505 昭 和54年10月20日 A群 溶 連菌 菌 型分 布 の年次 的推移 (1974年4月-1978年3月) 神奈川県衛生研究所 ・WHOレ ンサ球菌 国内 リファレンス ・セ ンター 宮本 泰 滝 沢金 次郎 松 島 章喜 中塚 繁 浅井 安田 哲夫 Key words: 良夫 (昭 和54.2.20受 付) (昭 和54.4.17受 理) Annual Change, Streptococcus 国 内 のA群 溶 連 菌 菌 型 に つ い て は1974年3月 ま Type 市立札 幌病院 富沢功 で の成 績 を 本 誌 に 報 告1)した.そ の後 の 成 績 は未 新潟県衛生研 究所 だ 報 告 して い な い の で,今 回1978年4月 豊 島病院 まで の4 力年 の成 績 を各 年 度 別 に 集 計 表 示 した成 績 を,そ の主 要 流 行 菌 型 のみ の ヒス トグ ラ ムの 推移 を示 す 図 と共 に報 告 す る.ヒ ス トグ ラ ム の方 は 過 去 を 通 じて12型 が 急 速 な上 昇 を 示 し最 高 値 に 達 した1974 年-1975年 度 以 降 の経 過 を 示 した. 立川 病院 斉藤譲 厚木病院 高橋信 夫 横浜市民病院 鈴木充 聖 ヨゼ フ病院 高宮篤,山 田光男 桃山病院 足立利幸,谷 垣利幸 倉敷中央病院 材 料 と方 法 本郷俊治,田 中陸男,武 田修 明 島根県衛生研究所 菌 株 は全 て患 者 材 料(1人1株)で,咽 頭ない 長見秀男,斉 藤孝 一 (以上敬称略) し扁桃 腺 窩 よ り綿 棒 で採 取 した粘 液 が大 部 分 で あ る.こ の もの を ハ ー トイ ン フジ ョン血 液 寒 天 また 本 間宏,篠 川至 飯村 達 成 績 並 び に考 察 前 報 告 で1973年 よ り1974年 にか け て71.9%を 占 は トリプ トソイ 血 液 寒 天 平 板上 に塗 抹 培 養 して得 め た12型 は,そ の後 の1年 間 に更 に検 出率 の上 昇 られ た分 離 コ ロニ ーの うち で,レ ンサ球 菌 属 の条 を 示 し,表1の 如 く1974年 よ り75年 に か け て79.4 件 を満 た し,且 つ,小 林 分 類 でI型 に 属 し,私 共 %に 達 した.す なわ ち全 分 離 株 の80%近 の凝 集 反 応 群 別 法 でA群 血 清 に凝 集 を 示 す 菌 株 に つ い て,私 共 のT因 子 血 清 に よる凝 集 反 応 型 別 法 の み で 独 点 され る よ うに なつ た.こ れ は既 に報3) 4)5)ぜられ た よ うに ,macrolide耐 性 を 含 む 多 剤 耐 を行 い,菌 型 を決 定 した.術 式 の詳 細 は筆 者 の報 性,(TC/CP/macrolide/lincomycin耐 告2)を参 照 され た い. 菌 の 蔓延 に よ る もの で あ る.北 端 の札 幌 か ら西 端 菌 株 の送 付 を 受 け た 施 設 は 下 記 の とお りで あ くが12型 性)の12型 の 島 根 に至 る間 の施 設 のす べ て に お い て,12型 へ る.た だ し,新 潟 衛 研 は 本 間 宏 氏,横 浜 市 民病 院 の極 端 な 偏 向 が み られ るの で,こ の年 度 の全 国的 は 鈴 木 充 氏,島 根 衛 研 は 長 見秀 男 氏 また倉 敷 中央 傾 向 とみ な して よい.22型 病 院 は 本 郷 俊 治 氏 に よ り,そ れ ぞれ 型 別 が 行 わ 裏 日本 の島 根,新 潟 な どに 以 前 に み られ た 地 域 的 れ,そ の成 績 を送 付 して 頂 き,収 録 させ て頂 い た 特 性 が み られ な くなつ た の も,長 期 に わ た る12型 た め,地 域 に よる菌 型 の比 較 が 可 能 に なつ た. の支 配 下 に お いて,主 な どを 主 要菌 型 とす る と して 大 都 市 を 中 心 に 発 生 感染症学雑誌 506 Table Note: Type distribution of group A streptococci from April 1974 to March 第10号 1975 Each of the typing results in Niigata Publ Hlth Inst., Shimane Publ Hlth Inst., and Yokohama Municipal Hospital was kindly afforded from Drs. H. Homma, H. Nagami, and M. Suzuki respectively. Number of isolates classified according to disease (one strain from one patient): Scarlet fever, 325; Pharyngitis or Tonsillitis, 366; Nephritis, 59; Rheumatic fever, 8; Streptococcal infections, 67; Purpura, 4; Angina lacunaris, 11; Meningitis, 2; Otitis media, 6; and Others, 84. Table Note: 1 第53巻 2 Type distribution of group A streptococci from April 1975 to March 1976 Each of the typing results in Niigata Publ Hlth Inst., Shimane Publ Hlth Inst., and Yokohama Municipal Hospital was kindly afforded from Drs. H. Homma, H. Nagami, and M. Suzuki respectively. Numbers of isolated classified according to disease (one strain from one patient) : Scarlet fever, 436; Pharyngitis or Tonsillitis, 276; Nephritis, 26; Rheumatic fever, 4; Streptococcal infectinns, 18; Purpura, 5; Angina lacunaris, 3; Submaxilar lymphadenitis, 7; Cervical lymphadenitis, 6; and Others, 28. 