http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2002/020213.html 漁業の乱獲がなくならず、鯨が 獲れないのに、エゾシカ大量捕 獲やヒグマの捕獲と有効利用が 合意できるわけ 松田裕之(東大海洋研) 2015/10/1 1 主な著書 2015/10/1 2 エゾシカ問題 1,000,000 100,000 Catch 北 海 道 の 捕 獲 統 計 10,000 1,000 100 10 1875 2015/10/1 1895 1915 1935 1955 1975 1994 3 農林業被害は最高年50億円 樹 皮 を 剥 が さ れ た 樹 木 2015/10/1 4 http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/SIKA/DTdeerHP.htm エゾシカのフィードバック管理 大発生水準(50%)以上 緊急減少措置(2年を限度) 目標水準(25%)以上 漸減措置(雌中心の捕獲) 目標水準(25%)以下 漸増措置(雄中心の捕獲) 許容下限水準(5%)以下 または豪雪の翌年 禁猟措置 2015/10/1 5 60% 14000 50% 12000 10000 40% 8000 30% 6000 20% 4000 10% 2000 0% 2007 2015/10/1 Yield Reproductive Potential 10倍の変動幅を覚悟せよ 0 2022 2037 2052 Year 2067 2082 2097 61 鹿熊管理は漁業管理の応用! ヒグマ春季管理捕獲 エゾシカ保護管理計画 2015/10/1 7 フィードバック管理の導入 (道東エゾシカ保護管理計画1998) • エゾシカの個体数管理に当たっては、 農林業の被害状況や捕獲動向などを把 握するとともに、相対的個体数指数の 増減動向に応じて捕獲圧を調整する フィ-ドバック管理手法を採用する。 • ~ 国際捕鯨委員会の改訂管理方式 • ~順応的管理(adaptive management) • 個体数管理は保護管理策の一側面 2015/10/1 8 普通のフィードバック管理 Ct =Nt (1-exp[-Ft]); Ft=Ft-1+Dt log[(Pt-1/P*)] 2015/10/1 9 個体数指数の変遷 個 体 数 指 数 200 175 150 125 100 75 50 25 0 1989 2015/10/1 道路目視調査 ヘリコプター調査 1日当り捕獲頭数 1日当り目撃頭数 農林業被害額 1991 1993 1995 1997 雌鹿狩猟 保護管理計画 262 95% CI 1999 2001 10 エゾシカ管理の政治学 農林業被害者=徹底駆除 動物愛護団体=絶対反対 自然保護協会=娯楽狩猟管理反対 WWF日本=時期尚早 生態学者=順応的管理の実験 狩猟後進国だからできた 2015/10/1 11 エゾシカ管理の政治学 管理者・行政 自然保護団体 2015/10/1 生態学 農林業被害者 狩猟者 12 欧州の野生生物管理 管理者・行政・生態学 自然保護団体 2015/10/1 農林業被害者 狩猟者 13 Snake河猛禽類国立保護区Idaho • ダム水源地センターの視察団 2015/10/1 14 Snake河猛禽類 国立公園の植生 「 えや 牧 生 るし が 態 、山 系 植火 管 生事 理 をを 」 変増 放 2015/10/1 15 除草剤と在来種種子散布 • 遷移と撹乱の速さの不確実性を見込む • 速さに応じて保全措置を微調整する • 放牧を止めさせることができれば・・・ 2015/10/1 16 漁業管理はなぜできない? 管理者・行政 持続的利用を目指す 自然保護団体 自然保護団体 水産学者 2015/10/1 漁業者 水産業界 17 捕鯨・鼈甲の政治学 日本政府の過去への反省 IWC・CITES IWC下関総会で韓国犬食 擁護の首相演説を! 欧米諸国 自然保護団体 日韓W杯成功! 募金材料 2015/10/1 漁業者 漁業者 捕鯨業界 捕鯨業界 日本の保護団体 科学 18 http://news.bbc.co.uk/hi/english/sci/tech/newsid_1458000/1458234.stm 2015/10/1 19 何が違うのか? • 野生生物管理は役に立つ? – 是。科学者の提言を行政が実行する – 行政は解を持っていない – 改革なくして鳥獣行政なし • 水産資源解析は役に立つ? – 否。