9 8 1 年以来, B i l l r o t h I 法
再建 には M i t t a l らの方法
)。
に準 じて E E A を 使用 して来 た 1 ル
本法 の特徴 は, 十 二
縫合不全 171は
後壁側 で膵 との間 に膿場 を形成 した も
ので,術 後 の造影 では消化管 内容 の漏 出 は認 めず,高
指腸断端 の経絡縫合以外 は原則 として手縫 い操作 が不
度 の吻合部狭窄 の所見 で あ った。再手術時 に縫合不全
要 で, 器 械挿 入 のための余分 な切開孔 もな く, 操 作完
と半」
で再 建 した。
明 し,BlllrOth II法
狭窄1/11は
,吻 合部 の浮腫 に よる一 過性 の もの を除 い
了時 には s t a p l e のみで再建 されてい る点 にあ る.
て, 4例 で あ った。 この うち 1例 は再 手 術 を し,Biト
lroth II法
で再建 した 。他 の 3例 は残 胃の拡張 は あ るも
われわれ の経験 では, 術 者 が 8 年 目以上 の経験者 の場
e m b e r t 法 ) と 較 べ て, 胃全
合, 手 縫 い吻合 ( A l b e r tL‐
のの,嘔 吐 な どの強 い症状 が ないため経 過観察中 で あ
en‐
Y 吻 合 お よび幽門側 胃切 除 B i l i r o t h I 法
摘 ROux‐
る。
器械 吻合 の最大 の長所 は吻合時間 の短縮 で あ るが,
で 約2 7 分, B l l l r o t h I I 法
で約 1 8 分の短縮 が得 られた。
4 . 考 察
術者 に とって再建操作 は大 きな負担 で あ るが, 器 械 を
消化管 器械 吻合 の起原 は遠 く1 2 世紀 に さかのぼ る。
が, 原 理 は 内腔 s p l i n t を
使用 した 内翻 一 層吻合法 で,
1 8 9 2 年に M u r p h y b u t t o n 腸吻合 器 のとして集 約 され
そ
=.
ブ
一 方,消 化管縫合 にお け る 載apleの実用化 は
,1924
年,Alader von Petzが胃切除術 に応用 した Petz型 胃
腸縫合器 ゆには じまる.
使用す る こ とに よ りかな りの軽減 を計 ることがで きる。
吻合部 の経時的 な耐圧能 の変化 は, 吻 合部合併症 の
観 点 か ら もっと も重 要 な 因子 で あ る。教 室 の イ ヌを
で は, 器 械 吻 合 ( S P T U ) , A l b e r t ‐
使 った 実 験 1 つ
L e m b e r t ( A ‐L ) 法 お よび G a m b e e 法 の 3 者 を比較す
る と, 術 後 3 日 目で は器 械 吻合 は A ‐L 法 の 約 2 倍 ,
内臓 の stapleと円筒 刃 に よる吻 合 を行 うstaple式
G a m b e e 法 の約 1 . 5 倍 ( 平均 1 9 1 m m H g ) の 耐圧能 を有
EEA吻 合 と
す る こ とが示 された。 また, 西 川 ら1 5 ) も
消化管吻合器 は,1958年 ,峰 に よ り開発 され良好 な臨
床成績 を残 したりlい
。そ の後,本 器 は ソ連 で種 々の変遷
G a m b e e 法 を比較 しほぼ同様 の結果 を得 てい る。
教室 で 行 った ■licroangiography所 見 14)では, 器械
を経 て,わ が 国 に は SPTUと
吻合 と G a n b e e 法 では術後 3 日 目には吻合部 の a v a s ‐
して1976年に戻 って き
た9).
cular areaは
著 明 に減少 し, 粘 膜下層 の徴細 血 管吻合
11)が
ソ連 製 縫 合
米 国 で は1 9 5 9 年
頃 よ りR a v i t c h ら
器 の 追 試 を 開 始 し, 1 9 6 4 年に は T A , G I A 縫
合器
が認 め られ るが, A L 法
で は血 管再生 が遅 れて い る。
組織学的 には浮腫や 出血 の所見 は手縫 い吻合で も器
( U n i t e d S t a t e s S u r g i c a l C o r p実用化
o r a tされ
i o n ) が 械吻合 で も同程度 にみ られ るが, 器 械 吻合 では術 後 7
は じめて米 国 に紹 介 され, 1 9 7 7 年
日目まで に これ らの所見 が 消失す るのに対 し, 絹 糸 に
に EEA吻 合器 (United States Surgical Corporation) よる吻合 ではその後 も認 め られた 1 ゆ
. 一方, 金属 s t a p l e
り
が発表 され, わ が 国 に も紹介 された .
の周 囲に は細胞浸潤 は認 め られ なか った 1 4 ) .
た 。1 9 7 5 年S P T U が
c i r c u l a r s t a p l i n g d e v i歴
c e史
のは四 半 世 紀 に お よ
また, 器 械 吻合 は 内翻 縫 合 の た め 粘 膜 面 の欠 損 が
び, わ が 国で一 般 臨床応用 が 開始 されてか ら1 0 年以上
G a m b e e 法 よ りも長期間残 り, 潰 瘍 な どの所見 が しば
ら く認 め られ る と報 告 されてい る1 5 ) .
