道東エゾシカ20万頭説と フィードバック管理 • 松田裕之(東京大学海洋研究所) – 海洋生物資源部門(水産学) 資源解析分野(数理生態学) – 本研究は、宇野裕之、玉田克巳、梶光一、 車田利夫、藤本剛(以上北海道)、齊藤隆、 平川浩文(以上森林総研)との共同研究に 基づく 00-9-8 北海道 道東地域エゾシカ保護管理計画ホーム頁より http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/SIKA/DTdeerHP.htm 1 魚種交替の3すくみ説 00-9-8 2 乱獲と禁猟の繰り返し 禁 猟 00-9-8 禁 猟 3 エゾシカ分布域の拡大 • 草地造成による夏季餌量が急増 • 平野部針葉樹植林地増加=越冬地拡大 • 環境収容力は開拓以前に匹敵(梶1999 ) 環境研究114号 北海道道東地域エゾシカ保護管理計画参考資料 http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/SIKA/DTdeerHP.htm 00-9-8 4 個体群管理に必要なもの • 生命表解析 – 2年で成熟。ほぼ毎年1子出産 – 雄20%、雌5%、幼獣50%の自然死亡率 • 相対個体数の増減(自然増加率の推 定) – 年15%~20%で増加し、密度効果なし • 絶対個体数(道東)、初期性比 – 1993年度末現在7.4万~16.6万頭と推定 00-9-8 – ハレムを作り、雄<雌 5 何頭獲れば減るのか? • 自然増加率<捕獲死亡率 • 捕獲死亡率=雌捕獲頭数/雌生息頭数 • 生息頭数がわからないと、適正な捕獲 頭数もわからない • 入口管理=捕獲圧調整 – 猟期、猟区面積、狩猟者数 • 出口管理 00-9-8 タグ制(国連海洋法=TAC) 6 洞爺湖中島のシカ個体数推移 00-9-8 梶ら(未発 表) 7 道東エゾシカ12万頭説の根拠 • ヘリコプター調査による • 詳細調査と広域調査を比べ、発見 率を推定(詳細調査は全数調 査?) • 密度を区間推定し、植生図と比べ て道東の面積を掛ける • 年(積雪量)により発見率が違う 00-9-8 8 環境影響評価法基本的事項 http://www.eic.or.jp/eanet/assess/kihon/kokuji.html • 予測の不確実性の検討 –科学的知見の限界に伴う予測 の不確実性について、その程 度及びそれに伴う環境への影 響の重大性に応じて整理され るものとすること。 00-9-8 9 事後調査(monitoring)の重要性 環境影響評価法基本的事項 http://www.eic.or.jp/eanet/assess/kihon/kokuji.html • 予測の不確実性が大きい場合、効果に係る知 見が不十分な環境保全措置を講ずる場合、 • 環境への影響の重大性に応じ、工事中及び供 用後の環境の状態等を把握するための調査 (事後調査)の必要性を検討し、 • 事後調査の項目及び手法の内容、影響が著し かった場合の対応の方針、結果の公表を行う 00-9-8 10 フィードバック管理の導入 (道東エゾシカ保護管理計画1998) • エゾシカの個体数管理に当たっては、 農林業の被害状況や捕獲動向などを把 握するとともに、相対的個体数指数の 増減動向に応じて捕獲圧を調整する フィ-ドバック管理手法を採用する。 • ~ 国際捕鯨委員会の改訂管理方式 • ~順応的管理(adaptive management) • 個体数管理は保護管理策の一側面 00-9-8 11 4段階管理 http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/SIKA/DTdeerHP.htm 大発生水準(50%)以上 緊急減少措置(2年を限度) 目標水準(25%)以上 漸減措置(雌中心の捕獲) 目標水準(25%)以下 漸増措置(雄中心の捕獲) 許容下限水準(5%)以下 または豪雪の翌年 禁猟措置 00-9-8 12 フィードバック管理下の変動 (今後のイメージMatsuda et al. 1999) 00-9-8 13 100年後までのリスク管理 • 個体数が1000頭以下になるリスクが 「1%」以下(許容下限水準5%) • 許容下限水準を下回るリスクが 「2.5%」以下(目標水準25%) • 将来再び大発生水準を上回るリスクが 「2.5%」以下(大発生水準50%) 00-9-8 14 順応的管理(adaptive