山形県のチョウとガ - 山形県立博物館

「両羽飛虫図譜」の「蝶部一・ニ」
展示品のあらまし
今回は県内に産するチョウとガを併せて1200純知もの標本を展
示しましたので, 全部を目録として拍げることが出来ません。
酒田市の光丘文庫に松森
があります。全部で59冊か
チョウのやjJj日j
セセリチョウ科
アゲハチョウ科
シロチョウ料
シジミチョウfl
テンクチョウfI
マタラチョウ千|
タテノ、チョウ千斗
ジャノメチョウ本|
らなる大著ですが, 山形県
指定の重要文f七財に指定さ
れています。その中に「両羽
飛虫図譜J 8冊が含まれて
います。 チョウとガに関す
16Hl
11
8
34
部二」の2冊に納められて
います。 今回酒田市立図書
松森胤保の肖像
をお借りして展示すること
が出来ました。
松森胤保(まつもりたねやす)(1825-1892) は, 庄内藩士の家
に生まれ, 後年松山藩 ( 庄内藩の支藩) の家老となっています。
明治主佳新後は廃藩まで松嶺藩(1日松山藩)の執政, 大参事を務め,
明治 5 年の置県後は区長, 旧松嶺樹立の教授, 中学校長などを歴
任しました。 明治12年には松嶺 から鶴岡に移り,県会議員,戸長,
学務委員などを務めております。その後 明治18年に一切の公職を
退き, 自適の生活に入りましたが, 明治25年68歳て病没しました。
「両羽博物図譜」はすべて手書きによるもので〉その執筆年代
は, 年記のあるもので「明治14年7月4日」が最も古し そのこ
ろから書かれたものと思われます。 そうして没年まで書きつつけ
られ未完に終わっています。
山形県内にもこのように自然、を愛し, 自然に親しんだ先人がし、
たことを思い, こうした先人の業績をとおして自然に対する認識
カ"の仲間
コウモリカ干|
ボクトウカ千,1
ノ、マキカf!1
ホソハマキカ十|
、 カ干|
マ夕ラ
イラカ千斗
セセリモドキガ'H
マドガ科
メイカ干,1
カギノベガ科
オオカキノミカ午、|
トカリノ〈カ利
ンャクカト|
アゲハモドキカ千|
フタオカ科
イカリモンカ料
カレ ノ、ヵfl
オ ビ Jff'1
2H.
1
68
4
2
12
3
141
11
2
22
274
5�Ú
5
190
4
3
32
3
9
384
36
6
75
838
3
14
51
5
8
2
28
88
220
70
148
16
3
1.262
373
4
1,123
9
3,536
末筆なから,今 回の展示のためにご協力いただいた方々は次の
通りです。 ご協力に対して心から厚くお礼申し上げます。
桝田市立図書館(光丘文庫)
山形市
横倉
明氏
横浜市
柳田
慶治氏
í両羽子I�虫図諸J 2冊
チョウ矧
高山蛾
山形県のチョウとガ
53
170
19
お
9
31
69
22
39
7
百十
を深めることが出来ればと思います。
80
4
2
カイコガ科
イボタガ科
ヤママユガ科
スズメガ干ヰ
ンャチホコガ科
ドクガ科
、 ヰ
ヒトリカ4
コブカ科
ー |
カノコカ本
ヤJf科
トラカ‘科
62�Íl
4
95
88
556
27
13
111
るものが「蝶部一」 と「蝶
館のご好意によりこの2冊
企画展
そこで, 科ごとの種類数と点数を挙げます。
j削呆著の「両羽博物図譜」
1988
4月23日(土)""' 6月26日(日)
山形県立博物館
開催にあたって
私達の身のまわりにはどのような 自然がある
のでしょうか。 ちょっと野山を歩いて見ても,
気をつけて歩いて見ると, 動物・柏物、
どれ一
つ取ってみても, あまりにも知らないことカ、多
いのに 鰐くことがあります。
今回はそれらの自然の一部を構成している多
くの昆虫の中から, 特に県内で見られるチョウ
とガを選んで展示して見ました。
私達の身のまわりにこのように多くのチョウ
やカカtいたことに対してあらためて篤異の目を
lítJけられることと思います。 この展示をとおし
て向然、への理解と関心を高めていただけるよう
にと1.9.�っています。
展示解説
大石田町をはじめ県内数個所にこの2 種類のチョウの混生してい
ていただく必要があると思います。
チョウとガ
また,最近は自然保護の考えが普及するようになってきました。
る場所が見つかっています。 しかし これら2 種類のチョウもそ
ともに昆虫の中の鱗遡目というグループに属する仲間達です。
これにともなって,開発や植林などのために自然の中から姿を消
のおもな生息地が山麓地帯にあるため, 開発や植林の影響を受け