育成 され た 多 剤 耐 性12型 菌 が,こ の時 期 に全 国 的 減 少 分 は永 ら く2位 の順 位 を 維 持 して い る4型 に 侵 襲 を成 し遂 げ た 結果 と考 え られ る.果 して1975 よつ て埋 め合 わ され,1977年 年 度 の12型 の 百分 率65.6%は7年 敷 中央 病 院 と新 潟 衛 研 の如 く,4型 ぶ りに初 め て前 度 に至 つ て関 西 の倉 の進 出 に よ り 年 度 を 下 廻 り,し か も急激 な下 降 を示 し,こ の年 送 転 現 象 す らみ られ る よ うに なつ た.1977年 を 境 に 下 降 の道 を た ど り始 め た.す な わ ち77年 度 1978年 に か け て,神 奈 川 県 下 で行 つ た小 学 校 学 童 のそ れ は30%に の健 康 保菌 者調 査,す ま で下 降 した.そ して この12型 の な わ ち西 湘,県 より 北 地 区小 学 507 昭 和54年10.月20日 Table Note: 3 of group A streptococci from April 1976 to March 1977 Each of the ryping results in Niigata Publ Hlth Inst. and Shimand publ Hlth Inst. was kindly afforded from Drs H. Homma and H. Nagami respectively. The results of Momoyama hoapital was quoted from that of Scaret Fever Study Group. Number of isolates according to disease (one strain from one patient): Scarlet fever, 158; Pharyngitis or Tonsillitis, 143; Streptococcal infections, 30; Nephritis, 11; Bronchitis, 4; Otitis media, 4; Purpura, 2; Lymphadenitis, 2; Sinusitis, 1; Asthma, 1; and Others, 5. Table 4 Note: Type distribution Type distribution of group A streptococci from April 1977 to March 1978 Each of the typing results in Niigata Publ Hlth Inst., Yokohama Municipal Hospital, and Kurashiki Central Hospital was kindly afforded from Drs. H. Homma, M. Suzuki, and T. Hongo respedtively. Number or isolates classified according to disease (one strain from one patient): Scarlet fever, 203; Pharyngitis or Tonsillitis, 190; Acute nephritis, 20; (Chronic) nephritis, 3; Purpura nephritis, 4; Allergic purpura, 8; Cervical lymphadenitis, 9; Bronchitis with asthma, 6; Pyelitis, 2`. Otitis media, 5; Otitis media, 5; Pneumonia, 5; Mastoiditis, 1; Sinusitis, 2; Bronchial pneumonia, 1; Arthritis, 2; Int oxicationsexanthem, 6; Impetigo or eczema, 7; Influenza, 6; Hemorrhagic erythema, 1; Rheumatic fever, 4; Urethral infection, 2; Streptococcal infections, 109; and Others, 54. 校 学 童 好 発 年 齢 層261名 お よび 定 点 医療 機 関105名 計366名 のA群 型 別 で は,西 湘,県 央,県 北 の3 る. 12型 と 異 な り4型 地 区 の 内,県 央 以 外 で4型 が12型 を凌 駕 した.こ chloramphenico1に の よ うに 同一 県 内 で も4型 の 進 出 に は 差 を 認 め 難 い 菌 型 はtetracycline単 もmacrolideに で あ る こ と を 報 告3)4)し 独 耐 性 で, も耐 性 に な り た が,,今 回 進 508 感染症学雑誌 Fig. 1 Annual change of percent frequency of the main predominant types of group A streptococci from April 1974 to March 1978 第53巻 第10号 の 流 行菌 型 に よつ て発 生 して お り,少 く も菌 型 へ の偏 りは な い もの と考 え た い.因 み にstollerman に よる と5型,27型 な どが比 較 的 リウマ チ 熱 起 因 性 の株 を 含 む とい う. 結 語 前 報1)に引 続 いて1974年4月 以 降1978に 至 る 我 国 各 地 か ら送 附 され たA群 溶 連 菌 の菌 型 並 び に 薬 剤 耐 性 を検 査 し,次 の結 認 を 得 た. 1.12型 菌 の検 出率 は1974年 を ピー ク と して 以 後 漸 減 し,代 つ て4型 の台 頭 が 見 られ,そ れ に 加 え て 地 域 的 ・年 次 的 に1,3,22,6,28,B3264 な どの菌 型 の交 代 的 出現 が 認 め られ,菌 型 の多 様 化 と,薬 剤 感 受 性 パ タ ー ンの変 化 が 認 め られ た. 2.リ ウマ チ熱 患 者 か ら分 離 され た 菌 株 は4株 共3型 菌 で あ つ た. 引用 文 献 1) 出 を 始 め た4型 が果 して これ らの薬 剤 耐 性 を獲 得 して い る か 否 か を 知 る こ と は 重 要 で あ る.