科学者は漁業の短期的邪魔 – 抵抗勢力が水産業を守る? 2015/10/1 20 危機管理とは、本当に最悪の事 態を想定したものか? • 1998年、道東エゾシカ12万頭説 • 松田らの論文で16-20万頭と仮定:環境庁 告示(1人1日1頭)を改変 • 30万頭以上なら失敗(不良債権) • 2000年、道は20万頭説に修正 • >30万頭なら鳥獣保護法改正が必要 夜討、保護区射撃、餌付け射撃 2015/10/1 21 http://www.for.gov.bc.ca/hfp/amhome/AMDEFS.HTM 順応的管理方式とは? Adaptive Management Procedure 問題設定 フィードバック 調停 管理計画作成 3手の読み! 来年何を言うか 評価 計画実行 組織的に考えよ 継続監視 2015/10/1 22 狂牛病問題=リスク評価・管 理・周知の3つの誤り 感染牛数不明 捨て牛増加 国の放置 展望不明 感染経路不明 不安の蔓延 2015/10/1 23 リスクを示せば社会は動く? 感染牛数予測 感染牛数不明 捨て牛増加 産業回復 全頭買い上げ 国の放置 展望不明 展望提示 感染経路不明 感染実態解明 不安の蔓延 不安の払拭 2015/10/1 24 牛肉を食べよう! • 健康牛肉骨粉は肥料・ペット飼料 • 豚鳥の肉骨粉も牛には利用せず • 牛肉産業を支援すべき(社会の 結びつき) • 「ゼロリスク探究症候群」 2015/10/1 25 数理模型の有効性 計算機も直観も鵜呑みにしない =直観を鍛える道具 =目隠し試験による手法評価 =植物RDBは専門家のover-rule • 現実の生態系を説明する <生態学者の思考経路を説明 2015/10/1 26 管理目的・目標を定める • 科学的に唯一の解はない – 持続可能な寄生(人間=自然への負荷) – 決める前に合意形成(public comment) – 第3者委員会 • 目的は崇高に、目標は具体的に! – 両者に矛盾あれば批判される – 反証可能な数値目標を! – 説明責任 2015/10/1 27 http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/SIKA/DTdeerHP.htm エゾシカ管理の目的 道民の自然資産としてのシカの 絶滅と大発生を回避し、 適正水準へ誘導・維持し、 生態系保全と、 農林業被害の軽減を図る。 道東地域エゾシカ保護管理計画骨子(97’12/1)より 2015/10/1 28 リスクを図り、公表する • 失敗確率を数理モデルで事前評価 – 未実証の前提次第でリスク値は変わる – 評価手法の公開。意見紹介手続き • リスクはゼロにはできない – 継続調査の重要性 – 非定常性に備えた順応性 – 不確実性に対処する説明責任 2015/10/1 29 危険性の評価、管理、周知 • Risk assessment=異論の少ない前 提で未来を予測。予防原理 • Risk management=不確実性と説明 責任を考慮する • Risk communication=相対的な安全 を市民自身に選んで貰う 2015/10/1 30 http://www.unep.org/ 予防原則 precautionary principle • 環境に対して深刻あるいは不可 逆的な打撃を与えるとき,科学 的に不確実だからという理由で 環境悪化を防ぐ措置を先延ばし にしてはいけない 1992年リオデジャネイロ宣言第15原理 2015/10/1 31 科学者のとるべき態度 • 1992年地球サミット前 後 – 科学的証拠なしに社会にものを 言わない; を言うことが歓迎される –科学論争を多数決で決める。世論 世論に係らず、自らの見解を変 えない を味方につける 科学者の社会的提言につ いての学界基準が未確立. 2015/10/1 32 Galileo’s Inquisition 資源管理基準と漁獲制御ルール (平成12年度版) 資源解析セミナー 2000/09/12(Tue) 河合裕朗(資源解析M2) 松田加筆 2015/10/1 33 「海洋生物資源の保存およ び管理に関する法律」 1.漁業法 2.水産資源保護法 ・・・に加え (法的根拠は国連海洋法条約?) 