県内には, チョウの仲間は 110 数種類が産します。 また, ガの仲
しつつあるチョウなどについて保護の手を差し延べようとする機
やすく, 滅びゆくチョウの姿を示しています。 そこで,大石田町
間は, 何種業時産するかはわかっていませんが, 少なくとも2500種
運もおきつつあります。その一環として, 天然記念物に指定して
ではその貴重な混生地として,これらのチョウを保護するために
類を超える種類がいるものと思われます。 カ、.の方が圧倒的に種類
保護をはかつている種類もあります。
天然記念物に指定しました。 しかもこの3月には罰則付きの保護
数が多いのです。今回はそれらの中から,チョウは県内産の殆ど全
種類を, ガの仲間は県内産のものの中から1100種類ほどを展示し
ました。
天然記念物に指定されているチョウ
条例も制定しました。
高山のチョウとガ
山形県指定
一般的にチョウは美しいもの, ガはあまり美しくないものとい
の天然記念物
かつてこの地球が寒かった氷河期にこの日本に住み着いていた
ったイメージがあります。 はたしてそうでしょうか。 確かにチョ
にチョウセン
昆虫の仲間のうちのある種類は, 氷河 期が過ぎて地球がだんだん
ウは美しい種類が多くいますし, 畳花に集まって蜜を吸っている
アカシジミと
暖かくなると, 寒い環境を求めて高い山の上に生活の場を移して
風情は美しいものです。 しかしながら, ガは畳はあまり姿を見せ
いう小型のチ
行きました。 そうした昆虫の仲間が, 高山性の昆虫として現在に
ず, 夜明りの回りに飛んできて, パタパタと飛び回り, 鱗粉をま
ョウがいます。
き ちらす姿はお世辞にも美しいとは言われません。 まして, ドク
このチョウは
ガの仲間には毒針毛などという, 人の皮膚にささって炎症をおこ
日本では岩手県の一部と山形県の一部に産するだけの学術上貴重
すが,鳥海山・月山 ・朝
すようなものもあります。 このようなドクカザの仲間は, 沢山いる
な種類です。 山形県では最初新庄市から発見されましたが, その
日連峰・飯豊連峰に生息
ガの中でもほんの一部の種類に過ぎません。それ以外のガの仲間
後小国町の周辺からも発見されました。 しかし, 開発の波には勝
しています。
には毒はありま
てず, 滅びゆく一方でした。 現に県内から最初に発見きれた新庄
ガの仲間では, 現在ま
せん。 それに,
市付近ではもうその姿を見ることは出来ません。 そこで県ではこ
でのところ7種類が知ら
ガの中にも非常
れを天然記念物に指定して保護をはかることにしたのです。
れています。 ソウンクロ
に美しい種類が
県指定天然記念物のチョウセンアカシジミ
(左)オス (右)メス
また,大石田町ではギフチョウとヒメギフチョウの2 種類のチ
至っています。 チョウの仲間で県内に生息している種類は, ペニ
ヒカゲただ 1 種類だけで
オビナミシャク・クモマ
高山餓のアルプスギンウワパ
ョウを町指定の天然記念物として保護しています。 このギフチョ
ウスグロヤガ・ホッキョクモンヤガ・ダイセツヤガ・アルプスク
今固め展示した
ウは日本特
ロヨトウ・イイデクロヨトウ・アルプスギンウワパの7種類です。
ものの中にも沢
産のチョウ
このう ちイイデクロヨトウは飯豊連峰だけから知られる特産の種
多くいることは,
山含まれている
ですが, 県
類です。これらの高山蛾は, 高山蛾の研究家として知られる横浜
のをご覧になっ
内では庄内
市の柳田慶浩氏のご好意によりお借りして展示したものです。
ていただけると
に広〈分布
思います。 同じ
しており,
フユシャクの仲間
鱗遡自の仲間で
ヒメギフチ
ありながら, 一
ョウの方は,
もシャクカキヰの仲間て1県内からはシロオピフユシャク・フタス
方は美しし他
内陸部に広
ジフユシャク・ナミスジフユナミシャク・ クロオビフユナミシャ
〈分布して
ク・ヒメクロオビフュナミシャク・チャノ〈ネフユエダシャクなど
おります。
14種類が知られています。 厳しい寒さの中で生活するために, 口
そうして,
器が退化したり, メスの姐が退化するなど, 特化しています。
方はそうでない
というイメージ
は根本から変え
県内では比較的珍しいスズメガ
(上)コエピガラスズメ
(下)ギンポシスズメ
大石田町のギフチョウ属
(上左)ギフチョウ (上右)ヒメギフチョウ
(下)両種の自然交雑種
ガの中には, 厳しい冬に成虫の出てくる仲間がいます。 いずれ