目 宮本 泰, 松 島 章 喜: 滝 沢 金 次 郎, A群 年4月-74年3月)な 下調 主 要 流 行 菌 型 と し て はTable1∼4お 1の 如 く,以 上 の2種 よ びFig. 類 の 菌 型 の 他 に は1型 に 加 わ り しか も漸 増 の 傾 向 を 示 し,そ 22型,6型,28型,お 現 し,1973年 よ びB3264な が常 2) 3) の 他3型, どが交 互 に 出 4に お い て,リ 松 島 章 喜, 泰, 滝 沢 金 次 郎, 剛, 中塚 は 新 潟 衛 研,他 あ つ て,こ の4例 深 く,Stollermanの 共3型 の3例 浅 井 良 夫, 溶 血 性 連 鎖 球 菌A, の 薬 剤 感 受 性 こ と にA群 acquisition 来特 of multiple beta-hemolytic in resistance の様 な表 は作 成 の 内訳 け の う 感 染 症 学 雑 誌, B, の 段階 的 多 剤 Agents 5) は 横浜 市 民病 院例 で で あつ た こ とは 一見 興 味 い うrelative rheumatogenicity 51: 98-108, 柴田 Chemother., 実, 6) drug resistance by 13: 399-404, 柏 木 義 勝, 1978. 徳 江 シ ゲ 子, 1974∼1975年 浅 野 洋 子, 度 狸 紅 熱 患 者 由来 A群 溶血連鎖球菌 の 薬剤感受性 と 菌型につい て, 感 染 症 学 雑 誌, 児 玉 博 英, 橋 爪 淑 子: 51: 石 本 美 穂 子, 93-97, 1977. 田 口 由 清, 城野 晃, リウ マチ 熱 流 行 施 設 に お け る 細 菌 を 所 有 す る 菌 株 の 存 在 も 考 え られ な く も な い が, 学 的 お よ び 血 清 学 的 追 跡 調 査, 過 去 の リ ウ マ チ 熱 症 例 を み る と,12型6),4型 51: な ど 1977. streptococci and difference pattern by type. Antimicrob. 大 久 保 暢 夫: ち1例 繁: 1085- 4) Miyamoto, Y., Takizawa, K., Matsushima, A., Asai, Y. and Nakatsuka, S.: Stepwise 近 の 菌 型 を 示 すTable ウ マ チ 熱 の 症 例4例 86-93, 臨 床 検 査, 13: 宮本 G群 間の主要 49: レ ン サ 球 菌, 実方 っ い て, し修 飾 が お こ りつ つ あ る こ と は 興 味 深 い. し な い こ とに して い る.最 1969. 感 染 症 学 雑 誌, 耐 性 化 と菌 型 に よ る 耐 性 化 パ タ ー ン の 相違 に と い う恒 常 的 な 主 要 流 行 菌 型 パ タ ー ン の 乱 れ な い に 偏 つ た 相 関 は 認 め 難 い の で,そ 泰: 1091, C, 頃 ま で 続 い た4,6,12,22,1型 疾 患 の 種 類 と 菌 型 と の 関 係 に つ い て は,従 1975. 宮本 高 橋 武 夫, ら び に 過 去10年 流 行 菌 型 の 消 長, 査 中 で あ る. 浅 井 良 夫, 溶 連 菌 の 菌 型 分 布 の 推 移(1964 115-119, 1977. 感 染 症 学 雑 誌, 509 昭 和54年10月20日 Annual Change of Type Distribution of Group A Streptococci from April, 1974 to March, 1978 Yasushi MIYAMOTO, Kinjiro TAKIZAWA, Akiyoshi MATSUSHIMA, Shigeru NAKATSUKA, Yoshio ASAI and Tetsuo YASUDA Department of Bacteriology and Pathology, Kanagawa Prefectural Public Health Laboratory, 52 Nakaocho Asahiku, Yokohama We have already reported the annual change of type distribution of group A streptococci until March 1974 and type 12 exhibited a steep rise in percent frequency and reached the highest value in the past such as 71.9%. This was due to the development of the multiple drug resistance of this serotype including, in particular, macrolide resistance. After further increase up to the value 79.4% for another one year, i.e., in 1974-75, it began to decline relatively rapidly toward March 1978. In contrast, type 4 increased from 3.1% in 1974-75 to 27.5% in 1977-78, where the both types came to competitive in frequency. As regards the predominant types other than both types of 12 and 4, such types as 1, 3, 22, 6, 28, and B3264 appeared alternatively during this four-year period. It is in- teresting to note that there occurred some disturbance or modification in the constituent types of the main predominant pattern consisting of five types such as 12, 4, 6, 22, and 1 which lasted almost unchanged for about ten years until 1973.
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