Page 1 Page 2 学位記番号 論農博第 2270 号 学位授与の日付 平 成

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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生理活性脂質の生物生産に関する研究( Abstract_要旨 )
大場, 健吉
Kyoto University (京都大学)
1999-11-24
http://hdl.handle.net/2433/181407
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
遥
芙
士
遠
嵩
学位 (
専攻分野)
博
(
農
学)
学 位 記 番 号
2
7
0号
論 農 博 第 2
学位授与の 日付
平 成 1
1年 1
1月 2
4日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4条 第 2項 該 当
学位論文題 目
生理活性脂質 の生物生産 に関す る研究
論 文調 査委員
芽 彦 )
木 村
光
論
教 授 大 東
文
内
容
の
肇
要
教 授 柴原 正 章
旨
(
AA)およびプロスタグランジン (PG)は,AAカスケー ドの中核 をなす生理学的 に重要 な脂質であり,AA
は乳幼児栄養の分野で注 目されてお り,また PG は医薬品 と して幅広 く使われている。これ らの製造法 として,
AAは動物組
アラキ ドン酸
織か らの抽出法,pG は化学合成法が用 い られているが,いずれ も生産性の点で十分 な ものではない。本論文 は,生物の持っ
反応特異性 を利用 した AAおよび PGの効率的な生産法の確立 に関す るものである。 主 な内容 は以下のとお りである。
第 1章微生物 による AAの生産
従来, AAは動物組織か らの抽出法 によ り得 られて きたが, その収率 は低 く大量生産 は難 しい。微生物 による発酵生産 も
AAを高収率で生産で きる微生物 を求めて,糸状菌のスク リー
提案 されているが,高収率で AAは得 られていない。そ こで,
r
t
i
e
r
e
l
l
aal
pi
n
.
aの 4株 は, これ まで微生物や藻類で報告 されている値の 3-2
0倍量の AA
ニ ングを行 った. その結果,Mo
を生産す ることが明 らかにな った。 次 いで, 4株中最 も AA生産性の高か った I
FO8
5
6
8株 につ いて固体培養での AA生産
0
0Lの ファーメ ンターによる液体培養で,l
lg/L という高収率で AAを生産で きることを明 ら
条件を設定 した。 さらに,5
かに した。
第 2章微生物 および海藻 による AAか らPGへの変換
現在,医薬品 と して用 い られている PG頬 (
PGEl,PGE2,PGF2α)は,いずれ も化学合成法 によ り生産 されているが,
効率が極 めて悪 い。そ こで,本論文ではまず,これ ら 3種 の PG を対象にスク リーニ ングを行 い, 3種の PGすべてを生産す
細菌 1株,糸状菌 4株)の培養液 に AAを添
る能力を有す る細菌 3株,糸状菌 8株 を見出 した。 また,それ らの うち 5株 (
加す ることによ り,PGE2あるいは PGF2αへの変換が可能 な ことを明 らかに した。次 に,資源が豊富で, しか も再生産可
能 な海藻を利用 した PG の工業的生産の可能性 を検討 した。海藻 オ ゴノ リの生成藻体 あるいは凍燥藻体を細切後,蒸留水中
忍め られ, その 9
0
% が PGE2であった。
にて撹拝 した場合 に PGの生成が言
オ ゴノ リは本来 PG を含有 してお らず, 貯蔵 されている高度不飽和脂肪酸か ら酵素反応 によ り PGへ と変換 され るものと
考え られた。また細切 した生鮮藻体 に PG前駆体であるジホモT リノ レン酸,AAまたはエイコサペ ンタン酸 を添加 して反
応 させ ることによ り,各 々PGEl,PGE2,PGF2αを主組成 とす る PGの選択的生産が可能であることを明 らかに した。ま
た,純粋培養 したオ ゴノ リの藻体 を用 いて,オ ゴノ リ自身が PG生産生物であることを確認 した。
オ ゴノ リによる AAか ら PGE2への変換 は,既知の晴乳動物 による生合成系 とは異 なる経路 で生成 され ることが考え ら
れたため,その生合成経路 について検討 した。まず,PG生合成の鍵酵素である シクロオキ シゲナーゼの各種阻害剤の添加莱
