津波による橋梁構造物に及ぼす波力の評価に関する調査研究委員会 第 2 回全体委員会 1. 日 時: 2011 年 11 月 4 日(金) 2. 場 所: 土木学会 議事次第(案) 14:00~17:00 A 会議室 3. 出席者: 丸山委員長,細田幹事長,青木,有川,石橋,岩城,春日,北原,幸左,鈴木,橘, 玉越,中村光,浜田,藤間,中村友昭 (水谷代理),宮川,睦好,横田,米山の各委員,田中, 千々和,林,渡辺の各幹事 4. 配布資料 2-1:議事次第 2-2:第 1 回全体委員会議事録(案) 2-3:話題提供資料:津波を受けた橋梁の現地調査の進捗報告 2-4:データベース資料 5. 委員長挨拶 震災以来,津波に関する研究活動が国内各所において進められている.委員会では,これらを 共有し,今後の方向性を議論していきたい. 6. 委員の自己紹介 本日より参加する委員より,自己紹介があった. 7. 議事 7.1. 第 1 回議事録案の確認 細田幹事長より,前回委員会の議事録案の説明があり,承認された. 議事録は HP に掲載される.表現など修正すべき点があれば,幹事団に連絡する. 本委員会委員は,コンクリート,構造工学,海岸工学委員会といくつかの委員会に参加して いる.委員会報告に関して,議事録(案)にある「コンクリートライブラリーシリーズからの発 刊」については未定であるが,迅速に公開できる手段を検討する. 7.2. 話題提供 3件 (1) PC 建設業協会による橋梁被害調査結果(春日委員) PC 建設業協会による,東北地方 1250 橋梁および沿岸地域 113 橋の橋梁調査結果の報告があっ た. 陸前高田・沼田跨線橋など,無損傷のアンカーバーから桁が浮遊して落橋したと考えられる 事例や,川原川橋など盛土流出により落橋した事例がある. 歌津大橋:ポストテンション式 T 桁は裏返しに, プレテンション式 T 桁はそのまま落橋した. 流出していない 2 径間の P2 橋脚の RC 巻き立て部の山側で支圧破壊が生じており,海側では 橋脚の主鉄筋が破断しているようである.作用した力の推定に活用できそうである. H16 年 9 月大森大橋(北海道小樽付近:ポストテンション式 T 桁):台風 18 号により落橋事 例では,ビデオにより橋梁が冠水しており,要因として浮力により落橋したと考えられた. 歌津大橋を対象に,Case1:空気が残留しない,Case2:桁間に空気が残留する条件で浮力の 計算した結果,桁高が比較的高いポステン T 桁では Case2 において自重に対する浮力の比が 1 を上回る結果となった. PC 技術協会では,津波,地震による橋梁被害について,この計算例も含めて報告書を作成中 である. 主な議論は以下の通り. ・ 発表に使用した PPT は,印刷して配布する. ・ 浮力の計算(Case2)では,桁間が完全空隙を仮定している.実際は不明だが,横断縦断勾配 の無い橋梁では空気が排出されにくく,したがって完全空隙に近い橋梁もあったと考えられる. ・ 落橋要因は,浮力だけでなく,浮力と水平力およびそれによる上揚力の総合作用であると考え られる.箱桁や T 桁など構造種類ごとにそれぞれの影響度が異なるため,全橋に対して浮力だ けによる落橋メカニズムの説明は難しいと考えられる. ・ 落橋方向は,浮力の影響度を判断する材料になると思われる.今回の調査結果によると,海側 に落橋した事例もある. ・ 構造種類によっては断面形状だけでは決定されず,例えば曲率半径が小さい桁では上揚力が生 じやすい形式がある. ・ 浮力の作用は必ず発生しているが,上揚力との大きさの比較については,議論が必要である. 実験では区別して計測することは困難だが,設計では区別せずに対応できる可能性もある. ・ 流出した瞬間の画像が必要だが,その時の桁高と浸水高さの関係が必要である.回転して落橋 (例:姉歯橋,写真による確認),津波に埋没してから落橋(例:歌津大橋,動画による確認) など,落橋タイプが異なる. ・ 土木学会を中心に,津波襲来状況の映像画像を収集する計画がある. (2) 橋梁の漂流試計算の結果など(名大:中村友昭先生(水谷委員代理)) 津波による構造物流出シミュレーションにも適用が期待される,3 次元流体(空気,水)・構造物・ 地形変化連成数値計算モデルの概要について説明があった. 津波による橋梁構造物の漂流(庄司ら:土木学会論文集 B2,2010)の実験結果を対象に,コ ンクリート構造物の密度(1000kg/m3,2300kg/m3)の効果を試算により評価している.ただ し,計算時間短縮のため寸法を 2 倍にして実施している. 構造物密度が小さい場合橋梁は浮き上がり漂流するが,構造物密度が大きい場合,漂流しな い.また,桁間には空気が残留する状況が再現された. 引き続き,入力波の再現を含めて算出することを試みている. その他,津波によるコンテナ漂流や,ケーソン移動に関するシミュレーション結果が紹介さ れた. – 流体:XNS (Extended Navier-Stokes Solver)→気相・液層の追跡, VFM(Volume of Fluid Module)→気液界面の追跡 – 構造移動の追跡:IBM (Immersed Boundary Module) – 掃流砂輸送と浮遊砂輸送に伴う地形変化の追跡:STM (Sediment Transport Module) 主な議論は以下の通り. ・ 本手法によるパラメトリック解析により,波・地形・構造諸元など様々な指標の橋梁流出に 対する影響評価が期待される.