【注意】発行当時の原稿をそのまま掲載しております。農薬について記載のある場合は、最新の農薬登 録内容を確認し、それに基づいて農薬を使用してください。また、成果情報によっては、その後変更・ 廃止されたものがありますのでご注意ください。 [成果情報名]乳牛に対する育成期からのとうもろこしシサイレージ長期多給技術 [要 約]乳牛に対しとうもろこしサイレージを、育成期に体重当たり乾物で1%(原物5kg ~15kg)、初産牛で乾物6kg(原物20kg)、また経産牛で乾物7.5kg(原 物25kg)給与した場合の飼養成績は、県内の一般飼料給与体系(育成期:無給与、 初産以降:乾物3kg、原物10kg)の場合と同等の成績が得られる。 [部 署]山形県農業総合研究センター畜産試験場・飼養管理科 [連 絡 先]TEL0233-23-8818 [ 成 果 区 分 ]普 [キーワード]とうもろこしサイレージ 自給飼料 多給 乳牛 育成 -----------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] 配合飼料価格の高騰、長引く乳価低迷を背景に、酪農経営の飼料自給率向上による一層の経営体 質強化が求められている中、単位面積当たり栄養収量の高い自給飼料として飼料用とうもろこしに 大きな関心が寄せられている。このため、細断型ロールベーラーにより高品質に調製されたとうも ろこしサイレージの乳牛への多給技術を検討し、酪農経営における飼料自給率の向上に資する。 [成果の内容・特徴] 1 乳牛の育成期に、とうもろこしサイレージ(以下コーン S)を体重当たり乾物で1%(原物約5 kg~15kg)給与した結果、体重、体高とも標準発育曲線を上回る良好な発育を示し、繁殖成 績でもコーン S 多給による影響は認められなかった(図1、表3)。 2 初産分娩後にコーン S を乾物6kg(原物約20kg)給与した場合、産乳成績および繁殖成績に コーン S 多給による影響は認められなかった(表2、3)。 3 経産牛の泌乳中期に、コーン S を乾物7.5kg(原物約25kg)給与した結果、産乳成績およ び咀嚼行動にコーン S 多給による影響は認められなかった(表4、5)。 4 飼料費については、県内の一般的なコーン S 給与体系の場合よりコーン S を多給した方が、1日 当たり育成牛約16.8%(109円)、経産牛約13.4%(168円)節約でき、1頭当たり では、育成期で約5万円、1乳期で約6万円節約できる。 [成果の活用面・留意点] 1 分娩後にコーン S を増量する際は、乾物摂取量の回復を診ながら充分な時間をかけて除々に行 うこと。 2 コーン S を多給する際は、事前に成分分析を行ってから飼料設計すること。 [具体的なデータ] (1)飼料摂取量 表1 飼料 摂取量 コーンS 乾草 配合 飼料 ヘイキューブ ビート 大豆 粕 D M (kg) T D N (% D M ) C P (% D M ) N D F (% D M ) 1 日 当 た り 飼 料 費 (円 ) (節 約 率 % ) 育 成 15ケ 月 齢 対 照区 試験区 0 .0 1 3 .0 1 0 .0 5 .0 1 .0 0 .5 1 .0 2 .3 - - - - 1 0 .3 1 0 .5 5 7 .0 6 0 .0 9 .8 1 0 .5 6 1 .7 5 3 .4 647 538 ( 1 6 .8 ) 初 産 牛 分 娩 後 60日 対 照区 試験区 1 0 .0 2 0 .0 6 .0 5 .0 1 0 .0 9 .0 3 .0 3 .0 3 .0 2 .0 - - 2 2 .0 2 2 .4 7 1 .0 7 0 .0 1 4 .8 1 4 .0 3 9 .5 3 9 .8 1241 1200 ( 3 .3 ) 経産牛 泌乳中期 対 照区 試験 区 1 0 .0 2 5 .0 5 .5 3 .5 1 0 .0 6 .0 4 .0 4 .0 3 .0 1 .0 - 1 .0 2 2 .4 2 0 .8 7 0 .9 6 8 .5 1 5 .1 1 5 .0 3 9 .2 4 0 .2 1250 1082 ( 1 3 .4 ) ※ コ ー ン S の 飼 料 単 価 は 1 0 h a 規 模 の 細 断 型 ロ ー ル ベ ー ラ ー 体 系 に よ る 生 産 費 調 査 か ら 1 1 .5 円 / k g と し た 。 (2)育成期から初産にかけての長期多給試験 600.0 160.0 155.0 500.0 150.0 145.0 400.0 135.0 130.0 200.0 体重 体重 体高 体高 100.0 試験区 対照区 試験区 対照区 0.0 125.0 120.0 115.0 110.0 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 図1 体重・体高の推移 18 月齢 cm kg 140.0 300.0 表2 初産時の産乳成績と血液性状(分娩後90日目) 対照区 試験区 乳量 kg 33.8 31.4 乳成分 乳脂肪 % 3.67 3.84 乳蛋白質 % 3.15 3.01 乳糖 % 4.63 4.62 無脂固形分 % 8.78 8.77 4%FCM kg/d 32.18 30.65 90日累積乳量 kg 2951.9 2826.8 血液性状 Tcho mg/dl 247.0 232.0 BUN mg/dl 9.9 9.0 GLU mg/dl 56.2 52.6 Ca mg/dl 10.5 10.4 P mg/dl 6.2 5.9 表3 繁殖成績 育成期 初回発情月齢 受胎月齢 ※ 初産 発情回帰日数 空胎日数 対照区 10.1 14.9 56.4 114.2 試験区 9.9 14.2 50.8 112.0 ※ 初 産 に つ い て は 、分 娩 後 日 数 の デ ー タ。 (3)泌乳中期における多給試験 表4 泌乳中期の産乳成績等 10kg区 25kg区 体重 kg 乳量 kg 乳脂肪 % 乳蛋白質率 % 乳糖率 % 無脂固形分率 % スコア 糞性状 667.8 27.9 3.91 3.37 4.6 8.96 2.9 672 28.6 3.98 3.36 4.58 8.94 2.8 表5 咀嚼行動調査 採食時間 反芻時間 総咀嚼時間 RVI(総咀嚼時間/乾物摂取量) (分/日) (分/日) (分/日) (分/kg) 10kg区 25kg区 337.2 455.0 792.2 37.0 373.5 468.5 842.0 40.5 [その他] 研究課題名:トウモロコシサイレージの乳牛への濃厚飼料代替給与技術の開発 予算区分:県単 研究期間:平成 20 年度~22 年度 研究担当者:高野真理安、三上豊治、伊藤修平 発表論文等:
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