補足プリント3

微分積分学および演習Ⅱ 補足プリント 3
2014 年度後期
工学部・未来科学部 1 年
担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教)
■陰関数定理
定義
(陰関数)
f : R → R を 2 変数関数とし、x と y が方程式 f (x, y) = 0 で関係付けられているとする。
2
x の開区間 I 上の 1 変数関数 φ : I → R が I 上 f (x, ϕ(x)) = 0 を満たすとき、この関数
y = φ(x) を f (x, y) = 0 で定義された (x に関する) 陰関数 implicit function と呼ぶ。
※ 同様に y に関する陰関数 x = ψ(y), f (ψ(y), y) = 0 も考えられる。
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定理
(陰関数定理)
2 変数関数 f : R2 → R が連続偏微分可能であるとし、点 (x0 , y0 ) に於いて f (x0 , y0 ) = 0
かつ fy (x0 , y0 ) ̸= 0 を満たすとする。
このとき、x0 を含む x の開区間 Ix0 で定義された f (x, y) = 0 の陰関数 y = φ(x) で
φ(x0 ) = y0 を満たすものが存在する。さらにこの陰関数は微分可能で、その導関数は
Ix 0 上
φ′ (x) = −
fx (x0 , φ(x0 ))
fy (x0 , φ(x0 ))
で与えられる。
※ 同様に fx (x0 , y0 ) ̸= 0 の場合は、(x0 , y0 ) の回りで y に関する陰関数 x = ψ(y) が存在すること
が示せる。
証明. 三段階で証明する。ここでは fy (x0 , y0 ) > 0 の場合のみ示す (fy (x0 , y0 ) < 0 の場合も同様。
興味のある方は証明してみて下さい)。
Step 1. 陰関数 y = φ(x) の構成
fy (x0 , y0 ) > 0 であることと偏導関数 fy (x, y) の 連続性 から、正の実数 ε を十分小さ
くとれば、(x0 , y0 ) に十分近い領域
D(x0 ,y0 ) = { (x, y) | |x − x0 | < ε, |y − y0 | < ε }
では fy (x, y) > 0 が成り立つ。
このとき、|˜
x −x0 | < ε を満たす x
˜ を固定すると、y に関する 1 変数関数 h(y) = f (˜
x, y) は
(|y − y0 | < ε に於いて f ′ (y) = fy (˜
x, y) > 0 が成り立つので) |y − y0 | < ε に於いて
˜ = x0 のときを考えると、f (x0 , y0 ) = 0 であることと併せて
単調増加 である。特に x
1
- y0 − ε < y1 < y0 なる y1 に対して f (x0 , y1 ) < 0
- y0 < y2 < y0 + ε なる y2 に対して f (x0 , y2 ) > 0
が成り立つ。ここで f (x, y) が 連続 であることから、ε′ (< ε) を十分に小さくとれば
|x − x0 | < ε′ を満たす x に対して
f (x, y1 ) < 0,
f (x, y2 ) > 0
· · · (∗)
が成り立つ。したがって、各 |˜
x − x0 | < ε′ を満たす x
˜ に対して h(y) = f (˜
x, y) の単調増
加性と (∗) より、連続関数の 中間値の定理 によって
h(˜
y ) = f (˜
x, y˜) = 0,
y1 < y˜ < y2
· · · (♮)
を満たす y˜ が唯一つ存在する*1 。 このようにして得られる y˜ を用いて φ(˜
x) = y˜ と定
めると、
φ : Ix0 = { x | |x − x0 | < ε′ } → R ; x
˜ 7→ y˜
は x0 を含む x の開区間 Ix0 上の関数を定め、しかもこの開区間上で f (x, φ(x)) = 0 を満
たす (つまり y = φ(x) は f (x, y) = 0 の陰関数となる)。さらに、構成から φ(x0 ) = y0 と
なることも容易に分かる。
Step 2. y = φ(x) の連続性