特に,水深や砕波位置からの距離などに注目したい. ・ 実験と解析のスケール差や流体を非圧縮性と設定した場合,桁間の残留空気の挙動評価にお いて,圧縮特性や境界部の練成挙動などの点で寸法依存性が懸念される. ・ 関連するソフトとして CADMAS-SURF があるが,これは,気相は解析対象としていない. ・ 実験では,境界条件を実際と合わせることは困難である.したがって,実験にも課題がある ことが多いため,無理やり実験結果を再現することに力を注ぐべきではない. ・ 2 次元解析では一般コンピュータでも計算可能であり,委員会と連携して変数分析も可能で ある.1 径間橋梁の計算時間では,数時間程度である. ・ 委員会では,橋梁全体系ではなく 1 径間程度を対象に分析を実施したい.目標として,全体 の 7 割程度の橋梁流出の有無について,評価できるレベルに達したい. ・ 構造物の抵抗(重さ,摩擦)については,簡便法においても概ね評価可能であると思われる. 一方で,波力による作用,とくに上揚力の評価が困難である.橋梁にどのような波が到達し たのか,また,橋梁に及ぼす波の特徴を示す指標を明らかにすることが,高精度化の鍵であ る. ・ 浮遊物による破壊により落橋したケースも想定されるが(例:日本海中部地震→船により破 壊),映像情報がない限り特定が困難であるため,原因が判明しない限り,まずは水の影響 のみ考慮して議論を進める. ・ 一部の研究機関において Lab 実験は実施されている.委員会として Lab 実験は想定しておら ず,解析結果については調査データにより実証していきたい. (3) 長岡技科大・横浜国大による現地調査の結果とデータベース構築(田中幹事ほか) 田老地区の橋梁流出状況について,画像・映像による説明があった.また,方針・範囲など橋 梁流出調査の概要,および既存マクロ式(β=抵抗力/作用力比)を用いた試算結果の紹介があった. 現段階では流速を一定値にするなどラフな設定ではあるが,流出の有無とβの傾向が一致し ていない.構造形式の特定,流速,地形など,個別の橋梁ごとに見直しを行っている. 主な議論は以下の通り. ・ の設定では支障条件と併せて検討する必要があるが,ここでは支承部の大破を想定して =0.6 と設定している. ・ 津波の流速は空間位置において大きく変化するため,一義的に設定することを前提に議論を 進めることは困難である.遡上解析による流速評価や,津波・橋梁高さ,海岸からの距離な どの情報から簡便に推定する手法など,検討すべきである. ・ ここで用いた津波流速 V=6 m/s は,撮影された動画の分析による平均値である. ・ 流速 10m 以上の津波も,発生している. ・ 流速については,例えば長波理論による算定値があるが,陸上における流速を一般に表現す ることは勾配など地形情報との練成が必要であるため,適用は困難である.河川と陸上でも 遡上特性は全く異なる. ・ 二乗で流速の効果が表れるため,流速については,良く議論を行う必要がある. ・ 橋梁の流出に関する 1 つの指標として例えばβが用いられているが,目標としてその定義に 従い,β>1:流出無し,β<1:流出,としたい.そのために,上揚力や流速の設定など,海 岸工学の知見を融合して高精度化していきたい. 8. 各事業者からの橋梁図面の取得状況について 国道:取得済 県道: ・ 岩手県:取得済 ・ 宮城県:一部入手 ・ 福島県:計測済 市町村道:計測済 鉄道:JR 東日本から入手予定 ・ JR 東日本:取得済 ・ 三陸鉄道:未コンタクト 地形情報:国土地理院から入手予定. 9. データベース構築の作業方針の確認 細田幹事長より,資料 2-4 に基づき作成中のデータベースについて説明があり,将来性も含め て,項目を検証したい旨,説明があった.追記項目に関する議論は,以下のとおり. なお,本資料に関して,1 週間以内を目処に,気付いた点を幹事に連絡する. ・ 橋梁の斜角情報,川幅,流出方向(海側山側),橋台被災状況,上部工形式を追記. ・ データベースは橋梁ごとに作成しているが,径間ごとについては検討する. ・ 歩道,車道,側径間は区別する. ・ 被害の定義は明確にする. ・ 落橋防止(垂直方向,水平方向)の有無を明記 ・ グーグルアースを併用するほか,空間情報(水深,緯度経度)を明記 ・ 津波情報:津波の状態を示す情報は必要だが,表現は検討する. ・ 浮遊物の有無:ビデオ判定もしくは周辺被害情報を入力 ・ 高欄形式・諸元 10. WG の設置についての議論 細田幹事長より,次の 2 種類の WG の提案があった.すなわち,津波遡上解析や構造物への津 波作用を精緻に分析することを目指す WG と,主に現地調査などにより蓄積したマクロデータを 分析する WG である. WG 構成については,幹事団で議論した上で改めて提案する.なお,必要に応じて新メンバー を補強する. 11. その他,次回日程調整 次回は,2012 年 2 月上旬を予定しているが,メールにて調整を行う. 以上 (文責:渡辺)
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