火山地域における土砂災害予測手法の 開発に関する国際共同研究

火 山地 域 に お け る土 砂 災 害 予測 手 法 の
開発 に関す る国際共 同研 究
1試
1.研
土砂災害発生の初期値 ・初期条件 を明 らかにす
験研究の全体計画
るため,以 下 の研究を行 う。
究 の趣 旨
①
岩屑流発生場 に関する研究
火 山 地 域 で は,噴 火 に よ る直 接 的 危 険 性 に加 え
地形的 ・構造的山体不安定の度合 いを定量的に
て,急 傾 斜 。成 層 構 造 とい う地 形 的 不 安 定 性 に よ
明 らかにし,土 砂崩壊発生規模 ・時期の推定手法
り大 規 模 な 土 砂 移 動 現 象 が 発 生 しやす く,災 害 の
を開発す る。
激 甚 性 は極 め て 高 い。 世 界 的 に も近 年 セ ン トヘ レ
i)火 山地形情報解析 に関す る研究
DTMデ
ン ズ火 山 や ネ バ ドデ ル ル イ ス火 山 に お い て大 災 害
ータに基づ き,火 山体 の特性 に則 した
が 発 生 し,社 会 的 ・学 術 的 に も注 目を集 め て い る。
数値地形解析手法 を開発 し,地 形変化史の解明,
国 内 に お いて も昭 和59年
斜交谷や初期的なBulge(膨
の長 野 県 西部 地 震 によ っ
らみ)・ 滑落崖 の検
て 御 岳 山 山 麓 に 大 規 模 崩 壊 が 発 生 し,多 くの犠 牲
出,潜 在的崩壊発生場の推定 を行 う。 また,火 山
者 を だ した 。 こ の様 な災 害 を発 生 さ せ る可 能 性 を
活動が活発化 した場合の崩壊発生時期の予測に資
持 った 火 山 体 は全 国 各 地 に 存 在 して い る が,災 害
す ることを目的 とし,隔 測技術によ り前兆的山体
発 生 時 に お い て 被 害 を最 小 限 に とどめ るた め に は,
変形 を数c皿の精度で検出可能 な手法を開発する。
事 前 に災 害 危 険 域 及 び被 災 程 度 の詳 細 な 想 定 ・予
ii)火 山体内部構造の解明
測 を 行 う こ とが,警 戒 避 難 体 制 や 防 災 施 設 等 の 整
崩壊に関与す ると考え られる軽石 ・スコリア層
備 を 図 る うえ で の礎 と して 極 め て重 要 と な る。 そ
の存在 とその物理的性質や化石谷 ・流れ盤構造の
の た め に は,初 期 条 件 と して の 移 動 土 砂 量,並
存在の確認 を行い,崩 壊への寄与を定量的に把握
び
に そ れ に 応 じた 土 砂 の 流送 域 ・到 達 範 囲 の推 定 技
す るため,地 表調査やボー リング試料 の分析,弾
術 を 開 発 す る必 要 が あ るが,こ
性波探査や電磁気的手法による火山体 の深部に至
う した 研 究 の実 施
に あ た って は,国 内 に と ど ま らず 災 害 事 例 並 び に
るまでの三次元的構造 を解明す る。
観 測 ・研 究 実 績 の あ る諸 外 国 と連 携 を 図 る こ と に
逝)火 山体水収支に関す る研究
よ り,よ
崩壊に対す る地下水 の寄与 を把握す るため,降
り効 果 的 に研 究 を 推 進 して い く こ とが 期
雨量 と水位,土 壌水分等の変動の関係 を明 らかに
待 され る。
本 研 究 は,平 成 元 年 度 に 実 施 した 「火 山地 域 に
し,山 体の水文学的構造 の反映 としての水貯留,
お け る土 砂 災 害 予 測 手 法 の 開 発 に関 す る調 査 」 に
流出機構を解明する。
よ る検 討 を ふ ま え,特 に激 甚 性 の高 い 岩 屑 流,大
iv)火 山体安定解析
規 模 泥 流,火 砕 流 に よ る災 害 発 生 の メ カニ ズ ムを,
そ の 発 生 場 か ら土 砂 流 動 過 程 と い った 一 連 の現 象
山体崩壊 の誘因と して地震動 をとりあげ,i)
∼ 茄)に よ り得 られた物性値等をパラメータとし,
と して 系 統 的 な 見 地 か ら解 明 す る こ とに よ り,詳
地震波の入射に対す る山体形状による増幅効果,
細 な 土 砂 災 害 予 測 を 可 能 とす る手 法 の 開 発 を図 る
過剰間隙水圧の発生を考慮 し,数 値 モデルを用い
もの で あ る。
て定量的に解析する。
②
2.研
大規模泥流発生場 に関する研究
泥流の発生誘因と して冬期 における冠雪への熱
究 概要
供給による融雪水 をとりあげ,冠 山体 ・火山噴出
(1)土 砂 災 害 発 生 場 に 関 す る研 究
一254一
映 像 デ ー タの 解 析 や 大 規 模 実 験 に よ り土 砂 流 動
物 ・火 砕 流 か らの 熱 供 給 。融 雪 機 構 を解 明 す る こ
と に よ り,泥 流 発 生 規 模 の 推 定 を可 能 とす る 。
の メ カ ニ ズ ム を 解 明 し,統 一 的 な数 値 流 動 モ デ ル
(2)土
を 開 発 す る 。特 に,火 砕 流映 像 デ ー タ に つ いて は
