[成果情報名]早期親子分離技術と放牧を組み合わせた黒毛和種繁殖牛の飼養管理技術 [要約]黒毛和種繁殖雌牛において早期親子分離を行うと、イタリアンライグラス、バヒアグラス の放牧時に、補助飼料として稲ワラだけで適正な栄養度を維持でき、1年1産が可能となる。 [キーワード]早期親子分離、黒毛和種繁殖牛、輪換放牧、飼養管理、稲ワラ [担当]畜産試験場・大家畜科 [連絡先]電話 0957-68-1135、電子メール [email protected] [区分]畜産 [分類]普及 ---------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] 黒毛和種繁殖農家において、近年見られる早期親子分離技術は繁殖牛の空胎期間が短縮で き、授乳期の増飼を必要としないため飼養管理も簡素化できる技術である。一方で、県内の 黒毛和種繁殖農家において水田の裏作・遊休農地等を利用した放牧が普及しつつある。 そこで、早期親子分離技術と放牧を組み合わせた飼養管理を行い、濃厚飼料を給与せず繁 殖農家が入手可能な自給飼料である稲ワラのみを補助飼料とした省力的な黒毛和種繁殖雌牛 の飼養管理技術を確立する。 [成果の内容・特徴] 黒毛和種繁殖雌牛16頭を供試し、試験区8頭はイタリアンライグラス草地 6,710m2 およびバヒ アグラス草地 7,250 m2を用い周年輪換放牧を行った。放牧時間は午前9時から午後3時までの6時 間、その他の時間は舎飼いとし、濃厚飼料無給与で補助飼料は稲ワラのみとした。対照区は舎飼い し、トウモロコシサイレージおよび乾草を維持に必要なTDN量を充足するよう給与した。 1.イタリアンライグラス、バヒアグラスの輪換放牧時に、補助飼料として稲ワラのみを給与する と、成雌牛の維持に要するTDNの 104.6%を摂取でき、栄養度は適正に維持される。 (表1、図1、 図2) 2.早期親子分離技術を行うと、黒毛和種繁殖雌牛は補助飼料を稲ワラのみした放牧で1年1産が 可能である。 (表2) 3.血液性状は正常値で推移し、疾病・下痢等の発生もなく、健康な繁殖牛飼養管理が可能である。 (表3) [成果の活用面・留意点] 1.早期親子分離を行う黒毛和種繁殖牛の飼養管理体系に利活用できる。 2.稲ワラのみの給与から放牧を再開する場合は、急激な飼料変化による代謝障害を防ぐために、 放牧時間を徐々に増やしていくことが望ましい。 3.適正な栄養度を維持することは連産を行うのに不可欠なことから、繁殖牛の栄養度に留意する 必要がある。 - 53 - [具体的データ] 表1 飼料摂取量 生草 n 稲わら 合計 DM TDN CP DM TDN CP DM TDN CP イタリアン期(H13) 8 4.39 3.08 0.91 2.21 0.93 0.12 6.60 4.01 1.03 バヒア期 8 5.00 3.38 0.77 1.73 0.73 0.03 6.73 4.11 0.81 イタリアン期(∼H14.3) 8 4.60 3.33 0.85 2.97 1.23 0.16 7.57 4.56 1.01 4.66 3.26 0.85 2.30 0.96 0.10 6.97 4.22 0.95 104.6% 148.2% 3.39 0.53 96.7% 95.9% 試験区 平均 栄養充足率 対照区 舎飼い区 8 5.83 栄養充足率 ※日本標準飼料成分表(2000 年度)および日本飼料標準(2000 年度)による 試験区 対照区 * 150 * 試験区 * 9 * * 対照区 * 8 140 130 7 栄養度判定値 体重推移(%) 110 100 90 80 栄養度判定:普通 120 6 5 4 3 70 2 60 1 50 2001 2002 12/1 2/1 2001 2002 2003 4/1 6/1 8/1 10/1 12/1 2/1 12/1 4/1 日付 2/1 6/1 8/1 日付 10/1 12/1 2/1 *:稲ワラのみの給与期間 ※:全国和牛登録協会栄養度判定による *:稲ワラのみの給与期間 図2 栄養度判定 図1 体重推移 表2 繁殖成績 2003 4/1 n 空胎期間 分娩間隔 受精回数 試験区 9 69.9 354.9 1.0 対照区 10 71.7 356.7 1.1 表3 血液検査 n 試験区 対照区 正常値 8 イタリアン期 バヒア期 8 舎飼い 8 総蛋白質 アルブミン AST GGT T-cho BUN K ビタミンA (g/dl) (g/dl) (IU/L) (IU/L) (mg/dl) (mg/dl) (mq/L) (IU/dl) 7.6 3.6 52.9 18.9 107.7 8.6 4.1 90.0 7.4 3.5 49.9 20.8 115.8 8.5 4.3 79.5 7.6 3.7 50.8 22.7 88.3 5.4 4.3 90.2 6.8±0.4 3.5±0.35 53.1±3.8 10∼50 111.1±27.3 19.7±3.5 5.4±0.2 - ※臨床生理検査要領、牛の臨床および牛病学による [その他] 研究課題名:肥育素牛の放牧育成に関する研究 予 算 区 分 :県単 研 究 期 間 :2000∼2005年度 研究担当者:橋元大介、堀誠、嶋澤光一、中山昭義、荒木勉 54
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