ユビ触感に基づく柔さ計測デバイスの実用化と展開 Practical

ユビ触感に基づく 柔さ計測デバイス の実用化と展開
Practical Developments of Softness Measurement Devices
based on Finger Haptic
(工学研究院・機械システム工学専攻)佐久間 淳*
*連絡先
1.「柔らかさ」を数値データで表す
ヒトは,モノに触れて「柔らかさ」を
感じとることができます.この触覚は,
多くの情報を瞬時に得られることから,
例えば医療における触診などで利用され
ますが,これで得られた情報を皆で共有
する科学技術が未確立でした.
そこで,まず触覚メカニクスを分析し
た上で,この分析結果から数学モデルを
立てて理論的に解くことで,ヒトがモノ
に触れた際に感じる「柔らかさ」をヤン
グ率という数値で表せるようにしました.
これには,天気予報でも使われる Pa(パ
スカル)という一般的な単位を用いなが
ら,どのような形状のモノであっても「柔
らかさ」をデータ化できる特徴がありま
す.この方法を以下に紹介します.
2.弾性を表すヤング(Young)率
モノの「柔らかさ」を表す指標の中で
も,
「弾性」は最も良く知られたものです.
バネで観られる弾性の違いは,バネ乗数
k を用いて荷重 F と変位量 x との関係式;
F=kx
(1)
で表されます(図1(a)).この式(1)の関
係を一般的なモノに広げて考えたものが
応力とひずみとの関係式で,このとき
にバネ乗数 k に相当するものがヤング率
(Young’s modulus)E です(図1(b)):
= E 
(2)
(a)
(b)
図1 バネの弾性とモノの弾性
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3.ユビ触感の理論的な分析
ユビ触感では,モノの大きさに関わら
ず,柔らかさを感じとることができます.
ところが,従来の機械システムでは,大
きなモノについては正確に測ることがで
きましたが,ヒトでは分かる薄いモノの
柔らかさは上手く測れませんでした.
そこで,モノの形状によらず柔らかさ
を分別するユビの触感を図2のように分
析し,これに基づく理論を立てた上でシ
ステム化できるようにしました.
図2 ヒト触覚メカニクスの分析
4.計測システムの実用製品の開発
分析理論に基づいて製品化したシステ
ムの一例が,図3に示す柔さ計測ロボッ
トです.この他にも,同図に示すように,
様々な計測デバイスを開発しています.
図3 研究した技術で実用化した柔さ計
測ロボットと様々な計測デバイス