平成 20 年度 岩手県農業研究センター試験研究成果書 指導 題名 リンドウ種子の調製・貯蔵技術 区分 [要約]リンドウの採種後は、さく果から種子を取り出して乾燥させることにより、播 種後のカビの発生する割合が低減され、子葉展開個体率が向上する。その種子を凍結貯 蔵することにより、採種後2年間は貯蔵前と同程度の子葉展開個体率を維持できる。 キーワード リンドウ 種子 貯蔵 技術部園芸研究室 1 背景とねらい 現在、本県が育成したリンドウ品種の種苗供給は主に種子で行っているが、発芽 率の年次較差による不安定な種子供給が問題となっている。 そ こ で 安 定 し た 種 子 供 給 を 目 的 と し て 、種 子 の 調 製・貯 蔵 技 術 に つ い て 検 討 す る 。 2 成果の内容 (1)リンドウの採種後は、さく果から種子を取り出して乾燥させることにより、播種後の カビの発生する割合が低減され、子葉展開個体率が向上する(表 1 )。 (2)種 子 貯 蔵 は 凍 結 貯 蔵 と す る 。 こ れ に よ り 、 採 種 後 2 年 間 は 貯 蔵 前 と 同 程 度 の 子 葉 展 開 個 体 率 を 維 持 で き る (表 2 )。 (3)安 定 し た 乾 燥 条 件 を 得 る た め に 通 風 乾 燥 を 行 う 場 合 、 40℃ で 1 ∼ 2 日 間 実 施 す れ ば 充 分 に 乾 燥 し (図 1 )、子 葉 展 開 個 体 率 と そ の 推 移 は 、室 内 乾 燥 と 同 程 度 に な る (表 3 、 図 2 )。 一 方 、 50℃ 通 風 乾 燥 を 1 日 (24 時 間 )以 上 実 施 す る こ と に よ り 、 著 し く 子 葉 展 開 個 体 率 が 低 下 す る (表 3 )。 3 成果活用上の留意事項 (1)カ ビ の 発 生 が 低 減 さ れ 、子 葉 展 開 個 体 率 が 向 上 す る こ と に つ い て は 、平 成 20 年 度 試 験 研 究 成 果「 り ん ど う の 育 苗 中 に 発 生 す る 苗 腐 敗 症 の 発 生 生 態 と 薬 剤 防 除 対 策」においても同様の傾向が認められている。 (2)種 子 貯 蔵 に 関 し て は 、 2 年 目 ま で の デ ー タ を 取 り ま と め た も の で あ り 、 今 後 も 試験を継続する。 4 成果の活用方法等 (1)適用地帯又は対象者等 社団法人岩手県農産物改良種苗センター、種苗生産者 (2)期待する活用効果 リンドウ種子生産における品質向上と供給量の安定化に資する。 5 当該事項に係る試験研究課題 ( 840) り ん ど う F 1 品 種 の 親 株 維 持 、 増 殖 技 術 の 確 立 ( 840-1000) 種 子 に よ る 親 株 維 持 技 術 の 確 立 [H 14∼ H 22/ 県 単 ] 6 研究担当者 中里崇、川村浩美 7 参考資料・文献 平 成 20 年 度 試 験 研 究 成 果「 り ん ど う の 育 苗 中 に 発 生 す る 苗 腐 敗 病 の 発 生 生 態 と 薬 剤防除対策」(普及) 平 成 14 年 ∼ 18 年 度 岩 手 県 農 業 研 究 セ ン タ ー 花 き 試 験 成 績 書 (指 )− 37− 1 8 試験成績の概要(具体的なデータ) 表1 種子乾燥方法が子葉展開個体率に及ぼす影響 子葉展開個体率1)(%) 試験区 カビ発生率 (%) シャーレ2) 培土3) さく果から種子を取り出して室内乾燥 83.0 76.0 19.5 さく果から種子を取り出さずに室内乾燥 69.0 60.0 26.5 4) *供試品種:いわて乙女(H19年産) *室内乾燥条件:気温23∼25℃、湿度40∼50%で3日乾燥 1)播種後、カビ等の影響で死滅せずに子葉展開していた個体を計測 2)シャーレに100粒ずつ播種、2反復 3)200穴セルトレーに1粒/穴播種 4)シャーレ内で子葉展開までにカビが発生した個体を計測 表2 種子貯蔵方法が子葉展開個体率に及ぼす影響 品 種 貯蔵前の子 葉展開個体 試験区 1) 率 (%) 4ヵ月後 マジェル(H18産) 79.0 いわて乙女(H19産) 76.0 冷蔵 冷凍 冷蔵 冷凍 88.0 86.0 ― ― 子葉展開個体率(%) 6ヵ月後 ― ― 53.5 73.5 1年後 ― ― 43.5 70.0 1.5年後 62.0 87.0 ― ― 2年後 69.5 77.5 ― ― *さく果から種子を取り出して室内乾燥(気温23∼25℃、湿度40∼50%で3日)後、貯蔵開始 *冷蔵温度は2℃、冷凍温度は−30℃ (%) *200穴セルトレーに1粒/穴播種 100 1)播種後、カビ等の影響で死滅せずに子葉展開していた個体を計測 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 表3 種子の乾燥条件別子葉展開個体率 試験区 室内乾燥3日間 50℃通風乾燥1日間 〃 3日間 〃 7日間 〃 17日間 〃 24日間 〃 31日間 室内乾燥3日間 40℃通風乾燥1日間 〃 3日間 子葉展開個 年次 体率1)(%) 76.2 44.8 50.5 55.0 38.9 23.5 12.3 76.0 70.0 76.0 1日目 2日目 3日目 4日目 6日目 9日目 10日目 図1 40℃通風乾燥における種子重 量の推移 *「いわて乙女」(H20 年産) H18 (%) 80 70 H19 60 *供試系統・品種:H18は「OK」(H18年産)、H19は 「いわて乙女」(H19年産) *通風乾燥は通風乾燥機を使用 *室内乾燥条件は23∼25℃、湿度40∼50% *各区ともに乾燥終了後、2℃冷蔵 *H18:200穴セルトレーに3粒/穴播種、H19:200穴 セルトレーに1粒/穴播種 1)播種後、カビ等の影響で死滅せずに子葉展開してい た個体を計測 50 40 30 室内で3日間乾燥した種子 20 40℃で1日間乾燥した種子 10 40℃で3日間乾燥した種子 0 14日目 16日目 18日目 22日目 24日目 28日目 図2 種子の乾燥条件別子葉展開個体率 の推移 *「いわて乙女」(H19 年産) (指 )− 37− 2
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