漁獲量の総量に着目した漁業管理 TAC制 2015/10/1 34 ABCの決め方 ア メ リ カ 日 本 20% 2015/10/1 35 ABC(生物学的許容漁獲量) の算定目標 資源の状態に基づき,MSYを 達成できる水準以上に資源を 維持・回復させること 持続可能性が不明確 MSYは机上の空論 2015/10/1 36 保全生態学用語 • MVP最小存続個体数 – Minimum Viable Population – IUCNレッドリストでは成熟個体数で 50/500(全動植物) • PVA個体群存続可能性解析 – Population Viability Analysis – 絶滅確率=3世代後に50%、100年後に 10% 2015/10/1 37 松田: MSYは最尤値、MVPは予防措置 • 予防的推定値では、最大持続生産量 (MSY)は達成できない • 絶滅・資源崩壊・リスク評価は不確実 性に対処した予防措置で • 多くの資源でMSY水準>>MVPだが 湖沼などではMSY水準<MVPもありえ る(放置したときの絶滅リスク) • IWCではMSYに対し重篤な予防措置 2015/10/1 38 RMPのペラ・トムリンソンmodel • Pt+1 - Pt = 1.42μ {1―(Pt/ P0)z} Pt - Ct • Lt = 3μ(Pobs,t/P0 - 0.54)Pobs,t • • • • PtとCt:t年の個体数と捕獲数 1.42μ :内的自然増加率 P0 :初期資源量 z:密度効果の強さ (=2と仮定) • μとP0は未知 • Pobs,t = bPt [1+N(0,s)] 2015/10/1 39 2015/10/1 40 フェーズアウト ルール • 過去8年以内の資源量のデータが ない場合は,最近年の捕獲限度量 を8年を越える1年毎に20%ず つ削減する.したがって,8年を こえて5年間調査を行わないと, 限度量は0となる. 2015/10/1 41 管理基準値と漁獲制御ルール ABC規則2000 利用可能な情報によって以下のルールに分類,適用する 1) B,Bmsy,Fmsy,F30%,F35%が得られる 2) 年々のB,SSB,Rが得られる 3B)B,Bmsy,Fmsy ,SYBが得られる 3A)B,Bmsy,Fmsyが得られる 4) 成長・成熟・加入のscheduleがわかる 5) 年々のB,F,Mが利用できる 6) 近年の漁獲量のみ 2015/10/1 42 ヒグマ問題 • CITES対象種(東南アジアでCR) • 熊胆はC型肝炎特効薬、 高価で闇取引 • 人を襲う – クマよりクルマが危い • 春季捕獲再開を道知事答弁 2015/10/1 http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/Wildlife/mano.htm 43 春季捕獲は予察駆除 • 保護団体=捕獲数上限を定めよ – 上限まで獲れないのに・・・ • 道南ヒグマ500頭説(~MVP) –800頭説に変更(説明責 任?) • 捕獲物は猟師のもの? –闇取引を制御できない 2015/10/1 44 ヒグマの分布 2015/10/1 http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/SIKA/DTdeerHP.htm 45 「既知」の情報 • 雌雄別捕獲頭数( 1968年~) • 1960~80年代(春熊駆除実施時 代)は減少傾向 • 1987年に雌2/3、雄1/2程度に減 少?その後個体数は横這いか微 増傾向 2015/10/1 46 雌雄別捕獲頭数から 個体数を推定する 2015/10/1 47 鹿と熊と猿の被害対策 • 鹿=増えすぎ –個体数管理・草地拡大 • 熊=減っている –人を避けない・生ゴミなど • 猿=増えている –人に集たかる・餌付け 2015/10/1 48 ウェンカムイモデル • キムンカムィS→ウェンカムイI • dS/dt = (r–h) S • dI/dt = hS –mI • h:変心率 2015/10/1 49 4相管理(案) 変心率が 高い 低い 少 個 な 体 い 数 多 が い 2015/10/1 被害が続き熊絶 滅も危惧される ・人間活動規制 不適切な関係を 戒め続け、段階2 以外を殺さない 段階2を駆除、 早急に変心率を 下げる対策を 最も望まし い状態 50 ヒグマ管理の課題 • • • • • • 個体数の計り方 生活史係数の推定 変心率の計り方 変心率の下げ方 駆除の診断 危険の周知 2015/10/1 51 キューバのタイマイ問題 399/yr 4744/yr Cuba CITES Proposal (2000) Is 90% catch reduction enough for conservation? 