低頻度大規模自然災害に関 する情報伝達方法の研究 —よりよい地震防災情報伝達のために— 教育学部 総合科学専攻 3年 小山研究室 3031-6023 谷村 麻由子 ・研究目的 適切な地震防災情報伝達のためには,まず 地震に対する住民の意識や基 礎知識の理 解の仕方・程度を調べることが重要である。 本研究はとくに東海地震に関する情報伝達 が課題となっている静岡県と愛知県の住民に ついて,その意識・知識の現状を知り,それ に応じた地震防災用語の見直しや伝達方法 の改善方法をさぐることを目的とする。 これまで指摘された地震用語の問題点1 「地震」の2つの意味 「地震」という言葉には (1)地下で生じる急激な破壊現象, およびその結果としての (2)地面のゆれ, の2つの意味がある。 市民は震度とMをともに(2)の尺度としてとら えてしまい,専門家の説明を正しく理解できない場 合が多い。 小山・里村(2000) これまで指摘された地震用語の問題点2 「マグニチュード」の説明に 潜む伝達技術上の問題 ・‘地震’の語には2つの意味 がある。「‘地震’は‘地殻内 で生じる急激な断層運動’ の方」といちいち断る必要が ある。 ・‘エネルギー’は,理解しにく い抽象的な概念である。本 当に一般住民のほとんどに 周知したいのなら,小学生 にもわかるような解説が必 要。 これまで指摘された地震用語の問題点3 「震源」の語から点とすることの弊害 断層破壊が,震源という名の「点」で起きると誤解すると, 防災上どのような難点があるか 1.マグニチュードの数字から被害域の広がりをイメージし てもらえない 2.震源(あるいは活断層)に近ければ近いほど,揺れが 大きくなる,マグニチュードが大きくなれば,それに合わ せて揺れも無限に大きくなるという妄想を与えやすい。 地震動と地盤の関係が理解されにくい。震源断層(ある いは活断層)の広がりと地震動分布・被害の関係が理 解されにくい。 小山・里村(2000) 研究方法・対象 ・まずは、住民の意識・知識をさぐるアンケート 調査を実施する。 ・対象:静岡大学 教育学部生 静岡市駿河区住民 愛知県東海市または大府市住民 (愛知県民と静岡県民の意識・知識比較) アンケート内容 以下の項目を考えた。 1 東海地震に関する知識 2 地震予知に関する知識 3 地震防災用語に関する知識 4 自分が受ける被害に対する知識 5 防災意識の程度 6 津波に対する知識 4~5個の選択制回答 一部記述もあり。 アンケート詳細 1 東海地震に対して ・東海地震とはどういうものか知っているか ・震源域、発生場所がどこか ・東海地震の切迫性についてどう感じているか 2 地震予知に対する意識 ・東海地震予知に関する可能性をどう思うか ・スロースリップの意味 ・スロースリップという言葉から感じる恐怖感 3 地震防災用語に関する知識 地震の語の意味 マグニチュード、地震の意味の違い 地震情報に対しての意識 地震情報の出し方、その受け取り方 (東海地震観測情報 東海地震注意情報 東海地震予知情報 警戒宣言などの用語の理 解度について) 4 自分が受ける被害に関する知識・意識 ・自分の居住地の震度について どの程度の震度が与えられるか。 ・自分の家の被害について 耐震対策が行われているか否か。 家具の配置は今、人身被害が抑えられることが できるようになっているか。 家がどの程度の震度まで耐えられるか。 その恐怖感について問う。 5 防災知識の程度 ・平日の昼間など,家族が異なる場所にいる ときに東海地震が発生した場合にどうするか など家族で話し合ったことがあるか。 ・県地震防災センターに行ったことがあるか。 (静岡県民に対して) ・防災に関するセミナー・講義・その他イベント などに参加したことがあるか。 ・日頃、防災グッズなど常備してあり位置など 確認ができているか。 今後の課題 さらにアンケート内容を検討し、研究目的 に見合ったものとする。 また、アンケート対象を住民としているが どの程度の数、年齢層なども決定する。 そうした上で試験的なアンケートを作成・ 実施し、設問や内容の修正・向上をおこ なう。
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