を経 てお り, 消 化管器械 吻合 は通常 の手術手技 として
定着 してい る。
消化管器械 吻合 は, 臨 床的 にはお もに手技的 に困難
な食道離 断術や直腸低位前方切 除術 に応用 されてい る
が, 1 9 7 9 年R a v i t c h ら1 2 ) , N a n c e l D が
E E A を 用 ヽヽた
これ らの基礎的実験 の結果, 器 械 吻合 の術後早期 に
おけ る高 い耐圧能 が長所 としてあげ られ, い わ ゆ る異
常環境下 において も高 い信頼性 が期待 で きる1 6 ) .
臨床的 にわれわれが経験 した吻合都 合併症 は 出血 ,
種 々の消化管吻合法 を報告 してか らは, よ り広 く使用
縫合不全 お よび狭窄 で あ る。 胃手術全体 ( B l l r o t h I ,
され る傾 向にあ る。 しか し, これ らの吻合法 は吻合器
I I 法, 全 摘 R o u x ‐
Y 法 ) で 器 械 吻合 と手縫 い 吻 合
en‐
べ
L
法
る
と
(Aハ )を 較
,手 縫 い 吻 合 で は 縫 合 不 全
挿入 のための消化管切 開を加 える必要 が あ り, 吻 合操
作後 に この切開孔 を縫合閉鎖 しなければな らな い。
1 9 8 0 年, M i t t a l ら ゆは消化管切 断端 か ら吻合器 を挿
入 し, 吻 合操作後 に吻合部 よ り末補 の病巣部 または余
( 5 . 2 % ) 以 外 の合併症 はなか った。手縫 い法で は直視
下 に操作 をす るため 出血 は皆無 で あ った と思われ る。
剰 の消化管 を閉鎖切断す る ことに よ り, 手 段 の簡略化
また, 狭 窄 に関 しては, 手 縫 い法で は吻合 口に対 して
放射状 に結節縫合 され るので, 吻 合 日の 円周方 向へ の
と操作時間の短縮 を計 った方法 を報告 した。われわれ
進展性 が保 たれ 良好 な結果 が得 られた もの と考 える。
消化管吻合器EEAを 使用 したBillroth I法再建術 の検討
64(64)
一 方, 器 械 吻合 で は a n v i l とs t a p l e c a r t r i d gの2
eと
mmの
間隙 に 吻 合部 組織 を狭 んで s t a p l e を打 ち込 む
ため, 時 として十 分 な圧迫 が されず 出血 の原 因 とな る
ことが あ る。また , 再 手術時 に出血 点 での s t a p l e の欠
落 を 1 例 に認 めたが, 原因 は N a n c e の 方法 1 3 ) で
胃断端
の s t a p l e l i n eに
上吻合 したためで, M i t t a l ら の方法3 )
に変更 してか らは この様 な こ とは経 験 していない。
器板 吻合 の縫合不全 は全体 として3 4 % で あ ったが,
1り
に もほぼ 同様 の数値 で あ る。 しか し, わ れ
文献的 1 7 卜
わ れ の成績 で は 術式 別 にみ る と B l l l r o t h I で
法 は1 4 6
例 中 1 例 にのみ 認 め られ, しか も初期 の症例 のため器
械 の操作 に不 慣 れであ った こ とと, 胃お よび十二 指腸
の授動 が不 十分 なため吻合部 に過大 な緊張 がかか って
いた こ とが原 因 で あ った。 その後 の B i l l r o t h I の
法症
は縫合不全 を経験 していない。
4/1で
器械吻合 の狭窄 は, 術 後早期 の浮腫 に よる ものを除
いて, 胃手術全体 で4 . 6 % に み られた, B i l l r o t h I 法
で
は頻度 はや や低 いが, そ れで も 4 例 ( 3 0 % ) あ
り, こ
の うち 1 例 に再手術 を し B i l l r o t h I Iで再
法 建 した。原
因 として は, E E A で
は s t a p l e が同心 円状 に 2 列 交 互
配列 とな ってい るため, 吻 合部 の 円周方 向へ の進展性
に乏 しくかつ 組織 の阻血 をお こしや す い こ と, 内 翻縫
合 のため粘膜欠損 が あ り肉芽形成 を起 しや す く, 疲 痕
収縮 へ 移行 しやす い ことな どがあげ られ る。 しか し,
は狭 窄 はな く, 操 作 の不慣 れ に よる因子
最近 の症4 2 1 で
が大 きい もの と思われ る。
術 後 合 併症 の検 索 には造 影 法 や 内祝 鏡 検 査 が あ る
が, 単 純 X 線 写真 に よる s t a p l e l i n e観察
の も有効で,
の開 な どの
特 に縫合不全例 で は環 状 の s t a p l e l i n e離
所見 が認 め られ る。
本来, B i l l r o t h I再建
法 は手技的 に手縫 い法 で何 ら困
難 はないが, 器 械 吻合 に よる操作時間 の短縮, 吻 合部
の耐圧能 の 向上 は, 全 身状態不 良例 な どでは大 きな利
点であ る。
器械 吻合法 には多 くの長所 が あ るが器 械 ゆ えの欠点
も皆無 ではな く, 手 縫 い吻合 に熟達 した術者 が使用す
べ きもの と考 える。 また, 技 術的 な問題 のほかに, 器
械 の構造 あ るいは価 格 の面 で も問題 が あ り, 今 後 の解
決 が待 たれ る。
5
。
ま と め
われわ れの経験 した Blllroth I法
再建術 につ いて,
手縫 い法 と器 械 吻合法 とを比較検討 し,知見 を述 べ た。
文 献
1)井 斎偉矢,川 村明夫,佐 藤広和ほか :Blllroth I法
日
消外会誌 22巻
1号
お よび I I 法胃切 除術 に お け る A u t o s u t u r e E E A
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