巨大地震の科学と防災 著者 金森博雄 紹介者 30416013 佐藤夏姫 目次 一章 地震学を始める 二章 プレートテクトニクス 三章 マグニチュード 四章 地震波が教えてくれたこと 五章 奇妙な地震 「津波地震」 六章 アスペリティ 七章 予知・予測への期待と現実 一章 地震学を始める 1966年秋、著者が本格的に地震学を研究するようになる 新しい地震学-波形全体を使う が始まる それ以前の地震学 → 地震波形をほんの一部しか使っていなかった 新しい地震学に必要な3つの道具(要素) ・高性能の地震計により観測が行われること ・物理学的な理論にもとづいた理論地震波形を計算から作り出せること ・理論波を計算し、観測波形を高度な信号処理で解析する時に使う電子計算機 地震波形を使った研究 地震学がもつ二つの側面 ①地震がどうして起こるのか、その地震によってどんな揺れがもたらされるのかを 解明する立場 ②地震の波を地球の奥深くまで到達できる信号だと考えて、その波形から地球内 部の構造を調べるという立場 地震波形からなにを研究するのか? 地震波形を計算して、直接観測波形と比較して、震源となった断層でどんな運動が 起きたのかを調べる研究 目で直接見える地震波形を使って震源過程を研究する! 二章 プレートテクトニクス 地震の発生メカニズムとプレートテクトニクス プレートテクトニクスとは? 地球の表層が厚さ100キロ程度の、固くて変形しにくい十数枚の板(プレート) で覆われていて、それぞれのプレートが地球の表面に沿って動いているという 考え方。 環太平洋の主なプレートと海溝 プレート境界で起こる巨大地震 プレートが地球の中へと沈み込んでいく場所 ⇒地球の表面に沿って動いてきたプレートが別のプレートと接触するが、二つのプレート の密度が違うと、重い方のプレートが軽いプレートの下に入り込んでいく ⇒二つのプレートの接触する面が固着して、沈み込んでいくプレートが動き続けていくと、 二つのプレートの間にひずみが蓄積する この面がくっつく強度を超えたとき・・・ これまでに溜まったひずみが解放される! 固着していた面の形は二つのプレートの境界の形を反映し、ずれ動く方向はプレートが動 いている方向とだいたい一致する プレート境界の地震と津波の発生のしくみ プレートの沈み込みに伴い、陸側のプレー トが引きずり込まれてひずみを溜める ↓ 耐え切れなくなってはね上がる プレート境界の巨大地震 海底が動き海水をもち上げ、津波も発生 三章 マグニチュード チャールズ・リヒター教授 1935年、報道陣に地震の規模を説明するために、マグニチュード という概念を地震学に導入した マグニチュードとは? - 震源から一定距離の地面の揺れを表す マグニチュードは科学のためばかりではなく、地震の大きさを報道機関に迅速 に正しく伝えるために開発された! いろいろなマグニチュード ・表面波マグニチュード(MS)・・・地震の大きさを表す。リヒターのマグニチュードML と だいたい同じ値になるように計算式が作られている。 ・実体波マグニチュード(mB)・・・深い地震の大きさを表す時に使われる。 日本の気象庁も表面波マグニチュードにほぼ合うように作られたマグニチュードを使い始 める 正式には「気象庁マグニチュード」 (一般的にはただマグニチュードと言っている) ☆「震度」は観測点が多数あるため、たくさんの数字が出てくるが、「マグニチュード」は 一つの数字しか出てこない MWとモーメントマグニチュード 地震モーメント・・・断層の面積と食い違い量に岩盤の硬さを示す係数をかけたもの。 どれだけの大きさの断層がどれだけ動いたのかをあらわす モーメントマグニチュード(MW)・・・表面波マグニチュードとエネルギーの関係式に、 地震モーメントから推定した地震波のエネルギーを 入れて逆算したもの ★巨大地震のサイズを示すのに適している 四章 地震波が教えてくれたこと 多様な地震像 チリ地震 ・日本海溝の沖側で発生 ・1000キロにわたって断層がずれ動き、発生した大津波は日本にも被害を 与えた ・マグニチュードは9.5 ・最初、横ずれ断層の地震 ➡ 後に、プレートの沈み込み帯の逆断層 とても長い巨大な断層は横ずれタイプというイメージがあったため 昭和三陸地震 ・東北地方に大きな津波をもたらし、3000人以上が犠牲になった ・正断層タイプの地震 ← 予想外のタイプであった これまでは海溝に近いところで発生する巨大地震は、低角逆断層地震であったため 大地震は逆断層か横ずれ断層と思われていたため アウターライズの正断層地震 プレートが曲げられていく場所で起こる (アウターライズ・・・外側の高まり) アウターライズの正断層地震の前にプレート境界の逆断層の大地震が発生している 例がある 例)千島列島沖の地震(2007年) 二か月の間隔をおき、千島海溝を挟んで二つの大地震が発生 なぜ、逆断層の地震後にアウターライズの正断層地震が発生しやすいのか? 逆断層の地震が発生する前、プレート境界はくっついて動けない状態で、かんぬきが外 れたように地震でプレートが動けばアウターライズ側の表面に引っ張るような力がかかる 引っ張られて正断層の地震が発生しやすくなる 五章 奇妙な地震「津波地震」 「津波地震」・・・短周期の地震波はあまり出してないのに長周期の地震波を たくさん出し、揺れは小さいが大きな津波を起こす特殊な地震 明治三陸地震 短周期の地震波をあまり出さなかった ⇒人々はあまり揺れを感じなかった 長周期の地震波をたくさん出していた 東日本大震災 東日本大震災を引き起こした地震も半分は津波地震 津波地震と普通のプレート境界の地震が同時に発生 日本海溝付近では長周期の地震波をたくさん出す 高い津波が発生 陸に近い方では短周期の地震波をたくさん出した 六章 アスペリティ アスペリティの研究史 阪神・淡路大震災後、前兆現象を捕まえるのではなく、長期的な地震予測に 取り組もうとした 「アスペリティモデル」が注目される アスペリティモデル・・・地震発生の仕組みを定量的でなく、定性的に考える ための概念 プレート境界のような大きな断層では、 ひずみを溜めてもずれ動くことなく、 長い間くっついている「強い場所」が パッチ状にある。 ↑ このパッチがアスペリティ (アスペリティの概念) アスペリティは断層全体の平均よりもひずみが多く溜まっているところ 日本のアスペリティモデル 日本では、1990年代後半からアスペリティ研究が精力的に進められるようになった 研究の例:十勝沖地震 三陸はるか沖地震 アスペリティについてわかったこと ・強くくっついている ・地震時にだけ動く ・個々のアスペリティの位置は変わらない ・アスペリティの周りはゆっくりすべりが起こる ・余震はアスペリティの周辺で起こる など 七章 予知・予測への期待と現実 地震予知 いつ、どこで、どの規模の地震が発生するかを数時間から数週間前に 予測する ・・・ 「短期予知」 地震予知につながる前兆現象 ←はっきりとした変化が観測されない 変化があったとしても非常に弱い 長期予測 阪神・淡路大震災のあと… 短期的な地震予知をめざした研究 → 長期予測をめざす研究 ・海溝型や活断層の地震について、今後30年間に何パーセントで発生する、 といった確率予測 ・各地点が今後30年に震度6強の揺れに襲われる確率を推定した地図 などが発表された 地震学の応用分野 早期警報 ・・・ 地震発生直後に揺れや津波の「早期警報」をだし、被害軽減に 役立てる 津波警報 ・・・ 地震の震源とマグニチュードから各地の津波の高さを出す
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