2015/10/1 52 タイマイの順応的管理案 by 蝦名・松田 • 継続調査を続ける(営巣数など) • 捕獲個体のDNA鑑定(産別国検 査) • 推定50頭以下になったら混獲漁業 も中止する • 50頭以下になるリスクを3%以下に するため、500頭以下になったらタ イマイ禁漁 2015/10/1 53 500頭一定捕獲策のリスク 8000 300 6000 (thousands) number of females 10000 4000 2000 200 year 2000 2020 2040 2060 2080 2100 100 year 2000 2020 2040 2060 2080 2100 2015/10/1 54 順応的管理によるリスク 12000 10000 300 8000 (thousands) number of females 14000 2015/10/1 6000 4000 2000 200 year 2000 2020 2040 2060 2080 2100 100 year 2000 2020 2040 2060 2080 2100 55 現状維持の漁獲量 • 自然増加率=漁獲量/資源量 • 資源量がわからないと、現状を 維持する漁獲量もわからない • 入口管理=漁獲圧調整 • 出口管理=国連海洋法(TAC) 2015/10/1 56 漁獲量一定は危ない dN N r 1 N C dt K 2015/10/1 57 誤りに気付くのが遅すぎる 無知の知 2015/10/1 58 漁獲率一定の方がより安全 生 産 量 dN N r 1 f N dt K 資源量 2015/10/1 59 逆補償では歯止めが心配 生 産 量 ・ 漁 獲 量 dN N 2 r 1 N fN dt K 資源量 2015/10/1 60 6) 近年の漁獲量のみ利用できる ●資源状態:中位で横ばい,増加か高 位にあるとき ABClimit=ABCtarget=過去3年間の平均漁獲量 ●資源状態:中位・減少か低位にある とき ABClimit=ABCtarget=過去3年間の平均漁獲量×0.8 1割ずつしか漁獲量が減らない 2015/10/1 61 日本のABC新規則の問題点 • 半世紀前のMSY理論 – 数値目標なき資源回復計画 • フィードバック思想がない – 減っても歯止めがない • 予防措置でない – よく調べるほど厳しいABC – 疎まれる資源研究 2015/10/1 62 ◎ABCを公表する • TACをABCにあわせるべき • 事前に意見を求めるべき • 複雑な解析より、これ以上 減らさないと言う明快な歯 止めの約束を! 2015/10/1 63 http://www.eic.or.jp/eanet/assess/kihon/kokuji.html 環境影響評価法基本的事項 • 予測の不確実性の検討 –科学的知見の限界に伴う予測 の不確実性について、その程 度及びそれに伴う環境への影 響の重大性に応じて整理され るものとすること。 2015/10/1 64 http://www.eic.or.jp/eanet/assess/kihon/kokuji.html 事後調査(monitoring)の重要性 環境影響評価法基本的事項 • 予測の不確実性が大きい場合、効果に係る知 見が不十分な環境保全措置を講ずる場合、 • 環境への影響の重大性に応じ、工事中及び供 用後の環境の状態等を把握するための調査 (事後調査)の必要性を検討し、 • 事後調査の項目及び手法の内容、影響が著し かった場合の対応の方針、結果の公表を行う 2015/10/1 65 広く市民に意見を求める • 環境影響評価法 – 方法書と準備書で市民の意見 • 鳥獣保護事業 – 特定計画策定前に市民の意見 • Public Commentなければ、世界 に通用しない 2015/10/1 66 100年後までのリスク評価 • 不確実性と非定常性を考慮し、 • 管理に失敗するリスクを評価 – 資源が崩壊するリスク – 数値目標を達成できないリスク – リスクはゼロではない! 2015/10/1 67 現実と仮想現実の混同 飛行士が人命を預かることは擬似体験されない • フライトシミュレータでなく、人命を預 かる操縦桿を握るパイロットを目指そ う Flight Simulator(http://city.hokkai.or.jp/~hisaya/mfs.html) 2015/10/1 68
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