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記念講演者
インタビュー
国土学アナリスト/国土政策研究所長、日本道路協会長
大石久和氏に聞く
日本列島の国土から考える
災害対応、道路と地域の連携、
そしてケーブルテレビの在り方
自然災害が多発する日本において、地域に存在するケーブルテレビができることは何か。
そこで、災害多発の日本列島の特徴を他国との比較から浮き彫りにする国土学を提唱され、早くから「道の駅」プロジェクトにも
かかわってこられた元国土交通省技監で、一般財団法人国土技術研究センター・国土政策研究所所長、
公益社団法人日本道路協会会長の大石久和氏に、ケーブルテレビの在り方や期待について話していただいた。
知っておくべき国土の特徴
信機能」
、③地域振興施設で地域と交流を図
る「地域連携機能」です。地域連携とは、地
一番重要なことは、自分たちの国土につい
域が独自性、主体性を持って結び付き合うこ
て正しく認識することです。正しく認識する
とです。道の駅は地域と道路との間に初めて
ためには他の国土と比較することが重要です。
開いた「道路の窓」だと、私は考えています。
わが国土にはハンディキャップとならざるを
また、防災拠点としての機能を持った道の
得ない 10 の特徴があります。ここでは全部
駅が増えています。実際に 2011年に発生
をお話ししませんが、
中でも最大の特徴は
「地
した東日本大震災のとき、大物流が止まった
震の多発」と「列島の中央を貫く脊梁山脈」
中で、近所の農家の人が道の駅に野菜を置い
の存在です。日本の地下は 4 つのプレート
たことで、震災直後の早い段階から野菜が手
が集まり、世界の活火山の 10%が存在して
に入ったということがありました。こうした
います。マグニチュード 4以上の地震の 10
%が日本で起こり、マグニチュード 6以上
ともなると実に 20%になります。
また、脊梁山脈によって国土が二分されて
います。気候もまったく違いますし、河川は
短く急流で、川の水位が急激に上昇します。
大
石
O h i s h i
久
和
H i s a k a z u
1970 年京都大学大学院工学 研究科修士課程修
了、同年建設省(現国土交通省)入省、建設大
臣官房技術審議官、建設省道路局長、2002 年
国土交通省技監を経て、国土技術研究センター
理事長、2013 年より現職
災害時における地域の拠点、基地としての活
用は大いに進んでいくでしょう。
ケーブルテレビの役割と期待
災害の記憶を語り継ぐことは重要なことで
すが、いくつもの世代を越えて語り継いでい
くのは容易なことではありません。その役割
平野部は 109 の一級水系と 2,713 の二級
水系によって細かく分断されています。さら
間利用できる簡易トイレを置き、駐車スペー
を担えるのはケーブルテレビではないでしょ
に、国土面積の 70%を占める山岳の地質の
スを設けたのです。素晴らしいのは、そこに
うか。政府の災害対応機関が決定した事項を
風化が進んで不安定になっているため、土砂
農協や漁協に声をかけて産品を並べ販売をし
住民に伝達するという役割もあります。
災害などが頻繁に起こります。
たことです。当時、道路局の室長をしていた
また、日本の行政はスリムになり過ぎて、
私はこうした国土の有り様が、日本人の極
私に、別の地域でも取り組みたいと相談があ
国民一人当たりの公務員の数がフランスの半
めて短期的な思考の形成に大きな影響を与え
りました。当時考えたことは規制を強くする
分になってしまいました。そうなると、公の
てきていると考えています。
のではなく、どこでも設置できることでした。 世界と民の世界をどう連携していくか、公で
今やその登録数は全国1,059駅(2015年4
も民でもない役割をケーブルテレビが担って
月現在)となり、道路行政の大ヒットと言わ
いくという考えはどうでしょうか。
道の駅は、1990年に「道にトイレがあっ
れるまでになったのです。
地域に根ざすケーブルテレビが、災害への
てもよいのではないか」という市民の経験に
道の駅には 3 つの機能があります。①ト
取り組みで連携する全国規模の協力機能を持
基づいた提案から始まりました。賛同した人
イレがある「休憩機能」
、②道路や観光、緊
つことは、日本という国にとって大事なこと
たちが道路の余裕スペースを使って、24時
急医療などの情報を提供する「地域の情報発
だと思います。
市民の経験が生んだ「道の駅」から学ぶ