y = φ(x) の構成 (つまり (♮)) から、開区間 Ix0 上の 2 点 x, x′ に対して常に不等式
y1 < φ(x), φ(x′ ) < y2 が成り立つ。特に不等式
|φ(x′ ) − φ(x)| < |y2 − y1 |
が得られる。構成からこの y1 , y2 は幾らでも y0 の近くにとれるので、x′ → x とするに
つれて y1 , y2 をより近いものにとり換えていくと
lim |φ(x′ ) − φ(x)| = 0
x′ →x
が成り立つことが分かる。即ち y = φ(x) は開区間 Ix0 上の全ての点 x で連続。
Step 3. 導関数 φ′ (x) の計算
f (x, y) は連続偏微分可能なので、2 変数関数の平均値の定理*2 から或る実数 0 < θ < 1 が
存在して
f (x+∆x, y + ∆y)
= f (x, y) + ∆xfx (x + θ∆x, y + θ∆y) + ∆yfy (x + θ∆x, y + θ∆y)
· · · · · · (♯)
が成り立つ。特に x が開区間 Ix0 の元で y = φ(x) となっている時を考えよう。
∆x を x + ∆x も Ix0 に含まれるように十分小さくとり、∆y = φ(x + ∆x) − φ(x) と置
くと、陰関数の定義より
f (x, φ(x)) = 0
f (x + ∆x, φ(x) + ∆y) = f (x + ∆x, φ(x + ∆x)) = 0
*1
*2
「唯一つしか存在しない」という主張には、h(y) = f (˜
x, y) の 単調増加性 を用いています。
[石原・浅野] p.p. 164–165 参照。なお、この定理は実際には 2 変数関数のテイラーの定理の特別な場合 (n = 1 の場
合) に過ぎません。
2
が成り立つので、(♯) 及び fy (x, y) ̸= 0 から
∆y
fx (x + θ∆x, φ(x) + θ∆y)
=−
∆x
fy (x + θ∆x, φ(x) + θ∆y)
が成り立つ。再び fx (x, y), fy (x, y) の 連続性 を用いて
∆y
fx (x + θ∆x, φ(x) + θ∆y)
fx (x, y)
= − lim
=−
∆x→0 ∆x
∆x→0 fy (x + θ∆x, φ(x) + θ∆y)
fy (x, y)
φ′ (x) = lim
が成り立つ*3 。
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注意
1 この定理の証明では、 連続関数の中間値の定理 を用いて 抽象的に 陰関数を構成し
てしまっているので、陰関数の具体的な形は 分からない (!!)
一般に、陰関数を具体的に書き下すのは非常に難しい場合が多い。
2 f (x, y) が n 階連続偏微分可能 であるならば、陰関数 y = φ(x) も n 階微分可能
となる。φ(n) (x) を求めるには f (x, y) = 0 という式の両辺を順次 x で微分して、
合成関数の微分法Ⅰ を繰り返し用いれば良い*4 。
例えば f (x, y) が 2 階連続偏微分可能ならば、f (x, y) = 0 の両辺を x で偏微分して
fx (x, y) + fy (x, y)
dy
=0
dx
⇝ φ′ (x) =
dy
fx (x, y)
=−
dx
fy (x, y)
となり、さらに両辺を x で微分して
{
}
dy
dy dy
d2 y
fxx (x, y) + fxy (x, y)
+ fyx (x, y) + fyy (x, y)
+ fy (x, y) 2 = 0
dx
dx dx
dx
( )2
dy
dy
fxx (x, y) + 2fxy (x, y)
+ fyy (x, y)
2
d
y
dx
dx
⇝ φ′′ (x) = 2 = −
dx
fy (x, y)
というようにして φ′′ (x) が計算出来る。3 階以上の導関数についても同様で、
f (x, y) = 0 の式を x で微分してゆくことで順次 φ′ (x), φ′′ (x), φ′′′ (x), . . . が求めら
れる (勿論計算は繁雑になるが)。
*3
細かい話ですが、「∆x → 0 となるときに ∆y → 0 となる」ことを保障する際に Step 2. で示した φ(x) の連続性
を用いています。
*4
x = x, y = φ(x) という変数変換だと思って合成関数の微分法を適用することになります。
3