management) http://www.for.gov.bc.ca/hfp/amhome/AMDEFS.HTM • 説明責任(accountability) – 新事実/過去の過ちがわかれば改める • 順応力(adaptability) – 事態が変わったら方策を変える – その変え方を決めておく • 環境監視(monitoring)の継続 • 研究者の持続的関与 00-9-8 15 Leslie行列模型 0 2r (t ) L ff (t ) 0 N c (t ) N c (t 1) L ff (t ) 0 N f (t ) N f (t 1) L fc (t ) / 2 N (t 1) L (t ) / 2 N (t ) 0 L ( t ) mm m mc m Nc 幼獣個体数; Nf 雌成獣数; Nm雄成獣数 r 繁殖成功; Lff 雌生存率; Lmc雄幼獣生存率 00-9-8 16 不確実性の考慮 • 狩猟がない場合のLeslie行列の固有値λ (自然増加率)を15%~20%と仮定 • 幼獣生存率Lfc/2を46%~54%と仮定 • 雌成獣生存率Lffを90% ~ 99%と仮定 • 繁殖成功2rLff= 2λ(λ- Lff)/ Lfcとおく • 上記を平均値として毎年最高10%変動 • 個体数指数の推定誤差が毎年最高20% 00-9-8 17 道東地域の捕獲頭数と被害額 8 捕 獲 頭 数 ( 万 頭 ) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 駆除雄 狩猟雄 駆除雌 狩猟雌 農林業計 農業 7 6 5 4 3 2 1 0 1989 00-9-8 1992 1995 被 害 額 ( 億 円 ) 1998 資料:北海道エゾシカ保護管理検討委員会 18 計算機から雄が消えた! 雌成獣数 140,000 142,399 雄成獣数 雌幼獣数 1.17 120,000 生 息 頭 数 -7,675 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 1994 1995 00-9-8 1996 1997 1998 1999 2000 19 12万頭では少なすぎる • 8~16万頭×年15%=1.2~2.4万頭ず つ増える • 雄成獣は2万~4万頭いたはず • 雄成獣を2万頭以上5年間獲った – 上記設定が正しければ雄はもういな いはず 00-9-8 20 その後の環境監視 200 175 150 個 125 体 数 100 指 数 75 50 ヘリコプターセンサス ライトセンサスA ライトセンサスB 捕獲数/人・日 目撃数/人・日 農林業被害額 列車事故 262 25 0 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 2000 00-9-8 北海道 http://www.hokkaido-ies.go.jp/HIESintro/Natural/ShizenHP2/SIKA/DTdeerHP.htm 21 個体数は16万~24万頭だっ た? 00-9-8 (北海道2000) 22 緊急減少措置の延長 • あと2年~3年の大量捕獲が必要 • 引き続き個体数推定を続け、個体数指 数が50未満と判断されたら、緊急減少 措置を打ちきる • 個体数指数の推定誤差を10%と想定 – 不確実性の程度は全く不確実 00-9-8 23 道東地域エゾシカ保護管理計画の 改正について(北海道2000) • 平成5年度末の道東地域の推定生息数を 12万頭とすると、その15%にあたる1万8 千頭以上を平成6年度以降、毎年捕獲す れば個体数は減少するはずであった。… 平成5年度末推定生息数の過小評価が明 らかとなった。 • すばらしい説明責任(accountability) 00-9-8 24 個体数の動向(案) • 1994~’95年にかけて個体数は増え続け、 指数120程度に達した • 1998年緊急減少措置導入後、個体数は はっきり減少に転じた – 発信機をつけた50頭のうち約半数が捕獲死 • 減少に転じたということは、’93年度末 に30万頭はいなかっただろう 00-9-8 25 結論 • 捕獲圧を調節し、監視を続ければ、 より精度の高い個体数推定が可能 • 自然増加率と捕獲時の減少率から 絶対数を推定できる • 個体数指数の精度向上が鍵 • 過ちを改めるに如くは無し 00-9-8 26 生活史の日程を明らかに 00-9-8 27
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