験を行 ったが,オ ゴノ リの PGE2生成 はほとん ど影響 を受 けず,晴乳動物 とは異 なる新 たな PG変換酵素の存在が示唆 され
た。また,PG生成反応前後で総脂質をオ ゴノ リか ら抽出 ・分画 し,各画分の AA量 を分析 した結果,糖脂質および リン脂質
か ら PG前駆体 となる遊離 AAが供給 され ることが示唆 された。 さ らに,遊離
AA以降の代謝経路 を調べ るため,オゴノ リ
4
CAAを添加す ることによ り,15-ヒ ドロベルオキ シーPGE2の生成 を確認 した。本物質 は,オゴノ リ
の PG生合成反応系 に 1
によって PGE2に合成 され ることが確認 された ことか ら,晴乳動物 の PG生合成経路 とは異 なる PGE2
の新 たな代謝中間体
と判明 した。
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2
2
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論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文 は,生物の もつ反応特異性を利用 した AAおよび P
Gの効率的な生産法の研究 に関す るもので,評価すべ き点 は以
下の とお りである。
1.微生物 による AAの生産 :従来,動物組織か ら低収率で抽出されていた AAを高収率で生産で きる微生物 を求め,糸
0倍量の AAを生産す
状菌のスク リーニ ングを行 った。その結果,これまで微生物,藻類 について報告 されている値の 3-2
r
t
i
e
l
l
aal
pi
n
aを見出 した。次 いで,固体培養 による AA生産条件の設定を行い, さらに,培養条件の制御が有利 な液
るMo
0
0Lのパイロッ トスケールでの高収率生産を可能 に した。 これは,生理学的にも栄
体培養 による AA生産条件を検討 し, 5
養学的にも重要性の増大 しつつある AAの微生物 による工業的生産の可能性を示 した最初の研究である。
2.微生物および海藻 による AAか ら PGへの変換 :現在,医薬品 として用 い られている PGEl,PGE2,PGF2αは,
いずれ も化学合成法 により生産 されているが,合成収率が悪 い。本論文では,まず これ ら 3種の P
G頬を対象 に,PG生産微
Gすべてを生産す る細菌 ・糸状菌を見出 した。また,PG生産菌の培養
生物のスク リーニ ングを行 った。その結果, 3種の P
液に AAを添加す ることにより,P
GE2あるいは PGF2αへの変換が可能 な ことを示 した。これまで微生物 による PG生産
αなどサブクラスまでの同定 はなされていない。 したが って本論文 は,
に関す る研究 は,例が少な く, しか も El,E2,F2
微生物を用いた 3種の P
G生産 に関す る最初の研究である。次 に,海藻を用 いた PG類の工業的生産の可能性 を検討 し,海藻
オゴノ リの藻体を細切 に して, そこへ水を加えて擾拝す るという方法により, P
GE2を主成分 とす る PG類の生産が可能 な
ことを示 した。また,オ ゴノ リ藻体に P
Gの前駆体を添加す ることにより,各 PGの選択的生産が可能であることを示 した。
G類が食中毒の原因であったという報告 はあるが, 海藻を用 いた PG類の生産
これまで, オゴノ リに含 まれていた多量の P
G類生産 に関する先駆的な研究 として評価できる。
に関す る研究 は知 られていない。 このように本研究 は,海藻を用いた P
さらに,オゴノ リによる AAか らP
GE2への生合成経路の解明を試み,放射性 AAを用いて,AAが,15-ヒ ドロベルオキ
シー
PGE2を経て PGE2へ生合成 されることを明 らかに した。 この結果 は, 晴乳動物 とは異なる新 たな PG生合成経路が海
藻 に存在することを示 した最初の研究である。
Gを生産する微生物 ・海藻 に関す る種 々の生理学的特性 と応用研究杏
以上のように, 本論文 は AAを生産す る微生物, P
まとめたものであり,応用微生物学,微生物生理学,農産製造学 などの発展 に寄与す るところが大 きい。
1年 9月 9日,論文な らびにそれに関
よって本論文 は博士 (
農学)の学位論文 として価値あるもの と認める。なお,平成 1
連 した分野にわたり試問 した結果,博士 (
農学)の学位を授与 され る学力が十分あるもの と認めた。
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