非供述証拠・情報の収集・保全

2012年度冬学期「刑事訴訟法」6
捜索・差押え(1)
ポイント
○物・情報の収集・保全のための手段(処分)の種類
と相互の異同
○令状主義の趣旨
何故,そして,何が要求されているか?
○令状主義における捜索場所・差押目的物特定の要請
何を単位に,いかにして,どの程度に特定する必要があるか?
△「各別の令状」の要請の趣旨
処分の種類
○押収
捜索・差押え
領置 任意提出,遺留
提出命令
○検証
※身体検査
※実況見分
○鑑定処分
鑑定嘱託
・処分の主体
・限界
・手続
捜索・差押え(1)
○捜索・差押えの対象
・有体物
なぜ?
⇒差押えの目的
証拠物の保全・・・証拠としての提示(有体物)
⇒情報の取得・保全は?
通信情報
没収物の保全・・・没収の対象(有体物)
⇒無形の権利の没収は?
民訴法上の権利保全(仮差押え)
不法利益の仮保全(没収保全)
捜索・差押え(2)
・生きた人間の身体
対象とならないとされてきた理由は?
ex. 手足の切り離し
⇒物理的に不可能ではなく,相当でないから
・・・身体の完全性・安全,人間の尊厳の侵害
⇒身体検査(検証)としては?
⇒鑑定処分としては?
⇒強制採尿についての判例〔百選31〕
捜索・差押え+特別の条件
令状主義の意義
○正当な理由
根拠不十分な捜索押収
特定の被疑事実に
関連する証拠物等が
当該場所に所在する蓋然性
○捜索場所・差押え目的
物の特定
捜索場所・差押物が無
限定な一般的捜索,実
施機関が恣意的に選定
○裁判官による令状発付
実施機関自身が判断
捜索場所・差押目的物特定の趣旨
①相当な理由(目的物所在の蓋然性)
についての実質的判断の確保
捜索場所の特定
(空間)
②捜索範囲の限定
(空間・時間)
差押目的物の特定
③差押えの範囲の限定
捜索・差押えと関連性
令状発付(ないし捜索着手)時
正当な理由
=被疑事実に関連する目的物(証拠物又は没収すべき
物と思料されるもの)が捜索場所に存在する蓋然性
があること
令状に記載される目的物
=存在すると予測される証拠物等(概括的記載)
差押え時
正当な理由
関連性の確認
=被疑事実に関連する証拠物等であること
捜索場所の特定
○何を単位に,どの程度まで特定することが必要か?
・管理ないし占有の別ごと
・それを識別できる程度
なぜか?
・権利侵害の許可・・・権利or権利主体ごとに
差押目的物の特定(1)
○目的物特定性の要請の趣旨
個別に特定されているほど良い (ex.個体識別子)
○捜索令状発付時
目的物=捜索の場所に存在すると予測される証拠物等
⇒多かれ少なかれ概括的にしか表示できない
特定性の要請の趣旨を充たす限り,概括的記載も許される
差押目的物の特定(2)
○捜索場所にある「一切の文書」という表示
・特定性の趣旨②,③は充たす
・①は?
・そこにあるすべての文書が証拠である蓋然性がある場合
・そうでない場合
○「本件に関係ある一切の文書」
・そのままでは,捜査官による選別に完全に委ねることに
・例示=一定の限定作用
・「本件」の概要・・・捜査官が分かっているだけでよいか?
・「罪名」の表示で十分か?
・被疑事実の要旨の表示
*なぜ必要的記載事項となっていないのか?
⇒通信傍受法6条,9条1項
参考文献
①井上正仁「令状主義の形成過程」
司法研修所論集99号(創立50周年記念特集号
3巻)200頁以下(1997年)
〔同『強制捜査と任意捜査』所収〕
②同『捜査手段としての通信・会話の傍受』(1997年)
38~73頁