FAO 地球土壌パートナーシップの紹介と日本への期待 An Introduction of

SSIF ニューズレターNo.1(2014 年 10 月)
2014 年 4 月 15 日
FAO 地球土壌パートナーシップの紹介と日本への期待
An Introduction of FAO-GSP and Expectations to Japan
Ronald Vargas
(Food and Agriculture Organization, United Nations(FAO):国連食糧農業機関)
1.
土壌は大切である。しかし,その実情は?
土壌のもつ働きとして重要なものをあげると,1)食糧,繊維,燃料そして医薬品提供などの根源,2)
植物生育や水道にとっての貯留場や放水源,3)土壌有機物の最大のプール,4)植物養分となる各種元素の
循環の調整,5)生物の活性,多様性,生産性の支持,6)種分散のための生息地と遺伝子プールの拡散,7)
水文学サイクルにおけるバッファリング,フィルタリングと節制のための中心的な役割,8)都市定住や建
築資材としてのプラットフォーム,など。
一方で土壌が現在直面している大きな問題点を挙げるとすれば,1)土壌に関する認識や教育方策の不足,
2)地球的土壌管理の希薄さ,3)土壌データ・土壌情報の分散化,断片化,そして情報そのものの時代遅れ,
4)土壌管理や保全,回復に対しての極めて低い投資規模,5)標的とする土壌研究の不明確さ,8)土壌への
開発課題などが列挙されるだろう。
2.
土壌劣化は今や農業分野のみならず,さまざまな方面で直面している現実である
人口増加にともなう食糧増産への需要(いわゆる飢餓からの救済)は更なる土壌劣化を引き起こそう
としている。また,このような土壌劣化は今や農業分野だけにとどまらず,生態系サービスの低下など,
様々な分野におよぶ大きな問題と化してきている。
3.
地球土壌パートナーシップ(GSP)の設立
土壌が直面するこういった様々な問題の解決に向けて,また世界中でこういった問題を共有していこ
うという目的から,第 23 回 the Committee on Agriculture および第 145 回 FAO 議会会期中に FAO の
メンバーらによって地球土壌パートナーシップ(Global Soil Partnership: GSP)というものの設立が承認
された。この中には,IPCC(気候変動に関する政府間パネル)に相当する ITPS(Intergovernmental
Technical Panel on Soils:土壌に関する政府間技
術パネル)というものが設置されている。
(http://www.fao.org/globalsoilpartnership/en/)
国連において,飢餓という大きな課題とあわせ
て,土壌の問題を常に取り上げ,その資源を世界
レベルで有効的に管理していこうと考えている。
この中でのパートナーとは,FAO の加盟国のほ
か,大学や研究機関に加え,規定に盛り込まれて
いる条件さえ満たせば誰でもなりうるというも
のである。パートナーの下には,きちんとサイエ
ンスの面からも追いかけていかなくてはならな
いということで前述した ITPS が設置されている。
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日本からは,このメンバーの中に八木一行氏(農環研)が参加している。さらに ITPS の下には FAO が
担当する事務局(GSP Secretariat)がある。
GSP の意思決定の場は総会でなされ,その中で GSP のルール(規定)
,先述の ITPS の設置,基金(the
Healthy Soil Trust Funds)の 設 置 , 行 動 計 画 の 策 定 , 地 域 土 壌 パ ー ト ナ ー シ ッ プ (Regional Soil
Partnership)の設立,世界土壌憲章(1982)の改訂などを行っている。
図
Regional Soil Partnership
アジアの土壌パートナーシップ会議は中国主導のもと第一回を 2012 年南京で開催し,日本によって第
二回目がつくばで開催されている。第二回目の開催では,つくば宣言(Tsukuba Declaration)が準備さ
れ,ロードマップの策定などもこの会に実施された。
4.
GSP の5つの柱について
GSP は5つの柱に分かれて行動している。その概要は以下のとおりである。
1)土壌資源や持続可能な管理,土壌保護や持続的生産のための地球レベルでのガバナンスの向上を推
進させる
2)土壌保全のための投資,技術協力,政策,教育,啓発や普及を奨励する
どういったところに投資すべきか,どういったところにどのような技術協力をしていくべきか,また政
策について議論することを目的としている。また,得られた知見をもちいて土壌のように教育現場に活
かし,啓発し,それをいかに広く普及していくかということの議論が目的である。
3)土壌にける研究開発においてのターゲットの評価
現場において,どういった土壌にまつわるどういった開発が求められているのは,そういう現場の声を
絶えず拾い上げ,どのような研究開発に資産を投入していくべきなのかを地球レベルで把握することを
目的としている。
4)土壌データの質の向上およびその入手性の拡張
気候の場合は,日々データが入手可能であり,またアップデートされ,そういった情報を元にモデルの
開発が行われたりしている。一方,土壌についてはそういった仕組みが無いばかりでなく,絶えず土壌
の状態というものも変化しているにもかかわらずそういったことの土壌データもほとんど存在しないの
が現状である。このピラーではそういったシステムの開発を進めていくことを目的としている。
5)手法や測定法,指標の調和
世界レベルで土壌を測定,データを集積する上でそれらの手法は調和的でなくてはならないということ
から,手法や測定における技術や精度の管理を行うことを目的としている。
そして,これらすべては Action(行動)をおこすということが重要であるので,そのための計画策定
も既に行われている。
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5.
世界土壌デー(毎年 12 月 5 日)と国際土壌年(2015 年)“Healthy soils for a healthy life”
昨年 2013 年に国連の総会において,こういった土壌の保全についての議論がされたということは非常
に大きな一歩であるとともに,一年のうちの一日をこういった日に制定されたということはとても大き
な意味を持つと思う。また,来年 2015 年は,さらに一年を通して土壌の重要さについて意識を高めてい
く非常に重要な年になると思う。
6.
Healthy Soils Multipartner Platform
現在,FAO が資金を提供しているが,地域レベルにわたって要求度の高い細かな行動計画を実施する
ためには資金がさらに必要になってくる。ここでいう資金というのはお金だけではなく,知識や人,イ
ンフラなども含めたことをさす。資金や人材など,提供したい者,民間会社も含む団体などが提供しや
すいときに提供しやすいだけ提供できるようなシステムを実現させるためにつくったプラットフォーム
が,Healthy Soil Trust Fund Facility である。
7.実施計画案
GSP の活動は今後多岐にわたって行われる予定であり,
中でも 2014 年 12 月 5 日の世界土壌デーは大々
的に世界中(ニューヨーク,ローマ,バンコク)で実施する。特に世界土壌デーや国際土壌年の制定に
向け,これまで精力的な推進活動を担ってきたタイというのは関係国の中でも特別な地域であり,そう
いった意味でバンコクがイベント開催地としても選ばれている。
このほかにも各種分野にむけた土壌の大切さについての啓発活動や地域単位を含むさまざまなスケー
ルでの学会やワークショップの開催など,様々なアウトリーチ活動を行っていく予定である。
また,今後期待されている主なアウトカムとして,
・世界土壌賞の制定
・土壌の重要さの普及
・FAO 議会における改訂世界土壌憲章の制定
・SDGs/Post2015 Agenda への土壌に関する内容の盛り込み
・the Status of World Soil Resources Report の 2015 年 12 月 5 日の発行に向けての着手