砂 移 動 過 程 に関 す る研 究
国 外 の事 例 の収 集,海 外 に お け る現 地 調 査 に よ り
土 砂 移 動 の 拡 大 ・減 衰 ・停 止 過 程 を明 らか に し,
被 災 範 囲 ・被 災 程 度 の推 定 を 可 能 とす るた め,以
研 究 を効 率 的 に 推 進 す る 。
下 の研 究 を行 う。
(3)総 合 的 災 害 評 価 手 法 に 関 す る研 究
①
(1),② の成 果 を総 合 化 し,被 災 範 囲 ・被 災 程 度
土 砂 到 達 範 囲 と堆 積 様 式 に関 す る研 究
過 去 に お いて 大 規 模 な土 砂 移 動 現 象 の発 生 した
の詳 細 な 予 測 の 可 能 な数 値 シ ミュ レー シ ョ ン コー
地 域 に お い て,系 統 的 な微 地 形 調 査 や ト レ ンチ調
ドを開 発 す る。 ま た,環 太平 洋 諸 国 に お け る火 山
査 等 を行 い,土 砂 の 到 達 範 囲,堆 積 の層 序 等 を観
防 災 技 術 の高 度 化 に資 す るた め,小 型 計 算 機 上 で
察 す る こ と に よ り,土 砂 移 動 機構 の解 明 に資 す る。
も実 行 可 能 な ア ル ゴ リズ ム 開 発 も併 せ て 行 う。
②
土 砂 流 動 メ カ ニ ズ ム に 関 す る研 究
3,年
次 計画
研
究
項
目
2年
3年
度
4年
度
度
第1期
(1)土 砂災害発生場に関する
研究
①
岩屑流発生場に関する
研究
i)火
山地形情報解析
に関す る研究
㈲
地形分析手法の開
手法開発
解
析
発
(イ)前兆的山体変形検
手
法
開
検証実験 ・解析
発
出手法 の開発
五)火
山体内部構造 の
解明
ω
崩壊構造調査
(イ)弾性波等探査
(ウ}電気探査
ih)火
現 地 調 査
原位置物性測定手法開発 ・現地調査 ・解析
深部探査手法開発 ・
調査 ・解析
山体水収支 に関
調 査
す る研究
iv)火
②
調
・観 測
現地調査 ・解析
査 ・解
析
・ 解 析
観 測 ・モ デ ル 作 成 ・解 析
山体安定解析
大規模泥流発生場 に関
・解 析
融 雪 機 構 解 明実 験
する研究
一255一
ハイ ドログラフ推定法開 発
研 究 項
②
2年
目
度
3年
4年
度
度
土砂移動過程 に関す る研
究
①
土砂到達範囲と堆積様
現 地 調 査
く
〉
式に関す る研究
②
土砂流動 メカニズムに
関する研究
㈲
総合的災害評価法に関す
・ 解 析
1
映像資料解析 ・大規模室内実験
《>
統一 的流動 モデル作成
{}
1
総 合 的災 害 評 価 法,数 値 シ ミュ レー シ ョ ン コ ー ド開 発
{
う
る研究
(4)研 究推進
う
{
①
研究者等 の海外派遣
②
研究推進委員会等の開
催
ll平
成4年
研
142百 万 円
125百 万 円
所 要 経 費(合 計)
130百 万 円
度 にお け る実 施体 制
究
項
担
目
当
機
関
研究担当者
(1)土 砂災害発生場に関する研究
①
岩屑流発生場に関す る研究
i)火
(ガ 地形分析手法の開発
建設省国土地理院
津澤 正晴
←f)前 兆 的山体変形 検 出手 法の開発
郵政省通信総合研究所
板部
敏和
ω 崩壊構造調査
科学技術庁防災科学技術研究所
田中
耕平
ω 弾性波等探査
通商産業省工業技術院地質調査所
曽屋
龍典
(ウ)電 気 探 査
農林水産省農業工学研究所
竹内 睦雄
並)火
②
山 地形 情 報 解 析 に関 す る研 究
山体内部構造 の解明
面)火
山体水収支 に関す る研究
㈹砂防学会
ノ
』、
橋
澄治
聾)火
山体安定解析
農林水産省林野庁森林総合研究所
梁瀬
秀雄
北海道開発庁北海道開発局開発土木研究所
清水
康行
②
大規模泥流発生場に関す る研究
土砂移動過程に関す る研究
土砂到達範囲と堆積様式に関する 通商産業省工業技術院地質調査所
①
曽屋 龍典
研究
②
土砂流動 メカニズムに関する研究
建設省土木研究所
石川
建設省土木研究所
中村 良光
一 一256一
芳治
研
究
項
目
(3)総 合的災害評価手法 に関す る研究
担
当
機
関
㈹砂防学会
研究担当者
小橋
澄治
(4)研 究推進
皿
①
研究者等の海外派遣
科学技術庁科学技術振興局
②
研究推進委員会等の開催
科学技術庁研究開発局
研究推進委員会
委
所
員
○武 居 有 恒
浅 井
涌太郎
属
京都大学 名誉教授
建設省 土木研究所砂防部長
荒 牧 重 雄
北海道大学i理 学部教授
井 上
農林水産省 林野庁森林総合研究所森林環境部長
敵 雄
宇 井 忠 英
神戸大学 理学部教授
大
科学技術庁 防災科学技術研究所防災総合研究部長
谷
圭
一
曽 屋 龍 典
通商産業省 工業技術院地質調査所環境地質部火山地質課長
高 橋
京都大学 防災研究所教授
保
斎 藤 喜士雄
福島県 土木部砂防課長
星
北海道開発庁 北海道開発局開発土木研究所水工部長
清
守 屋 以智雄
金沢大学 文学部教授
(注:○ は研究推進委員長)
一257一