回遊性浮魚類の 魚種交替の動向 •松田裕之(東京大学海洋研究所 海洋生物資源部門資源解析分 野) • 京都大学理学部生物物理学出身・理学博士 • 謝辞:河合裕朗・谷津明彦・渡邊 千夏子・三谷卓美・勝川俊雄・渡 邊良郎・和田時夫・故松宮義晴の 各氏 2015/10/1 1 乱獲され尽くした?水産資源 2015/10/1 http://www.fao.org/fi/publ/circular/c920/intro.asp#A2 2 世界の底魚と浮魚の水揚げ量 Landings (million tonnes) 120 100 Total landings 80 60 40 Pelagic marine fishes 20 Demersal marine fishes 0 1950 2015/10/1 1960 1970 1980 1990 (redrawn from FAO 1994) 3 とっくに頭打ちの底魚類 (FAO1996) 2015/10/1 http://www.fao.org/WAICENT/FAOINFO/FISHERY/publ/sofia/fig5e.asp 4 まだまだ獲れる浮魚類(FAO1996) 2015/10/1 http://www.fao.org/WAICENT/FAOINFO/FISHERY/publ/sofia/fig4e.asp 5 変動が激しい浮魚類の漁獲量 Catch (million tons) 5 カ タ ク チイ ワ シ サン マ マア ジ・ ム ロ ア ジ ニシ ン マサバ・ ゴ マサバ マイ ワ シ 4 3 2 1 0 1900 2015/10/1 1920 1940 1960 1980 6 プランクトン食浮魚類の変動と 生活史特性 毎年の加入量 継続期間 産卵場・索餌域 集団間の交流 回遊 成長速度 産卵期 産卵数・成熟率 成熟齢 初期生存 仔魚の生存 親魚の生存 2015/10/1 低水準期 高水準期 たまに良い だいたい多い 数十年 およそ十年 沿岸に限る 沖合に広がる 分断化 一体化 沿岸に定着 大回遊 速い 遅い ? ? 少ない・低い 多い・高い 早熟(1-2 年) 晩熟(~4年) マイワシ減少期も悪くなかった 悪い(減少期) 良い どちらも良い 7 カオスか? • Ricker方程式 xt+1=xt exp[r-axt] • 高水準期は一世代しか続かない 2015/10/1 8 2種競争説 • dx/dt = (r1– a11x- a12y)x • dy/dt = (r2– a21x- a22y)y • 勝つか、負けるか、平和共存か 2015/10/1 9 捕食者-被食者説 • dx/dt = (r1– a11x- a12y)x • dy/dt = (-r2+ a21x)y • イワシとともに長期変動する捕食 者やプランクトンは知られていな い 2015/10/1 10 3すくみ説 • • • • • dx/dt = c1+(r1– a11x- a12y - a13z)x dy/dt = c2+(r2– a21x- a22y – a23z)y dz/dt = c3+(r3– a31x- a32y – a33z)z y,z~0ならx= r1/a11このとき r2-a21x>0ならdy/dt>0 2015/10/1 11 3すくみ条件 • • • • 共存平衡点が不安定 r2 a11 – r1a21>0, r3 a11 – r1a31<0 r3 a22 – r2a32>0, r1 a22 – r2a12<0 r1 a33 – r3a13>0, r2 a33 – r3a23<0 2015/10/1 12 3すくみ説 • 次の魚種交替はいつか? – 予測不可能 • 次の優占魚種は何か? – カタクチの次はマサバだろう – 反証可能な予測 2015/10/1 13 カタクチの次はサバの時代!? 2015/10/1 14 マサバの過去を読む • 谷津明彦・三谷卓美・渡邊千夏子の結果 – 漁獲統計と年別体長組成、成熟率 – コホート解析結果 • 親魚あたり加入量の年変動 RPS解析(Beverton-Holtモデル) • 90年代とそれ以前のまき網漁業を 比べる(未成魚漁獲率など) 2015/10/1 15 かってサバはいつ復活した か? 1950年代 への回帰 2015/10/1 16 加入量が大きく変動 Var[加入量]:80s>90s, P<0.3% Var[RPS]:80s<90s, P<10-7 2度の卓越年級群 2015/10/1 17 再生産成功指数 RPS(Recruit per Spawning) = (加入尾数/親魚重量) RPSt = at /(b+SSBt) a = 1090 (/ton) b = 0.668 10-6 (/ton) 2015/10/1 18 激しい乱獲,未成魚捕獲 70年代 尾数 2015/10/1 80年代 90年代 93年以降 65.0 60.0% 87.0% 90.6% % 19 4つの方策 • 現状どおり(各年各齢のFa,t) 1. 卓越年級発生翌年は未成魚保護 • Fa,t=昔のFa,tの半分(0、1歳のみ) 2. 70-80年代のFa,tそのまま 3. 1+2の組み合わせ 4. さらにその45% 2015/10/1 20 資源復活の逸機 2015/10/1 21 漁獲量も十分だった 2015/10/1 22 マサバの未来を読む • 方策0=94年以降の平年のFa,t、卓 越年級翌年は93,97年のFa,t • 再生産成功指数at は90年代の値を 無作為抽出 • Na,1999から出発して20年分計算 • 親魚資源量100万トン以上の確率 • 累積漁獲量 2015/10/1 23 漁獲の回復確率(50万トン以上) 2015/10/1 24 資源の回復確率(100万トン以上) 2015/10/1 25 10年後の漁獲量の確率分布 千トン 2015/10/1 26 結論=失われた10年 • 未成魚漁獲圧を昔より高めた • 90年代の2度の卓越年級群を未 成魚時に乱獲していなければ、 資源回復は可能だった • 今後も未成魚を取り続ければ、 20年以内に回復する確率は皆無 2015/10/1 27
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