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事例に学ぶ! 処方箋監査 vol.8
下 平 秀夫
先生
帝京大学薬学部実務薬学研究室 / 富士見台調剤薬局
このシリーズでは、新人薬剤師ハツミさんの失敗談を例に処方箋監査を学びます。
おやおや? ハツミさん、なにか困っていますね。どうしたのでしょうか?
事例
処方箋
名
山吹 太郎
生年月日
昭和50年1月4日(39歳)
氏
処
処
備
方
方
考
医 療 機 関
男性
平成 ○ 年 △ 月× 日
交付年月日
新人薬剤師ハツミさんは、処方箋を受付ました。
アルシス病院耳鼻咽喉科
渋谷区*******
電 話 番 号 03-6861-****
保
険
医
志田花
処方箋の使用期間
1) シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル10mL 1本
1日1回 朝.舌下に投与
この患者さんはスギ花粉症で、今回から新しい薬
を使い始めるようです。患者の山吹さんに、「すぐ
ご用意しますのでお待ちください。」と言って調剤
を始めたところ、先輩薬剤師から、「ちょっと待っ
て、その前に「受講修了医師」の確認が必要だよ !!」
といわれてしまいました。
箋
欄
受講修了医師
?!
?!
ろ…
どうやって確認するんだ
解
説
シダトレンは、処方元医師が「受講修了医師」として登録されていることを確認し
てから、調剤する必要があることを覚えておこう。
シダトレンを調剤する前に確認すること
シダトレンを調剤するために薬局として登録する必要はありませんが、調剤前に処方可能な医師かどうかを確認する必
要があります。本剤は、舌下免疫療法(減感作療法)に関する十分な知識・経験と本剤に関する十分な知識を持つ「受
講修了医師」のみが処方可能です。ですから医師は事前に規定の講習会に参加し、e ラーニング修了後に e テストに合
格して「受講修了医師」として登録される必要があります。
薬局でシダトレンの処方せんを応需したら、薬剤師は、調剤をする前に電話か確認用サイト(Web)のどちらかで「受
講修了医師」であるかどうかを確認しなければなりません。Web での確認は薬局の事前の登録が必要です。処方元医
師が「受講修了医師」であることを確認できない場合には、本剤の調剤を行わず、処方医に疑義照会を行います。
保険請求の注意
本処方では、毎日指示された滴数を舌下に投与し、徐々に増量していきます。この際の調剤報酬としては、内服用滴剤
を算定します。1 週間後に濃度の高い 2000JAU/mL ボトル 1 本が処方されるのでこれも内服用滴剤として算定します。
その後の維持投与では毎日 1 回使い切りのパックを使用し、こちらは内服調剤料を算定します。
調剤拒否の「正当な理由」とは
薬剤師法第21条において、調剤の求めがあった場合に「正当な理由」がない限り調剤拒否を禁ずる旨が記載されてい
ます。
「正当な理由」とは、薬剤師が急病で不在であるとか、地震等の天災により調剤器具等が破損し、調剤が不可能である
ような場合が該当します。その他にも、処方せんの内容に疑わしい点があるが、処方した医師又に連絡が取れない場合、
処方せんが偽造されていると思われるような場合も「正当な理由」に該当します。今回の処方を応需して「受講修了医
師」として登録されていない場合にも、調剤拒否の「正当な理由」とみなせます。薬剤師にとって非常に重要な確認事
項といえます。
⇒次ページにつづく
2015年1月作成
事例に学ぶ! 処方箋監査 vol.8
下 平 秀夫
先生
帝京大学薬学部実務薬学研究室 / 富士見台調剤薬局
さらに、2014 年 6 月 12 日に施行された改正薬事法(現:医薬品医療機器等法)では下記のような記載があります。
【第 9 条の 3 第 3 項】
薬局開設者は、情報の提供又は指導ができないとき、その他同項に規定する薬剤の適正な使用を確保すること
ができないと認められるときは、当該薬剤を販売し、又は授与してはならない。
すなわち、安全な薬の使用ができない時は処方せんの調剤をしてはならないと解釈できます。
シダトレンの特徴
国内で初めて承認された、舌下に投与する減感作療法薬です。従来から施行されてきた皮下注射による減感作療法 (SCIT)
と比べ、2 日目からは自宅での服薬が可能であること、注射による痛みもなく治療ができることなどが特徴です。
減感作療法とは
減感作療法(アレルゲン免疫療法)とは、アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを、低濃度、少量から投与し、徐々
に増量、高濃度へ移行させ、アレルゲンに対する過敏性を減少させる治療法です。
シダトレンの用法
〈1 ∼ 7 日用〉
1. 増量期(1 ∼ 2 週目)
〈8 ∼ 14 日用〉
通常、成人及び 12 歳以上の小児には、増量期として、投与開始後 2 週間
定められた量を、1 日 1 回、舌下に滴下し、2 分間保持した後、飲み込み
ます。その後 5 分間は、うがい・飲食を控えます。
2. 維持期(3 週目以降)
増量期終了後、維持期として、シダトレンスギ花粉舌下液 2,000JAU/mL
パックの全量(1mL)を 1 日 1 回、舌下に滴下し、2 分間保持した後、飲
〈維持期用〉
み込みます。 その後 5 分間は、うがい・飲食を控えます。
ハツミさんの対応
ハツミさんは登録医師確認窓口で処方医が「受講修了医師」であることを確認できました。また、交付時には患者さん
が持参した「患者携帯カード」を確認しつつ「服薬指導チェックシート」を利用して、理解度を確認しながら服薬指導
を行うことができました。
表:患者とかかりつけ医療機関の情報
患者携帯カード
裏:シダトレン服用後のアナフィラキシーの前兆
2015年1月作成